現在怜は小学生の全国大会を5連覇中であり、つい先日世界大会の1つであるリオデジャネイロ東風フリースタイルで金メダルを獲得した時の人である。すぐに話題は欧州選手権での5倍役満事件、ワールドレコードホルダー誕生に流されたが、それでも知名度は抜群にある。
故に普通の麻雀少女と出会えば、基本的にはこうなる。
「サイン、サインをお願いします!お金ならなんぼでも出せます!」
「金は要らんってブラックカード!?」
(二条泉って大金持ちなんか!?)
『金で買ったレギュラーじゃないやろうけど、何というかネタイメージから抜け出せない二条泉が大金持ち……?』
怜の持つイメージとは、全く違う風貌の二条泉。最初は同姓同名を疑った二条から必死にサインをせがまれて対応すると、今度は二条からサインを貰う怜。
(いつかプレミアつくでって、自信家なところは原作通りやな)
『なおシャープシューターさん相手に「は?」「は?」「は?」となる模様。
個人的には顔芸しか憶えてない』
(いやちょっとはええところもあったやろ……あったよな……?)
『同じ卓に松実宥と弘世菫がいるとはいえ準決勝、聴牌すら出来なかったことしか記憶にないで』
(……まあでも将来同じ高校で一緒に戦うことになる可能性の高い人やし、あまり悪く言うのも嫌やで。たとえ原作における千里山女子準決勝敗退の最大の原因だったとしてもや)
練習試合の日に、石連寺小学校の麻雀部を訪れたのは3人。江口セーラと愛宕洋榎と二条泉である。江口セーラと愛宕洋榎は大阪の麻雀女子達にとって有名人だが……竜華は把握していなかった。
「な、なんなんじっと見て」
(セーラが竜華をじっと見とるのは何か感じ取ってるんやろか?)
『前に大会見に来とったし見定めてるんとちゃう?』
「あんた……べっぴんさんやな」
(は?うちの嫁口説いて来たで?)
『オーラ漏れてるぅ!閉めて閉めて!』
「お上手やなあ。でもありがとう」
(そんで竜華は言われ慣れとるな)
『まあ間違いなくべっぴんさんやし。というかセーラってこんなキャラやっけ?』
怜から漏れ出たオーラを、機敏に察知する江口と洋榎と二条。仰け反った泉とは対照的に、ただ冷や汗を流すだけの江口と洋榎の様子を見て、思っていたよりも楽しめそうやと怜は竜華と一緒に卓を囲む。
席決めの際、怜は東を選択して仮東のサイコロを回す。そして、そのまま仮親のサイコロも回すがここまでは怜が本気を出す際の既定路線である。この仮親のサイコロを回す際に深く未来を視るのが最も効率良く……怜は今回、起家を対面の竜華に譲った。起家になって、サイコロの目をどう操っても良い配牌にならなかったのが大きな理由だが、西家になれば西が最初から槓子になる配牌になるのも大きかった。もちろん、配牌自体良い。
『嶺上牌は一萬かいな。チャンタは……面前やと無理やな。鳴いて仕掛けるしかあらへん』
(何もせんかったらセーラが跳満ツモやな。まあさすがに上がらせへんけど)
『あっ……やばっ、今来るか』
(うぐっ、セーラの顔……?)
他の人が打牌している最中に、怜は何十にも分岐した未来を視るが……その最中に、原作をほんの一部だけ視ることとなる。
(……セーラって強い奴と戦って薙ぎ払われるのが好みなんか)
『僕を悩ませる状況、僕を苦しめる相手。もっと欲しいって何か変に原作視たなこれ?
しかしまあ慣れたな。今の一瞬ならほとんど負担ないで』
(入って来た奴やしな。
まあけど、セーラがあの感じなら……本気出してええんやろ?)
槓ドラが中ということを確認した怜は、当然2枚切れで1枚だけの中を抱え……重なるようにツモ順をズラす。上家の江口の九筒でチーし、次順に見事中を引き入れた怜は、西を槓して嶺上開花で上がる。
「ツモ!チャンタ、西、ドラ3、嶺上開花で跳満や。3000・6000」
江口と洋榎は嶺上開花に驚くが、竜華にとっては見慣れた光景であり……怜が開始時から本気であることから、竜華もまた本気を出す。
「クラブチームの人達……飛ばんとってや。うちも本気出すさかいに」
その言葉を最後に、竜華は目を閉じて集中すると、足を組んで無言になる。直後、怜ですら冷や汗が流れるほどの圧力を同卓している3人は感じた。
『流石は小学生。ちょっと見いひん間にめっちゃ超集中状態時の圧力増えたやん。結構意図的に超集中入ったし』
(アホ!?リオデジャネイロ東風フリースタイルで見たブラジル代表とかウルグアイ代表とかそのレベルの圧やで!?)
『まあ中南米のプロ選手というか国家代表は世界ランクだと基本三桁台やし……』
(ブラジル代表は二桁やったやろ。……その国家代表クラスの選手と同じ圧ってところに驚かんといかんのとちゃう?
……4巡目で、数え役満聴牌か。ってどう足掻いてもセーラが振り込むんかいな。防御薄いな)
「ロン。清一色、平和、一盃口、ドラ1、一気通貫。24000」
東2局。江口の親番で竜華は三倍満を聴牌し、江口がそれに放銃。飛び終了となり……1試合目終了後、江口は涙目になった。