しずく照らす光   作:シベ・リア

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皆さん、お久しぶりです。初めましての方ははじめまして。
シベ・リアの約4.5年ぶり?の投稿になります。

今回書かせていただいたのは虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の推し、桜坂しずくちゃんが主人公の小説になります。実はそのしずくちゃんの誕生日記念として書いていたのですが、4月末、完成してコピーをする時に操作を誤り2話ほど後半部分が消し飛んでしまい投稿が今日になりました。

さてさて、前書きはこの辺にして……今回はプロローグとなります。

『しずく照らす光』……スタートです。


第0話(プロローグ)「やがてひとつの物語」

 

 

 

━━━あなたはいつも私を照らしてくれた。

 

正確には私だけではなく、周りの人達みんなだね。ご両親が付けてくれたその名前に誇りを持って、その名の通りに。

 

今も誰よりも近くで照らしてくれている私の幼馴染で、大切な人。

 

 

………そんなあなたを、私は愛しています。

 

 

 

 

『しずく照らす光』

 

第0話「やがてひとつの物語」

 

 

 

東京お台場にある虹ヶ咲学園は、自由な校風と専攻の多様さで人気の高校だ。

 

そこの1年生の桜坂(おうさか)しずくは、神奈川県鎌倉市から毎日通っており、今日もまた読書をしながら電車に揺られている。

電車の音が微かに聞こえる車内では、眠っているスーツ姿の大人やスマホを見つめたりする人などがいる中、しずくは黙々と小説を読み進めていた。

 

「ふわぁ〜」

 

すると隣からあくびの声が聞こえてきて、しずくは目線を小説の文字からその声の主の方へと向けた。

 

「………また夜更かししたの?」

「ははは……しずくには何でもお見通しだね」

「どうせまた、台本の読み合わせをしてたら熱が入っちゃったんでしょ?」

「はい、その通りです……」

「もう……」

 

そうしずくと仲睦まじく話しているのは紅葉 輝林(あかば ひかり)

しずくとは幼馴染で、両親は舞台女優とドラマ俳優、さらには祖父母も演劇俳優の経験があるという正に俳優一家だ。そこに生まれた彼自身も例外ではなく、演劇部の公演があれば学校内外から沢山の人がその演技を観に来るほどの才能を持つ。その演技の特徴は"本当に登場人物を生きているように演じる"ということだ。そんな彼を知る人物が皆、将来は"大俳優"になると確信している。

そう思っているのは幼馴染のしずくも例外ではない。彼女もまた彼に憧れ、負けじと日々部活動や自主練に励んでいる。そんなしずくの演技の特徴は"登場人物の感情を自分と重ねて演じる"ということだ。そのために毎回登場人物のことを理解しようと努力していて、輝林もそんなしずくの演技を評価している。

しかしそんな彼はその才能に驕らず、まだ未熟者だとしずくと同じく稽古や自主練を怠らない。それがさらに彼の才能を磨いているのだ。

 

「しずくは今日もスクールアイドルの方?」

「うん。もうすぐライブも近いし練習頑張らないと」

「流石だね。ライブ、観に行くからね」

「ありがとう。約束ね」

 

しずくが嬉しそうに微笑むと、輝林もそれに応えるように微笑み返した……

 

 

━━━やっぱり好きだなぁ。

 

 

……そう言葉にできない想いを抱えながら。

 

 

 

 

 

 

「じゃあしずく、気を付けてね」

(てる)くんこそ。いってらっしゃい」

「いってきます。しずくも、いってらっしゃい」

「うん。いってきます」

 

いつも乗り換えの駅で2人はそれぞれの学校へと向かって行く。

しずくの通う虹ヶ咲学園は女子校で、輝林が通うのはその虹ヶ咲学園分校……つまりは男子校だ。

生徒会や部活動は別ではあるものの、理事長やその校風など同じものも多い。その証に、しずくの着ている制服と輝林が着る制服には同じ校章のワッペンが付いている。

 

「よっ、輝林!」

「おはよう、大和」

 

しずくと別れて歩いていた輝林の肩を叩いて挨拶したのは、そんな輝林の親友であり、クラスメイトでもあり、そして同じ演劇部に所属している大空 大和(おおぞら やまと)だ。2人は大体いつもこの駅で合流して登校してある。

そこで挨拶を交わした2人は共に同じ方向に足を進めた。

 

「今日も桜坂さんと一緒か?羨ましいなぁ」

「幼馴染なんだから当たり前でしょ?」

「…………お前いつか刺されるぞ?」

 

