松実玄はドラが集まる反面、ドラを切れないという制約がある。もしもドラを切ってしまうと、ドラがしばらくの間、一切来なくなる。オカルトは強力なものだと、こういう条件や制約がある場合も多い。怜も原作だと能力を使い過ぎた結果、体力気力精神力を使い果たし意識を失い床に倒れ、病院へ担架で運ばれたことがある。ついでに言えば、改変を多くするほど体調は悪化する。
ドラを切るとドラが来なくなる。これが致命的であり、玄はあまりリーチをしない。する場面は大抵、ドラを全て抱えている時だった。だから槓ドラが増えて槓ドラを切ってしまった時……頭が真っ白になった。
『小学生玄ちゃん可愛いんやけど完全にレイプ目なっとる』
(何というか、オーラが抜けるとここまで弱弱しくなるんやなあ。しかもこれ、玄ちゃんにドラ一切入らへんということは他家にドラが入りやすいということで……超がつくマイナス能力やで)
今までオカルト頼りの打ち方だっただけに、崩れるのも早い。本当に全国大会の決勝卓にまで勝ち上がってきたのかと疑わしくなるような闘牌で、玄は他家に振り込み続けた。オカルト喪失時点で既に最下位であり、引けなくなった中でドラに頼らず火力を出そうとするとどうしても無理な手が増える。見事に悪循環に嵌り、そんな玄を相手に怜はどこまでも冷酷に狙い撃つ。
(もろいでー。原作でもこれ一日中打ち続けてようやく戻ったんやろ?この半荘中に復活は無理やろうな)
『当たり前やけどドラが来ないってかなり辛いやろうな。赤ドラが来なくなるのもわりと致命傷やし。……普段はこれ、他家に押し付けとるから超強いんやけど』
(あー、玄ちゃんこれで飛んでしまうけど大丈夫やろか?)
『ロンで飛ばすのはやめたろか。下手したら阿知賀編全部無くなるで』
(いや小学生の大会出てる時点でもう全部ないなっとるやろ)
ラストはツモ上がりで玄の点数を削り切り、5年連続となる優勝を決めた怜。昨年度より全体的なレベルは上がっていたが、それでもすべての対局で圧勝し続けた怜は、優勝後のインタビューでリオデジャネイロ東風フリースタイルに出場することを記者団に告げる。11歳で世界大会に出場するのは異例のことであり、当然ながら大ニュースとなった。
「世界ジュニア選手権の方は参加しないんですか?」
「あー……11歳なったから世界ジュニアの方にも今年から参加は出来るんやけど、リオデジャネイロ東風フリースタイルと時期が被るし世界ジュニアの方は賞金安いんや……」
なおこの時、賞金額の違いで世界ジュニア選手権よりリオデジャネイロ東風フリースタイルを選んだとインタビューで答えてしまったために11歳にしてお金に執着心のある子供だと掲示板などでは話題となる。
……世界ジュニア選手権の個人戦は11歳から19歳までのカテゴリで、優勝賞金は10万ドル。これも高額ではあるが、予選通過で10万ドル貰える年齢制限のない世界大会と比べると流石に格は落ちる。
小学生の全国大会が終わり、その後の中学生の大会ではテスカトリポカやククルカンを身に着けた戒能良子がインターミドルで大暴れし、インターハイでは三尋木咏が高校最後の年に個人戦でチャンピオンとなる。
『原作でプロになった奴、当然だけどインターミドルやインターハイは荒らしていくな』
(まあ中学や高校時代の有名どころがプロでも活躍する感じやし……え、今年のエキシビションマッチってこの面子に加えてスピードスターとして絶賛プロ活躍中のはやりんと闘うん?)
『まあまあの地獄やな。……はやりんオカルト相手に速度で勝負出来てるの頭おかしいよ……』
(凡人詐欺や)
毎年恒例の沖縄旅行で、今年もプロを相手に各年代のチャンピオンが挑む構図となる。今年の報酬は、欧州選手権の観戦チケットとあらかじめ決められた。
「貴賓席のチケットってこれ幾らするんや……」
「わっかんねー。でもこれホテル代も飛行機代も全部出る奴だしちょっと欲しいね。1枚で4人まで行ける奴だし」
「今年の欧州選手権は白築プロとニーマンが出るので出来れば欲しいですね」
「戒能さん昨年もヨーロッパ行って見に行ってなかった?うちに譲りーや」
「ソーリー。これは譲れませんね」
「はやや……これ、そっちが共闘して勝って貰うための報酬なんだけど……」
「そうなん!?」
オークションで出してしまえば数千万円は下らないであろう代物に沸き立つ各年代のチャンピオン達だったが、はやりんこと瑞原はやりが共闘して貰うための餌だとぶっちゃけてしまう。もちろん、共闘されても追いつかれない速度で上がるつもりの瑞原だったが……。
「……3人で勝つだけならうちが他2人に差し込み続けるだけで勝てるんよなあ」
「それだと面白くないでしょう。こういうのは真正面から戦ってこそですよ」
「だってよ。まあここに居る奴ら全員殴り殴られの関係だし共闘なんてごめんだね」
しかし3人は、共闘を拒否して真っ向から1対1対1対1の勝負をすると宣言する。戒能は小学生時代、ひたすら怜に負け続けた被害者であり、三尋木は4年前のエキシビションマッチで焼き鳥だった最中に差し込みによるお情けで上がらせてもらった記憶が残っている。
互いに意識し合うライバル関係。とはいうものの、一応は扱いは親善試合のため、穏やかな会話をしながらの麻雀が始まった。