(改訂前)尊大不遜系貴族悪役による凌辱ゲーの壊し方   作:全自動髭剃り

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 お待たせしました!


少年編 アメリア⑧

 筋一本一本が断ち切れ、その度に微振動となって手に感触が返ってくる。

 骨が金属に抵抗し、組織を残しながらも複雑に粉砕する音。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 完全に油断をし切った男の太ももに目掛けて、思いっきり直剣を振り下ろしたつもりだったのだが……。

 

「……ッ! 誰だ、テメエは!!」

 

 倒れたまま首だけ振り返り叫ぶ男。まだそれだけの余力が残っていることに驚きだ。

 踏みつけるようにして男の首元に脚を振り下ろす。

 

「あがッ!」

 

 側頭部を地面に叩きつけられた男は、そのままその場で動かなくなった。

 ……呼吸はしているようなので、死んだということはないだろう。

 

 それよりもアメリアとエレノアだ。

 倒れ込んだままこちらの様子を見ているアメリア。転倒した様子だが、大事にはつながっていない。

 燭台で叩かれた額を手で押さえるエレノア。運良く掠めただけだったようで、傷にはなっていないようだ。

 彼女たちの無事に、ふぅと一息つく。

 片や呆然とこちらを見つめる少女、片やホテルに戻ってきた俺に対して警戒を続ける女。

 

 倒れている男がエレノアたちを脅していた声が廊下を越えて聞こえてきたものだから、問題なくこの部屋まで辿り着けたのもあって。

 エレノアがアメリアの母親だということは判明した。

 

「ベ、ベリアル……?」

 

 いち早く状況を飲み込んだアメリアが声を上げる。

 少し遅れて立ち上がるエレノア。

 

「なぜ……、あなたが? リアンナは?」

 

 俺を睨みつけるようにして、エレノアは問いかける。

 

 ……彼女の予想では、俺はリアンナに成敗されているものだったのだろうな。

 不測の事態に陥っていなければ、エレノアの予想は的中していただろう。

 一応外から様子が確認できないようにドアを閉じて鍵をかけて、それから彼女に答えた。

 

「俺が騎士如きに遅れを取るとでも夢想したか?」(ここに来る途中で逸れたよ)

「…………」

 

 真剣な面持ちのエレノア。

 ……無理もない。アズーリですら手も足も出なさそうなレベルの化け物が俺に負けるなんてありえないしな。

 実際、ボコられたのは俺だ。騎士如きに遅れを取りまくっていたし。

 

 けど俺がここに来ていることは、俺の勝利の証明にもなってしまっていて、彼女の勘違いを加速させてしまっているのだろう。

 ジリジリと俺から距離を取りながら娘を背にして立つエレノア。

 

「流石、ナイトフォール家の子供ってわけね」

「今更理解したか?」(関係ないけどね)

「それで、あなたの要求はなにかしら?」

 

 ゆっくりとアメリアに手を伸ばして、立たせるエレノア。

 そして自分の娘を守るようにして、俺に対して交渉を持ちかけてきた。

 

「数刻前貴様に伝えたはずだが、……まさか忘れたわけではあるまいな?」(要求は何もない)

「……」

 

 またして真逆のことを言い出す“俺”。

 というか、数刻前に伝えたって……、俺なんか要求を伝えてたっけ?

 アメリアの居場所を知りたいってくらいしか思ってなかったし、彼女の無事が確認できたので、要求も何もないんだが……。

 

 そんな俺が自己に対する困惑をしていると、

 

「土砂降りでもアメリアを探していただけはあるわね……。まさか、ホテルを襲うテロリストすら突破して来るとは思わなかったわ」

「俺が意思を曲げることはない。制圧前進あるのみ」(アメリアの安全のためならな)

「金貨100枚で、どうかしら?」

 

 メチャクチャなことを抜かす俺に対して、苦虫をすり潰して舐めるような表情でエレノアが尋ねてきた。

 ……。

 …………?

 

 金貨といえば、1枚で1年は遊んで暮らせるレベルの通貨単位だが、……100枚でどうとは??

 

「貴様正気か?」(何を言ってるんだ?)

「ええ。……人身売買なんかには詳しくはないけど、それでもあなたにとっては十分納得できる金額のはずよ」

 

 ……人身売買?

