竜華の1回戦の対戦相手である天江衣は、小学3年生の時に両親を事故で失い、龍門渕家に引き取られ、別館に閉じ込められる。……閉じ込められるという言葉だけで想像すると、軟禁や監禁を思い浮かべやすいが、天江衣に関しては普通に小学校へ通っていた上、最低限従妹の龍門渕透華との交流は続いていた。よって天江衣は少なからず、外界の情報を取得することが出来ていた。
ということは小学1年生から、4年連続で小学生のチャンピオンに君臨する園城寺怜。その存在を知ることも可能だろう。天江衣から見て、唯一自分と釣り合いが取れそうな相手。興味を持つのに、時間はかからなかった。
そして小学4年生になっても、麻雀の全国大会で原作キャラに会うことが出来なかった怜は、ある時インタビューでこう答えている。
「地元やと負け知らずでも、全国まで来るとただの一般人になる。周囲が相手にならんほど弱いなら、大会に出て全国まで来いや。うちはいつでも頂点で待っとるで」
怜としては、これで強すぎるが故に大会とかには出てないキャラが出て来たら良いなと考えていた。考えてはいたが……あの天江衣がこれで出て来るようになるとは流石に思ってなかった。
『竜華ってこんな強かったんか?』
(いやうちらは毎回竜華の上がりをひたすら握り潰してるし、竜華からの威圧は受け流しとるけど……この様子やところたんとはバチバチやな)
『宮永咲が気分悪くなるレベルとやり合えてるのは僥倖。いや今日三日月だし昼前だけど』
(夜やと竜華は負けとったやろな。今だからこそころたんの支配から抜け出して聴牌しとるけど、夜は無理やろ)
親で連荘する竜華は天江衣の一向聴地獄から抜け出し、あっさりと聴牌する。既に天江衣と竜華以外の持ち点は少なく……竜華は、最も持ち点が少なかった上家を飛ばして1位通過の権利を勝ち得た。
まだ天江衣が小学生で、時間帯や月齢が適していなかったということも原因の1つだが……竜華が衣に競り勝った最大の理由は、ひたすら怜相手に上がりを邪魔され続けた経験のお蔭である。超集中モードに入った時に竜華は、普通に打てば手が進まなくなるような状況に強い。意図的にオカルトの意思から脱することが出来る。
『普通に打てば振り込んどる場面で躱し続けての逆襲か。竜華はころたんにロックオンされそうやな』
(……あれ、雰囲気だけで相手の手が何点なのか分かる正真正銘の化け物というか魔物やねんけど、来年も出て来るんやろか)
『来年は月齢変わってるし下手すりゃ満月かもしれんでー』
(そりゃ楽しみやね)
1回戦の全試合が終了したところで、怜は帰って来た竜華と一緒に昼ご飯を食べる。2回戦で対戦相手、敵同士になるかもしれないとはいえ、別々に食べるという選択肢が2人にはなかった。
(2回戦は……お、運天原小の副将おるやん)
『筒子の小さいのがめっちゃ集まって清一色一盃口連発してた子やな。先鋒の子の姉らしいし小6やから今年が最初で最後かい。
……固定の牌を常に引けるのクソ強くない?』
(現日本王者も一索と風牌は自由自在やで。
……あ、少し威圧したら向こうからの威圧が減ったからたぶん入る固定牌半分ぐらいになったわ)
『対戦相手の子怯えとるやん!?』
麻雀の牌が偏るオカルトは、その日の調子やメンタルに大きく影響する。怜は軽く未来を視て、本気を出さないと少々不味いことになると判断したため、手始めに威圧を行った。
……この世界では異能持ちで麻雀の強い人間がグッと力を込めると、その余波で異能持ちは恐怖したりメンタルを崩すきっかけとなる。怜はそれを軽くやっただけだが、既に運天原小の副将の顔色は悪い。
『お、今日は調子ええな。東1局から国士が見えるで』
(……あえて東を鳴かせることで2枚目の東と南に一萬が入る。九種九牌から国士は、本来3%やっけ?)
『確かそんなもんやな。……でも来る牌が分かってる上に、ツモ順をズラすことで入る牌が分かるなら、確率は大きく上がる』
(最後の一筒は、あの子が4枚抱えて……槓してくれるんか)
『東1局で槍槓国士無双はやられた側トラウマなるやろ……』
(でも怜ちゃん止まらへんでー)
「その嶺上取る必要なし。ロン。槍槓や」
(言ってみたかった台詞を言えたで!)
『運天原小の副将が泣いてもーたけどどうするん?』
(いつものことや。親番やし槓してリーチしたいのは分かるんやけど国士は警戒せんといかんかったな)
『初っ端から東と南出して国士の雰囲気一ミリも醸し出さなかったのにそれは無理やろ』
2回戦を怜は東1局で終わらせ、準決勝進出。サクサク進んでいるがいつものこと過ぎて怜自身は慣れてしまった。なお観客達は、異様な手順で国士を聴牌した後に槍槓で上がったことで大盛り上がりした。
2回戦が終了して、怜は勝ち残りメンバーに竜華がいることを確認する。そしてもう1人、同じ大阪代表として勝ち残りメンバーに江口がいることに期待していたのだが……見当たらなかったため、怜は江口の全国大会2回戦負けを察した。
(というか大阪代表18枠もおるのにもう残ってるの竜華だけやないか……?)
『神奈川代表も18枠あるのにほとんど残ってないのでセーフ。……全小で地区代表が1人なのは8県あるけど、そういうところは案外残っとるな』
2回戦が終わり、残っているメンバーは16人。その中で大阪代表として残っているのは、怜と竜華だけだった。