『誰か、近づいて来る』
(誰や……未来の私か……?)
「かわいそうに、しんどいなぁ。体への負荷が半端ないんや」
「誰や!幽霊か!」
「……まだ早い。必要になる時まで預かっといたるわ」
『すこやんと同じ……!能力奪取系の攻撃や!』
(な!?う、奪われてたまるか!抵抗するで!)
「どっかいけええ!」
「え?うわ、やめい!」
保健室のベッドで横になる怜に、ゆっくりと近づき手を伸ばす影。過去に似たような攻撃を受けており、能力を奪取されると直感した怜は、慌てて枕をぶん投げ、幽霊と断定した存在を追い返す。思わぬ反撃を食らった幽霊は、枕が通過して無散した。
「はあ……はあ……なんやったんやあいつ……!」
『……怜なら過去に干渉する能力とか最終的に持ちそうだから原作の時間軸より更に先の怜とか……?』
(それなら取り上げようとするのが謎やな。まあええ。奪われてへんし)
その後も、未来視を駆使して繰り返し現れる幽霊に対してシャドウボクシングを繰り返していると、帰って来た保健室の先生に見つかり怒られる怜であった。
原作における能力失陥イベントを回避した怜は少し寝ると、熱はあっさりと下がったため竜華と並んで下校する怜。当然ながら、話題ははむむのことを知っている件について。話してもないことを知っている理由を怜は竜華に尋ねられる。
「……うち、未来が視えるねん。やから、竜華が未来でうちに話した内容を知ってるねん」
「未来が視えるって……流石に嘘やろ。証明出来るん?」
「そうやな……今日竜華の家に行ってええか?」
「ええけど、ちょっと待っててな」
(どうやって証明しよか?)
『神経衰弱とか?後は、サイコロの出た目とかで証明出来ない?』
そして怜は、竜華に未来が視えることを話す。未来予知能力の証明。実際に出来るのであれば、案外簡単である。例えば、トランプ52枚を使用しての神経衰弱。
「竜華が先攻でええで。……事実上のラストターンやから慎重にやで」
「スペードの3とハートの3はこれとこれ、クローバーの3とダイヤの3はこれとこれ」
「ほら、言った通りラストターンやったやろ?」
例えば、紙コップの中に入れて転がしたサイコロの目を言い当てる。
「右から順番に6、4、4やな」
「んー、2、4、5、1やな」
「……竜華。右端のサイコロ、ポケットに入れたやろ。ズルはあかんで」
予知能力でもなければ、到底当てることの出来ない確率の暴力。竜華は、嫌でも怜にそういう能力があることを理解させられた。
「……それで、園城寺さんは麻雀でもその力を使って100戦100勝なんか」
「いや、結構負けてるで。白築プロとかすこやんとか」
「それ世界ランキングの1位と2位!?どこで打ったの!?」
「小中高の全国大会優勝者とプロが戦うエキシビションマッチでや。そう言えばあれ、沖縄の民放だけやったか」
未来視があっても、どうしようもないことも話すがそれでもズルい能力であり、実際冷ややかな目で竜華は怜を見つめ始める。が、その次の言葉で竜華も言葉が出なくなる。
「ズルいとは言わせへんで。竜華も凄い目を持っとるやろ」
「……否定はできひん。それも、未来が分かるから分かったん?」
「せやなー。……竜華とは、友達になりたいんやけど……まだ大切なもの作るのが怖いなら友達カッコカリからやな」
怜は、友達になって欲しいと竜華に語りかける。その言葉を受け、竜華は今の気持ちを吐き出した。
「……前に三麻を打った時、あんなに予想を裏切られたんは初めてやった。いろんなことがいつもどこか、想定の範囲内やったから、あの時の麻雀はとても楽しかってん。
……だからまた、麻雀してくれる?」
「もちろんや!」
「じゃあ、これからよろしく。怜ちゃん」
2人は小指同士を結び、友達となる。その後怜は、本来の怜と竜華が小学5年生でのクラス替えで同じクラスになり、『友達ごっこ』を始めるまでの流れを視て、ぶっ倒れた。
「だ、大丈夫なんか!?また熱出てへん!?」
「へーきへーき……なんか最近並行世界の記憶とか頭に入り込むようになってなあ……」
『本格的に不味いから今日は帰って寝ろ』
(ふぁーい)
ダイジェストで並行世界を視たとはいえ、非常に心身へ負荷がかかった怜は母親に迎えに来て貰って自宅に帰る。
「最近はマシになったと思ったのに……もう1回病院行くで」
「へーきへーき。仮病やから」
「39℃の病人は大人しく寝てなさい」
『次はもうこれほど負荷がかからんと思うけど……並行世界とかも視れるならシノハユ視たいな』
(今はそういうの考えたくないわあ。超しんどいでこれ)
なお夕食は焼き肉とご飯を大量に食べ、死んだように眠った怜は翌日。ケロッとした態度で学校行く準備を行い、慌てて母親に止められ医療機関へと連行された。
……そして医者は怜が健康体だと判断し、特に異常なしとして熱が出た時のために解熱剤だけ渡す。未来が視えたり、並行世界が視れる代償だと分かる医者はいなかった。