(改訂前)尊大不遜系貴族悪役による凌辱ゲーの壊し方   作:全自動髭剃り

17 / 19
お久しぶりです。遅くて申し訳ないです……


少年編 サフィナ⑤

「婚約者に逃げられて、追いかけようと思ってたら日が暮れた?」

「ああ、そうだ」

 

 燃えるような髪の修道女姿の少女――レイラは、呆れたような表情でこちらのことを覗き込んでいた。

 別に告解も懺悔もしたわけではないが、豪快に無遠慮な質問をしてきた彼女に、なぜか洗いざらい話してしまったのだ。

 

「ガキのくせして一丁前に婚約者ねぇ。坊ちゃんの親父にでも交通費くらい出してもらえなかったのか?」

「……父上は俺のことを屁とも思ってないだろうな」

「……事情持ちってやつか」

 

 木の椅子の上で行儀悪くあぐらをかきながら、レイラは続けた。

 

「それで、なんでまた婚約者に逃げられたんだ?」

「……取るに足らぬ話だ」

「そんなことでテメエみたいなガキの女の子が一人で家を飛び出すか。ったく、これだから男は大人でもガキでも……」

 

 やや主語のデカい物言いだが、滅多な言動をしてしまったのは間違いなく俺なので否定はできない。まるで何か実際に嫌な経験でもしたかのような口ぶりである。

 見た目じゃ20代にすらなってなさそうだが、口調や貫禄からしてそれなりに歳は食っていそうだ。

 などと彼女の外見を見ながら思っていると、

 

「……おい」

「なんだ?」

 

 半目になりながら、獰猛な表情で俺を睨みつけているレイラがいた。

 ……あれ? 俺なんかやったっけ?

 

「……」

「……」

 

 ひたすらに睨みを聴かせてくるレイラに困惑しながら黙して見ていると、

 

「あら、レイラ君じゃない?」

 

 野太い割にはやたらと愛嬌たっぷりな喋り方の男の声がした。

 音がした方に顔を向けると、そこにはピンク色のパンチパーマの筋肉もりもりなマッチョマンが立っていた。

 桜柄のタンクトップが真っ白なエプロンの端から見えている。

 

「それに、キミはベリアル君? 結構遅い時間だけど、おうちに帰らなくていいの?」

「なんだ、ロイド。このガキと知り合いか?」

「そうよ。なんだってラバルのハンターギルドの新星なんだから」

 

 生まれた星が違うような外見の男の名前はロイド。今日含めて数度魔石の換金にハンターギルドへ赴いた時に見かけたことはあった。

 職員たちのみならず、荒くれ者が多いハンターたちからもかなり慕われているようで、常に人集りができていた記憶があるが、触らぬ神に祟りなしって諺にもあるとおり、俺から近づくことはなかった。

 そんなロイドは、顔をグッと俺の方に近づけて、耳打ちをしてきた。

 

「レイラに歳の話は禁句よ? 口に出さなくてもエスパーを働かせて察してくるわよ」

「おい! 聞こえてるぞ!」

「あら? なんの話かしら?」

 

 ロイドに怒鳴るレイラの声は宿場のガヤガヤに溶けていった。

 どうやら気心の知れた仲のようだ。

 

 ロイドは無駄にパンピングアップされた上腕二頭筋をたっぷり使って運んできた夕食をテーブルに置くと、はち切れそうな大臀筋を木製の椅子に着陸させた。

 皿の上に乗っていたのは鳥類のロースト。見た目も、おそらく味も鶏だろうか。

 

「そういえばベリアルくん、お昼に魔石たっぷり持ってギルドに来てたわね」

「ああ」

 

 おかげで路銀には困らなさそうで助かっている。

 

「ったく、毛も生えてなさそうなガキが一人で魔獣狩りなんかすんじゃねえよ」

「貴様に言われたくはないがな(気をつけますよ……)」

「ンだと、クソガキィ!?」

 

 スーパーナチュラル失言タイムに入った俺に対して怒りを隠さないレイラ。

 残念ながら俺にはどうしようもない。いざとなれば尻尾を巻いて逃げる準備はしっかりしておこう。

 

