(改訂前)尊大不遜系貴族悪役による凌辱ゲーの壊し方   作:全自動髭剃り

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新章開始です!


少年編 サフィナ①

 

 日課の鍛錬室での運動をこなして、そろそろ厨房に行って食べるものでも探しにいこうかなーなんて思って出かけようとしたら、

 

「ベリアル! ご飯は一緒に食べようって言ったでしょ!」

 

 と、一家団欒の昼食の約束をすっぽかした俺にカンカンなアメリアが鍛錬室に戻ってきた。

 約束と言っても、アメリアが「今日こそ一緒にご飯を食べましょ!」と一方的に押し付けてきたものなので、俺に従う義務はないっちゃあない。

 

「あの食卓に俺の席はない」(俺が行っても微妙な雰囲気になっちゃうだろ……)

「またそんなことを……」

 

 ため息をつきながら、アメリアは続けた。

 

「そんなんだからみんなに誤解されてるのよ。ベリアルがいないと、私も居づらい雰囲気になるんだから」

「ふん」(ご、ごめん……)

「……今更顔を出しづらいかもしれないけど、せめてご飯くらいは一緒に食べたいの」

 

 彼女のシュンとした様子に申し訳なさが込み上げてきてしまう。

 けど、残念ながら、俺はベリアルなのだ。

 性格も口調も、ナイトフォール家の団欒に参加できるようなものではない。

 

「と言ってもベリアルは聞かないでしょうね。だから、アズーリさんに頼んでここまでご飯を持ってきてもらうことにしたわ」

「は?」(へ?)

「貴族の食事のマナーには疎いけど、運がいいことにベリアルも気にしなさそうだし、ここで一緒に楽しみましょ」

「むっ! 俺が食事のマナー程度など」

 

 勝手に喋り出す”俺”。

 あれ、食事のマナーを知らないことに対して思うところがあったのかな?

 

「そんなことを気にかける人でもないでしょ?」

「悔しいがお前の言う通りだな」(まぁね)

 

 アメリアのごもっともな言葉に対して頷く。これは俺の言葉であり、“俺”の言葉でもあるだろう。

 

 実は数週前にあったホテル襲撃事件の後、少しばかり言葉がマシになったのだ。

 言葉遣いとかがマシになったというわけではないが、多少は俺の意を汲んでくれるように変化した。

 前まではかなりの頻度で俺が話したかった言葉の真逆が出ていたのだが、少なくともアメリアに対してはそういったことの頻度は下がったように感じる。

 

 はっきりとした理由はわからない。

 でもきっかけはなんとなくあって、ホテルで疲れから寝てしまい、起きたらアメリアと手を繋いでいたとかいう、前世の生徒会長並みの青春の1ページを過ごしたあたりからだ。……会長はその後、2股疑惑から3股発覚で地獄を見たが。

 

 ということで、鍛錬場の端に置いてあるテーブルの前の椅子に座る。

 自分で飯を作る手間がなくなって楽だと言えば楽だが、この世界に転生して以来、初めてのナイトフォール家のご飯だ。少しばかり緊張する。

 

「よく家の厨房に忍び込んでたって聞いてたよ。ベリアルはいつも何を食べてたの?」

「栄養さえ取れれば十分なものだ」(適当に男の一人暮らし飯だよ)

「へえ。今度作ってみて欲しいかも」

「やめておけ。常人には耐え難い味気のなさだ」(美味しいものじゃないよ)

 

 ……。なんか俺自身に皮肉られてない?

 そんなには不味くないだろ。

 いや、確かに異世界なだけあって、食材の調味料もまるで違ってたけど、豚肉っぽい何かを炒めて、もやしっぽい何かをぶちこんで、塩っぽい何かで味付けしたやつ、それなりにいい味してたよ。

 米っぽい何かもちゃんと炊いて、ご飯っぽい何かができたし。

 

「怖いもの見たさかしら……、逆に興味湧いてきたかな……」

「お前に犠牲者願望があったとはな」(今度時間があったら作ってみるよ)

 

 犠牲者ってほどじゃないだろ!

