練習試合を経て、冬休みに入ると怜と竜華の元に一人の女性が現れる。
「園城寺怜さん、清水谷竜華さん」
「え?」
「……誰や」
(龍門渕透華やあ)
『ぜってえころたん関係だ。むしろよく夏休みから今まで接触して来なかったな』
「龍門渕透華と言います。あなた達を招待しに来ましたわ」
全国大会で、竜華が勝った天江衣。その従妹であり、大金持ちの龍門渕透華。原作においては特定条件下で凄まじい力を発揮しているシーンがあり、素でもインターミドルチャンピオンの原村和と打ち合う等、間違いなく強い打ち手の一人である。
「すでにあなた達の母親には許可はとりました。今から長野に来てくださらないかしら?」
「ええ!?知らん人の車には乗らんで!?
てか長い車やな!?」
「……天江衣の相手か?」
「ええ、そうですが……園城寺さんは接点ありましたか?」
「怜は時々理由とか話さなくても色々と察するんやで。
というか衣ちゃんの知り合いなん?」
「衣とは従妹ですわ。
園城寺さんはお金が好きとのことでしたので……これを」
リムジンで迎えに来た龍門渕は、母親2人に許可を取ったから長野まで来てくれと言うが、傍から見れば誘拐現場であり……突っ込まずにはいられない竜華。そしてあまりにも急な話に、戸惑う怜の前に積みあがる札束の数々。
『金で買える女だと思われてるやん』
(怜ちゃんそんなに安い女じゃないでー。
……10本も積まれたら流石に行くわ。というかこんなに要らん)
『竜華も裕福な家庭やろうけど、さすがに格が違うわ』
(……1枚だけ受けとっとこ)
思わず札束を突き返す怜に、良いから受け取ってくださいましと押し付ける龍門渕。結局怜は1枚だけ受け取り、ほくほく顔で財布に入れた後、リムジンに飛び乗った。……賞金は母親が管理しているため、怜が今現在自由に使えるお金というのはそんなに多くない。
リムジンに乗ってしまった怜を見て、しょうがないと乗り込む竜華。……怜は原作から、龍門渕が本当に天江の従妹であることを知っているが、竜華は知らないため、非常に不安だった。
「ほ、ほんまに大丈夫なん?」
「今日の夜、天江衣と打てるっぽいし従妹というのは本当だと思うで」
「あら、打つ時間まで分かるのですか?」
「……今日は満月や。リベンジも兼ねてるやろし、一番強い夜の時間帯に打ちたいやろ」
「……どうして今、月齢を調べましたの?」
スマホで今日の月齢を怜が確認すると、満月だったが、その行為を見て逆に龍門渕が警戒し始めた。リムジンは龍門渕、怜、竜華の3人を乗せて、長野へと向かう。大阪から長野まで、時間はおよそ5時間。龍門渕と出会ったのが昼ご飯を食べた後の公園だったため、長野到着時にはちょうど夕食の時間となっていた。
(それにしても急やな。あと、会いに来るならもうちょい早いと思ってたわ)
『……たぶん、冬至に近い今が一番強いんとちゃう?夜が長いやろ』
(あー。夜に強いから、夜が長くなる冬の方が色々と都合ええのか。
……夏より冬の方が強そうやな)
お屋敷というより、城に近い建物の中に招待された怜と竜華は、ディナーを食べ、広い風呂に入り……屋敷の離れへと向かう。
『離れに閉じ込められてるって文言の記憶はあるんだけどあれ単に別邸やないか。というかあれだけでもメチャクチャ大きいな!?』
(色々とスケールが大きすぎるで。
……夕食のお肉美味しかったんやけどここに住んだら毎日食べられるんやろか)
『飯で釣られるな。しかしまあ……オーラやばない?』
(誇張抜きですこやんレベルやな。何でこんなところに世界トップクラスが落ちてるねん)
扉を開ける前から、放たれる圧は世界トップクラスだと怜は感じた。満月の、しかも夜。間違いなく天江が一番強くなる瞬間であり……その圧は、扉を開ける龍門渕の手が震えるほどだった。
「衣!ご所望の客人を連れてきましたわよ!」
「うむ。大儀であった。
……2人とも、来てくれたのか」
「衣ちゃん久しぶり。また打となって言ったやん。
……こんな形で連れて来られるのは想定外やったけど」
怜は部屋に入るなり、衣に親しげに近づく竜華を見て、おそらく全国大会の1回戦で何等かの会話イベントが発生したんだろうと推測し……改めて衣を見定める。夜なのに不思議な力で輝いて見える衣の姿は、神秘的であり、どこか寂しそうな雰囲気を感じ取った。
早速卓を囲むこととなり、衣、竜華、怜、龍門渕の4人で麻雀を打つ。ルールは25000点持ちの、トビ終了なし。怜はまず配牌の前段階で良い配牌を選んだ後、未来を確認するが……。
『どうやっても、どう鳴いても一向聴地獄ってことはありえへん。未来確認しながらやったらいつでも聴牌は出来る。と思ってたけど……』
(普通の未来視やと改変した時に捻じ曲がるってことは日本代表クラスの力あるやないか。でもまあそれなら……)
『ころたんの改変込みで未来視すれば、正解が分かる。絶対に聴牌出来ないタイプじゃないからなこれ。椋プロと同タイプの支配や』
(椋プロのあれは親番だけだから許される支配力やったのに、ころたん親番以外も支配する上に火力や海底撈月まであるやん)
「リーチ!」
衣がラスト1巡でリーチをかけ、普通であれば鳴けないために海底撈月で上がられるのだが……怜は暗槓を行い、王牌から持ってきた牌をツモ切る。それを竜華がポンすることで、更にツモ順をズラす。ラスト1巡、衣がリーチをかけた後に仕掛けることが出来れば、衣がそれに対処することは出来ない。
「ツモ!
ツモ海底撈月ドラ3で満貫。2000・4000や」
そして海底牌をあらかじめ未来視によって確認していた怜は、海底で上がる。明らかに衣を意識した打ち方であり……衣は点棒を受け取る怜を見て、明らかにギアを一段階上げた。