(改訂前)尊大不遜系貴族悪役による凌辱ゲーの壊し方 作:全自動髭剃り
朝起きてすぐ駅に向かったが。
「……」
やはりというべきか、列車は運休となっていた。
それどころか、駅のエントランスすらもが締め切られている有様だった。
何か困ったことがあったらハンターギルドに顔を出せというロイドからの言葉を思い出す。
……確かに首都に行けないのは困ったことなのだけど。何でもかんでもすぐ他人に頼るガキだと思われたくないし、今すぐに向かうのはなんだか気に食わない。
だからと言っていく場所もなく、とりあえず朝食のために朝市を回っていると、
「ラバル特産品のピケッコのハツ串じゃな! うむうむ……! 美味じゃ!」
そう言いながら両手に串焼きを持っている和装少女がいた。
やたらと既視感があるな……。確か、首都で話しかけた子だっけか……?
だからと言って俺から話しかけることはないが。
そして当てもなくブラブラと歩いていると、気づけば朝食を食べるという目的すら忘れて町外れにまでたどり着いてしまった。
家にも帰れず、宿に戻ったところでやることもない。
こりゃ本格的にハンターギルドに赴く以外の選択肢がなくなってきてないか?
……、だったらせめて魔石でも集めて、換金のついでに寄ることにしよう。
そう思って街の西に向かう。
東には首都に通ずる道があるのだが、昨夜のロイドとレイラの会話からして今から向かうのは、面倒ごとに首を突っ込むようなことだ。
その上、西の街道はアメリアと一緒に出かけたこともあってある程度は知っているが、東の街道については全く土地勘もない。迷子になりたいわけでもないしな。
そう思って西の街道、大陸横断鉄道が走る側の道に踏み入れた時だった。
「え?」
「……ベリアル様?」
ワンピース姿の水色の髪の少女に出会った。
サフィナだ。
「なんでここに……?」
「アメリア様のことを追いかけていたんじゃ……」
滅多に人が通らないはずの西街道には、見知った顔があったのだった。
……お互い呆気に取られている。
えーと……、なんで?
この時間帯って朝食やら何やらで一番忙しい時間なんじゃ……。
いや、というかそもそも彼女はいつものメイド服すら着ていない。浅葱色の軽装に、膝まで伸びるロングブーツ。
「……」
「…………」
何か出せる話題でも質問でもないものかと探したが、……見当たらない。
かといってこのまま何事もなかったかのようにどこかにいくのもおかしいし……。
「えーと、その、なんだ……。この先に見晴らしのいい丘があるから、暇なら一緒に行かないか?」
「……はぁ。了解しました」
「ついこないだ、アメリアと、……一緒、…………に」
え? ……え???
なんだこれ? どうなってるんだ!?
あまりにおかしな現象に遭遇してしまい、困惑のあまり呼吸すら忘れかけてしまった。
いや、勘違いかもしれない。ちょっと試してみるか。
「あーあー、テステス。吾輩は猫である。名前はまだない。……え?」
「?」
そんな俺の様子を不思議そうに見るサフィナ。
……おいおい。マジかよ。
他人の目の前だってのに、自由に喋れるぞ!
「行かないのですか?」
「あ、いや、行くぞ」
とりあえずの返事をする。
だけど俺の心中はそれどころじゃなかった。
この世界で自由に話せることが何を意味するのか。
それこそ、今の俺が抱えるすべての問題の解決になりかねない。
例えば、俺がこの場で自身が転生者であり、さらにはゲームの世界だと説明すらできる。俺が知っているゲームの世界の“サフィナ”ならば、おそらくそんな俺の境遇に同情してくれるだろう。助けを求めれば助力もしてくれるはずだ。
地を這うような好感度を誤解だったと弁明して改善を図ることだってできる。
俺は……俺はなんでもできるぞ。
手始めに何を話すべきなのか……。
心ここに在らずな状態ながら道を先導しつつ、俺はサフィナに語るべき言葉を探し続けたのだった。
†
「……屋敷での仕事は終わったのか?」
結局捻り出した言葉はそんなものだった。
色々と考えたものだ。今までの不遜な態度に対する詫び、自身が巻き込まれた境遇の説明。けれども。
あまりにもリスクが高いのだ。
あまりにも。
全ての行動が邪神の復活につながる登場人物。それがサフィナだ。
原作では、帝国編で彼女は見事に主人公たちの行動を利用して邪神を生誕させている。行動理念や理由はわからないが。
そして、邪神の生誕のトリガーとなっているのは、彼女自身である可能性が高い。主人公によって倒されたサフィナの亡骸、そこから邪神は登場するからだ。
邪神の封印方法のある帝国ならばまだしも、共和国に邪神を召喚させてはいけない。
ゆえに、サフィナが共和国に残る可能性は何が何でも減らしたい。
「……一応」
口数少ないながらも返答してくれるサフィナ。
少なくとも、彼女が帝国に行くという確証を得られるまでは、俺は”ベリアル”を演じ続けることにした。
「ふ、ふん、……自ら、……仕事を見つけることもできんのか」
「……? ベリアル様の専属を解かれたので、私には一切の仕事が割り振られていません」
「お、……コホン! そうか。それは仕方ないな」
なんか頑張ってめんどくさい上司のような文句は捻り出せたが、正当な理由を返されてしまった。
え、えーと、何かベリアルらしい感じの言葉は……。
「わ、我がナイトフォール家はどうだ。えー、……い、威光ある一家に就職できたのは、誇らしいだろう?」
「……まあ、悪くない職場でしたよ」
「な、何!? 悪くないのか!?」
なんということだ! サフィナが悪しからず思ってるのは想定外だぞ!