しずくは分校の演劇部の方でも有名人である。"天才"である輝林の幼馴染なこともあるが、それに及ばずとも演劇力は皆の目を惹いており、それに加えて容姿端麗で性格も良く、そんな彼女に憧れない男子はいない。さらにスクールアイドルもしている為、その人気は演劇部のみでは留まることを知らない。

そんなしずくと幼馴染で毎朝一緒に電車に乗って登校している輝林を羨ましがらない男子はいるだろうか?いや、いない。いるはずがないのだ。

 

「はいはい。そういえば、今日は漢字の小テストだけど……大丈夫?」

「それを言ってくれるな親友よ……」

 

大和は輝林のひと言に肩と頭を落とし、逃避していた現実を受け入れさせられた。

大和は漢字が苦手なのである。脚本にわからない漢字があると輝林に読み方を教えてもらっている。

 

「………ジュース1本ね」

「サンキュー!流石は輝林!」

 

輝林は大和と言わんとしていることがわかっているように「仕方ない」という表情を浮かべてそう優しく言った。そんな大和が何を言いたかったのかというと、ジュース1本という対価を輝林に渡し、これから国語の授業が始まるまで大和のテスト勉強に付き合って欲しいということであった。

そうして2人はテスト勉強をしながら学校へと足を進めるのであった。

 

 

 

 

 

━━━虹ヶ咲学園。演劇部部室内。

 

『合同演劇会!?』

「そう。5月にお互い新体制になって初めての大規模な公演を合同ですることにしたの」

 

朝、ホームルームの前に重大発表があると部長である愛城 百々(あいじょう もも)に集められていた演劇部員達はその発表に驚きを隠せなかった。

 

「あの"薔薇ヶ咲"と合同演劇会……となると、あの輝林さんと一緒に出来るってこと!?」

『キャ〜!』

 

"薔薇ヶ咲"というのは虹ヶ咲学園分校の通称で、男子校である分校と言い分けるために生徒達の間ではそう呼ぶ人も少なくはない。

演劇部員達はそこの演劇部に所属している輝林と共演できるとわかり黄色い悲鳴をあげ、嬉しさを露わにしていた。

 

「………輝くんと、共演」

 

それにはしずくも、皆と同じように喜びを露わにしていなかったが、内心輝林と共演できることに胸を躍らせていた。

 

「しずくも嬉しそうね」

「……え!?」

「バレバレだよ〜。よかったね」

「そ、そんなこと……」

 

しかしそれは皆にバレていて、その指摘に明らかに動揺し、頬を赤く染めて誤魔化しきれなくなっていた。

 

「"ひかしず"尊い……」

「朝から良いもの見れた……神に感謝」

「も、もう!」

 

部員達も輝林に対して好意を向ける者も少なからずいたが、しずくと幼馴染で仲が良いことを知ってからは"ひかしず"……つまり輝林としずくを応援する側にまわっている。しかし、輝林が憧れの存在であることには変わりない。

 

「とにかく!これから合同演劇会に向けて練習していくから、みんな気合い入れるように!」

『はい!』

「じゃあ、解散!」

 

百々のひと言で皆それぞれの教室へと戻っていった。しずくも荷物を持ってバックを肩にかけて、皆に続いて部室をあとにした。

 

「あ、しずく!」

「はい、なんでしょう?」

 

廊下を歩いていると演劇部の副部長である星見 陽向(ほしみ ひなた)がしずくを呼び止め、しずくもそれに反応して足を止めた。

 

「ごめんごめん、伝え忘れたことがあってね。うちの部長と向こうの部長さんが、合同演劇会のミーティングに部員を何名かお互いに参加させようって言ってて、うちからはしずくに行ってもらいたいんだけど……大丈夫かな?」

「うーん。ライブも近いですし……また同好会のみんなに相談してから決めても大丈夫ですか?」

「全然大丈夫よ!ごめんねスクールアイドルの方も忙しいのに」

「お気遣いありがとうございます」

「……あっ、因みに向こうは輝林くんを連れてくるみたいよ?」

「そうなんですね……!」

「ふふっ、嬉しそうね」

「あっ……」

 

しずくは陽向からの提案に考える表情を見せたが、輝林の名が上がると笑顔になり、それを副部長に指摘されて頬を赤く染めた。

朝から衝撃の開幕をしたしずくの1日は、あっという間に放課後を迎えた。

 

 

 

 

 

━━━虹ヶ咲学園。スクールアイドル同好会部室。

 

「良いと思うよ!」

 