 え、“俺”ってば毎回そんな気持ちで俺の飯を食ってたの!?

 地味にショックだわ……。

 

 などと、転生後何度目かわからないショックを受けていると、鍛錬場のドアがコンコンと叩かれた。

 

「アメリア様はいらっしゃいますか?」

 

 高めの女の子の声だが、アズーリのものではない。

 屋敷にいるメイドの声は一通り聞いたことあったと思うが、ドア越しのせいか聞き覚えのないものだった。

 

「はい、待ってました!」

 

 そんなアメリアの声に反応して開かれる扉。

 給仕用の押し車の上に、まさに貴族の食事の象徴とも言える、柄付きの銀色の半球型の蓋がしてある皿が十数枚。

 溢れ出るいい香りに、思わず鼻が持っていかれそうになる錯覚に襲われた。

 

「失礼します」

 

 けど、そんな料理に対する感想は、彼女の声によって一瞬にして吹き飛んでしまった。

 

 既にどこかで何度も何度も聞いたことがある声。

 前世含めて。

 感情の起伏が聞き取りづらくとも、はっきりと喜怒哀楽がこもった、淡々とした声。

 

 反射的に彼女に目を向けてしまう。

 

 そこに立っていたのはメイド服を着た絶世の美少女。

 推し車に手をかけている少女は、どこをみているかわからないような微妙な表情。それすらも絵になるような……。

 

「誰だ貴様は」

 

 思わず”俺”の言葉がこぼれ出た。

 けど、俺はただただ絶句していた。

 

「ここがナイトフォール家と知って立ち入ったとなれば、ただでは置かないぞ」

 

 べらべらと喋る“俺”がいなければ、ただの石像になっていただろう。

 なぜなら――

 

「初めまして、ベリアル様。新たにこの屋敷のメイドになった、サフィナです」

 

 ――彼女は俺が知っている夢見の大陸シリーズで登場するヒロインで。

 決して原作LHで登場していいような女の子ではなく。

 

 先日、映画劇を演じていた主役だったのだから。

 

 †

 

 サフィナ・クロイツ。……いや、今はただのサフィナか。

 彼女は夢見の大陸シリーズを代表する登場人物で、攻略ルートの存在しない敵キャラでありながら、ヒロイン人気ランキングで上位を常に維持し続けた女の子だ。

 

 帝国編で登場するサフィナは、東方からの移民ということで、オルディア共和国出身であることは作中で説明されていた。

 オルディア共和国の劇場で一番手の女優として数々の映画劇を演じてきたのだが、共和国内部の問題によって劇場を追い出され、その後は帝国最大の財閥が所有する劇団に所属することとなる。

 

 帝国編では最終的には敵になってしまうが、それでも世界を救うために活躍を続ける主人公たちを見守り続けた、心優しい女の子。

 

 そんな彼女が、共和国でメイドを務めていた時期があるなんてのは、聞いたことがない。

 いや、ありえない。

 

 彼女がサフィナが帝国にまでやってくるとき、共和国からの追手に追われて、命からがらクロイツ財閥に拾われているはずで。

 そんな状態なのに、途中寄り道してナイトフォール家のメイドになるとか、無理がある……はずだ。

 

「どうしたの、ベリアル? 先からご飯も食べずに、黙り込んで」

「……考え事だ」(……ごめん、考え事してた)

 

 止めていた手を動かし、再びご飯を口に運び始める。

 だが、どうしてもすぐ隣でぼけっとしながら、こちらの食事の様子を見ているのか、いないのかわからないようなサフィナのことが気になってしまう。

 

「……サフィナのこと?」

「何?」(え?)

「先からサフィナさんのことを考えていたでしょ?」

「否定はしない」(なんでわかったの!?)

 

 どういう理屈か、俺の考え事をビシャリと当ててみせたアメリア。もしかして、エスパーか!?

