(改訂前)尊大不遜系貴族悪役による凌辱ゲーの壊し方 作:全自動髭剃り
首都ホテル襲撃事件。
俺たちが巻き込まれることになったその事件の終わりは呆気ないものだった。
アメリアとエレノアと共にホテルの一室で待機していたとき、俄かに騒がしくなる外を窓から確認したところ、リアンナが率いる騎士団がホテル内部へと突入し、次々にテロリストを制圧していたのが確認できた。
俺たちの部屋までリアンナがやってくるまでそう時間はかからず、エレノアに襲いかかっていた男を叩き起こしてから縛り上げて逮捕していったのだった。
時間も遅く、ナイトフォール家に帰るための列車も残っていなかった俺に、エレノアはホテルの一室を用意してくれた。
ギリギリ泳げるんじゃないかと思うほどの浴場と、広々とした天蓋付きのダブルベッドが備え付けられているスイートルームだ。
前世でも味わったことのない贅沢を楽しみながら、ふっかふかのベッドの上で跳ね回っていると、俺の些細な楽しみを中断するようにコンコンと部屋のドアが叩かれた。
開いてみると、そこに立っていたのはリアンナだった。
「少年、感謝をしよう。エレノアとアメリアのことを守ってくれたことは、エレノアから聞いた」
「御託はいい。何の用だ」(はぁ)
スイートルームに備え付けのテーブルを挟んでリアンナと話す。
正直言って、未だに彼女には苦手意識がある。
確かにホテルまで騎士団を導き、突入の先頭を務めたのはリアンナで、彼女がいなければ俺が無事では済まなかった可能性はある。
感謝すべき相手だとは思うが……。
その前に彼女と交えた一戦。
あまりにもかけ離れすぎた実力差から、一方的に叩きのめされた記憶。
リアンナがその気になれば、この場で俺が惨殺されてもおかしくないという状況だっただけ、俺は落ち着ける気分にはなれなかったのだ。
「御託ではなく、本心からの感謝だ。君がいなければエレノアは無事では済まなかった」
「助けてやったつもりなど毛頭ないがな」
「あれでも一応幼馴染だ。友人を一人無くすところだった」
「貴様の事情などどうでもいい」
そんな格上相手でも絶好調な俺の口。
……今の所彼女に俺に対する害意はない様子なのでいいのだけど、彼女の気が変わった瞬間俺は肉塊になるぞ。
「ふむ。では君のことだが、左手は大丈夫か?」
そんな無礼な俺の態度を気にすることなく、リアンナは彼女自身が破壊した俺の左手のことについて尋ねてきた。
貴族服の布で縛り上げていたおかげで出血は止まっており、先ほどまでは動かなかったものだったが、今は力を込めれば何とかわずかに動いてくれている。この回復力はゲームの世界だからこそだろうか……?
「この程度はかすり傷だ」(まあ、はい。大丈夫ですよ)
「……そうか。それならば安心だ」
軽く動かしてみせる俺に対して、リアンナは目を軽く閉じながら返答した。
……その様子を見て幾分か緊張が解けた気分だ。
出会い方は最悪だっただけに、俺の口調のせいでリアンナと戦うことになったものの、蓋を開ければ彼女は悪人ではないと判明したのだ。
悪人ならば傷つけた相手を労るなどしないだろうし、安堵の表情もしないだろう。
「話すことが終わったのなら出て行け」(俺のことは心配しなくても大丈夫ですよ)
「つれないな。……まあ、私がいては心休まらないか」
自嘲気味に話すリアンナ。
「だが、一応は事の顛末は説明しておこう。君も当事者ゆえ、な」
そう宣言すると、リアンナは現時点で判明している事実について簡潔に説明し始めた。
傭兵軍、黒獅子連隊が主導して引き起した首都ホテル襲撃事件の目的はエレノア・クレイトンの誘拐であった。
黒獅子連隊を雇った主謀者は未だ分かっておらず、その目的がクレイトン商会なのか、はたまたエレノア個人なのかは判明していない。ただ、手がかりがないというわけではないので、今後大規模な調査が執り行われる予定である。
肝心の黒獅子連隊といえば、間一髪騎士団の包囲から逃れ、屋上に待機させていた飛行船で現場を脱走。対空攻撃が可能な魔法使いがその場にいなかったのもあって、対抗手段のなかった騎士団は指を咥えてただ見守るしかなかった。
国際的な組織である黒獅子連隊の対処は警察組織である騎士団が単独でできるものではなく、事の次第では共和国の国防省が交渉に出る可能性があるとのことだ。
ただ、現状厳戒態勢を敷いているホテルが再び襲撃される可能性は限りなく低く、ひとまずは安心しても問題ないのだそうだ。
そんなことをひとしきり語り終え、リアンナは一息ついてから俺の目をまっすぐ見ながら口を開けた。
「時に少年」
「いちいち勿体ぶるな。話があれば話せ」(なんですか?)