しずくが今日の朝発表があった合同演劇会のことを同好会のメンバー達に話すと、その1人である高咲 侑(たかさき ゆう)が一瞬考えて口を開き、他のメンバーもそれに同意するように頷いていた。

 

「みなさん、ありがとうございます!」

「そのミーティングっていつから?」

「えっと確か……初回が来週で、ライブが終わるぐらいまでは2週間に1回だったはずです」

「なら全然問題ないじゃん!」

 

同じくメンバーの朝香 果林(あさか かりん)宮下 愛(みやした あい)の同意にしずくは安堵した表情を見せ、他のみんなもその表情を見て微笑んだ。

 

「じゃあしず子のことも決まったことですし、練習しましょ〜!」

『お〜!』『は〜い』

 

メンバーの1人で部長である中須(なかす)かすみのひと言を皮切りに、皆部室をあとにして練習のために外へと向かった。しずくはメッセージアプリで百々と陽向にその件の報告をしてから、みんなの背中を追って部室を出た。

 

 

 

 

 

 

━━━電車内。

 

「じゃあ、しずくも来週のミーティングから参加できるんだ」

「うん。同好会のみんなも賛成してくれたから」

 

輝林としずくは部活動の終わりの時間が一緒の為、帰る時も殆どの場合は同じ電車に乗っている。今日も駅で待ち合わせて共に電車に揺られて帰宅していた。

話題はすぐに合同演劇会のことになり、お互いがミーティングに参加することを確認すると、2人共内心でガッツポーズをするほど喜んでいた。

 

「合同演劇会かぁ……"百合ヶ咲"の人達と共演とかしたことないから、色んな刺激を貰えそうだな〜」

「うんうん、私も凄く楽しみ!」

 

虹ヶ咲学園の本校……しずくの通う方のことを、分校の生徒達の間では"百合ヶ咲"と呼ぶ生徒はそう少なくはない。それは本校の殆どの生徒が分校のことを"薔薇ヶ咲"と呼ぶことと同じであった。

勿論、そうとは呼ばずに互いに"本校"や"分校"と呼ぶ生徒もいて、特に教職員はその呼び方をしている。

 

「どうなるかはわからないけど、しずくと一緒に同じ演目をすることになるかもしれないね」

「うん、私もそれ考えてた!本当にそうなったら良いのにね」

「だね!でもまぁ、部長達は考えてそうだけど」

「あっ、確かに」

 

2人は顔を見合わせて嬉しそうに微笑み合った。

同じ舞台、同じ演目で共演するということは2人共通の夢の1つでもある。それがもうすぐ叶いそうなことに嬉しいこと限りないのは言うまでもない。

 

昔に幼稚園などのお遊戯会や小学校などの発表会ではしたことはあるが、しっかりとした演劇の場ではしたことがなく実質的に初めてなのである。例えば中学校までは演劇部はなく、クラスの出し物としてするとしてもそこまで本格的なものはできていなかった。クラスの全員がそこまで精力的に演劇をするかと言えば、必ずそうとは限らないのは言うまでもないだろう。

それに2人ともその頃より演技力も成長しているし、何より高校生にもなると演劇部という皆が演劇に精力的に取り組む場もあり、演目も幅が広がり今まで出来なかった演技ができるようになっている。

だからこそ、2人とも今回のような共演を夢見ていたのである。

 

そんな2人の会話は殆ど途切れることはなく、するとしたらどういう演目がいいかなど演劇の話題や今日の出来事などを盛り上がり過ぎない程度に話し続けた。

 

「━━━それでさ、今練習してる演目のここなんだけど……」

「……………………」

「しずく……?あ、寝ちゃったか……」

 

しずくはスクールアイドルの練習で疲れたからなのか、会話の途中でうとうとしてしまっていた。そんなしずくを確認した輝林は話すことを辞め、現在演劇部で練習している演目の台本に目を通すことにした。

 

「ん…………」

「っ……!?」

 

しばらく台本を読み進めていると肩にストンと何かが当たる感覚を感じた。それは十中八九、隣で眠ってしまったしずくの頭である。

そのことにすぐに気付いた輝林は頬を少し赤く染めて驚きながらも表に出さないように台本に目を戻した。彼は平然を振る舞っているが、隣で自身の肩を枕に寝ているのは長年想い続けた幼馴染だ。それに加えてほんのりと香ってくる胸を締め付けてくるような匂い、かすかに聞こえてくる内なる自分を魅惑してくるような寝息、そしてさらには眼福以外の何でもない想い人の寝顔……動揺しないはずがないのである。

輝林はその自らの煩悩に耐えて誤魔化しながら台本を読み進めた。

 

「…………………」

 

