団体戦の府大会が終わった後、翌週には個人戦の区大会が始まる。朝から晩までたくさん試合し、合計収支が高かった順に大阪府大会へ駒を進める。
大阪府大会でも同様に合計収支の高い順に、インターミドルへ12人が出場する。人口によってこの出場枠というのは変わり、例えば長野だとインターミドルの出場枠は3枠となり、島根のような人口が少ない県は1枠となる。
『総合収支やから多少負けても問題ないってのが気楽やんな』
(小学生の地区予選は参加者全員の中から1位を取りに行かないといけないのがわりと辛いで。
……区大会を勝ち上がれるのは、吹田地区やと5人やな)
『大阪府大会が勝ち抜いた100人による決戦って考えたらわりと枠ある感じやな』
(セーラや葉子は、たぶん大丈夫やろ。区大会勝ち抜けは千里山中で独占や)
この世界における麻雀のポジションは、元の世界の野球に比較的よく似ている。小学生や中学生時代、野球でプロを目指す場合はリトルやシニアなどで野球の腕を磨く。それと似た立ち位置なのがクラブチームであり、本来プロを目指す人間はクラブチームで活動を行う。当然、クラブチームに所属している者限定の大会もあり、こちらも盛り上がりを見せる。
……そして高校で、クラブチームに所属している人間は大半が強豪校へ行き、インターハイで活躍する。これはプロへの道が現状プロ雀団によるドラフトがメインであり、大半を占めるからだ。インターハイの結果によって、人生が左右されるケースも多い。一昔前の野球も、甲子園での活躍がプロ入り出来るかどうかに繋がっていた。
そのため、インターミドルの大会には出ないクラブチームの人間はいる。クラブチームの大会の方が全体的にレベルは高く、また日程が被ることも少なくないからだ。特に今回、吹田地区の区大会はクラブチームの関西地区の団体戦の日程と重なっており、セーラ以外にクラブチーム所属の人間は居なかった。
……故に怜、竜華、セーラ、葉子の4人は区大会を無双した。参加人数が多かったこともあって4人がぶつからなかった結果、上位4人は怜達が独占した。最後の1人には、曽根崎がギリギリで滑り込む。よって府大会へ進出する面子は、全員が千里山中学という結果になった。
「朝から晩まで半荘10回やって竜華が+445なのは分かるんやけど、葉子も+408なのおかしない?」
「怜が一番おかしいで?なんや+676って」
「……いやまあ全部1位やったし」
「うちらも全部1位やったんやけど?」
区大会のルールはオカありウマなし、25000点開始の30000点返しで、全て1位を取った怜、竜華、葉子の3人はそれだけで+200分を稼いでいる。怜はそれ以外で+476、47万6000点を稼いでおり、これを1局当たりに換算すると平均で4万7600点稼いでいる。……要するに、全対局で対戦相手を飛ばしている勢いである。
『セーラも十分強いというか団体戦で藤白相手に戦ってからずっと好調なんやけど……』
(なんだかんだ放銃も多いから安定して1位じゃなかったんやな)
『……葉子はほぼ1発でドラツモしてるから葉子は案外放銃率低いんやな』
(竜華は全牌把握しとるからそもそも振り込まへん。
……竜華は今年も全国で決勝卓まで上がって来るやろな)
セーラは1位を逃した対局が2つあり、結果は+325で4位。ここから大きく離れて5位に+186で曽根崎という結果。決して+186という数字は悪くないが、本来であれば区大会を勝ち抜けられる数字ではない。例年ならば、最低でも+200が必要なところで+186でも予選通過できているのは1年生4人が暴れ過ぎた結果であり、この4人との組み合わせがなかった曽根崎は幸運だった。
「まあ区大会は通過点やし次や次。府大会は城坂さんやなっちゃん先輩とかと戦えるで」
「あ、城坂さん区大会負けてたで?
……たぶん、藤白さんの影響やと思う」
大会後、竜華と帰りながら雑談をしている怜は、その中で桜花女子中学のエース城坂が区大会で敗退している事実を知る。藤白にオカルトを壊された影響であり、牌譜を見てみると今までの活躍が嘘のように振り込んでいた。
『……えげつないな!』
(いやまあやってること考えたらうちらの方がえげつないんやけど。
……クラブチーム、行く?)
『今更やろ。それに、クラブチーム限定の大会よりインターミドルのような「全中学生が参加可能!」みたいな大会の方が一般への知名度は稼げるからそっちの方がええで』
(……まあ強すぎて入団拒否とかもあるしな)
大阪府大会に出る主な強者は宥や藤白だが、区大会で実際に一般的な中学生と戦った感触からどう足掻いても上位12位までには入ると確信した怜は、大阪府大会で終始2位に100点差の1位を狙い続け、それを成功させた。
大阪府大会を勝ち抜いたのは怜の他に竜華、葉子、セーラ、藤白、松実宥等々、怜の知っている面子が多く、中には愛宕洋榎の姿もあった。そしてその愛宕洋榎とセーラの関係が少しギクシャクしていることに、怜は一抹の不安を抱いた。