石連寺小学校の麻雀部部室で行われる練習試合は2試合目。先ほど怜と戦えなかった二条が怜、竜華、進士の卓に入り、江口と洋榎は、野上と除ヶ口を相手に卓を囲む。怜は初めて同学年を相手に2位となった直後の卓であり、竜華の著しい成長を喜ぶと共に、例の負けず嫌いを発揮してとてつもない圧を放っている。
そんな怜に、怯むことなく打ち続ける竜華。自然とこの二人の殴り合いとなり、巻き込まれる形となった二条と進士はひたすらにツモで削られ続けた。
『……泉はやっぱりそんなに強くないというかフルボッコやないかい』
(うちも竜華も聴牌速度が異様やししゃーないけど、割って入ってくることが出来ひんなら再評価は難しそうやな。……圧だけで涙目やし)
『で、向こうの卓は葉子がセーラと洋榎相手にどこまでやれるかやな』
(部長も江口に何か因縁あるみたいやし楽しそうやな?)
怜の卓はあっという間に二条が飛び、怜が1位を確保。そして怜は、野上のことを気にし始めた。前に原作を少し覗いた時も、得意のドラ単騎待ちと言われていた野上。
……通常、ドラ単騎待ちが得意と言われるほど繰り返すことはよっぽど意識しないと難しいだろう。怜が前に推測していたことは当たっており、江口や洋榎を相手に早い巡目でドラ単騎待ちリーチを行った野上は、その次順でドラを持ってくる。
「ツモ!
リーチ一発ツモ。混一色、一盃口、白、ドラドラ。裏が……乗った!三倍満は6000・12000!」
『セーラが三倍満を上がったと思ったら野上も三倍満ってどうなってんねんこの卓』
(セーラ相手に殴り合えてるってたぶんかなり強くなってると思うで)
『……というかまたドラ単騎待ちやったな』
(もう確定でええんちゃう?
……たぶん本人も意識して打ってるであれ)
ドラを待つ形にすることで聴牌速度が上がり、ドラを持ってくることによって火力も上がる。野上のオカルトはパターンが決まっているものであり、極めて強いものではないが……現段階では、それなりに強力な力である。野上が三倍満を上がり、2位に浮上した直後。除ヶ口が江口から満貫を上がり、野上がトップとなる。
『おー、部長やるやん』
(完全にセーラが部長のこと舐めてただけやけどな。……下手したら差し込みだったんとちゃう?)
『野上の手、そんなに大きくはないのにか?……元々知り合いで、何か因縁あるっぽいし本当に何があったんやろ?』
(たぶん……部長がクラブチームの入団試験の時にセーラと当てられて負けたとかそんなんやろ)
最終的には、僅かなリードを守り切った野上がこの半荘は1位となる。……小学生の団体戦は、強い人が3人いれば勝ち上がれる。怜と竜華。1位になれる選手が2人いる石連寺小学校の麻雀部で、野上はその3人目になろうとしていた。
その後も面子を入れ替えつつ、数回半荘を打った後。愛宕プロが3人の迎えに来て、石連寺小の麻雀部初となる練習試合はお開きとなった。……竜華が怜に勝ったのは最初の1回だけだったが、江口や洋榎よりもはっきり強いと言えるだけの実力を見せつけ……何より、野上がドラ待ち聴牌になるよう意識して打つことで、全国クラス相手に殴り合えることを示した練習試合だった。
(葉子ちゃん強くなったなあ)
『これならあのドラ爆玄ちゃんとの支配力合戦とかにも勝てる……かなあ?いやあれは無理かな?』
(今年、葉子ちゃんが個人戦で吹田こども麻雀大会を勝ち上がれば玄ちゃんとの対決も見れるんやない?)
『そういえば竜華が本来梅田の地区で出場せなあかんかったからひと悶着あったんよな。
まあよくあることやし吹田の家から吹田の小学校へ通ってるから何も問題なかったけど』
(……来年、竜華が梅田の方の地区予選に出るんやったら石連寺小から最大3人の全国大会出場者が出るんか)
野上が江口と洋榎を相手に「また今度、全国大会で勝負しましょう」と啖呵を切ると、竜華に勝てるのかと江口に問われ……竜華が、本来は梅田の地区予選に出るべきだった話が出る。
「江口さんは今日どこから来はったんです?」
「すみよっさんのほうから」
「梅田よりずっと南やないか!?ようここまで来たな!?」
ついでに竜華が江口にどの辺に住んでいるのか聞くと、住吉という返答が来るが住吉大社の方の住吉であり、石連寺小学校からは結構遠い。怜や竜華が住む吹田市から梅田までが大体電車で30分ぐらいであり、その梅田からさらに南へ。電車で30分ぐらいかかる距離であるため、怜を始め石連寺小の面々は驚く。
「あの園城寺怜と打てるって分かったらたとえ北海道へでも行ってたわ」
「北海道は流石に連れて行かれへんからな?」
最後にもう1局だけと強請る江口を愛宕プロは車に放り投げて去る。……この日は竜華が初めて怜に勝った日となり、怜にとっても、実りある練習試合の日だった。それと同時に、江口や洋榎、二条にとっても、影響を与えられた1日となった。