「まあまあ、落ち着いてレイラちゃん」

てめえ(ギルド)もてめえらで登録もしてねえようなガキの魔石買い取ってんじゃねえよ。真似する馬鹿が現れたらどうする」

「それもそうね。じゃあ、今度ギルドに来た時に研修のお話もしましょうか、ベリアルくん。この支部じゃダリウスくんの登録最年少記録を抜けるかもね」 

「チッ……。ませたガキが二人もいるのか、この街には」

「あら、そう言うレイラも他人のことは……って歳の話は禁句だったわね」

「煽ってんのか、てめえ!」

 

 こめかみに筋を立てるレイラ。

 禁句だ禁句だと言われたせいなのか俄然気になってきてしまった。何歳なんだろう……?

 外見だけ見れば、かなり瑞々しい肌に艶やかな赤い髪、そこまで背が高いわけでもないし、……そのなんというか、第二次性徴期にまだだどりついてないような……

 

「お前もジロジロ見てんじゃねえ! ……ったく、これだから男連中は……」

「男の子の視線くらい許してあげるのが大人の女性の余裕って言うわよ?」

「おい、お前! 好きなだけ見てろ!」

「貴様の体は目に毒だ(見るか!)」

「……? ……、…………。そ、そうか」

 

 あ、あれ?

 なんか微妙な顔をしてから急にしおらしくなったぞ……?

 大人の女性の余裕って急に煽てられてすぐに態度変えたのもどうかとは思うが、目に毒だと言われてちょっと照れてるのはなんでだ……?

 

「め、目に毒だってよ……。ちったあ大きくなったのか……? 世辞ってわけじゃなさそうだし…………」

「何一人でぶつぶつ言っている?(なんて?)」

「お、お前には関係ねえだろ!」

 

 何を言ってるのかうまく聞こえなかったから聞き直したらなぜか怒られた。……まあ、口調が口調だし仕方ないか。

 そういえば服がちょっとキツく感じるなーとかって言いながら若干嬉しそうなレイラをよそに、ロイドが話しかけてきた。

 

「そういえばベリアルくん、夜遊びもいいけどそろそろお家に帰らないとルーカスちゃんが心配するわよ?」

 

 ルーカスちゃんが……。ルーカスちゃん!?

 え、この人“俺”の父親をちゃん付けで呼んでんの!?

 

「貴様に預かり知れぬ話だ(追い出されました)」

「全く、話し方も若い頃のルーカスちゃんそっくりになっちゃって。そんなところまでお父さんに似ちゃったら女の子に嫌われるわよ?」

「知るか。俺には興味のない話だ(ですよねー)」

 

 散々っぱらぶっきらぼうに言葉を放つ俺の口だったが、父親について興味深い事実が判明していた。

 まるで大理石みたいな雰囲気のルーカスにも、若気の至りみたいな時期があったのか……。

 

「その口調で婚約者に愛想でも尽かされたのか? かわいそうになぁ」

 

 と、不憫なものを見る眼差しでこちらを見るレイラ。

 というか、聖職者って言ってたんだから俺に対する慰めとかそういう言葉じゃないのか……? ……いや、レイラの外見から察するべきだった。修道服にプロテクターつけてるやつがまともな牧師なわけないじゃん。

 それよりもよほど、お隣にいるオカマ筋肉ダルマのロイドの方が慰めをしてくれそうな雰囲気だ。

 

「え? ベリアルくん、アメリアちゃんに愛想尽かされちゃったの?」

「ふん、それ如きで実家に逃げ帰るなど、浅慮なやつだ(……まあ、否定はしませんよ)」

「あらぁ、それで追いかけようとしてあんなにたくさんの魔石をギルドに持ってきたわけね……」

「列車に乗れず徒労に終わったがな(最終列車には間に合わなかったんですけどね)」

 

 でなければここで夕食を食べてはいなかったはずだ。

 というか、よくよく考えてみれば手ぶらで家を飛び出したのは少し短慮だったのかもしれない。俺を追い出す決定をしたダリウスが路銀なんてくれるわけはなくとも、せめてサフィナに少しお願いしておけばよかったかもしれない。

 

「へー。運はいいんだな」

「?」

「確かにそうかもしれないわね〜」

 

 少しばかり反省をしていた俺に対して、レイラとロイドはそんなことを言い出していた。

 運がいい……? なんの話だろう?

