ラドリーっていいよね 作:縮退回路
ドラゴンメイドカードの内がひとつ、ラドリー!
イラストから汲み取れる幼げな容姿に一目惚れして、つい先日カードを衝動買いしました!
小さな子がドジしながらも一生懸命している姿はかわいくも美しいではありませんか!
「待て、メイドだと? そのドラゴンもメイドなのかぁ!?」
「待つでヤンス小林殿! これはマジドラゴンとは違い──」
止めてくれるな滝谷先輩!
ラドリーのメイド服は和服にエプロンを乗せた形の、なんというか和ロリ? みたいな感じでそういうデザインも含めて好きなんです!
小林さん、洋100%もいいですが和洋折衷の大正か明治のスタイルもいいでしょう!?
「確かにメイドだからと洋クラシックオンリーという訳でもなく、そも広い眼で見れば給仕係をメイドと訳すこともできるね。……くく、くくくく……」
「小林さん……」
「だがラドリーってやつを直で見るまで納得いかねぇ! あたしの知ってるメイドはメイドのコスプレドラゴンだからな!」
「トール殿にとんでもない飛び火でヤンス」
ちょ、直で……!?
しかし今はラドリーのカードは持ってないし、それに召喚したラドリーを見せるわけにも……!
「小林殿! ラドリーというのは遊戯王に登場するカードの一つで──」
「──しゃあらぁっく!」
小林さんの掴んだレモンが滝谷先輩の口に突っ込まれる。
なにしとんねん。
「ひなたぁ……。ひとつ聞かせてくれよぉ……」
「な、なにか……?」
「ラドリーってのはランドリーメイドのことだよなぁ……っ!」
す、すげぇ。ラドリーとメイドっていう2ワードからそれも分かるのか……。
「……他にもパルラやティルル、ハスキーとかっていうのも」
「パーラーメイド、スティルルームメイド、ハウスキーパーか。お前わかってんなぁ!!」
うわ酒くさ。
近寄らんといてくださいよ。
「つかたくさんいんじゃん!」
「いや今いるのはラドリーだけっていうか……」
「おいもっと飲め!」
うわさけくうぉえ。
「そういうのは何らかのハラスメントでヤンス!」
そーだそーだ!
「しかし陽向殿も水くさいでヤンスねぇ。言ってくれれば……」
滝谷先輩は「いや」と言葉を濁し、代わりに「よく話してくれたね」と肩に手を置いて酒を飲んだ。
酔いながらも色々考えてくれていたらしい。
「そんなに推しでヤンスか?」
推し、そうだね。
うん。そうかも知れない。
ラドリーの尻尾に顔を埋めたいとかドジしてるところを眺めたいとは思うけど、まずは──
と、そこまで語って家にいるラドリーのことを思い出す。
突然よく分からない世界に召喚されたラドリーは困っているはずだ。
よく確認しなかったけど、食事とか必要かも知れない。
そうと決まれば早いところここを抜け出したいんだけど、どうしたらいいんだ。
「先輩」
「んあ?」
話したかったのは滝谷先輩の方だけど、小林さんが唸るように反応した。
「もし、もしですよ? 目の前に右も左も分からないメイドが突然現れて、家に匿うとして、それで、家に置いてきて自分は仕事したりしなきゃって時──どうします?」
「……陽向くん。それって」
「んなもんすぐ帰るに決まってんだろぉ」
へろへろの小林さんが机に突っ伏しながら喋る。
「だいたいトールが来たばっかの時もよぅ……」
……え、寝た? マジ?
てかさっきからちょくちょく出てるトールって誰?
「陽向くん。なにかあったの?」
あ、ちょっ、滝谷さん。
えっと、今の話はそのっ、もしっていうか……。
「──心配するくらいならすぐに帰ってやれ」
上井さん!?
どうしてここに、というかいつの間に!?
「さっき来たところだ」
……というか、その格好はなに……?
なぜか上井さんはよく分からないコスプレをしていた。
滝谷先輩も同じことを思ったらしく、言葉を重ねる。
「それ向こうの世界での服だよね。どうしたの?」
「仕方がないだろう。この幼竜に着せてしまったのだから」
会話はよく分からないけど、幼竜って……。
……ッ!?
「やはり君の庇護下にあるドラゴンだったか」
「くぅぅぅ……」
ら、ラドリー……!?
上井さんの背中に乗って現れたのは、上井さんが着ていたであろう服をだぼだぼと身に纏った半泣きのラドリーだった。手にはくしゃくしゃとなった俺のシャツがひしと握られている。
まさか……。
「君の家の近くで腹を鳴らしながら泣いていてな。失禁もしていたようだし文句の一つ言いにきたのだ」
「ど、どうして俺って……」
「マナの繋がりだ。それに、握りしめて離さないシャツの匂いもあるし簡単だったぞ」
「その子、ラドリーに似てるけど……まさか本物?」
「返す言葉もありません」
「この様子だと私から改めて何か言う必要はなさそうだな」
あまりの現実に打たれ、頭を下げるしかないとひたすらに謝罪の姿勢のまま固まっていたのだが、ふと何かが抱きついてきた。
暖かくて、ちょっと臭う。
目を開ければ、ラドリーがひしと俺にくっついていた。シャツに包まれていて分からなかったが、スマホもぎゅっと握りしめられている。
きっと、ラドリーは何度も電話をしようとしたに違いない。
ずっと、一人で寂しかったことだろう。
俺のことを探して、ついに家を出て、でも何も分からなくて……。
「すまない……ほんとうに、すまない……」
「よく分からないけど、一件落着なのかな?」
滝谷先輩が綺麗にまとめるが、それどころじゃない。
──ラドリーが知っていたのは恐らく洗濯をするという仕事だけ。それも未熟という設定を引き継いでか中途半端に。
それ以外は全く、お腹を空かせてお漏らしもしていたと聞くし恐らく自分の生理現象すら理解できていなかったのだろう。
せめて指示と主人がわかる程度のそんな子を家に置いて、俺は……俺は……。
「……上井さん、何か武器をください」
「ん? これしかないが」
なにこのクソデカパスタ用フォーク。
まぁこの際これでもいいか。
「陽向氏長兄誠吾、この命をもって謝罪とす」
「わーっ! わー待て!」
ええい止めてくれるな上井さん!
こんな幼い子を放置、ネグレクトした俺には生きる資格などない!
子供を苦しめる人間なぞ俺は自身であっても絶対に許さないんだ!!
人として最低最悪な陽向家の恥よ! 今ここに滅さん!!!
滅びよ!
ここはお前の住む世界ではない!
「私は人柱も生け贄も嫌いだ! やり直せるからハラキリはやめてくれ!」
「……小林さんも寝ちゃったし、そろそろお迎え呼ぶか」
「ひえええ!」
ラドリーが泣いて抱きついてくる。
こんな純粋無垢な子へ冷たく当たってしまっただけでなく放置したんだ俺は! 死すら生ぬるいのだぞ!
止めてくれるなぁあああああ!!!
よろしければ高評価お願いします……(小声)