だって、俺の専属にされてたんだぞ!? ここは有給を消化して辞めるとかって感じの展開がいいんだけど!
「はい。ベリアル様の部屋を片付けた以外で、特に仕事といった仕事もなく、給金も悪く無かったので」
「そ、そうなのか……。それは残念……じゃなくて、よかったな」
「……?」
うーん。もっと嫌な仕事とかを押し付けたりした方が良かったのか?
だけど俺から指示できるものなんてのはたかが知れてるし……。
「じゃあ、これからもナイトフォール家で働く予定なのか?」
「いえ」
「そうだよなぁ。何もしなくても、金が出るし、なぁ……。え?」
「すでに辞職届を出しました」
「え? 辞職届?」
もし世の中に本当に豆鉄砲に当てられた鳩がいたら、俺みたいな表情をしてただろう。
なんとなく彼女の意思を探ろうと思って話しかけたはいいものの、想定していない言葉が返ってきてしまったのだ。
「はい」
「え、なんで? 仕事もないし悪くない職場じゃなかったの?」
「はい。でも、探していたものはなかったので」
「探していたもの……?」
探していたものがなかった?
なんだそれ? 俺の知っている”サフィナ”が何か探し物をしていたなんてことはないはずなのだけど……。
「探し物のためにナイトフォール家のメイドになったの……?」
「……まあ、成り行きではありますが」
「成り行き……」
「声が、……聞こえたものですから」
声が聞こえた……?
なんだか話がどんどんわかりにくくなっていっている。
探し物、成り行き、声。
俺の知っていた”サフィナ”からそういったキーワードが出てくることはない。”彼女”は常にある目的を持って行動をしていたのだから。
「その、なんだ。もし差し支えがないんだったら、探し物ってなんなのか教えてもらえないか? 力になれるかもしれないし……」
ふんわりと柔らかい水色の髪を揺らすサフィナの目を見ながら尋ねる。
複雑に絡み合った話を解きほぐしていこう。
まずは、彼女が何を探しているか、だ。
「……いきなり核心をつきますね」
「え、あ……、そのすまん……。ただ、困ってるんだったらと思って……気分を損ねてたら申し訳ない」
「別に気にしてませんよ。どうせベリアル様には一度話さなければいけないと思っていたのですから」
静かな口調で返答するサフィナ。
いきなりずけずけと他人の問題に立ち入ろうとしたのは無遠慮すぎたかもしれない。
「そう言ってもらえると助かるよ。……というか、もう仕事を辞めたんだし、様付けも敬語もなくてもいいぞ?」
「……じゃあ、ベリアルさんと。敬語については、癖みたいなものですので」
まあ、少なくとも様付けで呼ばれるよりはだいぶマシだ。自分と同じくらいの歳に見える少女から様付けされるとか、正直背中が痒くて仕方なかったのだ。
そう思っていると、サフィナは口を開いた。
「ベリアルさん。あなたはなぜ生きているのですか?」
「…………、……。え?」
なんか急に哲学が始まった??
