7月に入り、暑い日が続く中、麻雀部の活動中に部長の曽根崎が部員達を集めて発表する。
「普段は夏休みに行う合宿を、今年は夏休み前の3連休で行います!」
例年ならば夏休みに合宿を行い、秋の大会に向けた特訓をする千里山中学校だが、今年はその夏休みがインターミドルで潰れるため、それならばその前に合宿をしてしまおうという魂胆だ。
「去年と同じく学校に泊まるの?」
「いえ、園城寺さんと清水谷さんと……松実館の厚意により、奈良で合宿です!」
「うおおおお!?」
「旅行だあああ!」
合宿の場所は松実姉妹が生まれ育った松実館。比較的場所も近く、団体戦の後、宥が竜華に旅館の誘いをしており、竜華もいつか行きたいという旨を話していた。
昨年までは学校での合宿だったため、他所での合宿ということに先輩部員達は大いに湧いていた。ちなみに松実館の厚意とは言っているがあくまで常識的な団体客への割引範囲であり、この合宿が成立したのは怜と龍門渕の財力のお陰である。
『まあ結構割り引いて貰ったけどな。
……あとほとんど龍門渕さんが負担や』
(うちがやるの、これからバスをチャーターするぐらいやで)
「それにしても、竜華はよく予約取れたな。松実姉妹の活躍で結構人気になっとるらしいで」
「宥ちゃんに個人成績では勝ったし、それで無理言って聞いて貰えた形やな。
あとは龍門渕家の力が凄かったんや……」
「おお……」
部員達の参加費は1人3000円で、2泊3日の麻雀合宿。参加メンバーは千里山の麻雀部員達と、天江衣、龍門渕透華である。宮永照は大阪府大会を勝ち抜いたメンバーと試合が出来ないため不参加。
「ゲストとして長野の全小個人戦代表の天江衣と、その付き添いの龍門渕透華という人が参加するから皆さん仲良くして下さい。あとは……」
「奈良の全小個人戦代表の松実玄って子が松実館でお手伝いしとるし、対局にも交ざるそうやからなるべく多くの人が玄ちゃんと打ってや」
曽根崎の説明に、怜が補足し、合宿への参加希望メンバーを募ると全員が参加を希望する。人数が確定したところで竜華が旅館へと連絡を入れ、怜は透華の方へ連絡を入れる。ちなみに来年と再来年の分も予約を入れているため、少なくとも怜達がいる間、千里山中学校は松実館で合宿を行うこととなる。
『来年はもっと人気になるやろうしな』
(全小よりインターミドルの方が知名度上がりやすいし、玄ちゃん中学は京都の方へ行くみたいやから人気出るやろな)
『……個人的に、玄ちゃんは奈良に残ると思ってたんやけど予想は外れてばかりやな』
(未来視で視れへんことは外れても仕方ないで)
合宿後、再度総当たり戦の結果でレギュラーを決めると曽根崎は発表してこの日のミーティングは解散となる。小学生の団体戦と個人戦があるため、中学生の団体戦や個人戦が始まるタイミングは夏休みに入ってから10日程度の期間が空く。
そして総当たり戦については、1年生の縛りが消え、純粋な実力順で上位5名を決めると怜は付け足す。元々曽根崎も、上級生達もそのつもりであり、まずは合宿までの短い期間で、各々課題点を見つけていく。
『セーラは防御の練習、葉子はオカルト、竜華は超集中モードじゃない時の実力向上って感じやな』
(……うちらはどうする?)
『14牌書き換えで6倍役満』
(無理や。まだ7牌目も安定しとらんし……。
……1回目を4牌までとかに抑えることで、2回目も4牌書き換えたいな)
『それが出来るようになったら大きいんやけど、1回目は2牌書き換えとかでも2回目は3牌以下確定なんよなあ』
1年生達も課題を作り、臨む合宿。当日は朝9時から予定通りバスで移動し、1時間半程度で松実館に到着。これから丸二日はお世話になる部屋に入り、各自麻雀をする準備をしていく。
「千里山中学校麻雀部の皆さま、ようこそ松実館へ。
お昼ご飯の用意が出来ましたが、どうしましょうか?」
「玄ちゃん!?めっちゃかわええやんその恰好!」
「……ドラゴンロードが竜華にも好かれとる」
「あら?怜さん嫉妬ですか?
私、いつもそういう感情を怜さんに抱いているのですが」
「葉子も言うようになったなあ。
……玄ちゃんに勝てそうか?」
「……勝ちたいです」
そろそろ昼ご飯という時間になり、大部屋の入り口には松実玄が着物姿で女将の真似事をし、千里山中学の面子に可愛がられたり玄が旅館の人間に叱られたりするシーンもあったが、昼食後、玄が千里山中学の先輩部員達と卓を囲み始めると、先ほどまで可愛がっていた面子は恐怖を味わうこととなる。
『ドラ槓!からの槓ドラ槓!って無茶苦茶なことを普通にやっとるんやけど』
(タンヤオドラ12を当たり前の顔して上がらないで欲しいわ。
相手から何の邪魔もされんかったら、こうなるんか)
タンヤオドラ10で3倍満、タンヤオドラ12で数え役満を上がる玄は、昨年度よりもオカルト強度が上がっていると怜は感じ……そして、葉子と玄が卓を囲む。残りの面子は、超集中モードを縛った竜華と曽根崎の2人だ。