衣からのあまりの圧に、意識が飛びそうになる龍門渕は同卓者2人が冷や汗を流しながらも案外余裕そうなことに驚く。
「……あなた達、平気ですの?」
「本気の怜って大体こんな感じやしなあ。練習試合の時とか大変やったで?」
「うち、そんなに圧だしてへんやろ。
あとこの程度なら小鍛治プロや白築プロで慣れたわ」
「……世界は、広いですわね」
衣が本気を出しているのにも関わらず、あっさりと聴牌する怜。その手牌が大きいことを察知し衣は、2人の会話が本当だということを察する。
「そうか……居るのか。世界には衣の知らない妖異幻怪の気形が」
「むしろそういう存在だらけやで?各国の代表とかは、大体そんな感じや。中にはただの強い人とかもおるけどな。リーチ」
「……ポン!」
東2局は怜がリーチをかけ、このままでは一発でツモられると感じた衣は鳴いてズラすが、そのために海底ルートから外れる。互いに上がれなくなり、流局となった。
「テンパイ」
「テンパイや」
「……ノーテンですわ」
「テンパイ」
そして衣は、最後に手牌を開いた竜華が聴牌していたことに驚く。調子は絶好調であり、普通の打ち手であれば間違いなく一向聴で止まる状態。それを脱して聴牌しており、そのことを衣に気付かせなかった。
一本場となり、衣の親番は継続するが……今度は竜華が鳴いてチャンタのみを龍門渕から上がる。1000点の1本場は1300点だが、衣の親番を流したことは大きい。
(まあうちのサポートありやけどな)
『衣が親番だと本当に上がられへんからな。……竜華の配牌、本来ならタンヤオに向かうべき配牌やったんやろうけど逆方向に突っ走ったからオカルトへの対応というものを分かっとるわ』
試合はその後、衣と怜が跳満を上がって南1局。竜華が超集中モードに入る。
清水谷竜華 17300点
天江衣 33000点
園城寺怜 40000点
龍門渕透華 9700点
『親の倍満をこの衣の支配下で上がるんかい』
(止め……止めんでええか。竜華に上がらせた方が衣の支配力弱まって動きやすくなりそうやしな)
『……火力高い面子揃ってるし、トビなしにしといて良かったなほんと』
(龍門渕さん冷えるやろこれ……冷えてほしいな)
清一色ドラ2の倍満を竜華が上がる未来を視た怜は、特に細工せずに竜華にそのまま上がらせる。結果、一時的に竜華がトップに立ち……3位に落ちた衣は動揺する。
(やっぱ調子には波があるな。支配力がちょっと弱まってるで)
『まあ支配系の能力持ってる人がずっと支配し続けるのって結構しんどいらしいし、衣もここまで全力で力出してたらバテるやろ』
「対々和のみ。40符2翻の1本場は800・1400や」
次の1本場では竜華がまた高い手を聴牌するが、それを視た怜は鳴いてツモ順を飛ばして対々和で上がる。これで怜が再度逆転し、1位に。
南2局は衣の親番であり、支配力を強めるものの……すでに東場のような勢いはなく、竜華と龍門渕は一向聴地獄に陥るが、怜は鳴いて最速のゴミ手を上がり、衣の親番を流す。
(衣の親番流すには鳴いてのゴミ手しかないな)
『そもそも鳴けるように牌を残すのが大変やけど……さっき竜華が上がったのもゴミ手やしな。っと、これは上がれそうやで』
(リーチかけたら衣にズラされるからダマで行くしかないんやけど……40符3翻は2600オールやから龍門渕さんがちょうど0点やな)
南3局は怜の親番で怜が上がり、1本場。点数は、龍門渕が0点となった。その状態で衣が海底で跳満を上がったため、龍門渕の点数はマイナスに。
清水谷竜華 27900点
天江衣 35400点
園城寺怜 39800点
龍門渕透華 -3100点
(オーラスで、持ち点がマイナスになった龍門渕さんが親やけど……やっぱり冷えたか)
『連荘さえさせなければ1位なんやけど……役満上がられたらここからでも逆転されるで』
……ここで怜は、龍門渕の様子が変わったことに気付く。怜が気付いた直後、衣も気付いたが、竜華は超集中モードが切れた上、まだ配牌すら終わっていないために気付かない。
(……ああ、これヤバいやん。どんなルートでも上がられへん上に鳴かれへん)
『衣の支配に上乗せするんじゃねえ。
……全員上がれないどころか聴牌すら出来ひんやろこれ』
やがて巡目が進むと、龍門渕を除く全員が異様な雰囲気を感じ取る。最後まで聴牌すら出来ず、3人がノーテンとなる中、龍門渕は一人聴牌していた。
『この雰囲気の中で他家を飛ばしたダヴァン最強説』
(これたぶん衣の支配を利用して上乗せしとるんやろ。魔物×魔物はやめえや)
これをさらに3回繰り返すと、龍門渕と3人の点差は16000点縮まる。その後、龍門渕は4本場で跳満をツモ上がり……5本場へ向かおうとして、卓に突っ伏し気絶した。
清水谷竜華 17500点
天江衣 25000点
園城寺怜 29400点
龍門渕透華 28100点
『治水こっわ。衣を原点にまで抑え込むって異常やで』
(全員3万点以下で龍門渕さんの親が流れてたら西入の流れやったけど……これもうしばらく起きひんやろ)
怜と竜華がゆすったり叩いたりしても死んだように眠り続ける龍門渕の姿を見て、3人とも続行不可能と判断し、龍門渕が上がり止めをした扱いで決着。すぐにメイド部隊が龍門渕を担ぎ上げてベッドの上に運ぶ。
「大丈夫かな……」
「大丈夫やろ。麻雀で死んだ奴は……あんまりおらへん!」
「そこはいないって断言しいな。
……最後は凄まじかったけど、楽しかったわ」
「せやな。次に会った時はこっちが上がったるわ」
「お前たちは……楽しめたのか……?」
「麻雀は楽しむための遊びやで。
……1人減ったけど、三麻やるか?竜華は三麻の方が強いで」
「もう夜中やで!?
……1局ぐらいやったらかまへんけど」
龍門渕が抜けて3人となり、衣は2人に対して楽しめたのか聞くと、竜華は純粋に楽しめたと言い放ち、怜は原作にこんなシーンあったなとか思いつつ楽しめたと回答する。その後、3人は三麻を始め……夜が更けるまで、打ち続けた。