(改訂前)尊大不遜系貴族悪役による凌辱ゲーの壊し方   作:全自動髭剃り

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少年編 サフィナ⑦ 前

 

 † 場所:ラバル東部・穀倉地帯。時刻:9月21日午前。視点:アメリア。

 

「……息子のことだけではなく、ここでも世話をかけてしまうな」

「いえ、気にしないでください。ルーカス様」

 

 首都郊外に広がる穀物地帯。

 その中にある目立たない納屋の一つ。

 私とルーカス様が監禁されている場所です。

 

「……それでも、くだらぬ口実を盾に君を連れ出したのは私だ。好きな方に誹るといい。君にはその権利がある……」

「……父から私を助けたのは助けたのはルーカス様です。それを忘れてルーカス様の恩に仇で返すような真似はできません」

 

 お母さんが首都にいなかった当時、ルーカス様の申し出がなければどのような目に遭っていたかは容易に想像がつきます。

 ……流石にお母さんが戻ってからは大人しくしていると聞きますが。

 

「それに、ベリアルなどの相手をさせてしまったのは完全に私の都合だ。……君が望むのならばベリアルとの婚約はいつでも――」

「――いいえ、断らせていただきます。ベリアルのことは、私が好きで婚約者をしていますから」

「……そう言ってくれると助かる…………」

 

 ……確かにベリアルの心無い言葉に感情的になってしまって家から飛び出してしまいましたが、……それと婚約とは別の問題です。

 帰ったらちゃんと謝ってもらいます。謝らないなら、実力行使だってしようと思います。鍛錬室は私とベリアルが貸し切っているようなものなので。

 ……ただ、問題は帰れるかどうか、ですが。

 

 ルーカス様は簡易的に作られた作業机の前に座りながら、渡された書類を精査しながら、手書きで署名を書いていっています。

 その書類は何なのか、具体的に知らなくても碌なものではないことはわかります。

 首都に到着した私を職務質問という口実で誘拐し、ここに監禁した人たちが平和な要求などしようものはずもないですから。

 

「“彼ら”が何者なのか、わかりました?」

「君が知る必要は…………、いや。君の当事者ならば知る必要があるか……」

 

 少しばかり考えるようなそぶりののちに、ルーカス様は重々しく口を開きました。

 

「オルディア共和国の歴史については詳しいかね?」

「はい。士官学院受験生としてある程度は勉強しています」

「……25年前のオルディア王国で革命が起き、王政が打倒され、共和制に移行した」

 

 通称オルディア革命。教科書でも最も目立つ文字で書かれている出来事です。

 

「王国貴族が主導した無血革命。王家は帝国へと亡命し、国家の元首が貴族会議で決まらず、国民投票によって大統領が選出されることになった、ですよね」

「そうだ。……伝統的な政治体制を残しつつも、先進的な改革は進んだ。貴族はその形を資産家や経営者へと変貌させ、騎士団は国防の任を外れて治安維持に勤しむようになった。……だけど、いつの時代だって歩みを進められなかった人たちがいる」

「……歩みを……」

「おそらく“彼ら”は旧貴族派などではないかと思う。……これらの書類は、ラバルを占領するためのもの以上に、統治するためのものだ。領地の管理の経験がない素人のテロリストが用意できるものではない」

 

 ため息をつきつつ、ルーカス様は続けました。

 

「ひとまずは彼らの要求を飲むしかあるまい……」

 

 下手な動きをすることができない、というのはその通りでしょう。

 何せ、ルーカス様に一挙手一投足で、私のみならず、首都行きの最終列車に搭乗したすべての人の命運が定まるのですから。

 

 納屋の外。

 昨晩から線路の上で立ち往生している列車を囲うようにして、魔導銃で武装した人たちが巡回を続けていました。

 

 最低限、何か"彼ら"の隙がつけないものかと考えを巡らせたこともありますが、運よく私だけでも逃げ延びたところで何も解決しないでしょう。いらずらに人質にされてしまっている乗客の人たちを危険にさらすわけにもいきません。

 言い方を変えてしまえば、八方塞がり。

 私たちは言いなりになるしかないのです。

 

 現状を把握しているのは、おそらくハンターギルドの方たちくらいでしょうか。

 これだけ大規模なテロ活動が行われているにもかかわらず、騎士団の方たちが現れないという時点で、騎士団への情報伝達の問題が生じている証拠。

 私が首都に行くことは事前にお母さんには伝えていないし、クレイトン商会の方たちにも伝わっていない。

 

 ……万が一には、もしかしたら私のことを追って首都にいる可能性があるベリアルが異常を察知してくれているかもしれませんが……。

 そもそもベリアルが私を追ってくれた確証なんかもないわけで。

 

 ……この短期間に二回もこんな目に遭うなんて。

 私はただ普通に……。

 クレイトン商会の娘だってだけでこんなことに…………。

 

「……ふぅ」

 

 軽く息を整えます。

 思考がネガティブになりすぎないように、心を落ち着かせるためです。

 

 ……嘆きたくもなりますが、ここは我慢。ルーカス様に迷惑をかけるわけにはいきません。

 希望はまだ消えたわけではないのです。

 

(ベリアル……)

 

 今は待つしかありません。

 

 † 場所:ラバル西部・鉄道街道。時刻:同日午前。視点:ベリアル。

 

 朦朧とした意識からやっと浮上する。

 先ほどまでの記憶との断絶を感じるのだが……。

 

「う、うぅ……」

 

 確かサフィナに殺されかけて……。

 それから……。

 

「何が…………」

 

