夏休みに入り、インターミドルの開会式が始まる2日前に怜達千里山中学の面子は東京へ移動する。既に何度も全国大会に出ている面子は流石に慣れており、怜は到着と同時にホテルのベッドに寝転びテレビを付けて全小の個人戦を観戦する。……ちなみに、当然のように怜は竜華の部屋のベッドで寝転んでいる。
全国小学生麻雀大会の団体戦の方は奈良の吉野山小学校が優勝しており、MVPには松実玄が選ばれていた。しかしながら個人戦の方で玄は準決勝、天江衣に敗北し5位という成績に終わる。
『姉妹揃って全小では5位なんやな。……トーナメント戦はやっぱりくじ運もあるなあ』
(ふなきゅーが決勝まで行ってるのはちょっと意外やったわ。まあうちらに挑んで来た辺りメンタルは鍛えられてそうやったけど……)
『そして荒川憩が活躍するの、この時期やったんか。小6で麻雀始めたんかなあ』
(それでいきなり全小で決勝卓座ってるのちょっとおかしいで。
……いや、うちが過去に煽ったせいかもしれんしどこからどこまでが原作通りなんかはもうわからん)
今年の決勝卓の面子は天江衣に荒川憩、船久保浩子と安福莉子と原作キャラが並ぶ。……なお、怜は安福を見てすぐに原作キャラだとは気付かなかった。
『……あ、この子劔谷の大将じゃない?』
(えー、待って。うちも名前引っ張り出せへん……ああ、そうや!阿知賀に負けたところの大将や!
元々兵庫出身やったんやな。ええ麻雀打つやん)
『ああでもこの後衣に放銃して飛ぶな』
(……めっちゃ綺麗に絶望顔しとる)
全小の決勝は、天江衣が安福を飛ばして決着。満月ではないが、それなりに月が満ち足りていて時刻が夜であれば衣に勝てる存在は極めて少ない。
「荒川憩って子、見た感じやと普通の麻雀打ってるけど……衣ちゃんがおるのに普通に打ててるのっておかしいやんな?」
「おかしいし、めっちゃ強いで。
……あれな、たぶん点棒を失ったらその分が保証されてる手牌が入っとるな。
具体的には誰かがツモ上がりするか、自分が放銃した時。手牌に役を呼び込んどる」
『あと衣の支配下で流局が起きたってことは当然のようにオカルト複数持っとるやろな』
(まあ原作インハイ個人2位は伊達じゃないで。
……その個人2位がヒトじゃないという個人1位が怖いわ)
『あれ?でも荒川憩の能力、よく考えたら照との相性めっちゃ良いやん。
照がツモ上がりしたら即座に上がり返せるし』
(確か、照の連続和了を止められる存在とか何とか言われてたな)
『……じゃあ能力強度は荒川憩>宮永照なんやろか?
いや、その時々によるんかな』
荒川憩の能力を推測しながら、試合の振り返りをするテレビを見てくつろぐ怜と竜華。全国大会に何度も出るようになると、流石に初回の時のような緊張はしなくなる。セーラや葉子も似たような感じであり、そこまで緊張はしていない。
故に、緊張しているのは曽根崎と室戸の2人だった。2年前に一度全国大会を経験している除ヶ口もそれなりに緊張はしているが、補員の2番手に出番が来ることはないという想像と、自分以上に緊張している先輩2人を見て逆に落ち着いた。
「怜ー!そろそろミーティングやでー」
「おー、そろそろ出るわ。
竜華ー、おぶってー」
「はいはい。引っ張ってあげるから早く立ちや。
……いつも思うけど、怜って軽ない?」
「竜華と違って重いもん2つがないからや」
セーラに呼ばれ、竜華と怜は団体戦用に用意された大部屋へと移動する。……インターミドルやインターハイでは全国大会出場者に宿泊費とその宿泊費で泊まれるホテルが用意されるが、団体戦の場合、部屋は大抵大部屋で用意されている。当然、団体戦メンバーがフルで泊まれるよう、5人+2人で7人が泊まれる大部屋だ。
……なお、千里山中学の面子で個人戦でも全国大会に出場する者は別途個室で宿泊しているため、この大部屋に泊まるのは曽根崎と室戸と除ヶ口の3人のみである。
大部屋に集まった千里山中学の面子は、曽根崎が日程の説明をした後に誰がくじを引きに行くかの話を始めた。
「いやそこは部長でええですやん」
「無理。さっきから手の震えが止まらないの」
「……緊張してます?」
「ええ、とても。
……緊張してない方がおかしいのよ!」
そして曽根崎は「全国にはもう慣れたって顔して全然緊張していないあんた達が妬ましい」と言い始め、なんやかんやですったもんだが起こった挙句、くじを引くのは怜の役目となった。……インターミドルはインターハイの時と同じようにシード校が存在するが、インターミドル出場校48校中、1回戦を戦うのは32校のみである。
要するにシードが16校分あり、シード校が4校存在するためそのうちの4つは埋まるが、残り12校分はくじ運によって決まる。当然、シードの方が戦う回数も少なくて済む上、事故を防げるのでシードの方が圧倒的に有利だ。
……怜がくじを引くことになった最大の理由は、くじ引きで100%狙ったくじを引けるからだった。シードを狙って引けるということであり、くじ引き当日。怜はきっちり特定のシードを狙って引いた。