ラドリーっていいよね   作:縮退回路

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ドラゴンメイド世界に出張するラドリーさんを書きたかったの!


プロローグ
1. ラドリーを通常召喚(召喚しちゃいましたね)


 

 

「君ってゲームとかするの?」

 

 仕事合間の休憩時間。自分のデスクでぼんやり考え事をしつつコンビニ弁当を食べていると、先輩の滝谷さんがふとそんなことを聞いてきた。後輩との何気ない会話の切り口としてなんとなく選んだ話題だろう。

 新卒として入社して早ひと月。教育係として上井さんと並び俺の面倒を見てくれている滝谷先輩の人柄はよく、教え方も上手く、正しく理想の先輩である。

 

 プライベートではまだ会った事ないけど、きっと職場で現れている通り頼りになる人間。

 陽キャ……とまでのテンションな人ではない。でも少なくとも人の趣味を否定したりな態度を出さないはず。

 だけど、だけどだ。

 

 

「あ、いえ、それなりにっスね」

「うーん、それなりかぁ」

 

 

 思わず言葉を濁してしまう。

 まぁなんだ。俺はそんなにコミュニケーションが上手い方じゃない。

 所謂、オタクで陰キャである。

 

 容姿に自信がないのはもちろんのこと、気を付けないとすぐにデュフデュフ汚い半笑いでくねくねしながら喋ってしまうし、そんな状態でようやく語れるのは一般受けの悪いオタク知識のみ。

 しかもその内容も分かりやすく砕いて言っちゃえば萌え萌えロリロリ趣向に片寄ったキモオタなもんだから救いがない。正直にこんな趣味を表に出して語ってはどうしたってドン引かれてしまう。

 

 大人な対応を身に付けている滝谷先輩ならもしかしたら聞き流してくれるだろうけど、もう二度とその手の話題を振らないだろう。

 オタクは白昼に晒されると死ぬ。それは誇張ではない。

 いや流石に全部言わなきゃいいんだけど、話題広げられてボロ出したってあれだし。

 

 陰キャは自身がロクな会話カードを持ってないし扱えないからそも喋らないという選択肢を取る。

 見かけたらそっとしてあげてネ。

 

「僕も()()()()にゲームはするからさ、仕事教える時とか例えられたらって思って」

「例え、ですか」

「そうそう。ほら、プログラミングって効果の組み合わせみたいでしょ? カードゲームなんか特に。子供の頃とかやらなかった?」

「あー……。小学生の時に遊戯王とか流行ってましたね。ハネクリボーとかいました」

「……小学生か……」

 

 世代がと滝谷先輩が若干傷ついた。

 年齢的にはさほど離れていない(らしい)とはいえ、近年は話題の移り変わりが激しい。兄弟姉妹の影響がなければ1年違いですら世代差が出てしまうかも知れないのが現代だ。

 ここで「先輩の時は」と俺はもっと会話を広げるべきなんだろうけど──

 

「ほとんど覚えてないというか、最近のもあんまり分からないですけど……」

 

 と、暗に「聞かないで」とアピールする保守的な応答をしてしまった。

 別に滝谷先輩と会話したくないとかでは決してない。

 ここから遊戯王の話を広げられてもにわか知識じゃ気まずいことになりそうだし、先手を打つというか、つまりだから陰キャなりの世渡りなんだよぅ。

 

 心の中でため息ひとつ。

 先輩のような誰とでも対等に話せる陽タイプには分からないだろう苦しみと悲しみ、そして気を遣わせてしまう申し訳なさで今日も陰キャは人知れず自己嫌悪していく。

 

「滝谷くん、話してるとこ悪いんだけどちょっといい?」

「どうしたの?」

「客先からのメッセが何言ってんのかわかんなくてさ」

 

 会話が終了して若干気まずい無言空間が訪れた瞬間、近くにいた小林さんが先輩を連れていく。

 いつもそうだ。小林さんは俺が困っているときや、若干空気の淀んだ瞬間を狙ってさりげない助け船を出してくれるのだ。

 滝谷先輩とは違うタイプの頼りになるイケメン。

 

 

(……なにかきっかけ、欲しいな……)

 

 

 自分から変わろうとはしても行動には移せない。それが悲しきオタクモンスター、縮めてオタモンの生態。

 陽タイプが4倍弱点。

 何かきっかけが、外部からの働きかけが。そう思ってこれからもだらだらと生きていくのだろう。

 

 

 

 

 

 結局今日もいつもと変わらずの毎日。

 夜遅くになって自宅であるアパートへ戻ると、玄関脇に小さな包みが落ちていた。

 特に指示してないけど置き宅になってたらしい。不思議だね。

 

(雨降ってなくてよかった)

 

 昼間はああ言ってしまったけれど、実は最近また遊戯王を始めたのである。

 といっても物理ではなく、スマホのマスターデュエルというアプリでだ。

 便利なことに現代は顔を合わせずともオンラインでカードゲームを遊べる。デジタル上だからどこか物足りないとは確かに思うけど、それでも遊べるんだから良い時代になったものだ。