「聞くに君はアメリアと同じ歳の13歳だったのだな」
「調べたのであれば俺に聞く必要もあるまい」(はい)
「それもそうだな。……それで、君は士官学院に興味はあるか?」
何かを期待するような眼差しで俺を見るリアンナ。
士官学院。原作LHの舞台となる場所だ。
ベリアルが入学する場所で、原作LHの主人公との決闘など色々な原因で命を落とす場所。
興味がないと言えば嘘になる。原作LHの凌辱展開を壊すためには、通わないといけない場所だ。
……それに、アメリアのこともあるし。
「確かにルシフェル士官学院の門戸は狭い。優秀さを見せなければ末席にすら辿り着けないだろうが、君ならば問題なく入学できるだろう」
「ふん、俺を誰だと思っている?」(褒めてもらえるのは嬉しいですけど……)
「ふむ、さすがはナイトフォール伯爵家の子息ということか。志が高いことはいいことだ」
無駄に胸を張った俺の発言に対して、満足そうに頷くリアンナ。
入学試験の形態すら知らないけど、問題なく入学ができると太鼓判をもらえるのは嬉しいものだ。
ただ俺が疑問に思うのは、なぜリアンナが俺の士官学院行きに興味を持っているか、なのだけど……。
「俺がどこに行こうが、貴様に関係なかろう?」(なぜそんな話を俺にしたんですか?)
「いや、そういう訳でもないさ」
リアンナはその長い栗色のポニーテールを揺らしながら立ち上がると、
「私はルシフェル士官学院の教員をしているんだ」
誇らしげに、だけどどこか寂しげに、彼女は胸を張りながら話したのだった。
†
暴力系教員のリアンナが部屋から退散し、やっと静けさの訪れたスイートルーム。
再びふかふかなダブルベッドに飛び込み、目を瞑る。
本当に色々なことがあった一日だった。
初めての列車旅から始まって、LHとは関係のない知っているキャラクターが演じる映画劇、アメリアとの初めての喧嘩、リアンナとの死闘、そして首都ホテル襲撃事件。
異世界で初めて家から出たにしては、あまりにも色々ありすぎたのだ。
「疲れたなぁ……」
肉体的な疲労も、精神的な疲労も、どちらも限界に近かった。
ただ、どちらがより辛いかといえば、精神的な疲労だ。
「やっと婚約を破棄できたのに、何が起きてるんだよ……」
アメリアとの婚約。この婚約自体、凌辱ゲーを盛り上げるための設定のはずだ。
主人公の選択肢次第でアメリアは俺に〇〇されてしまう、みたいな。抵抗もできず、アメリアは俺のなすがままされ……。
いや、そんな想像をすること自体がしんどくなってきた。
彼女をただのゲームのキャラクターだと見るには、俺が彼女と過ごした体験があまりにも濃すぎた。かわいそうなのは抜けない……とはちょっと違うか。
ただ、変わらないこともある。
「アメリアのことを守らないといけない」
今日の出来事だけでもわかる。
この世界は確実に彼女に毒牙をかけようとする意志が働いている。
確かに首都ホテル襲撃事件の目的はエレノアだったかもしれない。
だけど、アメリアの存在が大きく関係していると俺は睨んでいる。
なぜ今日なのか。
なぜ首都ホテルなのか。
なぜ襲撃のタイミングで丁度エレノアとアメリアは一緒にいたのか。
俺がアメリアと一緒に首都に来たのは本当にただの偶然で、喧嘩別れをした彼女が首都ホテルに来たのも偶然だ。確率論的にいえば、アメリアが首都ホテルに来ているタイミングでテロリストが襲いくるなんてのは、どう考えても