 全身を高電圧にかけられたような、……駆け抜ける痺れと共に気を失ったところまでは覚えているんだが……。

 上半身を起き上がらせる。

 すると。

 

「あっ……! がぁ……ぁああ!!」

 

 少しばかり離れたところで上がる断末魔に似た声。

 聞き覚えのある少女の声に目を向けると。

 

 血走った眼に浮き上がった血管。

 体のところどころが甲殻のような形に変貌し。

 背中からは人間にはありえないはずの翼上のものが生えている、サフィナの姿が。

 

「おっと? 起きましたか」

 

 隣には、黒いスーツ姿の男がサフィナに向かって手を伸ばしている。

 その手は禍々しい銀色の光が包んでいた。

 

 すぐそこにいるというのにどんな顔なのかがわからない。直視してもその輪郭すらぼやける。

 ……それでもどこかで見たことがあるように思えるが、どこかは覚えていない。

 

「あなたも是非目に入れるといいですよ。少女が自身の使命に気づく瞬間ですよ」

「……誰だ、お前!?」

「そんなことはどうだっていいじゃないですか。ふふっ……」

 

 その不気味な笑いに戦慄しながらも、急いで立ち上がり。

 念の為に剣も構える。

 一切の油断なく、そのおぼろげな姿をにらみつけた。

 

「サフィナに何をしてる!?」

「思い出すお手伝いをさせてもらっているだけですよ」

「何!?」

「自らがなぜ生み出されたのかをね……!」

 

 そう言うと、さらにその手に籠る光を強める男。

 

「ア……ァアアアア!! ギッィイイ!!!!」

 

 それに呼応するようにサフィナはさらに苦しみ出す。

 

「チッ――!」

 

 ふざけるな!

 もはや問答する暇もない!

 サフィナを守るようにしてその前に立ち、躊躇なく直剣をスーツの男に振り下ろす!

 

「ッ!?」

 

 だが、その一閃はただぼやけた虚空を振り抜くのみで。

 スーツ姿の男は困ったように首を振っていた。

 

「これはこれは乱暴ですね」

「……ッ!」

「私には敵意などないというのに」

「だったらその魔法を止めろ!」

 

 銀色に光る魔法。

 記憶にないわけじゃない。この世界ではかなり珍しい、光属性の魔法の特徴だ。

 基本的には癒しや転移に関係する魔法属性で、主に教会関係者が使用するはずのものだが、……少なくとも彼の魔法にどのような効果は見られない。

 

「残念ですねえ。私は純粋な善意で動いていたというのに」

 

 そう言うと、男は手から漏れる光をかき消した。

 だというのに。

 

「アァ……。アア……! アアアアアアアア!!!!」

 

 再び狂ったように叫び始めるサフィナ。

 体はどんどんと膨張し、肌はほぼ全身群青色の鱗に覆われている。

 その様子すら確認せず、スーツ姿の男は満足したとばかりにこの場を立ち去り始めた。

 

「おい! サフィナ! 大丈夫か!」

 

 男のことは今はもうどうだっていい。

 もはや見上げるくらいにまで巨大化した飛龍に問いかける。

 だが、

 

「ゴォオオオアアアアアアアア!!!!」

「落ち着けっ!!」

 

 帰ってくるのは理性のない咆哮だけで。

 クソっ……! どうすればいい!!

 焦るものの答えは出ない。

 そうしている間にもサフィナはどんどんと飛龍へとその姿を変える。

 

「ゴォォォオオオ……!!」

 

 やがて飛びだち――!

 

「おいおいおいっ!!」

 

 こちらに向かってまっすぐに襲いかかってきた――!!

 

「ッッッッッ!!!!」

 

 咄嗟に振り上げた直剣が、飛龍の爪と衝突し、眩しい閃光が走る。

 あまりの力の違いに、軽く宙に浮いてしまった。

 

「やめろ! 俺は――ッ!!」

 

 なんとかして言葉を伝えようとしたが、問答無用に襲いかかる飛龍の爪。

 すんでのところ直剣で防ぎ切るが、もしもその攻撃を直接身に受けることを想像すると、身の毛がよだつ。

 

 攻撃を防がれ、再び空を舞うサフィナ。

 だが、俺を標的にしているのは確実なようで。

 

「ギァアアアア!!!!」

 

 激しく咆哮するッ!

 つんざく轟音にキリキリと耳が痛む。

 

 ひとまず無力化するしかないッ……!

 手に握る直剣に力を入れる。

 正念場が始まった。




 ☆日付☆
 大陸暦911年9月21日

 もしもこの作品を楽しんでいただけたら、評価・感想を残していただけたら、次話を書くモチベーションになります! よろしくお願いします!

 報告です。
 この作品を大きく改稿する予定です。それなりの皆様に評価いただいている物語だと思いますし、登場するキャラクターたちの愛着もあるので、おそらくストーリーやキャラクターたちについては大きく変わりはないはずですが、もっと広く楽しんでもらえるように文章の校正や、キャラクターたちの活躍の場面を増やしていければと思います
 なので、もしかしたらこの作品は非公開になって、新しいものになっているかもしれませんし、そうじゃなくて今までの内容を書き直して同じ作品のままいく可能性もありますが、皆様が楽しめる物語づくりに励もうと思います。
 よろしくお願いします!

サフィナ編の事件が終わった後にベリアル君にご褒美をあげる予定ですが、何がいいでしょう?

  • 王道にアメリアとのデート!
  • ヒロインを一人追加! ハーレムルートへ!
  • 来たる苦難のためにもレベルアップ!
  • ご褒美などもってのほか!
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