 何か話が飛躍しているような気がするのだが……。

 

 俺にとってはアメリアが安全であれば何も言うことはないのだが。

 未だに要領を得ていない俺に対して、エレノアは続けた。

 

「私たちの身の安全と、あなたの婚約者――あなたにとっての奴隷かもしれないアメリアを金貨100枚で買い取るわ」

 

 なんてことを宣った。

 

 ああ、人身売買ってそういうことか。

 

 エレノアとアメリアの身の安全については、まあいいだろう。彼女にとって今最も必要なものをお金で引き換えに保障してもらおうとしているのだから。

 けど……。

 

「金貨100枚あれば、あなたが望むことはなんでも叶うわ。一等地に豪邸を建てるもいいし、東の島に別荘だって作れる。酒池肉林だろうがなんだろうが思いのままよ」

 

 金貨100枚の価値を俺に力弁するエレノア。

 俺の興味を金貨に寄せようとしているのだろう。それはわかる。

 けど。

 

「ナイトフォール家が肩代わりしてくれたこの娘の父親の借金、金貨6枚と差し引いても――」

 

 だけど――!

 

「見縊るなよ、エレノア・クレイトン」(見縊るなよ、エレノア・クレイトン)

 

 真っ直ぐエレノアを見つめながら、俺は続けた。

 

「そこの女を金貨100枚程度で買おうなどと、思い上がりも甚だしい!」(アメリアは金貨100枚で買い戻せるものだと思っていたのか!?)

「……」

「貴様の全財産を差し出さぬ限りは交渉の場にすら立てぬことを知れ!」(一人の親のつもりなら、自分の娘を守りたいつもりなら、なんで俺なんかの婚約者にした!)

 

 未だに娘を背中に守るように立つエレノア。

 リアンナをけしかけて俺を追っ払おうとしていたエレノア。

 だったらなんで――、

 

「端金で相手できるナイトフォール家と思うなよ、この成り上がり?」(赤の他人に豪邸だの別荘だの買える金渡せるほど稼ぐ時間があるってんなら、少しは娘の面倒を見やがれ!)

 

 命の危機を前にして、娘を大事にしようとしている彼女が、なぜそんな大事なアメリアを俺の婚約者に出したのだ。

 アメリアが悲しむことなんて、軽く考えればわかるはずだ。

 

 たとえ一人悲しんでも苦しんでも、アメリアはクレイトンのためなら――自分の母親の持つ商会のためなら我慢し続けるのだ。

 アメリアと長い付き合いもなければ深い関わりも持てなかった俺でもわかったのに、母親の彼女は知らないはずもない。

 

「貴様のような愚図の娘がナイトフォール家の末席を汚すことすら気に食わん!!」(俺みたいなのからアメリアを守ってやるのが、あんたの役目だろうが!!)

 

 胆汁辛酸を嘗めるような顔のエレノア。

 対してその後ろで、母親が怒鳴られていることに対して不満げな表情のアメリア。

 

 父の借金。金貨数枚。

 それだけでアメリアが俺の婚約者――ナイトフォール家の人質にならないといけなくなったこと自体が謎に思える程には硬い絆で結ばれていそうな親子。

 

 その実態がいかようなものを詳しくは知らずとも。

 娘のために体を張る母親と、母親のために怒る娘。

 それだけで察せられることが多いのだ。

 

「精々その端金はそこの小汚い娘のためにでも使え」(金貨なんかいらない。代わりにアメリアのために使え)

 

 だからこそ。

 

「そこの小娘はもはや奴隷にすら値せぬ」(この婚約は無かったことにする)

 

 俺は一方的に宣言して、部屋から出ようとドアに向かった。

 

 本当は騎士団が到着するまで部屋で待機し、それまでに降りかかる火の粉を払えばいいだろうと思っていた。

 あれだけの騒ぎ、騎士団が到着するまで時間はかからないだろうし、姿を見ないリアンナもおそらく騎士団を呼びに行ったとかだろう。

 

 目を閉じて一息をつく。

 少しイライラしすぎた。

 

 歩き出す俺。

 だが、そんな俺の右手を握る柔らかく暖かい感触。

 なんだと思い、振り返ると――

 

「……?」

 

 俺よりも困惑した顔で、俺の手を握った自分の手を見つめるアメリア。

 そんな彼女の態度にすら、俺はなぜか苛立ちを覚えた。

 

 †

 

 大嫌いな男。

 傍若無人で尊大不遜。

 周りに迷惑しかかけない。

 

 そんな男が。

 大嫌いなのに。

 

 心配そうな顔ひとつもしないでずっと仏頂面で。

 お母さんにも酷いことを言い続けて。

 私たちを助けたのに、澄ました顔でカッコつけて。

 

 大嫌いなのに……!

