親で牌の書き換えを行えば、1回目であればほぼ確定で天和を狙える。2回目の3牌書き換えでも、配牌が良ければ天和は可能だ。圧倒的最下位から三倍満と天和を上がり、あっという間にトップ通過を果たした怜は試合終了後、熱気に包まれた観客席を見てドン引いた。
『わかっちゃいたけど、高い手上がったら盛り上がるな。
というか2回目でも天和出来てもうたで』
(配牌が良かったのもあるけど、強すぎひんかこれ。
オカルトだけで勝ててしまうわ)
『まあ3割ぐらいはそういう世界だし……オカルトを意図的に成長させ続けて来たからなあ』
(もうこの後の対局やと使えへんけどな。
……3回目は1牌書き換えるのもめっちゃしんどいし)
2位は狙い通りに獅子原であり、衣と宥はここで敗退となる。怜が視た感じでは、獅子原はもうカムイをほとんど使い切っている。ほとんど使い切っているのだが……決勝戦、パウチカムイを使われる未来を怜は視た。
『もう1つの準決勝をやってる間にオムツ買いに行くで!?』
(ナプキンでええやろ!?というかアレ使うんやな!?)
『使う気なかったら持ってこーへんやろ。
……使われる相手が対策出来るうちらで良かったなこれ』
(いや良くないで……何で自分が絶頂する姿を未来視で視なあかんねん……)
『発汗量がすごかったし明らかに蕩けきってたよなあれ』
明らかに致している顔が垣間見えた怜は、大慌てでナプキン等の準備を行い、対策をしっかりと済ませる。攻撃を防ぐ手段はないため、受け入れる前提の対策だ。……理不尽な攻撃ではあるが、世界大会などではリアルに相手の腕をマヒさせる攻撃もあるため、そういうのもあると受け入れなければならない。
もう片方の準決勝の卓では、竜華と葉子と江口の大阪代表3人に加えて、広島代表の佐々野いちごがいる。原作において、団体戦では愛宕洋榎へ役満を振り込んだ彼女だが、地力は高く、インターハイ個人戦でも県代表になっている実力者である。
『ちゃちゃのんや。何か意外な原作キャラが小学生の間に出て来たで』
(今まで視て来た【怜-Toki-】の原作にも出て来てなかったけど……まあ切り取られたワンシーンが酷すぎただけで強いんかな)
『準決勝まで来ている時点で結構強いやろ。インターハイでも個人戦で広島代表のはずやし……いまセーラに倍満振り込んだけど』
(……これ決勝まで来るのはセーラと竜華やな。今年は大阪面子で決勝戦やで)
しかしながら江口に佐々野は倍満を振り込み、これが決定的なミスとなってもう片方の準決勝はセーラと竜華が勝ちあがる。決勝卓は怜、竜華、セーラ、獅子原という面子となった。
怜としては、楽しみにしていた竜華との初公式試合。ワクワクしながら仮東を選び、席に座った怜は……直後、獅子原からパウチカムイを食らう。長い髪を持つ女性のようなオーラが、怜に纏わりつき、怜を気持ち良くさせる。性的に。
「ふひゃ!?」
(んっおっ!?おおっ、やばっ、ナニコレ!?)
『エロい声を試合前に出さないでくれ。
……というかこれあれだな。肉体じゃなくて精神に働きかける奴か。
対象が怜だけなら自分が身体操作するけど』
(これ、気持ちよすぎて……んんっ!?)
『対局時にいきなり使われてたらチョンボしてたなたぶん』
「怜、大丈夫?めっちゃ体温上がってるけど」
「だ、大丈夫やぅん!?」
竜華に心配される怜は、大丈夫と答えるが明らかに顔が大丈夫ではない。しかし試合が始まると同時に、顔はいつもの真面目な表情に戻ったことに、獅子原は違和感を覚える。
(ゆ、ゆーはぶ)
『あいはぶ。
さあて、獅子原狙うか。散々やってくれたんだから少しはおかえしせんとなあ』
「獅子原……さっきはよくもやってくれたな?」
「……身体はもう大丈夫なのか?」
(強くすんなや!?あぁっ…!)
『もう身体に出えへんから思いっきりイっても大丈夫やで。
……何かめっちゃ股間が冷たいわ』
常人であれば、あっという間に身体を震わせ膝から崩れ落ちてもおかしくないパウチカムイ。実際、獅子原が幼馴染の岩館相手に試した際は30分ほどずっと身体を悶えさせており「こんな状態で麻雀とか出来るわけがない」とまで言わしめた強力なオカルトである。
しかしながら怜は自身の人格を奥に引っ込め、代わりにお兄さんと呼ぶ存在を前面に出すことでパウチカムイの魔の手から逃れる。いや実際には逃れられておらず、精神はひたすらに悶えて嬌声を上げ続けているのだが、それが表に出なくなった。
(あ゛ー……んあっ)
『……精神攻撃だから逃げ場なくイかされ続けるのえげつなさすぎるやろ。
インターハイで使わなかったのは正しいわ』
そして怜は、徹底的に獅子原を狙い撃ちする。未来を確認し、切り出す牌に焦点を合わせれば比較的容易に狙い撃ちは出来る。……実際、無能力状態となった獅子原はそれを回避出来ずに怜に削られ始めた。
その流れを止めるべく、竜華は全ての牌の熱量を見比べ、把握し、暗記していく。足を組み始めた竜華を見て、江口は冷や汗を流し始めた。