「おばさん達とお話してたら随分と面白そうな展開になっているけど、船久保さんは私のことも知ってるの?」
「……野上葉子。ドラ待ち麻雀を得意にしており、ドラ単騎でリーチをした場合は90%以上の確率で1発ツモ。『ドラを待つ者』という渾名まで持っている昨年度の全小7位は同世代だと誰でも知ってるレベルです。というか全小に出ていた小学生のデータは流石に全員分頭に入っていますよ」
「こっわ。データオタクや」
「葉子ちゃんまで詳しく知ってるなら本物やんな」
「……いや、全国大会で優勝した石連寺小の団体戦メンバーなんだから詳しいのは当たり前です」
船久保と怜達は卓を囲むことになったが、船久保と麻雀を打てるのは3人まで。今ここには怜、竜華、セーラ、葉子の4人がいるため、この中から3人を選んでやと怜が言い、船久保は怜と竜華、セーラの3人を指名する。昨年度の全小トップ3だ。
「これ、俺が勝てば藤白のデータをくれるんか?」
「いえ、試合していただけるだけで十分です。同卓すると統計処理されてない生のデータにふれられるんで」
「データ見ても結局は直接打たんと分からんこともあるしなー。
時間あるんやったらあとで葉子とも打ったらええで」
「……私は何を返せば良いんです?」
葉子と泉は別室で応援することになり、船久保との対局が始まる。最初から足を組み超集中モードに入る竜華に、船久保はゾクッと震えた。
『出し惜しみしてたら負けそうな場合、竜華は常に初っ端から全力やな』
(船久保さんの麻雀見る前に船久保さんが飛んでしまいそうや。というか本当に竜華はどんどん圧を増して来とるな)
「ポン!」
『あ、やばい。今の發ポンでセーラが高目大三元聴牌しよった』
(低めでも倍満やし、これずらさなあかん奴やな。げっ、竜華も親リーかい。こっちも一発ツモで倍満や)
『……しゃーない。鳴けへんし船久保さんに差し込むか。四索切りやな』
東1局、セーラが高め大三元を聴牌し、竜華も親でリーチをしたため、怜は船久保に差し込む。……めったに振り込まない怜が満貫を振り込む姿に違和感を覚えた船久保は、後で絶対に録画データを泉から巻き上げようと決意した。
東二局、怜の親番では再度竜華が聴牌し、セーラが竜華に満貫を振り込む。……ここで怜はギアを上げ、東3局のセーラの親番ではセーラと竜華のツモ上がりを阻止しながら一発ツモで跳満を上がった。
清水谷竜華 30000点
園城寺怜 29000点
江口セーラ 11000点
船久保浩子 30000点
「ぶっははははっ、また俺が1人凹むんかい。
まあええ……高い手上がったら全部ちゃらや」
「上がれたら、な」
「……また?」
「あー、千里山中やとこの1年生面子4人で卓囲むことが多いんやけど、結構セーラはラス引いてるで。……あと竜華はそろそろ戻ってきーや。公式戦やないんやから会話せんかい」
セーラが1人凹む形となり、少しばかり落ち込むセーラは、それでも気持ちを切り替えて打牌する。……ここで船久保が5巡でツモ上がりする未来を視た怜は、それをズラしてセーラのサポートをした。
『今のセーラやと、藤白相手にリベンジ出来るかは微妙やからな……もう一皮むけて欲しいところや』
(というか船久保さん化け物相手に戦えるメンタル持ち合わせてるんは結構凄いな。愛宕家で鍛えられたんやろか)
『……一応、愛宕プロはプロの中でも上澄みやからな。人気もあるし』
(っと、セーラが倍満聴牌や。
ほんまこの火力馬鹿は毎回高い手作れるのある意味ヤバいな。はやりんみたいにスタイルがオカルトになってるタイプは最終的な伸びしろが無限大やからえげつないで)
狙い通りセーラが倍満をツモ上がりし、船久保が親被りを受けたことで一時はセーラがトップとなる。南場に入った段階で竜華の集中力が切れたため、普通にお喋りし出すが、今度は怜が本気を出し始める。
(おー、セーラと竜華が息を呑んでるで。うちもかなりの圧をかけられるようになったんやな)
『……で、眼鏡をかけ直してこっちをじっと観察してくる船久保は流石やな。次の親で天和見せたろか』
(あれめっちゃ疲れるからやらん。
そもそも、配牌ガチャを何回も出来る時点で相当強いやろ)
『まあそれだけでもえげつない強さやからな。……とりあえずこの竜華の親は速攻で流そか』
最終的には怜が南場の親番で連荘を続け、船久保が飛んだ時点で終了となった。どう足掻いても自分が上がれないような感覚に陥った船久保は、対局終了後、約束通りにデータをセーラへ渡す。
「ちなみにこれ、江口さんに渡しといてと洋榎さんから言われた奴ですし、勝負しなくても江口さんのものでした。
……すいません!」
「洋榎からの!?」
「船久保さんが集めたやつじゃないんだ?」
「そんなことは一言も言ってませんでした」
藤白への手がかりを手に入れたセーラは、すぐにリベンジに行こうとし……立ち止まる。昨年度から順当に成長しているとはいえ、今のままでリベンジを挑んでも、勝てるとは限らないことにセーラは気が付いていた。