さらに、エレノアが襲われたのはアメリアと一緒にいるとき。
もはや狙ったかのようにアメリアが被害者になるように仕向けられているのだ。
「アメリアを一人にするのは危なすぎる。ただでさえ周りの目を引くような容姿だし」
再び決意を固める俺だった。
だが決意だけでどうにかなるほどにこの世界は甘くない。
襲いくる睡魔に抗いもせず、微睡の中で当たっているかどうかもわからないような考察をしながら、俺は羽毛布団の温みを堪能し続けた。
傭兵軍のこと……。
学院のこと…………。
やがて抗いがたい眠気の波に飲まれて……。
†
「あんたは……」
何もないただただ広い空間。
そこには俺を睨みつける――ベリアルがいた。
「……」
ベリアルはその翡翠の瞳を一寸も揺らさずに俺をまっすぐ見つめ続けている。
その表情からは……何も感じ取れない。
自分の呼吸の音しか聞こえないこの空間に、多少の居心地の悪さを感じる。
それに、俺のことを観察している訳でもなく、ただただひたすらに睨みつけ続けてくる視線も心休まるものではない。
「ベリアルなのか?」
俺は自分から会話することを試みた。
待ち続けても、彼から話を始めることはないだろう。なぜだかわからないが、そんな確信があった。
「……?」
首を傾げるベリアル。
初めて彼からのリアクションが得られた。
「それを、……貴様が俺に問うのか?」
だが、俺が予想していた返答ではなかった。
俺としては、てっきり彼が本物のベリアルで、俺が乗っ取ってしまった体を返すように要求でもしてくるとか、そういった展開になるものだと思っていたのだが……。
「えーと、あんたはベリアルじゃないってこと?」
「……ベリアル・ナイトフォールは貴様だろう?」
何いってんだこいつとばかりに尋ねてくるベリアル。
いやいや、俺は別にベリアルじゃないんだが。……って言葉自体もおかしいけど。
「じゃああんたは誰なんだ……?」
「俺は……」
現状を確認するためにも、目の前のベリアル――いや、彼が誰なのかを把握する必要がある。
そう思った俺の問いに対して、彼は……長い長い沈黙を保った。
「……」
「…………」
「………………」
「――いや、なんか喋れよ!」
長い沈黙に耐えきれなかったのは俺だった。
生徒会長の浮気がバレた直後の委員会も同じくらいみんなして押し黙っていた。ちなみに何度も言うが副会長が彼女で、風紀委員を務めていた副会長の妹が浮気相手だ。
「……俺は誰なんだ?」
溜めに溜めた彼の口から出てきたのは、なんとも拍子抜けな言葉だった。
え? 俺は誰……? あんたが本物のベリアルじゃないのか??
「えーと、じゃあ、ここはどこかわかるか?」
「……いつの間にかできた空間だ」
「いつの間にかっておい……」
どうやら彼もこのおかしなシチュエーションがなんなのかわかっていないようだった。
というか、空間っていつの間にかできるものなのか……?
「困ったなぁ……。ちなみに、あんたが知ってることを教えてくれないか?」
そんな曖昧な質問に対して、見慣れてきた“俺”の顔を顰めながら、彼が捻り出すように返答した。
「俺は……、……俺は存在しないはずだった」
「存在しないはず??」
「そうだ。俺は一部であって、全部じゃない」
よくわからないことを呟くように語る彼。
一部であって全部ではない……? 禅問答かな?