 ……いや、普通に俺がサフィナのことを先からチラチラと見続けているからだろう。

 

「ふーん。サフィナさん可愛いですもんね」

「ああ」(まぁ……)

 

 アメリアの言う通りだ。

 サフィナは映画劇の女優なだけあって、傾国の美女……というには若々しい、傾国の美少女といった形容がぴったりである。

 さすが、ヒロインでもないのにヒロイン人気ランキングに食い込んでくるだけはある。

 

「水色の髪の毛もふわふわだし」

「ああ」(そうだな)

 

 答えつつ考える。

 この時点でサフィナと出会うことによって変わってしまうかもしれない原作の展開を。

 サフィナは良くも悪くも、夢見の大陸シリーズで非常に大きな役割を担うことになるのだ。

 

「女優をやっているだけあってスタイルも抜群で」

「うむ、さすがというべきか」(うん)

 

 原作LHの舞台となるオルディア共和国はともかく、夢見の大陸の帝国編では、彼女の存在がなければ、そもそもストーリーが始まらない。……はずだ。

 サフィナという女の子、いや、サフィナという存在は……。

 

「サフィナさんの美貌に目が離せないですよね」

「否定しない」(うん。……うん?)

 

 アメリアが少し拗ねたような目つきで俺を睨んでいた。

 ……深く考えずに適当に返事してしまっていた。えと、なんの話だっけ……?

 

「アズーリさんのこともよく目で追ってたし、ベリアル()ってもしかしてメイドさんが好みでしょうか?」

「否定しない」(え? なんの話!?)

 

 否定しろよ! 別に俺はメイド萌えでもなんでもないぞ!

 前世もメイド喫茶に行ったことなんて一度だけだし!

 

「へー。わかりました。よくわかりました」

「ほう。ならばその内容を申してみよ」(……何をそんなにわかることがあるんでしょうか……?)

「澄ました顔で隠してたけど、ベリアル様はメイドさんのお尻を追いかける変態だった、ってことです!」

「俺の趣味嗜好に口を挟むつもりか?」(違うよ!? そんなことしてるわけないじゃん!)

「……もう知りません!」

 

 そう言い放つとアメリアは、話はこれまでとばかりに食事に戻ってしまった。

 心なしか、ステーキに突き立てるフォークを握る力が普段の数倍に見える。……そんなに握ったら折れてしまわれませんか?

 

 すっかり悪くなったアメリアのご機嫌。

 ……何か後で埋め合わせをしないとなぁ。

 

 そう思いながら、俺も食事に集中することにした。

 

 †

 

 この世界が一筋縄ではいかないものだということは、転生してこの方数ヶ月の俺にはよくわかるものだった。

 凌辱エンドが待つ女の子たちを救いたい、その一心でやってきたのだけれど、原作LHに辿り着く前ですら、敵いそうにもない強敵が次から次へと現れたのだ。

 

 俺の兄であり、ナイトフォール家次期当主となる男、ダリウス。

 士官学院の教官をしているというリアンナ。

 運よく直接対決は免れた黒獅子連隊に所属するヴァイスたち。

 不意を突いたおかげでなんとかなったアメリアとエレノアを襲ったテロリスト。

 

 彼らの腕に違いはあれど、俺が勝てない相手だというのははっきりしている。

 アメリアのことはなんとかなったからといって油断でもしようものなら、容赦無く死神の鎌に寝首を掻かれるだろう。

 

 そう、俺は弱すぎる。

 体感……技量レベル15程度だろうか。基礎レベルは何かの間違いがなければ1のままのはずだ。

 攻撃を繰り出す速度などは技量レベルの向上のおかげで、少しは進歩がある。だが、基礎レベルが低いため、肉体的な強度が非常に低い。

 