輝林が寝ていると思っているしずくは片目を半開きにして彼の様子を伺っていたが、そのことに輝林は気付くことはなくひたすら台本を読んでいた。しずくはそのことに気付いて一瞬頬を膨らませて眉を細めると、体勢を直して体全体で輝林の半身にもたれて寝ているフリをした。

これこそがしずくの"演技"なのである。見事に"寝てしまって偶然体がもたれてしまった幼馴染"を演じているのだ。しかしその演技にも誤魔化せない高揚感や緊張感があり、その頬は赤く染まっていた。

 

輝林は先程まで感じていたしずくの感触に加えて、マシュマロのように柔らかい頬、抜きん出て大きくはないが形が良く柔らかそうな胸が当たる感触を感じて頬を赤く染めた。

 

 

2人にとってはこれまで何度も経験している下校時間も、この日はいつもよりも長く感じた。

 

 

 

 

 

━━━━━桜坂宅前。

 

「じゃあ、また明日ね」

「あっ……輝くん!」

「ん……?どうかしたの?」

 

輝林が家までしずくを送り届けて帰ろうとすると、そんな彼をしずくは呼び止めた。輝林が振り向いて停止すると、しずくは鞄の中に手を入れてある包みを取り出した。

 

「はいこれ!ハッピーバレンタイン、輝くん」

 

そんなしずくが鞄から取り出したのはチョコレートで、輝林は笑顔を浮かべてそのチョコレートを包んだ紙を受け取った。

 

「いつもありがとう、しずく!僕、しずくの作るチョコレートいつも楽しみなんだよね〜!」

「っ……そう言ってもらえると嬉しいよ」

 

しずくはチョコを受け取って喜ぶ輝林を少し照れくさそうな表情で見つめていた。

このバレンタインデーには、いつもしずくは輝林に手作りのチョコレートを渡している。いつものことなので、輝林は幼馴染の仲であるから渡されているのだと思っていたが実際そうではない。

しずくから手渡しているのはずっと昔から"本命"であり、それは今回も例外ではなかった。しかし輝林は何故か(・・・)そのことに気が付いていなかった。

 

「じゃ、じゃあ、私帰るね……!ま、また明日……っ!」

「う、うん……また明日」

 

そしてしずくは足早に家の中に入っていき、輝林はそんなしずくの姿が見えなくなるまで家の方を見つめ、彼女が家に入るのを確認すると自分の家の方向へと足を進めた。

 

「えへへ……しずちゃん(・・・・・)からチョコ貰っちゃった……!」

 

そんな輝林の足はスキップをするように軽いもので、そのチョコレートを大事に持ちながら帰路についた。

 

 

━━━本命だったら、もっと嬉しいんだけどな……

 

 

 

「はぁ〜〜〜っ……!」

 

しずくは顔を真っ赤にして、その顔を両手で覆った状態でドアに背をつけながらその場に座りこんだ。

 

 

━━━なんで本命だよっていつも言えないのかな私。こんなんじゃいつまで経っても……!

 

「私の馬鹿ぁ……!」

 

しずくは自分にだけ聞こえるようにそう呟いて、ずっと抱える溢れるような気持ちを感じていた。

 

 

 

 

 

 

━━━簡単には言えないこの気持ちや言葉だけど、でもあなたといる時だけ私は………

 

━━━でも君といる時だけ僕は………

 

 

 

 

 

 

『『自然な自分で話せる気がする』』

 

 

 

 

 

 

 

 

━━━これは、やがて"ひとつ"になる物語。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜次回予告〜〜〜〜〜

 

 

3年生が卒業して私達は2年生になった。

 

新体制になった虹ヶ咲学園本校と分校の演劇部で行う合同演劇会の準備は着々と行われていて、そこで私と輝くんは部長達に買い出しを頼まれて2人きりでショッピングモールに来ることに!?

こ、これってもしかして、所謂"デート"なのでしょうか……?!

 

 

次回『しずく照らす光』

 

第1話「あなたの理想の幼馴染(ヒロイン)

 

 

━━━私は、あなたの理想の幼馴染(ヒロイン)になれていますか?

 





ありがとうございました!いかがでしたか?
今回はプロローグということで、次回から本格的にこの物語の幕が上がります!そしてその次回は、なんと、本日の22時に投稿予定です!えー!?いいんですかー!?いいんです!
全体の投稿スケジュールはあらすじにて掲載しているので、是非覗いてみてください!

では、感想や評価、Twitter(新X)もやっているので読了報告やフォロー等お待ちしてます!

それではまた後ほどお会いしましょう!
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