ラドリーっていいよね   作:縮退回路

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あの、お気に入り数が倍増してるんですけどどういうことですか……?
困惑しながら無理やり筆を取ったから高評価もちょうだい……(貪欲な壺)


8. 破壊と効果無効化は別(呪いみたいなものですね)

 

 

「破壊しても効果が止まらないなんて……おかしくないか?」

「これが遊戯王です」

「くぅー」

 

 当然そこ引っかかるよねぇ。相手が魔法使ったからカウンターとして破壊したけど効果が止まらなかったってやつ。

 首を傾げた上井さんは納得いかないと眉をひそめている。

 

「魔法罠もモンスター効果も、破壊と効果の無効化は別なんです」

「でもさっき一回止めることができたぞ!」

「永続系の魔法罠はフィールド上で発動してるから、破壊されたりでフィールドを離れると発動できないとかなんとか」

「ふーむ……。いや、私達は基本的にぶん殴って発動を止めてたから常識が違うというか」

「わおバイオレンス」

 

 いつの間にか俺の膝へ移動していたラドリーが暇なのか後頭部を擦りつけて構ってアピールしている。

 ラドリーは確かに遊戯王カードの立体化ではあるけど、だからといって本人自身が遊戯王を見ていて楽しいかは別だよねぇ。

 ここにいるリアルラドリーがちゃんとデュエルに参加できてる状況なら楽しんでくれたりするのかな。

 小生、子供がつまらない状況を好まぬ。楽しんでくれた方がよい。

 

「くぅー……」

「どしたー?」

 

 上井さんが自分でデッキを弄ってみたいというので任せている空き時間、ラドリーが俺のスマホをべしっと叩いて悲しそうな声を出した。

 よほどつまらなかったのだ──いいや違うぞ!

 今俺の画面にあるのは上井さんに合わせたミラーデッキ、つまりラドリーの少ない抑えめデッキ!

 ごめんねラドリー、ラドリーを愛する者としてこの枚数は間違いだった。

 そう、愛ならフル投入してかつ勝利できるはず!

 

「ところで陽向さん」

 

 なんでしょうか。

 

「このチェイムという者、どのドラゴンが対応しているのだ?」

 

 はは、上井さん。

 そこにドラゴンメイド・シュトラールっているでしょう。

 それがチェイムのドラゴン形態です。そうなんです。そうなんですよ。

 

「え、でもこのシュトラールはハスキーと相互の関係だと効果的にも──」

 

 待ってねーラドリー。

 ラドリー専用のデッキ作ってあげるからねー。

 

「誤魔化した!? 陽向さーん!?」

 

 

 

 

 

 ──上井さんとの遊戯王談義は終電近くまで続き、頑張って起きていたラドリーがついに寝落ちしてしまう所でようやくお開きとなった。

 本当なら子供をこんな時間まで起こしているのも連れ歩くのも避けたかったんだけど、上井さんがね、あれはどうこれはどうって開放してくれなかったの……。

 すかぴーと眠りこけてよだれをたらしつつも、俺にしがみついたまま離れないかわいいラドリーが見れてるからいいんだけどね!

 いやよくねぇよ。クズだ俺は……。

 

「ふふん、ふふー」

「しかしこの図、通報されないのが不思議だなー」

 

 老け顔と言われた記憶はないけど、子持ちの顔はできてるのかな。親としてふさわしいのかはさておき。

 夜も更け人通りの少なくなった通りを歩き、家へごー。

 てくてく。てくてく。

 てくて……く……。

 

「……」

「……こーんばーんわぁ」

 

 何となく覗いてしまった路地裏の隅、なんか人っぽいのが落ちてるのが見えて足を止めてしまった。

 不自然に足を止めたもんだから、向こうもこっちを見つけてしまった。

 赤い髪に黒いボロ布を身にまとった少女、とは表現できるが、こいつは……。

 

「おまえもドラゴンと仲良し?」

 

 顔立ちは子供だけど、溢れ出てる人外感というか暴力感というか、こやつからはそういうのが隠しきれてない。

 というか何かワニみたいな腕とかムカデみたいな尻尾とか、そういうの出てる。山羊とかそういう感じの巻きツノもある。

 トールさんや上井さんはうまいこと人間社会へ溶け込めてるって小林さんは言ってたけどさ、そうだね。本来人外ってこういう類なんだね。こう、明らかにバケモンって分かる暗黒オーラ。きっと闇属性の悪魔族。