なんで生きてるのかって、急に言われても困るんだが……。なんかほら、ご飯が美味しいとか、遊ぶのが楽しいとか……。
「えーと、もしかして自分探しの旅とかってやつか……? 好きなことを見つけたりとか……」
「……」
「首都の方に行けば趣味も見つけやすいだろうし、……俺やアメリアなんかも呼べば付き合うぞ?」
「…………」
「えーと……、……俺と歳変わらなさそうだし学校に行ってみるとか……」
と、言葉を並び立てる俺に対して、サフィナは残念そうに首を振った。
「いえ、そうではないです」
「あ、ああ。そうじゃないのか……、すまん……」
独りよがりでペラペラ喋ってしまった俺を嗜めるサフィナ。
……まあ、確かにナイトフォール家が自分探しの旅で寄るような場所でもないか。
そう思っていると、サフィナは真っ直ぐに俺を見つめながら話し始めた。
「自由や意思、希望や欲望など、私
「……、…………?」
「この世界に産まれた方達にとっては、その胸に抱き次代へと繋ぐ使命があります。それこそが生命というものであり、
「…………」
「でも、私
†
そのような悩みを抱くようになったのですね……。
†
「私たちは、……いや、私は何のために生きているのでしょうか。私と同じく、父も母もなくこの世界に
「………………」
語り部のようなサフィナの声に対して、……俺は体を固まらせてしまっていた。
この世界に
「俺が⬛︎⬛︎したんだって知っているのか……?」
「……? 何を言っているのですか?」
「だから、⬛︎⬛︎……」
「うまく聞き取れませんが……」
何度か口にしたのだが、まるでそこだけモザイクをかけられたように、音としても意味としても不明瞭になってしまう……。
……いや、とりあえず俺の問題は置いておこう。今は彼女の質問に答えよう。
確かに俺はこの世界に父も母もいない。ルーカスは、”ベリアル”の父だ。俺のではない。
俺は、サフィナがどのように……この世界に
でも、彼女と俺の境遇として似ているのだとしたら……。
「俺が生きる理由だった、……な」
「はい」
小さく息を吸って、俺は話した。
「……正直わからない」
「わからない……?」
「そんなの簡単に答えられる話じゃないだろ。それこそ死にかけて走馬灯を見てみないとわからないものなんじゃないか?」
「……」
「偉そうに言えたものでもないけど、……生き続けて初めてそこに意味が生まれるものだと思うよ」
そう、俺は無責任に吐き捨てた。
無学な俺でも持てる程度の結論でしかないが、それでも、彼女の生きる意味なんて質問に対する答えなんてこれが最適だろう。
「……そうですか」
「そう。そういうものなんじゃないかな?」
「…………」
正直言って、”サフィナ”という謎多きキャラクターが何のために邪神を召喚したのか、俺が知る限りでその謎は原作では一切明かされていない。
今現在の彼女にとって、”邪神を召喚する”という目的が生きる理由であれば、俺になぜ生きるかなんて聞いてこなかっただろう。そういう意味では、今のサフィナは邪神とは関係が薄い、もしくはないような気はする。
だとすれば、サフィナが邪神を召喚することを決心したのは、帝国に行ったのちということになるだろうか。そうだとしたら、逆にサフィナを帝国に行かせてはいけないのか……?
いや、それでも、サフィナは帝国に行かせた方がいいだろう。邪神を封印方法のある帝国ではなく、共和国に召喚させるわけにはいかないのだ。
「だから、サフィナももっと他の国とかに行ってみて、いろんな体験をしてみるといいんじゃないか?」
こう言っておけば、サフィナにとって帝国に行く動機にもなるだろう。
そうやってちっぽけな陰謀のために、それっぽい言葉を並び立てた返答をしていたのだが、
「ガ――ッ!?」
小さな手に喉を掴まれ。
色の失った瞳が見えたと思った途端。
天地がひっくり返った。
†
「何が見えました?」
そう言いながら、私は腕に込めた力を少しだけ緩めた。
鬱血して暗くなっていくベリアルの顔に少しだけ血色が戻る。
「……な、何を゛……っ!」
「まだ見えませんか」
再び腕に力を込める。
飛龍の姿の時に比べれば流石に幾分かは弱くなるが、それでもベリアル相手に苦戦することはない。
『死にかけて走馬灯を見』れば、ベリアルは生きる意味を知れるのだろう。
創造物たる私が欠落しているはずの、それを。
なぜか創造物だというのに彼が持っている、それを。
「ア……っ!? ぎ、……!! …………!!!」
苦しむベリアル。
だが我慢しなければならない。
答えを知ることは、私だけではなく、ベリアルにとっても救済になるはずだ。
「……し、……っ゛! 死、――!!」
もがくベリアルの体に座り込んで押さえつける。
彼が不快になることはもう仕方がない。
それでも、……こんな機会が再びあるとは思えないので、やめるわけにはいかない。
暫く押さえつけると、最後に一際大きく暴れ出したのちに、ベリアルの体から力が抜けた。
まだ開いている瞳を覗き込むと、朦朧とはしていそうだが、意識があるようだ。
もう一度彼の喉を掴んだ手の力を緩める。
「見えましたか?」
「…………あ、ああ゛っ……」
しゃがれた声で肯定だと返答するベリアル。
「ふぅ……、ふふっ」
彼の喉から手を退かせる。これ以上ベリアルを苦しめたところで意味はない。むしろ一刻も早く彼が思考をまとめて言葉を発せるようにしなければいけない。
「私は知らなければならないんです。生きる意味を、生きてきた意味を、生き続けなければならない意味を……!」
自然と声が出てしまう。
「長かったですよ……。『貴女が好きなことをしなさい』なんて貴女が言うから続けてきたのに、……結局は何の役にも立ちませんでした……」
咳き込みながら呼吸を整えるベリアルに乗ったまま、私は柄にもなく高調する感情のまま声を出し続けた。
「でも、これでやっと、ご主人様との約束の意味がわかる……。ひひっ、……今まで生かされ続けてきた意味も……。それに……! ひひひひっ!!」
――ご主人様が殺されてまで、私を生かし続けてしまった意味も!!!!!!
