全国小学生麻雀大会で小学1年生の身でありながら優勝してしまったから、これから大変なことになるんじゃないかと思った怜だが、特にそんなことはなく、優勝を決めて記者に囲まれた際に熱を出してぶっ倒れるという芸当を見せたためか、記者から付き纏われたりすることはなかった。
『決勝でトリプルとはいえ、毎手番でやり続けたのは流石にしんどかったか』
(戒能さん強くて改変もしまくったしな。そんで、全国大会優勝者は沖縄旅行や!)
『正確にはエキシビションマッチだけど保護者含めて沖縄までの旅費とか全部出るのは凄い。流石は麻雀の世界人口が1億を超えた世界……』
その後、怜は小・中・高のチャンピオンで対局するエキシビションマッチに招待される。5年ほど前から毎年恒例の行事となり、各年代のチャンピオンが、プロに挑むという名目の対局で各方面から注目を集める対局である。
『中学2年生で全中王者の三尋木咏、か。流石にトッププロなる人は強そうやな』
(地味に赤土晴絵っちゅう人もインターミドルベスト4に入っとるから原作キャラって凄いんやな)
『あ……阿知賀のレジェンドが今中3ってことは来年にすこやんに壊されるんだ』
(……その未来改変は、してええやつなんかな?いや今は放置するしかないんやけど)
全中王者として、咲本編ではトッププロの解説役として登場していた三尋木咏が招待され、怜は直接話をしたが身長が極めて低いため、同年代と話している感覚に陥った。そしてインターハイの王者として、このエキシビションマッチの主催でもある沖縄県代表の小禄心とも話をする。
「君が怜ちゃん?ふ~ん……?」
『衣っぽいけど威圧自体はあまり感じないかな』
(なんかめっちゃ見透かされてる感じがするんやけど……)
『小学生の時も全国大会を2連覇しているらしいし相当強い感じやな』
(うちは6連覇するからうちの方が上やな!)
そして今回呼ばれたプロ枠は、白築慕だった。シノハユの主人公であり、現時点で日本代表の選手である。だが怜にその知識はなく、あるのは日本代表のプロ選手という知識だけ。それでも牌譜データから、化け物であることを感じ取っていた。
『高2で日本代表ってたぶんヤバイな』
(牌譜データ見たけどほとんど一索で上がってるのヤバすぎやろ。あと南3局と南4局で異常に強いからラス親はさせたくないな)
『白築プロにラス親を引かせないようにするには……西家やな。それで白築プロが起家になる』
(西家は……これやな)
席決めの際から能力を使用し、西家を選ぶ怜。対面に座る白築は、怜にとってとても大きく見えた。怜から見て上家には三尋木が、下家には小禄が座る。
『たぶんインターハイチャンプの小禄さんも化け物だし、初っ端から飛ばすで』
(これうちらがここにいること自体おかしいんやろな。本来なら、戒能さん辺りが座ってたんやろか?)
7巡目に三尋木がツモる未来を視た怜は、開始早々に中張牌を切って小禄に鳴かせ、ツモ順を飛ばす。それにより三尋木のツモる牌を抱えながら、打ち回した怜は、聴牌となり8巡目に再度オクタプルを発動。自身が12巡目でツモる未来と、11巡目でリーチをかけた場合の二通りの未来を確認し、リーチをかけても邪魔されないことを確認して11巡目にツモ切りリーチを行う。
……当然のようにツモ切りリーチからの一発ツモをした怜を見て、卓を囲んでいた他3人は怜が只者ではないことを把握する。
「リーチ一発ツモ南ドラ1!2000・4000です」
「……裏見てないけど、良いの?」
「ああいや、乗ってへんので別に、ほら」
『未来視で何度も見ちゃうと確認するの忘れるのはしゃーない』
(いやでも気を付けへんとイカサマしてると思われるで。……未来視てる方がイカサマやんな?)
『そこは能力だから……』
手牌を開き、点数申告をする怜に対して白築は裏ドラを見なくても良いのかと尋ね、怜は乗ってないことを宣言してから裏ドラをめくる。確かに、裏ドラは乗っていなかった。
その後も、怜は上がり続ける。が、流石に未来が視えていてもどうしようもないこともある。
(あかん……風牌を送り込む能力とか強すぎるやろこれ……)
『しかもこれメインじゃないっぽいんだよなあ……風操ってるからか風牌を集めることも出来るっぽいし一索はほぼ毎回暗刻か上がり牌だし能力が多様過ぎる』
(……どう足掻いても4巡後にはまたホンイツ対々和ドラ3で上がられるしこれでまくられるわ)
『流石に16歳で日本代表なる奴は違うわ。っと、三尋木さんに六筒鳴かせて八索で差し込めるな。こっちに3900の方がマシや』
(……しゃーない差し込むか。どちらにしてもまくられるけど点差少ない方がええやろ。三尋木さん焼き鳥で凹んでるしな)
高い手で上がられるより、低い手に差し込む。怜の立ち回りは、非常に上手いものだった。しかしオーラスを迎えて、白築がトップとなり怜は僅差の2位。安い手でも上がれればトップは狙えるが……。
(なんか羽生えてない!?天使!?)
『……魔王じゃなくて天使かあ。しかも飛んでる幻覚すら見えるんだけど何かヤバイ攻撃受けてる気がする』
(若干眩暈もして来たし、能力使い過ぎたな。……でもこの対局、うちの嶺上開花で勝ちや!)
「リーチ!」
聴牌し、リーチをかけた怜は再度未来を確認する。この後、リーチをかけられたことですぐに下家の小禄がチーをし、ツモ順をずらすがそれが怜の狙いである。これで次順のツモは三筒で確定し、その三筒を槓することで嶺上開花となる。はずだった。
(……えっ)
『嶺上牌が二索じゃなくて一索……不味いけどもうリーチはしちゃったから……』
「ロン!南対々和ドラ3。12000です」
(は、跳満を振り込んだの初めてちゃうか……?)
『一索を送り込んだ……?それとも、幻覚を見せられてた……?どっちだ……?』
その嶺上牌が二索ではなく一索と未来視から外れ、怜はツモ切りをせざるを得ない状況となり、その一索で怜は討ち取られる。怜にとって、初めての敗北となった。