 

「今さ、私ぜんぜんマナないんだよね。トールと戦ったらボロボロにされちゃった」

「そ、それは大変だねぇ。トールさんも大変なことするなぁ、はは」

「エルマが加勢したんだよ。混沌勢と調和勢が人間に懐柔されて、おかしいよね」

 

 ドラゴン達がどうしてこっちの世界に来てるかについて、留まっているかについてはあんまり把握できてない。

 ただまぁ、今の状況はなんかこういうやべーやつをトールさんが討伐し損ねて取り逃がしたんだなって感じでおけ?

 警戒を解かず離脱のため隙を伺って一歩下がる。

 

 ずるり、と路地裏の闇から少女の顔をした怪物が這い出て来て立ち上がった。

 爆乳ロリ顔といえば萌え萌え要素だけど、さっき述べた通りワニの手とムカデ尻尾の暗黒オーラ持ち。

 見るからに化け物って認識にまったく変わりが持てない。

 

「おまえ、マナ沢山持ってるんだしちょっと分けてよ」

「俺もこの力、最近知ったばっかりだからどういうモノなのか分かってないっていいますか」

 

 あれだあれ。

 そういうアラガミを目前にした人類みたいな心境かも。ほら、ディアウスピターを前にしたかくれんぼ中のアリサみたいな……。

 あ、ごめん遊戯王で例えた方がいいよね。それかK〇NAMI繋がりがいいよね。

 だって俺、K〇NAMI派だし。悪魔城だいすき。武装神姫もすき。

 やべ何が言いたいのかわかんなくなってきた。

 

「壊すんだよ。そうして奪う。私が混沌勢だから」

「ああ、そう……」

 

 人力緊急脱出装置!

 行け! 陽向誠吾!

 

「……くぅ?」

 

 揺れを気にする余裕なんてないし、ラドリーを起こしてしまった。

 

「くぅ!」

 

 目が覚めた瞬間、俺から離れて着地し振り返るラドリー。

 視線の先には当然さっきの殺意剥き出しロリ爆乳ワニムカデが!

 

「ちょいちょいちょい待っ!」

「ははっ!」

 

 飛び掛かった赤と、ラドリーが交差する。

 しかし──

 

「──んはぁ!?」

「くぅ!」

 

 なんということか、ラドリーが打ち勝ってドヤ顔で立っているじゃないか!

 

「私そんな弱ってたかな。いやそっちが硬いんだ」

「ふふーん!」

 

 家にあった筈の物理カードのデッキが飛んできて、目の前にそれぞれが並ぶ。ちなみに手札は三枚。ドラゴンメイドカードはもうなくて、ドラメストラク(ドラゴンメイド・トゥ・オーダー)内にいる謎高レベルドラゴンが無意味にこんにちわしてる。

 それはさておき俺のフィールドを確認すると、ラドリーが守備表示で置かれていた。確かこれはお心づくしで召喚したからのはず。

 この通りのステータスが適応されているなら、守備力が勝って破壊されなかった……?

 

 ラドリーの守備力1600。

 弱ってボロボロと言ってたとはいえ、まさかあの殺意と見た目で攻撃力1600未満とは。

 偶然この状態のタイミングで助かった。攻撃表示のドラゴンメイドは基本的に貧弱なので恐ろしいことになるところだった。

 

「じゃあこっちでいいや。私、火があればいいし」

「ほえ?」「くぅ?」

 

 墓地から一枚カードが抜けて飛んでいき、爆乳へ吸い込まれていく。

 あれはラドリーが墓地送りにした三枚の内の一つ、ティルル。ドラゴンメイド・ティルルが、墓地から吸い込まれて消えてった……!

 

「まさかこいつ、相手の墓地からエクシーズ素材を補給できるのか!」

「なんの話?」「くぅ!」

 

 リンク2ヒータみたいなことしやがるぅ! って事は、闇属性じゃなくて炎属性!?