 これじゃ、チュートリアルダンジョンレベルのボスですらダメージが与えられずに苦戦しかねないし、ちょっとでも攻撃を喰らえばすぐに倒れるスペランカーになってしまう。

 実際、リアンナによって腕を壊されただけで、俺は半日寝込むことになったのだ。こんな様じゃ、とてもじゃないけどアメリアや、……その他のヒロインたちを救うことはままならないだろう。

 

「はッ!」

「グッ!」

 

 振り下ろされる鍛錬用の直剣を、構えていた直剣で受け止める。

 鍛錬に混ざり始めた頃は先輩風を吹かせて圧倒していた俺の剣術も、鍛錬によって順調にレベルを上げてきた上に、天性の観察眼の高さから俺の癖を見抜き切っているアメリア相手には通用しなくなってきており、

 

「ッ――!」

 

 無理やり鍔迫り合いを逸らして態勢を仕切り直そうと、跳躍をしようとしたが、

 

「ここッ!」

 

 そんな俺の隙を見逃さず、逸らされた剣を片手持ちにして、一歩踏み込んだアメリアは、飛び上がった俺の胸ぐらを剣を離した左手で掴み、

 

「ぐえッ」

 

 跳び上がった体が、横方向の引っ張り力によって大きくバランスを崩し、体の重心を中心軸にして回転してしまう。

 背面から肩にまでかけての鈍い痛覚とともに、鍛錬室の高い天井壁と、アメリアの顔が視界一面に広がった。

 

 押し倒されるようにして倒されたのに気づいたのは、過去一番に不機嫌そうなアメリアの表情を数秒眺めてからだった。

 

「……」

「……」

 

 普段ならそのまま立ち上がって、もう一度立ち会うか、それとも一度お開きにしてお互い別々に剣を振るうか。

 けど、なぜかアメリアは真っ直ぐ俺の目を見ながら、俺の胸を掴む手を離さない。

 

 え、えーと?

 これはなんのイベントなのでございましょうか、アメリア様??

 もしかして、先ほどのことで相当ご立腹なさり、このまま私めを地面に擦り付け続けるつもりですかな?

 

「…………」

 

 うーん。黙して何も語らないアメリア。

 このままこんなよくわからない状況を続けても仕方ないので、

 

「はな――」(離してもらえませんか?)

「――明日」

「え?」(え?)

「明日、一緒に外に出かけましょう」

 

 眉を顰めていたアメリアの表情が一転して怖いほどにまで笑顔になった。

 直感で察する。拒否は許されない。

 ここでの抵抗は、ヒグマ相手にドラミングしてみせるレベルの愚行だ。

 

「いいだろう」(イェス、マム!)

「……」

 

 そしてようやく、アメリアは俺を掴んだ手を離してくれたので、立ち上がることができた。

 

 鍛錬場でアメリアに押し負けすることも珍しくなくなってきた。

 今回のように一方的にやられることはまだほとんどないけど、少なくとも楽に彼女を組み伏せられるなんてことはもうない。

 

 アメリアが自分自身を守れるようになったことは歓迎だ。

 けどどこか少し寂しい気分もある。……いや、別に彼女に成長してほしくないなんてのは微塵も思わないけど。

 でも女の子の前ではカッコいい姿を見せたいし、アメリアを守ってやれる自分でいたいと思ってしまう。それは男ってやつのさがだろ?

 

 けど、いずれにせよ、

 

「お前に言われずとも、誘う予定ではあったがな」(近いうちに外出に誘おうと思ってたんだよ)

「え?」

 

 首を傾げるアメリア。

 アメリアを誘おうとした理由は何個かあるのだ。

 

「たまには外の空気を吸いたいものだ」(ずっとはそこにいるのは息が詰まるだろ?)