「切り離されたのか、俺は?」
「…………」
話すと再びまっすぐ俺を見つめる彼。
しかしそのまま黙りこくってしまう。
「……………………」
「……え? 俺に聞いてるの?」
「貴様以外ここにいるのか?」
「いや、いないけど……。切り離すとかなんとか、残念ながら俺は何も知らないぞ」
彼が一体何の話をしているのか、残念ながら俺には何一つ理解できていない。
申し訳ないが原作LHをプレイしていないので、もしもLHで語られる何らかの事象ならば、俺は俯瞰者ではなくただの当事者だ。
「貴様は……、理解不能だ」
「理解不能……? どういうこと?」
「その精神性……。これは俺が切り離されたゆえか? ……貴様はなぜ変わらない……?」
「????」
先ほどから意味のわからない言葉を並べ立てる彼。
理解不能と言いたいのはこちらだ。
そう思う俺とは裏腹に、彼はその独り言を加速させる。
「目的は存在したが現在は不明瞭。精神作用の弱体化は発生していないか不発に終えた。因果律の修正に必要なリソースの計算――シミュレーションの権限が存在しない。敵対因子の判定、不可能。現状の理解は不――」
「え、えーと、とりあえず一度落ち着こう?」
過呼吸を繰り返しながら壊れた機械のように言葉を繰り返す彼。何か不測の事態に直面してパニックに陥っているような雰囲気も感じられる。
そんな彼を落ち着かせるために、声をかけて両肩に手を置いた。
ブルブルと震えるその体を落ち着かせるように背中を摩ると、
「貴様……」
彼は少しだけ落ち着きを取り戻し、俺の手を振り解いて俺の目を睨み始める。
ここまでくれば、何だかその視線に対してあまり悪感情を抱けなくなってきたな……。
「何があったか知らないけど、……焦っても仕方ないだろ?」
「……。知らぬ」
そう言うと、彼は目を瞑った。
「そ、そうか……。その、なんだ。なんか困ってるなら手を貸すけど」
「いらぬ。俺は指令を遂行するまで」
そう言うと、彼は手を振り上げる。
「これが正しいかどうかは知らぬが、俺は定義に従うのみ。ゆえにこそ、――全てはオルドレグのため」
「は?」
刹那その手より溢れ出る深紫の閃光。
「ぐっ! おいッ!」
「これにすら抵抗できるのか、貴様は」
不思議そうな声を出しながらよくわからない攻撃? を切り出す彼。だけどそんなのは今のところどうでもいい。
それよりも、彼の口から出てきた聞き捨てならない名前!