 この手の奴はあれだ、エクシーズ素材の枚数によって攻撃力が上がるとかあるはず。

 効果のコストで吐き出させれば弱体化できるとはいえ、そもそもどんな効果をあいつ持っているのか分からん。

 シンプルに行くなら強化され切る前に殴り倒すのが一番なんだけど、そう上手く行くかな。

 あいつがメインフェイズ2で効果を使ってエンドなら、俺のターン。ドロー。

 

「何してんだ?」

 

 引いたのはドラゴンメイド・パルラ。……展開ルートとしてはシュトラールやハスキーを使った制圧が狙えるね。

 いつも通りに動くならパルラを召喚して効果でお召し替えを墓地送り。バウンスで回収し、手札の一般高レベルドラゴンとパルラで融合召喚って感じ。

 お心づくしの効果でラドリーのドラゴン態たるフルスは墓地にいるので、バトルフェイズへ移行すればハスキーの効果であの爆乳妖怪を破壊できる。破壊耐性があるのならドラゴンズで叩く。もしくはシュトラールで最初からなにもさせないとか。

 

「私動けないし、そういう魔法? こっちの人間が?」

「……」

「くぅ?」

 

 ──このまま、フル展開して粉砕してしまっていいのか。

 この爆乳がロリっ子だからとかって理由じゃない。もちろん同情でもない。

 わざわざ襲う相手に自分は弱ってるだのこれから襲い掛かるだの、何というか殺すか殺されるかに身を置くであろうような存在が言うか? って疑問。

 混沌勢のノルマみたいなものは分からないけど、なんというか、()()()しなきゃいけないけどできるなら逃がしてやりたいみたいなそういうんじゃないのかっていう、さ。

 ドラゴンが仲良くしてるのをよく思ってないのも逆張りっていうか……ああ、なんて言ったらいいのか分からん。

 

 陰キャってなんというか、強がるんだよ。

 いやこの子が陰キャって言いたい訳じゃなくって、強がりなら気持ちわかるっていうか。

 くそう、こういう時どう言語化したらいいのか分かんない。そういう人の繋がりを今まで持てなかったっていうか、声を掛けられなかったっていうのは言い訳か。

 

「……」

「くぅー?」

 

 ラドリーがくいくいと俺の袖を引っ張って、どうするのかと目で訴えている。

 というか眠いから早く終わらせろって懇願にも思える。

 

「ターンエンド」

「あ、動けるようになった」

 

 とにかく、俺にこの子を倒すって気がなくなった。

 できる事ならこの子の強がりというかわだかまりというか、そういうのを解消してやりたい気持ちはあるけど言葉がない。

 どうすれば──

 

「そうか。そういうわけか」

「何ひとりで納得してるんだ?」

「いや、ドラゴン達がどうしてあの人に集ったのかって」

 

 トールさんも上井さんも、あとカンナさんも。ドラゴン達が心を許しているあの人ならって、どうしてか思ってしまった。

 そっけないけど気が利いて、言葉は少ないけどどこか温かみのあるあの人。

 もし押し付けるようならすみません。トールさんが撃退した経験あるなら大丈夫かと思いますが、もし万が一あったらマジすんません。

 

「小林さん。俺の会社にいる先輩なんだけど、あの人を訪ねてみたらいいかも」

「……小林?」

「うん」

 

 俯いてしばらく「そうか」「小林って人間か」と呟いた後、ふらふらと路地裏の闇へ消えるように歩いて行った。

 しばらくすると展開していたデッキも収納されて元に戻る。たぶん、デュエルが終了したってことでいいのかな。

 

「メールだけ入れて帰ろう」

「……くぅー……」

 

 戦いが終わると眠気も復活したのか、ラドリーがもふもふ尻尾をぼふんと出しながらもたれかかってきた。

 抱っこアピールもついでに来たので背負い、帰路につく。

 

「しっかし、リアルデュエルってこんなパッション任せでいいのかなぁ」

 

 遊戯王の原作初期だとTRPGの要素が多いとか言ったもんガチとかノリノリな方が勝つとか、そういう感じらしいけどまさかこういうことじゃなかろうな──

 

 




イルルの名前が出ないから妖怪爆乳ロリドラゴンになっちゃった……
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