 

「どういう意味だ?(どういう意味ですか?)」

「なんだ、知らなかったのか?」

 

 意外そうな顔でこちらを見るレイラ。

 

「お前が乗るはずだった首都行きの最終列車、魔獣の突進による脱線事故に遭ったんだよ」

「は?(え?)」

「ハンターギルドの方でも何か手伝えることがないか調整していたのだけど、騎士団の方に止められちゃってねぇ……。怪我人とかは出てないから良かったけどね」

 

 脱線事故……?

 真っ先に脳裏に思い浮かんだのはアメリアの顔だったが……、流石に彼女が事故に巻き込まれたとは考えられない。真っ昼間に飛び出してから追いかけ続けても姿が見えなかった彼女が最終列車に乗ったなんてことはあり得ないだろう。

 

「騎士団の野郎どもか。……碌な仕事もできねえくせに、でしゃばって人気取りに来たのか?」

「こら、めったのことを言うんじゃありません。私たち(ギルド)も一応は騎士団とは同業者よ?」

「けっ、どうだかな。協定じゃあ国家安全保障に関わる事案以外で騎士団はギルドの口出しできねえって話だっただろ?」

「うん。そのことに関して聞いても、頑なに対話を拒否されちゃってね〜」

 

 ひとまず一安心といったところだが、気づけば目の前ではやたらとスケールの大きい話がなされていた。

 ギルドと騎士団の対立とか、国家安全保障とか。あまり関わりたくない話だ。そういうのは貴族であるルーカスにその後継であるダリウスが考えるべきものだ。

 

「なんとか聞き出せた話によると、復旧には数日はかかるらしいの」

「へー。結構時間がかかるんだな」

「…………?」

 

 そそくさと飯を平らげて立ちあがろうと思っていたのだが、耳に届くロイドの話に違和感を感じてしまった。

 怪我人すら出ていないような脱線事故……おそらく脱輪程度の事故で復旧に数日にかかるというのは、どうしてもおかしい気がするのだ。

 

「列車については私も詳しくないからわからないけどね」

「……」

 

 俺だってこの世界の魔導機関などという摩訶不思議な技術によって動く列車などには詳しくない。だが、日本なら電車の脱輪事故なんてのはその日のうちにでも運行が再開されることはわかる。

 

「念の為にルーカスちゃんにも相談しに行ってみた方がいいかしら」

「ここの領主――このガキの父親か?」

「そう。議会の会議長を務めてくれてるわ」

「父上なら不在だ。今朝から首都に行ってる(ルーカスさんは朝から首都の用事だと出かけましたよ)」

 

 そのせい、なのかどうかははっきりしないが、留守を頼まれたダリウスの無茶な命令で俺は外に出てるのだから。

 そう思いながら一応話に混ざってしまった俺だったのだが、ロイドは驚いた表情でこちらを向いてきた。

 

「え? 本当に?」

「嘘と信じたいならば勝手にしろ(はい)」

「でも、……ありえないわよ。だって明日は……」

 

 勢いのまま話始めたはいいものの、何かを隠すようにして言い淀み始めるロイド。その隆々とした筋肉とは真逆の思い切りの悪さだ。

 そしてそんな煮え切らない態度で黙り込んでしまったロイドに対して、レイラが語りかける。

 

「……なんだ、キナくさいことでもあったのか?」

「ええ……、そうね」

「出番ってところか? つーわけでガキはさっさと部屋に戻って寝な。こっからは大人の話し合いだ」

 

 しっしっと手を振りながら俺に席を立つように催促するレイラ。

 ……確かに何か訳ありな話し合いを始めようとしているのだろうけど、そんな態度をされるのは少しばかりイラつくものがある。

 といっても俺は目の前のレイラに比べて大人なので、気にしないことにした。

 

「貴様ら程度が解決できる問題ならば、俺がわざわざ気にかけてやる必要もないな(了解でーす)」

「なんだと、ゴラァ!?」

 

 ちょーい!! 違うって! 短く答えてさっさと退散すればいいのに!

 え、何その俺の思いも代弁しときましたって感じの返答!? ありがた迷惑もほどほどにしてくれよ!? ほら見てみろよ! レイラは怒髪天だぞ!

