怜は日本に帰ってから、今まで以上に竜華の膝枕を堪能するようになった。リオデジャネイロ東風フリースタイルから、欧州選手権まで、ほとんど日本に居なかったため竜華も怜に甘えるように膝枕をさせていた。
なお、怜にとってこれは能力強化の一環である。原作において怜は、竜華の膝枕に怜ちゃんパワーを貯め、竜華に未来を視させていた。そのことを把握している怜は、竜華の膝枕に溺れながら、竜華の太ももに怜ちゃんパワーなるものを注入している。なお、未だにその力が発現される予兆はない。
『なんかやり方間違っとるんやろか?』
(まだムッチムチじゃないんやろか?結構ムッチムチやねんけど……)
『高校生と小学生じゃあ結構な差やからな。貯めておける怜ちゃんパワーも少ないんやろ』
(そもそも太ももに貯めておける怜ちゃんパワーってなんや……)
『未来の怜ちゃんに聞いてきて』
今日は怜の部屋で、竜華の太ももをぷにぷにと突いたり、ぺちぺちと叩いたりしながら膝枕に身を任せる怜。そんな怜を見て竜華は「ほんまに膝枕愛好家やなぁ」と呟く。
「……そろそろ試してみるから、気絶したら助けてや」
「うちとしてはそんな無理して欲しくないんやけど!?」
「まあこのまま気絶しても竜華の太ももで窒息死出来るなら本望や」
「せめて仰向けになってやりーや!?」
膝枕をして貰っている状況のまま、怜は本格的に別世界線の映像……原作の閲覧を試す。竜華には遠い未来を視ると言っており……もしかしたら【怜-Toki-】の中に、怜のパワーアップイベントがあるかもしれない。そんな淡い期待も込めて力を使い……竜華と怜が、麻雀の試合をしている光景を視た。
(なんやこれ……竜華と麻雀してるのは分かるんやけど、竜華がめっちゃ怖いで)
『今の竜華の睨み、完全に人殺してるやろ……』
(思いっきり竜華と敵対してるし、本来のうちは竜華相手に何してるんや!?というか役満!?)
『……野上は得意のドラ単騎待ちリーチとか言われてるし、ドラ待ち能力確定やな。それと3人リーチ相手に回し打ちして緑一色の役満……あれ今の竜華より強ない?』
(いや役満連発は大阪府大会でもやってたし、実力低い面々が相手やとああなるんやないの?)
『っと、そろそろ限界や。結局1局分しか視れんかったけど、重要そうなイベント視れたで』
次第に眼前の光景が揺らぎ、ふと気が付くと怜の顔を覗き込む竜華の顔がそこにはあった。先ほどまで怜が見ていた底冷えするような冷たい顔ではなく、心配している顔であり……怜ははっきりと、自身に熱があることを自覚した。
「怜、大丈夫!?すごい汗やで!?」
「いやこれ……竜華の膝枕やなかったらやばかったかも……ちょっとだけ休ませて……」
「あかん、凄い熱やで!?おばさん呼んでくるわ」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ……じゃないわこれ。やばい」
「ときー!?」
仮病と言う気力すらなくなったことから、意識的に原作を視るのはヤバいと結論付け、竜華にも二度とするなと怒られる怜。結局この発熱は三日三晩続き、怜の2学期の欠席日数はとても多いものとなったが……小学生は幾ら休もうが、実は特に問題とならない。義務教育であるため、どれだけ休んでも勝手に進級出来る。
『……冬休みにするべきやったな』
(それはそれで嫌やで。
あともう金輪際意図的に原作を視ようとはせん。……不意に見える時は何で大丈夫なんやろ?)
『最初は大丈夫じゃなかったやろ……感覚的には入ってくるのと持ってくるとの差やけど。再挑戦は、身体がもう少し大きくなってからやな』
(……中学生ぐらいになったら再挑戦しよか)
体調が良くなり、学校に通えるようになる頃にはすでに冬休み直前という時期。その冬休みを前に、他校の麻雀部との交流試合をすることとなる。
「石連寺小学校の麻雀部が有名になって、練習試合とかの申し込みが多く来るのはええんやけど……園城寺さんが世界大会行ったり観戦したり熱出したりで断るの中々大変やったんやで」
「うちがおらんくても練習試合すれば良いじゃないですか部長」
「向こうから申し込んでくる時は大体園城寺さんが希望なんや!」
「あー……竜華も今年の全国個人戦5位やで?」
「……まあ、今週の金曜日に組んだ練習試合は竜華も目当てっぽいし何よりクラブチームに所属する子達や。園城寺さんは練習試合、必ず参加してな?」
怜としては、他の麻雀部の面子がクラブチームの強い子達と戦えるならええなあと参加を約束し、直後に江口が来る可能性が脳裏に浮かぶ。
「……なあ、クラブチームってどこのや?」
「ヴァグラピードや。凶星、江口セーラ。園城寺さんも名前くらい聞いたことあるやろ?」
「あー、名前憶えとけよって言われたわあ。
……まがつぼし?って何や?」
「通り名や」
『何だその物騒な通り名』
(まあうちも超新星やし。何年超新星やっとるねんって話やけど)
『……原作通りなんかなあ。それともうちらに対抗して名付けたんかなあ』
(というかセーラとの練習試合で確定かい。……まあ麻雀での対戦は初めてやし、楽しみにしとこ)
怜が突っ込んで聞くと、対戦相手の情報を言う除ヶ口。……江口から除ヶ口に頼み込んで実現した練習試合であり、練習試合当日。怜は江口と二条泉に会う。