その不吉すぎる名前を口にした彼に、なんとかして詰め寄ろうとしたが。
「ならば出力を強めるまで」
「な……ッ!?」
俺の精神は、その光に削られるように蝕まれていき――。
狭まる視界で無表情な彼は一切の容赦がなく……。
抗おうとした俺のちっぽけな意志は光に――。
†
私の容姿を褒めてくれるのは嬉しいのですけど、どうせなら面と向かって言ってくれてもいいのに。
今日のお出かけの時も、私なりに一生懸命頑張って服を選んでみたのに、その険しい表情をほとんど変えなかったのは納得いきません。
先ほど部屋から聞こえた彼の言葉に気恥ずかしさを覚えてしまって、誤魔化すように文句を並べ立ててしまいました。
陰で褒めたところで嬉しがると思われたくないですから。……といってもベリアルは盗み聞きをされていることに気づいている素振りはありませんけど。
いい加減彼の部屋の前で盗み聞きする悪い癖は治そうとは思っています。
けど、どうしても好奇心に駆られてしまって……。
「もう少し素直になってくれたらいいのに……」
ため息混じりにつぶやきます。
お母さんに事情を話し、ベリアルの婚約者であることを認めてもらうまでに時間はかかりませんでした。
態度や口調はともかく、ベリアルの行動に対してお母さんも思うところがあったらしく、さらにはリアンナさんの口添えもあって、私が嫌になったらすぐに逃げるという条件付きで認めてもらえました。
……正直なところ、ベリアルの婚約者に戻ったことが正しいことかはわかりません。
私が彼を悪しからず思っていることは事実です。でもだからと言って彼に対するこの気持ちが恋慕なのかと訊かれると、軽く首肯できるものではありません。
お互いのことを知るには、あまりにも短く浅い付き合いでしたから。だからこそ私はやり直したいと思いましたし。
だからといって彼から助けてもらった恩を無碍にするつもりはありません。
ベリアルは私の婚約者以前に、私のお母さんを救った命の恩人なのですから。
彼の眠るベッドの隣に椅子を置き、そこに座ります。
独り言を終えてすやすやと眠るベリアルの寝顔を覗き見しながら、彼の様子を伺ってみました。
「うぅ……。……」
少しうなされているような……。
心配になってベリアルの口に耳を近づけみます。
「貴、様は……。…………存在、……して、…………いけない」
私は迷わずベリアルの手を握りました。
ベリアルの口から出る言葉が、何だか不吉なものに聞こえて……。まるで世界に自分がいることを咎めているような言葉だったので。
「大丈夫よ。ベリアルはいちゃいけない存在じゃない」
疲労から沐浴もできず、雨に打たれてカサカサに乾いたその金の髪を撫でる。
小さな声で、
「私がいるから、……大丈夫よ」
子供をあやすように。
普段の彼なら拒絶するでしょうけど。
「…………」
少し落ち着きを取り戻したベリアル。
私にしたことが少しは役に立ったのでしょうか。
……思えばベリアルはいつも独りでした。
ベリアルに積極的に関わろうとした人は、私を除けばアズーリさんくらいなもので、アズーリさんも屋敷の仕事でベリアルとはほとんど触れ合う時間はなかったはずです。
父親であるルーカス様や兄であるダリウス様には爪弾きされているような扱いを受け、アズーリさん以外のメイドたちには陰口を叩かれ、日によっては食事に嫌がらせもされている様子。
そんな中で育ってきたものだから、それがベリアルの心に深い影を落とすことになったと考えてもおかしくないでしょう。あの口調の原因になってもおかしくはありません。
ただ、その心の芯は優しい男の子だったのでしょう。
だからこそ、私やお母さんがこうして無事にいるのだから。
「今はゆっくり休みましょう」
その手を握りながら、私は目の前に小さなヒーローに語りかけました。
彼から感じる温もりは……。
……心地よいものでした。
†
「あーあ。獲物を取り逃しちゃったね」
拳銃型の双銃剣を手のひらで回して遊ばせながら、炎のように赤い髪を持つ少女は、嗜虐心たっぷりな笑顔でソファーに座る男に語りかける。
「意気込んだ割に、部下の暴走で全部が水の泡になったんだよね。ねーねー、今どんな気分?」
対する綺麗にスーツを着こなした男は、柔らかそうな笑顔を崩さずに答える。
「予想通りと言えば予想通り。計画通りに行かなかったことに対する落胆はありますが、次に活かせばいいだけのことですから」
「ちぇー、つまんないの」
そんな男のスカした態度が気に入らず、少女は興味を失ったかのようにその場を離れる。
向かうは黒獅子連隊所有の飛行船の甲板。夜風に打たれながら目下に見えるはずの首都の夜景でも楽しもうというつもりだ。