 

 力んだ心の勢いが、まるで振り下ろすことができない拳のように失速していきます。

 それもこれもベリアルのせいです。

 ……彼の行動が理解できません。

 

 彼――ベリアルがここにいる理由。

 お母さんが言うには、……ベリアルは土砂降りの中私を探し続けたらしい。

 

 なぜ……。

 なぜなんですか。

 そんな義理もないし、そんな関係でもないでしょう、私たち。

 

 私を探し出したところで、何かするわけでもないのに。

 未だに口汚く罵り続けるベリアル。彼は、私に指一本すら触れることはないのに。

 

 婚約者だから探した?

 あなた、そんな人じゃないでしょ!

 いつものように他人のことなんて気にせず、家に帰ってふんぞり返って……。

 悪なら悪に徹しなさいよ!!

 

 そう怒りたい気持ちでも、なぜか……。

 ベリアルが私を探していたと聞いたとき、……心が暖かくなったような気分になってしまって……!

 大嫌いな相手にそんな気分になる自分が嫌になるし!

 嫌になってしまう自分ももっと嫌だし!!!

 

 騒ぐ心で、私は訳もわからず、部屋から出ようとするベリアルの手を握って――。

 

 バシッと繋がれた手を離されました。

 当然です。私のこの行為にはなんの意味も理由もありませんし、ベリアルが立ち止まる理由もありません。

 

 ……どうでもいい相手なのに、拒絶されたことで胸にチクリとした痛みが走りました……。

 

「ど、どこに行くの!?」

 

 とりあえず、そう尋ねてみたのですが

 

「外にいる奴らを蹴散らしてくる」

「危ない、よ……」

 

 私が弱々しく返すことしかできませんできた。

 

「貴様、誰を心配しているつもりだ?」

 

 凄むようにして、私を睨みつけるベリアル。

 その普段と異なる雰囲気。……私にはわかります。

 彼は今、本当に苛立っているのだと。

 

 その理由は……。

 どう考えてもわかりません。私のせいなのか、私のせいじゃないのか。

 言葉と違う彼の本音を察するには、私たちは余りにも一緒に過ごした時間が少なすぎるのです……。

 

「俺は貴様のような塵芥の主人ではなくなった。今更気を引こうなど、遅いわ!」

 

 倒れている男から曲剣を引き抜きながら、ベリアルは私に叩きつけるように宣言しました。

 ……つまり、どういうことでしょう。

 

「つまりは私との婚約を破棄するということ……、なの?」

「そんなものなどハナからなかった。それとも、我が人生の汚点になるつもりか?」

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

 確かに私は望んで彼の婚約者になったわけではありません。

 彼と過ごす時間は私にとって気が休まるものだったなんて思ったことは、……ほとんどありませんでした。

 

 彼は私の婚約者失格です。

 

 でも。

 責任をベリアルにだけ押し付けられるものでは、……ありません。

 ……失格は私も同じです。

 

 喋れば罵詈雑言、歩けば尊大不遜。

 そんなベリアルでも。

 

 私がついていけないほどの研鑽を毎日積み。

 自由に出歩けない私を、従者だなどと言い訳をして劇場にまで連れ出し。

 追いかける必要もないのに、土砂降りの中で私を探して。

 

 そんな彼の行動がどれも意外で。

 だからこそベリアルの気持ちに興味が湧いて。

 それでも、私は今まで彼のことを知ろうとしていませんでした。

 

 ベリアルが私を傷つけた、と思えば気が楽です。そうすればこの物語の悪役はベリアルだけだから。

 でも、私はベリアルの何も知らない。

 

 眼に見える彼の悪さだけ。耳で聞く彼の噂だけ。

 私はそれしか、目の前の男の子を知らない。

 

 だからこそ、私も彼の婚約者失格です。

 

 そう考えると、なんだかしっくりきてしまいました。

 婚約……。今まで私は一方的にベリアルが悪いと決めつけていたのでしょう。

 でも、私たちの問題だと考えれば……。

 

「汚点……」

 

 彼の先ほどの言葉を少し反芻してみます。

 なんてひどい言葉。

 女の子を捕まえて、人生の汚点だなんて。

 

 私が物分かりのいい女じゃなかったら、それだけでビンタを一発もらってもおかしくないですよ。

 でも、私は……。

 私はベリアルの言葉に惑わされるつもりはもうありません。

 

「ベリアルは私のこと、そこまで嫌い?」

「……ッ」

 

 私の言葉にたじろぐベリアル。

 その変わらない表情でも、瞳の奥から戸惑いの色が見えています。

 彼を覆う、悪者というヴェールを外してみれば……。

 

「……ああ、貴様の顔を見るだけで虫唾が走る」

「そっかー……」

 

