小学生の団体戦の決勝卓。その大将戦は、怜のダブルリーチから始まった。
(配牌時に聴牌やったから地和期待したけどあかんかったな)
『だけどダブリー一発は他家視点でクソゲーやで。
……あらたそって結構めんどい能力やんな。デフォルトで筒子が多く集まるっぽいし』
(そんでいて筒子切っても特に問題ないから制約とかあらへんな。
でも未来改変出来る奴居らんし、そうそう負けへんで)
『ダブリー一発ツモ北ドラ1で跳満は酷い』
配牌時から聴牌だったため、ツモ切りリーチをして他家を威圧する怜。席決めの際にどのルートが一番配牌が良いか探った段階で配牌聴牌が視えたため、怜はそのルートを辿り、特に邪魔されることなく跳満をツモ上がりする。
(さて次は……上がられへんな。
って灼ちゃんが上がるやん。七筒待ちってことは……7、10のスネークアイか!?)
『原作知識で何が起こるか分かっても上がりまでが早すぎて対策が出来んわ。ディアベルスターは規制しろ』
しかしながら、配牌を操作して未来を視ながら打っても上がれないということは幾らでもある。東2局では灼が七筒待ちでリーチをかけ、一発でツモる。リーチ、一発、ツモ、チャンタ、東、ドラ1で跳満である。
(リーチ後に鳴かれへんのはしゃーないけどこれリーチ前に鳴いててもダメやったやんな?)
『ダメやったな。結局聴牌してリーチまで行ってたしそっちだと倍満や。
まあそもそも早い巡目やったし、分岐出来るところは少なかったからしゃーない』
(……全力、出す?)
『奥の手は個人戦まで取っておきたいし……そもそも、通常の未来視でも十分圧倒出来るで』
一時的にリードを許すことになった怜は、奥の手を使うか一瞬迷った後、いつも通りに打ち始める。舐めプ云々ではなく、そもそもいつも通りに打つ怜を止められる小学生は極めて少ない。
灼も最大限怜の警戒はしていたが、リーチ後に鳴いてずらしてもツモ上がりしてくる怜を見て勝てないと痛感する。
(まあ鳴いてズラしてくるところまで込みで未来視とるしな)
『むしろ鳴かなかったらツモ上がり出来なかったという。……あーいや、鳴かれなくても6巡後に上家から出てたわ』
(灼ちゃん、オカルトは普通に強いというか牌が偏る時点で上位なんやけど……)
『まだ普通に麻雀打ってる段階だし、インターハイの時のように筒子以外の待ちにしてみるとかそういう工夫があまりないのはちゃんと小学生しとるな』
東4局。怜が親番になると連荘を始める。灼が上がりそうな時は鳴いて速攻で潰し、逆に他家の聴牌が遅い時は火力を求めて重ねる牌を選んでいく。……この大将戦で、怜に追いすがれる選手はいなかった。
「リーチ一発ツモ。ダブ東一盃口……裏3。8400オール」
4本場で倍満を上がり、灼以外の2人を飛ばした怜は当然1位で試合を終え、石連寺小学校の優勝を決める。控え室に戻った怜は、優勝を決めたことで感極まった竜華に抱きつかれてそのまま倒れた。
「優勝やで怜ー!」
(おぶう)
『勢い強いってうわあ』
「……怜さんに竜華の体重を支えられるわけないでしょうに」
「……大丈夫かあれ?思いっきり後ろに倒れたけど」
大会MVPには竜華が選ばれ、怜と竜華と葉子は大会ベスト5メンバーに選ばれた。決勝戦で葉子と竜華はポジションを入れ替わったが、元々のポジションでベスト5が選ばれたため、先鋒葉子、中堅竜華、大将怜となる。
(次鋒と副将は吉野山小から選ばれたな)
『まあ宥姉もあこちゃーも強かったしうちの次鋒副将は吉野山小の次鋒副将より累計獲得点数も直接対決も下やからしゃーないな』
(……で、問題はこれからやな)
『阿知賀のレジェンドはインカレとかで大活躍中やし、間違いなく大学卒業後にプロ行くやろ。
となると、阿知賀女子学院で教師やるルートがあらへん。……阿知賀編完全消滅やな』
「ごめん、ちょっと良いかな?」
「ええですけど……あっち励ますとかしないんです?」
「しずたちは強い子達だから大丈夫!
……君、未来が視えるって本当?」
「そんなことあらへんでー」
表彰式終了後、怜は阿知賀のレジェンドこと赤土晴絵と少しだけ会話し、そこで怜は松実宥の進路について探りを入れる。……赤土がまともな指導者であれば、麻雀部のない中学へ行かせるよりも麻雀に強い中学へ行かせるかもしれないと考えたからだ。
すると赤土は、怜の質問に簡単に答える。
「宥は今のところ大阪の桜花女子中学に進む予定だよ」
(明かしてええんか阿知賀のレジェンド!?)
『あー、素直に大阪の強い中学校かあ。お嬢様学校やけど学費はまあ、特待生やろし大丈夫か』
(……大阪の中学校へ進学するっていうことは地区予選でアレが出てくるんか)
『下手すりゃ玄ちゃんもこっち来るってことは大阪が魔境になるんやな』
そして宥が大阪の中学校へ進学予定と聞き、府大会から松実姉妹と当たる可能性があるのかあと思考を停止させた。