「……そうね。お屋敷の中が居心地悪いとは思わないけど」

 

 まず、彼女の息抜きのため。

 アメリアはしっかりした娘だ。しっかりしすぎていると言っても過言じゃない。

 

「明日は俺の憂さ晴らしに付き合ってもらうぞ」(たまには外でパッと遊ばないと)

「憂さ晴らし……。それもそうね」

 

 頷きながら返答するアメリア。

 かなりの時間俺と一緒に鍛錬場にいてくれるし、それ以外の時間はどうやら屋敷の仕事の手伝いを自ら進んでやっているみたいで、何度か厨房で手伝いをしてるアメリアと鉢合わせたこともある。

 そんなものだから、たまには息抜きに外の空気でも吸ってほしいなと思っていたのだ。

 

「ついでに、林道にたむろう魔獣を蹴散らしにいく」(鍛錬の延長線上で、魔獣狩りも経験したいしね)

「魔獣……? それはハンターギルドの仕事じゃ……?」

 

 首を傾げるアメリア。

 お出かけをする、次の理由は基礎レベル上げである。

 鍛錬室でこもっていれば上げられる技量レベルと違って、基礎レベルの向上にはどうしても魔獣との戦闘が必要だ。

 

「魔獣如きに狼狽えたか。ふん、その調子では士官学院など夢もまた夢だな」(士官学院入学のために実技の訓練も必要でしょ?)

「むっ! 別に狼狽えてなんか……!」

 

 妙に煽り口調の俺に反発するアメリア。

 まあ、彼女の実力ならそこらの魔獣の相手は問題ないだろう。

 

 高純度の魔鉱石と呼ばれる核によって召喚された生き物というのが魔獣の定義である。

 この世界には魔鉱石があちらこちらに散らばっており、一定確率で魔獣の核になるレベルの純度を持つのだ。

 

 遺跡と呼ばれる、RPGでいうダンジョンのような場所に立ち入らない限り、高レベルの魔獣はいない。

 つまり、ピクニック感覚で出かける魔獣狩りは、俺やアメリアにとって非常に身の丈にあったものなのだ。

 

 また、魔獣を狩ると、力尽きた魔獣はやがて元の魔鉱石に戻る。その純度の高い魔鉱石は、この世界の様相を一変させた魔導技術において不可欠なものであり、前世でいうところの石炭や石油みたいなもので、どんな商店でも買い取ってもらえるものなのだ。

 これからのことを考えた時に、金策にもなるのだ。

 

「俺がどこに行こうが、お前はその後ろにつくのが当然であろう?」(……あと、普通に一緒に出かけたかった)

「……、どうせ私に拒否権はないよ」

「ふん、お前は俺のものだからな」(嫌なら断ってもいいんだぞ!)

「な……っ。…………」

 

 またまた俺の意思に反してベラベラとアメリアを奴隷宣言している“俺”の口。

 最近少しマシになったかと思ったらこれだよ……。

 

 最後の理由は、……前回のアメリアとの首都散策が失敗で終わったことへの埋め合わせだ。

 ()の無神経な発言がアメリアを傷つけたのは確かなこと。その後色々あって、なぜかひとまず元の関係に戻れたのだが、……それはひとえに彼女の寛大さからだろう。

 けど、彼女の心の広さに甘えるのは、筋も通らない話だ。

 

「わざわざお前のためにでかけるのだ。満足できぬとは思わないことだな」(当日、楽しみにしておいてね)

「…………。……じゃあ、楽しみにしてるね」

 

 何やら複雑な表情で呟くように返答するアメリア。

 映画劇ほどの娯楽を提供するのは難しいかもしれないけど、綺麗な自然の景色も悪くないものだと信じている。

 

 王国時代から続くここナイトフォール領は、共和国首都の近郊都市の西一角であり、さらに西へ少し進めば、ちょっとした丘陵地帯に入る。

 雨が比較的少なく、日射量の多い丘陵では果樹園がまばらに広がっており、そのど真ん中を通る路線は観光列車としても有名なほどには、景観のいい場所なのだ。

 

 っと、そういえば。

 

「それで、お前が俺を誘った理由を聞いていなかったな」(そういえば、アメリアも何か用事があった?)