獣のように叫んでしまった……。
ダメだ……。こんな様子では彼女に顔向けができない。
逸る気持ちを何とかして抑える。
まずは冷静に淑やかに。だけれども誰よりも華美に苛烈に。
ご主人様の口癖だ。
「ご、ごほっ! ……がはっ!」
一旦心を落ち着かせる。
すると、今まで興奮のあまり耳に入らなかった未だに咳き込み続けるベリアルの声も聞こえてきた。
もう一度顔を下げて様子を見ると、咳に血液が混じっており、それでむせていたようだ。
「全く、世話をかけさせますね……」
自然治癒を待つつもりだったけど、面倒だ。
私の体は飛龍。その体液はそのまま人にとっての治癒薬になる。いちいち体に傷をつけて血液を出すのも面倒だったので、
「んむ」
「――むッ!?!?」
その口に唾液を流し込むことにした。
†
全く、短慮なところは昔と変わりませんわね……。
恋慕してもいない殿方に易々と接吻してしまうなんて。サフィナには恋愛モノはまだ早いと、わたくしの蔵書を読ませなかったのは間違いだったかもしれませんわ。
……しかし、わたくしも反省しなければいけませんね。
『……貴女には空を自由に飛ぶ翼がある。欲望の赴くままに、その意思でどこまでも高く羽ばたくのです。わたくしのように籠に囚われた者たちの希望となりなさい』
ふふっ。気取り過ぎて自分でも笑ってしまう遺言ですわね。
こんなものがサフィナにとって、もはや呪いのようなものになってしまうなんて思わなかったですわ。
わたくしはただ貴女に、貴女らしく生きて欲しかっただけなのですわ。
まずは冷静に淑やかに、だけれども誰よりも華美に苛烈に。……なんて言っていた人が居たんだって、ちょっとだけでいいから覚えていてくれてたら、わたくしは何も思い残すことなんてないのに。
もっと彼女に伝わりやすい言葉を使えばよかったのに。……と後悔したところでもう意味はないですけど。
わたくしの声が聞こえているかどうかは分かりません。
でも、少しでもこんな亡霊の世迷言が耳が入るのであれば。
わたくしのサフィナをお願いしますわ!
†
「ええ、聞こえてますとも。とてもよく聞こえていますよ」
スーツ姿の男は、器用に線路の上を歩く。
「……さて、自分が何を召喚したのかすらわかっていない故人の世迷言も聞き飽きてきましたね」
パチンと指を鳴らす。
すると、男は満足げにリラックスした表情を浮かべた。
「今日の選曲は悪くないですねー」
☆日付☆
大陸暦911年9月21日
☆ステータス☆
【名前】サフィナ
【基礎レベル】50程度
【技量レベル】10程度
【魔法属性】未知
【魔法詳細】不明
デート(?)回でした。女の子に対して悪態ついたりした罰が当たってしまったベリアルくん。
というわけで、がっつりサフィナちゃん活躍回でした。
もしもこの作品を楽しんでいただけたら、評価・感想を残していただけたら、次話を書くモチベーションになります! よろしくお願いします!
サフィナ編の事件が終わった後にベリアル君にご褒美をあげる予定ですが、何がいいでしょう?
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王道にアメリアとのデート!
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ヒロインを一人追加! ハーレムルートへ!
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来たる苦難のためにもレベルアップ!
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ご褒美などもってのほか!