「今日でもってあなたたちとの契約は満了した。その認識が共有できる?」
対して男に語りかける別の声。
先ほどの少女とは対照的な、氷の粉を振り撒きそうな白い髪の少女。特に武器を携行している様子はない。
「ええ。問題ありません」
「そう。……更新の意思は?」
「残念ながら先方より優位な条件は提示できないので、遠慮させていただこうと思っています」
あっさりと引き下がる男に対して、少し違和感を感じる白髪の少女。
「あなたたちの“計画”の実行には私たちの武力が不可欠なはず」
「はい、その通りですね」
「ならばなぜ……」
そこまで話すと、ハッと気づく少女。
「……それすらも“計画”の一部?」
「……ふふっ」
そんな彼女の反応を見て愉快そうに笑う男。
「流石に軍団長代理は聡明でいらっしゃる。ですが、残念ながらその考察には否定をさせていただきましょう」
「……」
「どうですか、傭兵軍を辞めてこちらに来るのは? 待遇は応相談――いや、確実に貴女が満足するものを約束いたしますよ?」
鈍い眼光を放ちながら語る男。
だが、
「断る。あなたたちの予言書信仰に興味はない」
間髪を入れずに拒絶する少女。
やれやれと首を振る男。
「信仰だなんて勘違いも甚だしい……。といっても信じてはもらえないでしょうね」
立ち上がり、船内の制御室の出口へと向かう男。
白髪の少女はその背中を確認すると、少女は再び夜空の映る窓に向き直った。
「ですが――」
立ち去る直前、男は意味深に呟く。
「――貴女のその行為すら、予言されていたものだと言ったら?……なんちゃって」
そんな妄言には耳を貸さない白髪の少女であった。
†
〇〇大百科
アメリア・クレイトン
【プロフィール】
所属:クレイトン商会臨時代表→ルシフェル士官学院
出身地:オルディア共和国首都
武器:改造魔導ライフル
スリーサイズ:秘密です
【概要】
Last Hope 奪われた世界と凌辱の唄(以降LH)のヒロインの一人。共和国最大の商会の一つであるクレイトン商会の臨時代表の一人。
癖の強いヒロインが多いLHで数少ない癒し枠。柔らかい微笑みと腰の低い口調から、彼女に一目惚れしたプレイヤーは数知れずいたという。人気投票で常に上位に位置することからも、その人気は窺い知れる。
ただしアメリアルートの難易度は非常に高い。例えば、選択肢のミスによる好感度稼ぎの不足は、今作切っての竿役ベリアルによるNTRルート直行に繋がる。一見負けイベントかと思えるようなバトルでの勝利も求められる上、敗北した場合は問答無用でDEAD ENDに叩き落とされる。
さらにアメリアルートに進まない場合、基本的に他のヒロイン同様、彼女のたどる運命は悲惨なものになる。そのため、1周目でアメリアと結ばれたプレイヤーが2周目で絶望するのはあるあるの光景である。
【来歴】
本編開始数年前に父親の借金によってベリアルの婚約者とさせられてしまう。彼女の所属するクレイトン商会の財力でもってしたら端金に過ぎない程度の借金だったが、妻であるエレノアからの叱責を恐れたアメリアの父は、ナイトフォール家にアメリアを差し出すことで借金を立て替えることにした。さらに妻には、伯爵家との縁談に成功させたと誤魔化すことによって、自身の借金の存在も隠し通そうとした。
だがその企みは全てエレノアに筒抜けであり、娘を取り返すために首都へ戻ってきたところで黒獅子連隊による襲撃に遭い、死亡してしまう。それ以降、アメリアはクレイトン商会の臨時代表を務めることとなった。
(後略)
実はエレノアが亡くなるのが正史でしたオチです。やったねベリアルくん、原作が壊れたよ!
もしもこの作品を楽しんでいただけたら、評価・感想を残していただけると、次話を書くモチベーションになります! よろしくお願いします!
ベリアルくんにヒロインが無事できた記念! とりあえず装飾用直剣を使っている武器ですが、ベリアルくんに似合う武器を選んであげてください!
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直剣で十分、奇を衒うな!
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無双ゲー主人公の定番、槍だ!
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雰囲気抜群、死神の鎌!
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魔導技術の結晶、ライフル!
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素手で戦え!