 覗き見える、辛酸を舐めるような感情。

 他人に対して悪感情しか抱かないような男の子が。

 こんなにも表情豊かで……。

 

「なんで、……私を追ってホテルまで来たの?」

「……」

 

 再び答えに困るベリアル。

 ……しばらく待ってみたのですが。

 仏頂面の男の子は黙することで誤魔化すと決めたみたいです。

 

「なんで、私と一緒に映画を見たの?」

「……」

「なんで、ルーカス様とダリウス様の誤解を解こうとした私を黙らせたの?」

「……、誤解ではない!」

 

 いつもの勢いはどこへやら、ベリアルは苦し紛れに反論してきました。

 誤解ではないって……。『嫌がる女を無理やり屈服させる愉悦』とか何とか言ってたのを忘れたわけでもないはずなのに。

 それとも、本気で私相手にそんなことをしたつもりなのかな?

 

 ふふっ。

 それこそありえません。

 私がベリアルに屈服なんて……、どう考えてもありえないよ。

 

「私はね、……案外ベリアルのこと嫌いじゃないよ」

「脳にウジでも湧いたか? それとも、ついに気が狂ったか?」

「……確かに、おかしくなったって言われても仕方ないかもね」

 

 ベリアル。

 目の前の男の子は。

 ひどく不器用でした。

 

 言いたいことを素直に伝えられず。

 いつだって仏頂面。

 誰にも理解されないし、いつだってひとりぼっち。

 

 私は……、もっとベリアルのことを知りたいと思ってしまいました。

 

「私との婚約を破棄したい?」

「ああ。二度も同じことを言わせるつもりか?」

「それ()私のため?」

 

 嘘を言わせない。

 私はまっすぐその澄んだ翠玉の瞳を見つめました。

 

「……、ナイトフォール家の栄光に縋るつもりだっただろうが、そんな企みは――」

「ありがとう」

 

 私のちっぽけな眼力に、彼を素直にさせる力はなかったようです。

 でも、その瞳の奥の真実の一欠片は掴めた気がします。

 

 彼の上辺の言葉なんてどうでも良かった。

 その取って付けたような貴族の振る舞いも。

 

 私のために婚約を破棄させようとしていた目の前の男の子に、私は呟くように話しかけました。

 

「私は……、誤解してたみたい」

「……?」

 

 ベリアルの険が取れた困惑の表情を見て、少し笑い出しそうなのを堪えます。

 ああ。やっと納得できました。

 

『自らの運命を他人の手に委ねるなど、貴様はそれでも生きているつもりか?』

『意思を示せ!』

『勝てないからと諦めるのか? 負けるからと逃げるのか?』

 

 彼からかけられた言葉。

 過酷な運命の星のもとで生まれた彼の生き方。

 

 それは全て――、私が自ら進んで、望まない婚約を破棄させるため。

 運命に抗う術がないと嘆いていた小娘を奮い立たせるための……。

 

 ……。

 最後に、もう一度だけ。

 どうしても確認してみたかったので。

 

「ベリアルはどうしても、私との婚約を破棄したい?」

「くどい! 三度目だぞ」

 

 覚悟が見えるその宣言。

 何があっても覆すつもりはない。

 ベリアルはそう言うつもりでしょう。

 

 ああ、私たちの関係性はここまで壊れてしまっていたのですね。

 望まぬ婚約を、彼はどうしても解消しないと気が済まない。それはひとえに、私のため。

 

「うん、……わかったわ」

 

 彼がどれほど頑固なのか、それは彼の一心不乱に鍛錬を続ける姿で知っているつもりです。

 だから私は彼の望みを受け入れることにしました。

 

「ふん、時間を掛けさせやがって」

 

 力なく吐き捨てるベリアルは、再び部屋を出ようと歩き出したので。

 

「……?」

 

 もう一度その手を取ります。

 先ほどとは違って強く。ベリアルが逃げられないように。

 振り解こうと曲剣を落としたベリアルの手を、精一杯の力で握りながら、

 

「意思を示せ、でしたっけ?」

「はぁ?」

 

 ベリアルからもらった言葉を返し、私は続けました。

 

「私の望まない婚約は破棄されました。なのでもう一度、婚約を結びましょう」

「?? 何を言っているんだ貴様?」

 

 壊れてしまった関係性はもう諦めましょう。初めから間違っていた道を歩み続けるほど、私たちもバカじゃない。

 けど壊れてしまったら終わりじゃない。

 もう一度、始めればいいだけの話。

 

「私はもう一度、ベリアル様と婚約を結びたいです」

 

 自然と心臓の鼓動が早くなるのを感じます。

 少しばかり頬が熱くなるように思えました。

 