 

 いけない、いけない。先ほどは自分の理由ばかり考えて話してしまっていた。

 アメリアが俺を誘ったのも何か訳があってのことだろう。そう思って尋ねたのだが、

 

「……、…………別に……」

 

 いつもは俺の目をまっすぐ見て話す彼女にしては珍しく、少しだけ視線を外しながら返答してきた。

 

「理由はないよ……」

「……?」

「……何か理由がないとダメなの?」

 

 再び不機嫌そうなアメリア。

 

「いいや?」(いや、そういう訳じゃないけど)

「じゃあ、もうこの話は終わり!」

 

 なぜかいきなり話を切り上げるアメリア。

 それに、少し頬を紅潮させながらちょっとばかり恥ずかしそうに俯いていた。

 

 ……なんだか無性にシュンと垂れた彼女の猫耳に触りたくなって手を伸ばしてしまい、それに気づいたアメリアにパシッとはたかれた。

 

 そんな俺のデリカシーのない行為に相当ご立腹だったのだろうか。

 その日の後の鍛錬での立ち合いでは、憂さを晴らすように暴れるアメリアにボコボコにされてしまった。

 

 †

 

「いてて……」

 

 肩をポキポキと鳴らしながら、鍛錬場から部屋に戻る。

 有り余るそのバイタリティを全て俺にぶつけたアメリアは、どこか満足げな気分で自室に戻っていった。

 

「人をサンドバッグのように……」

 

 本当に俺と同じ程度のレベルなのか疑いたくなるような戦いぶりだった。

 え? もしかしたら、気づいていなかっただけでいつのまにかレベルを抜かされたんじゃ……!?

 

「流石にないよなぁ」

「何が、でしょうか?」

「いやぁ、アメリアの方が強くなってることよ」

 

 最近じゃほぼほぼ一緒に鍛錬しているとはいえ、始めたのは俺のほうが早かったはずだし。

 初期レベルは、お互い1/1スタートだろうし。

 

「追いつかれたのは仕方ないとしても、追い抜かれないように頑張らないと」

「それはなぜでしょうか?」

「なぜって、そりゃ――――え?」

 

 得意げに喋ろうとした俺だったが。

 口どころか、一瞬にして全身が固まってしまった。

 

 え?

 

「……?」

 

 水色のふわふわなショートボブの髪を揺らしながら、少女――サフィナは首を傾げている。

 まるで話を続けろとばかりに。

 

 だけど、そんなくだらないことを喋る余裕は微塵もなかった。

 脳内を埋め尽くしたのは、疑問。

 今すぐに確かめないといけない、何よりも重要な問い。

 

 この世界に来て以来初めての現象。

 普通ならば、当然過ぎて語るまでもない事実。

 

 ただ二言、三言程度だが。でも間違いなくサフィナの前で。

 

 ――なぜ、俺の言葉が問題なく発せられているんだ?

  

 

 ☆日付☆

 大陸暦911年9月18日

 

 ☆ステータス☆

 【名前】ベリアル・ナイトフォール

 【基礎レベル】1

 【技量レベル】18

 【魔法属性】不明

 【魔法詳細】未習得

 

 【名前】アメリア・クレイトン

 【基礎レベル】1

 【技量レベル】17

 【魔法属性】不明

 【魔法詳細】不明

 




タグのある通り、アメリア章のコンセプトはツンデレの成長でした! サフィナ章のコンセプトはある程度進んだのちにまたタグに追加しようと思います!

もしもこの作品を楽しんでいただけたら、評価・感想を残していただけると、次話を書くモチベーションになります! よろしくお願いします!

ベリアルくんにヒロインが無事できた記念! とりあえず装飾用直剣を使っている武器ですが、ベリアルくんに似合う武器を選んであげてください!

  • 直剣で十分、奇を衒うな!
  • 無双ゲー主人公の定番、槍だ!
  • 雰囲気抜群、死神の鎌!
  • 魔導技術の結晶、ライフル!
  • 素手で戦え!
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