怜の予想通り、反対側の山からは大生院女子中学が勝ち上がってきそうなことを把握した翌日。今度は怜達の山で2回戦が4試合行われる。その第3試合で、怜達千里山中学と生立ヶ里中学が当たる。両校共に1年生が先鋒であり、注目を集めた。
「白水さん、全小でもどっかで名前見た記憶あるんやけど準決勝や決勝まで勝ち上がってないからたぶん1回戦か2回戦で負けてると思うで」
「あ、白水さんならうちが去年か一昨年の2回戦で当たったわ。
確かに麻雀上手いなとは思ったし、直撃は取れへんかったんやけど……あくまで上手いというだけで、強いとは思わへんかったな」
「竜華が強いって思うレベル、ころたんや玄ちゃんレベルやん」
対局室に向かう葉子を見送り、控え室のモニターを竜華に膝枕されながら眺める怜。いつもの光景なのだが、今日は怜の様子が少し違った。
「なあ竜華……ちょっと試してみてええか?」
「試合前に変なこと試すのはやめとこ?また気絶したらどうするん?」
「いや、竜華に負担はかけへんしこれはうちもほとんど負担がないはずなんや。
竜華の太ももに溜めた怜ちゃんパワーでな、竜華に未来見せるだけやから」
「……なんか今付き合い始めてから一番凄いこと言ってるで怜!?」
そして怜は未来視の共有をしようとし……僅かに竜華にも、モニターに映る葉子のツモる牌の軌跡が視えた。
「あかん、上がりまでの道筋も見せるって難しいなこれ!?」
「いや今葉子の次のツモ牌視えたで!?めっちゃ凄いやん!?」
『……今のでもあまり怜ちゃんパワー減ってないよな?』
(ちょっとだけ使っただけやな。
……上がりまでの道筋を視ようとすると、1/3ぐらいは使わなあかんやろうし原作通り3回ぐらいが限界やな)
「怜って力を分け与えることも出来んのか!?
なあ、俺の膝枕も使ってええで」
「いやセーラの膝枕はちょっとゴツい」
「ゴツい!?」
本来であれば、原作の怜は高校2年生の秋から3年生のインターハイまで、僅か1年弱という期間で力の譲渡が可能になっていたのにも関わらず、ここまで時間がかかったのは単純に竜華の太ももの成長が間に合っていないからだった。
……中学1年生になり、小学生時代よりも一回り大きくなったために太ももも大きく太くなった。そこに怜が感覚で力を詰め込んだため、完全に原作通りの力とはいかなかったが、それでも数巡のツモ牌が視えるのは驚異的な力である。
(これ、竜華だけやと力は使われへんしあくまでもうちが見せているだけっぽいな)
『対局室にいる竜華の元へ、幽体離脱して向かわんとダメそうやな。……え?原作のように幽体離脱出来るん?』
(まあ幽体離脱出来ひんと竜華が幻影の怜に未来視せて貰ってることになるし……この2回戦の副将戦で試したらええやろ。今のうち、目を瞑ってもどこに竜華がおるか何となくわかるし)
『……んー、これ怜ちゃんパワーの使い方間違えてないか?あくまでうちらが未来視を使って、竜華にその結果を教えるだけでええんやから竜華の太ももに溜めた力で未来視なくてもええやろ』
(それもそうなんやけど口頭で説明する方が時間かかるし力使いそうやわ。あと竜華は超集中状態の時、サーモグラフィーで全牌把握するようになっとるから……あんまり意味ないような気がして来たで?)
なお怜が竜華の傍にいないと現時点では使えない力のため、これから行われる副将戦で竜華の元へ怜は幽体離脱する予定である。そうこうしているうちに試合の方は葉子と白水が交代でツモ上がりするような展開となった。
「葉子ちゃんと張り合えてるというか、上手いこと躱してる感じやな」
「まあ玄ちゃんのような能力範囲が被るオカルトじゃないと基本は自己完結するオカルトやし……いやでも白水さん強いな。伊達に強豪校で1年生エースやってへんで」
『葉子と能力なしで殴り合ってるのは何それ状態やけど将来的に縛りプレイも始めるから頭おかしいでこの人』
(それで北部九州最強の強豪校のエースやし……縛りプレイがない分今の方が強ないかこの人!?)
最終的に千里山中学は4万点近く、生立ヶ里中学は3万点ほどを稼いで先鋒戦は終了する。他家2人は完全に焼き鳥だったため、如何にこの2人が暴れたのかが分かる結果となった。
「部長……次鋒戦はヤバい人いなさそうやし、いつも通りで大丈夫やと思いますからその緊張どうにかして下さい」
「ええ、大丈夫よ」
『……大丈夫だと思う?』
(1回戦で他の面子を見た限り、大敗はしそうにないけど……トップ維持は難しそうや)
次鋒戦は曽根崎が序盤で安い手を2回上がった後は、比較的早めに下りる打ち筋で失点を防ぐ。当然ツモ上がりで削られていくが、最終的な収支は-6800と怜が想定していた点数よりもかなり良かった。千里山中学はトップのまま、中堅の江口セーラにバトンを繋ぎ……ここでセーラは、半荘1回で跳満2回と3倍満を上がり、5万点近くの点棒を稼いで1位を盤石なものにした。