起こりの切っ掛けは些細なことだった。
欠かさず練習を続けた結果、影を分裂して行う自身の転送を、実用レベルにまで昇華し。郊外にて発生した大規模な陥没現象の調査に赴いた
それが自然現象なのか、はたまた異能力で引き起こされたものなのか
そして、
構成員を引き連れ現地でクレーターのような、地盤沈下のような窪みをいざ。という寸前に、突如白騎士団、しかも「アクアガーディアン」「ブレイジングハート」の
早急に構成員を撤収させ抗戦。奮戦中にあちら側の独白とこちらの通信を照合、事情的に両名の独断により偶然居合わせただけの可能性が高いと推測された
──入り組んでて平面がほぼない……外に出たらと命令して分裂してもズレそうだし。護るためのこの水のドームに干渉したくない
「ふぅむ。下手に動けばすり身になってしまうかもしれない、通気もよろしくなさそうだし。照明にしても
「わ、わかってるよっ……!それくらい僕だってわかるし!今はその、おお、お……おと、男の子も、ぉお!?いるもんね!」
「…………」
「……いるよ、ね?こここ声、とか……聞かせてほ、欲しいなぁって、とか、なんて」
「相変わらずの
「…………はぁ」
「……!ぁ……声ぃぃ……!!」
こちらの幹部の救援も望めないとのことで。ボクも離脱を試みる最中、地帯の一部が崩落し、三人ともが複雑な状態で生き埋めとなってしまった今に至る。
喋っては思い出したかのように猥褻を入れる方、相槌でもない嘆息すら、過敏に摂取する方
なんでこんな苦行を窮地で受けなければならないんだろう
政府公認とはいえ。彼女らの現地調査も恐らく此方と似た理由からだろう。遭遇した時点で自身も撤退に踏み切ればよかったし、そもそも崩落付近に行かない立ち回りを意識しなければならなかっただろうに
悔いても仕方ないし、ここまで接近して攻撃も拘束もされないことを利用した方が建設的だ
「……わざわざ其方も調べに来た、ここまでの見解はどうですか?」
「ぅん?素直に会話してくれるとは気前がいいね。こんな状況でも得られる利があったとは」
「うぅ……声も可愛ぃ……!」
「そこの
「……根拠をお聞きしても?」
「そう深くはないところに大量の流れを感じる。地下水脈に石灰質の層が溶け出して発生したというのが個人的見解だ、作為性はないだろう」
「……異能、便利ですね」
「お褒めに与り恐悦至極だ。上げて落とす仕込みであれば最上だったが」
「…………」
「困惑と若干の嫌悪感の流れ、未発達で大変甘露だ」
心理状態すら、それなりの精度で判断できる彼女の異能を下地とした推測は、多分に説得力がある
構成員による後日の再調査はあれど。この見解も伝えれば十分有用だろう、真実であれば。
「……あ!あのぉ」
「…………」
「ぁの……」
「吃音ばかりの尻すぼみだね。彼に何か聞きたいことでもあるのかい?まあ無いわけがないだろうがね」
「仕方ないじゃん……!ああ、あのさ!……お名前、とか聞いちゃったり……」
「……」
「あっうん!ごめんね何かいきなりね!早かったね!」
「距離の詰め方が壊滅的だね。衝突事故必至だ」
「うるさいなあ……!」
早いも何もないし。ましてや何故敵対組織の相手に、個人情報を教えなければならないのか
仲よくなりたいというのは理解できるにしても、あまりにもボク相手に挙動不審極まり且つ下心がむき出しすぎて目も当てられない。
……普段通りの振る舞いでは、かなり溌剌な運動女子らしいのだけれど。あまりにも強すぎる異性への免疫の無さが。何もかもを台無しにしている
此方の組織の幹部と違って、たしかブレイジングハートは十代だったはずなので、致し方ないのかもしれない……敵対組織の人なので、どの道普段の言動も知ることは無いけれど。
──曲がりなりにも相手は正義の味方だし、性癖を除けば無難に善人だろうから……あんまり深入りしたくないな
普通に戦えば、まだまだ向こうの方が経験も異能の精度も圧倒的なので。これはあんまりにも傲慢な考えである。拘束や無力化を中心に動かれても勝てる映像が浮かばない
突如敵対組織に現れた、謎の異性への興味・関心という有利が無ければボク程度では敵わず。時間稼ぎも厳しいだろう。
「おっと。早くもお迎え……この流れならキミ側の人か、迅速なことだ」
アクアガーディアンが外からの救援に気づいたらしい。
こちら側で一人、迅速ということは多分篠崎さん……フラッシュブレードが来てくれたのだろう
幹部級二人相手に、いきなり襲われてもあの人の異能なら対処できるし。そもそもとして話もわかるので、救出後戦闘再開にはならなそうでありがたい。現場組で働きづめにさせてて申し訳なさも多分に感じるが。
「ラインヴァイスいるかー?おまけ二人もいるなら返事しなー!」
「います。崩落が複雑ですが三人ともそれほど離れてないです」
「ふう。元々スローガン的に敵対してるが、血で血を洗う関係でないのが有難い。救援感謝しようじゃないか」
「おーアタシも喧嘩以外じゃ別になあ。ソイツにいかがわしいことしてなきゃおひらきにしてやるよ、点火女もいるな?お前の異能で燃えない奴出しときな、目印にするからよ」
「て、点火女って……」
「水流を隙間に入れて緩衝材にしている。それも目印にしてくれ給えよ」
外からの振動と音とが近づくにつれ、息の詰まる感覚も和らいでいく
差し込んだ外の光に眩んだ目が慣れた頃には、渋面の篠崎さんが目を反らしていた。
「……どうしました?」
「あー……服のまま風呂にでも入ったのか?」
「?いえ……ああ」
ここで漸く、抗戦中でのことと繋がる。
熱により汗ばみ、水流の飛沫……身体に未だ乾かない衣装が、ぴっちりとくっつき肌が透けていた
「とりあえずあいつら出す前に先に自分で帰りな。できるだろ?」
「えっ!?そんなそれじゃ透けが見れ……!」
「一目みて別れの挨拶を交わしてからでも遅くはないと思うんだが」
「…………」
「アタシは残って
……ボクはその後無事に帰還し、暫く後に激闘の痕が見える篠崎さんも戻ってきた
意図的に透けさせた肌を拝むためだけに掛ける労力と、そんな馬鹿なことをされて尚対処できない力量差に、ボクは肩を落とすほかなかった。
ボクはこんなトラブルの中、そんなことを企てる人たちに敵わないという現実をじっくり考えると消沈だけで済まないのは、考えるまでもない。
むっつりと変態の声なき疎通連携によるどさくさお宝映像作戦は無事阻止されました