黒騎士、エルデの地の紀行 作:ゆでエビ
100話くらいかかったらどうしよ
祝福を渡る力を試してみた。行先は商人カーレのいた廃教会。
半信半疑だったが、やってみたら想像以上にあっさりとワープに成功した。
だが、それ以上に驚くべきことがあった。
私の事を探していたという人物が、教会にて待ち構えていたのだ。
それは淡い水色のとんがり帽子を被った、人形の身体の女性だった。
確か、レナと名乗っていたはずだ。
私のことは、霊馬を駆る褪せ人の噂を聞いて探していたらしい。
かつてのトレントの主と知己のようで、私に宛てて贈り物がある、と。
そうして渡されたのは霊を呼ぶ鈴と、狼の遺灰。
この鈴があれば、遺灰をもとに、死後に黄金樹に還らなかった者を呼べるらしい。
死後は黄金樹に還るという常識も初めて聞いたので、驚きの連続だ。
私はこの地の出身ではないが、私も死んだら黄金樹に還るのか?
鈴も遺灰もありがたく受け取ったが、謎は多い。
霊馬トレントはメリナから授かったものだが、それほど大切にされていた馬だったのか?
かつての主というのもメリナではないようだし、なぜそこまで私にする義理があるのか?
レナも明らかに只者ではない。
藤色の妙な霧を纏っていて、カーレが昏睡させられていたのも気になる。
二本指がどうとか意味深なことも言っていた。
生憎、この世界の民のとって常識さえ把握していない私は、話についていけなかったが。
結局、彼女はもう会うことはないと言い残して夜の月明かりに溶けて消えてしまった。
カーレはすぐに目を覚ました。体調にはなんの異変もないらしい。なら良いのだが。
その後は、亜人が海岸に洞窟があると言っていたのを思い出して、カーレのいる教会から西の海岸の方に歩みを進めた。
岩場を降りていくと、巨人が襲い掛かってきた。
鎖に繋がれていない自由な個体であったはずだが、私をなぜ攻撃するのか。
にしても、当たり前だが私の知る巨人とはまったく容姿が異なる。
一番は大きな空洞になっている胸郭部だろう。
怪我や拷問の痕でないなら、種族的な特徴なのだろうか。荷車を引いていた巨人も同じだった。
あとは黄金の大剣を背負って、途中で持ち出して暴れてきた。
何やら大切そうにしていたが、故はわからずじまいだったな。
海岸まで行くと、波打ち際に気色の悪い触手の塊が散見された。
触腕を見るに、イカやタコの類なのか?
襲い掛かってきたので、とりあえず人食いであることは間違いない。斬り伏せた。
そのまま崖沿いに歩いていくと、確かに洞窟が見つかった。
近くにたむろしていた亜人たちも襲い掛かってきたので、ここで間違いなさそうだ。
そばにカーレと同じ装いの者がいたので声をかけると、やはり彼も流浪の商人であった。
カーレとは比べ物にならないほど愛想が悪かったが、製法書や情報を扱っていたのでありがたく購入させてもらった。
洞窟に入ると、中には私が助けた身なりのいい亜人が傷だらけで倒れていた。
同族から迫害に遭ったらしい。
近くに祝福があったので、そこで休息しながら話を聞いた。
祝福ではメリナとも話した。
彼女もまた、生き続けている理由を探しているらしい。
焼け爛れ、霊となってなお生き続ける理由は何なのか。
他人とは思えない境遇だった。親近感を感じなかったといえば、嘘になるだろう。
因果なものだ。
もう少ししたら、洞窟を進もう。