 でも、ここまで来て、逃げるつもりはありません。

 

「……残念だったな。ナイトフォール家の威光をクレイトン商会にもたらそうと――」

「――いいえ。ナイトフォール家もクレイトン商会も関係ありません。ベリアルとアメリアの婚約です」

 

 これは私――私たちの物語。

 他人に操られた運命ではありません。

 悲劇のヒロインが主人公に救われる話、そんなものはどこにもありません。

 

「私たちの婚約、ゼロから始めましょう」

 

 柔らかく微笑みます。

 けど、ベリアルを見つめる視線は外さない。

 

 ああ。

 私は随分に身勝手になってしまったようです。

 誰のせいでしょうか。

 

「……なぜ俺が……」

 

 未だに抵抗を続けようとするベリアル。

 でも、私は決してベリアルの瞳から目を逸らしませんでした。

 

 私の想いから、彼を逃さないように。

 

 ………………。

 

 そして、先に折れたのはベリアルでした。

 

「好きにしろ」

 

 そう言うと、ため息をつきながら、その場にドガっと座り込むベリアル。

 

 やったっ!

 心の中で少しだけガッツポーズ。

 自分の意思を通すってこんなに気持ちいいんだなぁ。そう思えてなりません。

 

 けど、喜んでばかりはいられない。

 一度小さく息を吐いて、私はベリアルの手を離し、ベリアルと初めて出会った時と同じく肩に乗せました。

 

 さあ、もう一度物語を始めましょう。

 

「お会いできて嬉しいです、ベリアル様」

 

 初めまして。

 私の婚約者様。

 

 この婚約が綺麗事に終わらないのはわかっています。

 父の借金、クレイトン商会、ナイトフォール家。

 それらが背景にありながら、乙女の夢見る恋などは望むべくもないでしょう。

 

 でも、この一瞬だけでもいいから。

 手から伝わる彼の温もりを感じていたい。

 

 この気持ちが何なのか。

 私たちがどうなっていくのか。

 

 今はまだわかりません。

 でも、私たちはやっと、スタートラインに立てた気がしました。




 しばらくお待たせしてしまいました。

 更新が少しの間滞っていたにも関わらず、たくさんのUAやお気に入り、しおり、感想に感謝感激で涙が出そうです。
 実はこの作品、ハーメルンだけではなく、カクヨムなどの媒体でも連載をしており、どちらの読者も楽しんでいただけるようなものにしていきたいという考えを持っていました。ところが場所が変わればルールも変わる、カクヨムなどではスマートフォン端末でのアクセスが多いために、文字数が少ない方が読んでもらいやすく、そのための対応などもあって、改稿にかなり時間がかかってしまいました。
 そんな中、本文の記述については大きく変更はありませんが、登場人物などのレベルの変動があった際、ステータスの表記をすることに決めましたので、各話に散らばっていて読みにくいという方のために、後書きにて記載をしておきます。

  ☆ステータス☆

 【名前】ベリアル・ナイトフォール
 【基礎レベル】1
 【技量レベル】12
 【魔法属性】不明
 【魔法詳細】未習得

 【名前】アメリア・クレイトン
 【基礎レベル】1
 【技量レベル】8
 【魔法属性】不明
 【魔法詳細】不明

 【名前】アズーリ・ナイトヴェール
 【基礎レベル】30前後
 【技量レベル】70前後
 【魔法属性】不明
 【魔法詳細】不明

 【名前】ダリウス・ナイトフォール
 【基礎レベル】10~20程度
 【技量レベル】10~20程度
 【魔法属性】水
 【魔法詳細】大海の力を剣に纏い、潮として打ち出す。威力自体魔法にしては低い方ではあるが、範囲が非常に優秀。それは若き日のダリウスが絵本で憧れた、荒波を征して帝国と戦ったナイトフォール家の祖先の姿である。

 【名前】リアンナ・ド・ラクロワ
 【基礎レベル】100以上
 【技量レベル】100以上
 【魔法属性】不明
 【魔法詳細】不明

 ちなみに訓練などを受けたことのない一般人の平均のレベルは10を切る程度で、ごろつきなどはレベル10程度です。

 次回はフィナーレ(の予定)。事後処理や次章につながる話になります!

アメリア章の次はどれ?(確定ではありませんが、参考にさせてください!)

  • スタートラインに立ったアメリアの続き
  • 豹変系殺人メイドアズーリ章
  • 脳筋系暴力教官リアンナ章
  • 意味深系謎なのじゃロリ章
  • 人妻でも構わんエレノア章
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