石連寺小が全国大会出場を決め、無事に終わった団体戦とは別に、個人戦は先に竜華が梅田地区の地区大会で優勝し、全国行きを決めた。よってこれから行われる吹田こども麻雀大会に出場する石連寺小の麻雀部部員は野上葉子、倉智多恵、進士あゆみの3人である。
「予選は全員勝ち上がって欲しいけど……お、多恵がモニター出とる!」
「初戦でモニター出るのはラッキーやな。知恵ちゃんが固まってるってことは、繋がったんやな……うちらって相当注目されとる?」
「団体戦は全国大会の優勝候補やし、既にうちと竜華で2人は確定で全国出るから3人目が出るか注目されとるんやろ」
竜華と怜は、知恵と一緒に観客席から石連寺小の面子を応援する。今年、注目を集めたのは石連寺小の先鋒を務め、全試合で1位を取った葉子と昨年度に団体戦で全国大会に出場経験のある多恵だった。
進士は最下位を回避し、時には1位もとったが上位16人には残れず、予選敗退となる。一方で葉子と多恵はそれぞれ予選1位、予選3位で決勝トーナメントに進出した。
(葉子は相変わらずのドラ単騎待ちリーチやな)
『でもあれが一番上がれるし……うわツモった』
「やっぱ葉子は火力高いなぁ」
「ドラ単騎待ちリーチの時点でリーチドラドラ確定やしな。
……全国で当たったら強敵や」
「そして強気に多恵が高い手作っとるけど……間に合わへんかったな」
「發が暗刻になるまでは良かったんやけどな……」
吹田こども麻雀大会の決勝卓。まずは葉子が得意のドラ単騎待ちから満貫をツモ上がりすると、東2局では親の跳満をツモりあっという間に独走状態に入る。自身の持つオカルトについて、意識して打つようになるだけでも小学生の中では上位に入る。
しかしながら、配牌が悪くなると途端に動きが重くなるのも葉子の特徴である。ドラ傍を切れず、まとまりのない中でドラ待ちになるように手牌を作ろうとするとどうしても無理が出る場面も出てくる。途中でドラを持って来てしまうことも多く、上手くいかないことも多い。
(ドラを含む多面張になるとリーチしないの勿体なくない?)
『いやあれドラだけで待つのが重要っぽいから多面張でリーチかけたら振り込みマシーンやで。
……多恵も聴牌早くなったし、この場面で多面張のリーチは強い。四筒、七筒、中の三面張は待ちが全山かいな。いや、中が1枚切れやな』
(……1枚切れやから、葉子から出るな。多恵もまだ巻き返せるで)
そんな中で、1枚切れの中を安易に捨ててしまった葉子から多恵が満貫を上がる。その後もこの2人が上がり続け、オーラスの時点で他2人がトビ寸前となる。
葉子と多恵は僅かに葉子の方が得点が上だが、どちらかが上がれば勝ちという状況にまで多恵は持ち直しており……逆転手をあっという間に聴牌。
勝負が決まるかと思われたが、多恵はその後にドラを引き……抱えて打ち回したが、今度は聴牌できずに流局。結局葉子がドラ待ちで聴牌したのだが、この聴牌は流局寸前に聴牌できたものである。
『……ドラ待ちとは言え、さすがに既にドラ3枚が出ていて多恵が抱えたらツモ上がりはないな』
(ドラは5枚もないしな。
……あれ、葉子はドラを送り込んだやろ?モニター画面が聴牌した多恵に注目している場面で、即打牌して手配を伏せた。あれで多恵は葉子が聴牌したのか分からんかったんやろうけど、観客席視点わりと迷惑やったな)
『まあでも倉智姉妹の裏を突こうとしたらあれしかなかったし……そもそもモニターから情報筒抜けとかそりゃ分かってたら対策するわ』
「葉子ちゃん、多恵ちゃんの対策しとったな」
「理牌してなかったのも嫌がらせやと思うで。あれで多恵もやり辛かったやろうし」
「……負けちゃった」
小学生の地区予選のモニター画面は、あくまで中継のような形で、インターハイのように理牌された後の表示等はない。故に理牌しない、モニター画面に表示される前に即打牌の2連続コンボで多恵は葉子が聴牌したか否かが分からず……ドラを抱え込んでしまった。
親もノーテンだったため、これで終局となり、1位は葉子が獲得。オーラスのみ理牌せず、1巡だけ素早く打牌し手牌を伏せたのは当然多恵対策であり……これだけで察しの良い人間は、倉智姉妹がどういう風に打っているのか何となく理解出来る。
(何にせよ、これで石連寺小から全国大会個人戦に3人出場やな)
『同県は1回戦、2回戦でなるべく当たらないようにするらしいし、当たるのは準々決勝からやな。
……小学生最後の大会やし、絶対全部1位で終わらせたるで』
(……他小学生にとっては、屈辱でしかないから必死に防ぎに来るやろうな。長野は相変わらずころたんが代表らしいし、何人か原作キャラも出て来たみたいや)
『有名なのは神戸のふなQとか?あとヤバいのは獅子原爽やな』
(名前見た瞬間「うわでた」って言ってもーたな。有珠山の大将)
怜にとって今年が小学生最後となる大会。原作キャラのチェックは入念に行っており……有珠山の大将の名前を見た時、間違いなくインターハイで有珠山は原作のように出場しないことを察した。