竜華と怜が友達となり、よく麻雀部で麻雀をしたり、部活がない日は2人で遊ぶようになってから2週間。
怜は校舎の裏へ連れて行かれ、2人の女の子に問い詰められていた。
「初めまして。私は野上葉子。こちらは進士あゆみ。
私達、竜華の一番の友達です」
(あー……そういう。竜華人気者やからなあ)
『怜も結構人気者というかお世話係おるやろ。
あと原作だとこいつらに虐められてそうやな』
(何でや!?)
『原作怜がこの時点で麻雀やってなさそうやし、学業もブーストなかったら凡やろ。
この二つを今の怜から引いたら何が残る?』
(おー……可愛さ?)
『お前ほんまポジティブやな!?』
野上葉子に進士あゆみと紹介された女は、怜の身体を突き飛ばそうとして、怜が未来視でそれを読んだために押される直前で身体を引く。前に倒れそうになった進士は、怜に足を引っかけられ、そのまま転倒した。
「暴力反対やでー」
「……しんちゃん、暴力はいけません」
暴力は止めるように言う2人だが、転倒し若干口の中を切った進士は止まらなかった。すぐに起き上がると、怜を睨み、「調子に乗ってるんじゃねえ」と殴りかかる。
それを避けることも出来た怜だが、その前に進士の腕が止まる。横から、竜華が進士の腕を掴み、パンチを止めたからだ。
「なにやってるんや!こういうコソコソしたんは大っ嫌いやで!」
その後、野上は竜華がこの頃怜とばかり遊んでいることが気に入らないことを話すと、怜が「じゃああんたらも麻雀部入ったらえーやん」と麻雀部に誘う。さっきまで虐められそうになっていた人間が放つ言葉ではなく、野上と進士は面食らった。
「ちょうど4人おるで。一緒に遊びたいなら麻雀部きーや」
「い、いきなりなんなんです?」
「野上さんは麻雀やったことないん?弱いんやったら手加減するで?」
「やったことくらいありますよっ!」
険悪な雰囲気が少し和らいだところで、怜は野上を無理やり麻雀部へと引っ張る。そして卓を囲み始めた半荘の東1局で、野上はダブルリーチを行った。
『当たり。こういう1発目の試合で1500分の1を引ける奴は強いで』
(ダブリーなんてそうそう見いひんからな。それを野上さんは……)
『今日はツイてる、程度のノリだったからたぶん無能力者やないやろな。ま、あわあわみたいに絶対安全圏発動しながら毎回ダブリー&槓裏モロ乗りまでは行かんやろうけど』
(それほんまに麻雀なんか……?)
ダブルリーチをかけられた時点で、怜は未来視を発動し、11巡先までを視ようとし……6巡目で止めた。
(あかん、3巡目に中ポンから対々和聴牌まで行けるのに6巡目で引くドラを押したら振り込むやん)
『ポンせえへんかったらそのまま7巡目で野上さんがツモ上がりやな。……中はポンしてドラを抱え込むしかあらへん』
(しかし、ドラの四萬カンチャン待ちでダブリーは強気やな。……待ちが分かった時点で、もう野上さんには上がらせへんで)
『接待しーや。期待の新入部員やで』
途中で何度か野上が上がるチャンスはあったが、それを悉く潰した怜は、竜華の上がり牌も止めた上で流局して流す。
次局。怜はリーチ棒を真っ直ぐに立てて宣言した。
「リーチ!」
麻雀で来る牌が全て分かる状況が多くなってきた怜が、よく好むようになった役は七対子だ。どの牌を残せば重なるかが分かる上に、鳴きを入れて対々和へ移行する選択肢もある。
何より、裏ドラを乗せれば容易に跳ねる点が怜は好きだった。リーチをかけた次の手番で、怜は当然のように1発で上がる。
「リーチ一発ツモ七対子ドラ2。6000・3000や」
「怜ちゃん……本気出してるやろ?」
「手加減なんかいらんって言われたしな。
竜華も本気出しやー。このままやと最下位やでー」
親被りを受けた竜華は、少し思いつめた顔をした後、点棒を怜に渡す。その後、竜華はゾーンに入り、脚を組んだ。
(本気のゾーンに入っとるな)
『集中しただけでツモも配牌も良くなる不具合。まーたこの子緑一色聴牌してる』
(あかん、進士さんが振り込んで飛んでまう。せっかく麻雀のルールが分かる貴重な部員候補がメンタルブレイクしてまうで)
『……進士さんはリーチかけてしまってるし、同順に振り込むしかないな。五索切りで混一色發ドラ1の満貫止まりや』
怜が五索を切ることで、緑一色の上がりを防ぎに行く。竜華は怜が五索切りの後、一瞬進士のツモ予定牌を見て、ロンと発声した。
「満貫で差し込みしたの初めてやで」
「…………。
はっ、そうなん!?」
「まあ役満上がられるよりかはマシやからな」
「徹底してるなー。どうせ進士さんの次のツモ牌、六索やろ」
「嘘!?
うわ、ほんとだ!下手したら役満振り込んで…………あれ?」
「うちが同巡で上がり牌切っとるからロンはできひん。やから上がったんやろ?」
ゾーンが1局だけで切れた竜華を見て、怜は咲本編の漫画の方で竜華のゾーンについて、1局から長くて3局という末原の言葉を思い出した。発動の安定こそしないものの、高確率で高い手を上がり、極まっている時には簡単に役満を上がれる竜華を見て、怜は持っている人は違うなあと実感した。