 

「まあまあ、レイラも落ち着いてちょうだい」

「だけどよぉ!」

 

 と、ロイドがレイラをなだめてる間に席を立つ。

 今のうちに逃げよう。

 

「ベリアルくん」

「なんだ?」

 

 だが、その直前に呼び止められてしまった。

 

「明日、もしも何か困ったことがあったら、一回ハンターギルドに顔を出してもらえないかしら?」

「……? なぜだ?」

「女の子の背中を追う少年にアドバイスでもしてあげようと思ってね。もちろん面倒だったら来なくてもいいわ」

 

 深刻な内心を隠すような微笑を浮かべるロイド。

 ……何を考えているかはわからなかったが、一応その言葉は心にとどめておこうと思った。

 

「レイラちゃん、今からハンターギルドに行けるかしら?」

「今から? ……いいけど」

「助かるわ」

 

 そんな声を背景に、俺は自室に向かって歩き出した。

 

 †

 

「いやー、意外でしたね。あなたのような方はもっと慎重に動くものだと思っていました」

 

 綺麗にスーツを着こなした男は、金髪の若い青年に語り掛ける。

 ヴィンテージなハットを右手で触りながら、男は続けた。

 

「これでは、私がせっかく用意したイベントが台無しになってしまいましたねぇ。黒獅子連隊から3トンの火薬を盗むのは、簡単ではなかったんですよ」

「この屋敷はクーデターが成功した後に使う予定だ。すぐにでも片付けておけ。勝手なことをされても困る」

 

 青年は苛立ちを隠しもせずに返答する。

 

「おっと、未来の領主様の命とあれば、従わざるを得ませんね」

「未来の、ではない。ナイトフォール家の当主は既に俺だ」

「またまた失言してしまいました」

 

 そんな気持ちに入っていない上辺な返答をするスーツの男。

 そこで、コンコンと木製の扉が叩かれる。

 

「入れ」

「失礼します」

 

 氷のように冷たい声が執務室に響き渡る。

 触れるだけで斬れてしまいそうな雰囲気を漂わせる少女に、金髪の男が話しかけた。

 

「我が親愛なるアズーリ。我らの悲願はもうすぐ達せられる……。ああ、なんて喜ばしいことだろう」

「それはようございました」

「ククッ……。ははッ! これで……! この俺でも、父上を越えられるんだ!!」

 

 高笑いを続ける男。

 それを傍目に、スーツ姿の男はアズーリに語りかけた。

 

「デモンストレーションとしては十分なものでしょう?」

「……」

「君との交渉材料には苦心したんですよ。当然金銭や宝物などで釣れるとは思いませんでしたので、貴女が所属していた暗殺者集団や、貴女自身ですら知らない出自まで調べ上げたというのに」

「興味ない」

「こんなもので満足するとはねぇ……」

 

 言いながら、男は錠剤の入った瓶を手で弄ぶ。

 

「他人の精神を自在に操る薬。……なかなかに軽蔑されるような趣味の持ち主のようで」

「……」

「薬を使ってまでご主人様の寵愛を得たところで空虚なものだと思いますがねぇ」

「…………」

「……はぁ、なんとも煽り甲斐のない……。それでは、約束通りこれはお渡ししましょう」

 

 そう言いながら錠剤瓶を机の上に置くと、

 

「私はこれで。続きは当事者たちにお任せしましょう」

 

 そのまま部屋から出て行く。

 その後ろ姿を一瞥もせず、アズーリは瓶に手を伸ばした。

 

「……これで良かったのでしょうか」

 

 ――“ベリアル様”。




 ☆日付☆
 大陸暦911年9月20日

 次はデート(?)回の予定です。だいぶ色々と事件が起きていますが、ベリアルくんは女の子のケツを追いかけるのに夢中です。

 もしもこの作品を楽しんでいただけたら、評価・感想を残していただけたら、次話を書くモチベーションになります! よろしくお願いします!

サフィナ編の事件が終わった後にベリアル君にご褒美をあげる予定ですが、何がいいでしょう?

  • 王道にアメリアとのデート!
  • ヒロインを一人追加! ハーレムルートへ!
  • 来たる苦難のためにもレベルアップ!
  • ご褒美などもってのほか!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。