 

「このサイズ感、懐かしいなぁ」

 

 家に入り早速包みを開けて中のものを確認。

 《ドラゴンメイド・ハスキー》がパッケージのそれは、ドラゴンメイド・トゥ・オーダーという構築済み(ストラクチャー)デッキだ。

 構築済み……といっても内容物はテーマに沿った幅広いカードを一枚ずつ収録した、そのまま実戦で使うにはかなり厳しいもの。本気で使おうものならもう二つ同じ物を買ってキーカードの枚数を増やし、その他のデッキパーツなりも都度買い漁らねばならない。

 単体ひとつ買ってもパッとしないものだけど、別に現実(リアル)で遊戯王を遊ばないのであれば気にすることはない。

 

「いたいた」

 

 なぜなら、コレクションとして見れば一式の詰まったこれほどお手軽なものはないのだから。

 

「ラドリー、かわいいよなぁ」

 

 俺のお目当てはこの子。《ドラゴンメイド・ラドリー》。

 (レベル)や効果の説明はさておき、容姿は和服とメイド服のデザインが合わさった青い服(和ロリ?)を身に纏った幼げな女の子だ。しかしドラゴンの名を関するだけあって、ラドリーを洗濯物を落として慌てているただの攻撃力500の少女と侮るなかれ。

 その正体はなんと、ほんとにドラゴンなのである! 

 

 ドラゴンメイドの名を持つモンスターに共通する効果。それはバトルフェイズへ移行した際、手札か墓地に対応するカードがあれば女の子からドラゴン態へ変身できるのだ。

 可愛らしいドジっ子メイドが一転、人間なんて一捻りできる攻撃力を発揮するギャップが素晴らしい。

 ちなみに女の子フォームの時にもドラゴン形態の名残はあり、ラドリーはもふもふの尻尾や短い角が頭に生えてる。かわいい。

 

 遊戯王と言えばで有名な《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》の攻撃力が3000なのに対し、ラドリーのドラゴン形態こと《ドラゴンメイド・フルス》は攻撃力2600。流石に看板背負う相手だと一歩劣るけれど、それでもこの数字は正面からの叩き合いにおいてそうそう当たり負けない高さである。

 が、問題一つ。

 

 

「せめて、使いやすければ……」

 

 

 悲しいことにラドリー&フルスはガチればガチるほどドラゴンメイドテーマのデッキから消えていく定めである。

 ラドリーの固有効果として、場に出した時に山札を上から三枚墓地へ送るというものがある。

 これは墓地を第二の手札と思ってる節のあるドラゴンメイドの特性と噛み合ってはいるのだけれど、しかし三枚とはいえランダムに墓地へ送るのは不安定な性能なのだ。

 上手く狙ったものを墓地へ落とせれば大いに貢献する一方、なんの意味もなく重要なカードを墓地へ送ってしまう危険がある。

 

 他のドラゴンメイド達が堅実な動きのできる中でギャンブル性のある性能はお世辞にも頼れるとは言い難く、テーマとしてあまり喜ばれる性能ではない。

 でも仕方ないんだ。ラドリーはそういうちょっと残念なところが味なんだから。

 

 

「試しにやってみよ」

 

 

 詳細な設定が明かされている訳ではないけれど、テーマの関連カードに描かれているところを見るにやはりラドリーは見習いだ。

 見習いなので活躍できたりできなかったりのムラが発生する。そこを汲んでの能力設定だとすれば、十分納得できる。

 

 洗濯物の籠をひっくり返し、慌てる姿が描かれたラドリー。

 マスターデュエルのメイト(マスコット)としてフィールドに立った際にはドヤ顔も披露してくれるラドリー。

 かわいいね。

 

 

「……」

 

 

 山札をシャッフルして5枚ドロー。

 お、丁度ラドリーが引けた。

 

(折角だし先輩が言ってたみたいに、例えの練習にしてみるか)

 

 滝谷先輩がお昼に言っていた、カードゲームってプログラムと似てるとかってやつ。

 最近の遊戯王の効果と動きを見てると本当にそうかも知れない。たまに理不尽な動きするもん。特に対象に取るだとか効果を受けないだとかの裁定。

 ドラゴンメイドはまだ分かりやすい部類だ。だから触ってみるには丁度いい。

 

「といっても、相手いないし召喚とかセットとかしかできないんだよな」

 

 1ターン目だと思って見よう。

 まずは(トラップ)カードの《ドラゴンメイドのお片付け》をセット。

 続いては《ドラゴンメイド・ラドリー》を召喚──

 

 

「──え」

「ふふん! てひ?」

 

 

 唐突にカードが光ったかと思えば、俺の目の前にラドリーがいた。

 

 




導入なのでちょっとスローペースですが、お気に入り等よろしくお願いします
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