結論から言うと、先の陥没事件は概ねアクアガーディアンの見解が正しかった。
後日、再調査を行い。機材のデータや最近の気象情報なども照合し。綾野さんの独自規格で拵えた計測機器でも、何らかの異能力由来の破壊、実験の可能性は限りなく低いと結論が出た。勿論、ゼロではないが。限りなく他の要因はゼロで
確実と断じられないのは、その後も何故か白騎士団側が再度調査に赴き、現地組と小競り合いになったことにある。
政府公認であっても、むしろそちらの陣営の見解だった以上。断じられると思うのだけれど、とにかく無いとは思うが気にはする。
そして最大の理由は、幹部級の救援か否か定かではないが、あの時向こうの首領を除いた
そして、現在性懲りもなく色々なものをでっち上げて、あの地盤沈下は、排すべき異能者が引き起こしたことにしたい一派の施設へ深見さんと潜入し、どうせ何処かの息が掛かっている
今更の余談だが、深見さんは忍者である。コスプレでもなんでもなく諜報や扇動、暗殺等などを請け負っていた、創作でもよく見る本物の
では、黒薔薇団との関係は雇用主と雇われかと思うだろうが。深見さんは幹部待遇ではなく、ボクらと同じでそのまま組織に加入して、その上で幹部となっている
抜け忍だとかそういうことでもない、詳しくはわからないが、彼我ともに複雑な雇用体系にしたくなかった結果だそうだ。
何故今こんな話を?と思うだろうが、今回はスマートに書類だけ頂いて終わりではなく、こうして色々と荒々しい衝撃も与えるのも任務の一つ
そこに対して、異能者であるが大して強くはないボクと、異能が攻撃的なものではない深見さんとでの二名が出向いている疑問を解決するのが、この経歴だ
「がっ!?な……」
「ぐあ!?」
相手の視線を誘導し、あるいは幻影で誤認を引き起こし。視界から幻の様に消えた風に見せかけ、死角から滑らかな動線と、迷いの無い一撃を相手に浴びせ昏倒させる
深見さんは、警戒していたはずの八人の意識を、一息の内に刈り取ってしまった。
……要するに、深見さん自身の腕っぷしが強いのだ。単純に
幻影を交えて、捉えられにくくする技術もあるが、純粋に戦闘能力が高い。
多対一、一対一、環境利用、誘い込み、追い打ち──出来る場合は即実行し、
その上で、これ以上ない程加減して無力化する余裕があるので。確かにこの実力を回収作業に温存しなければならなかったのは、組織にとって痛手だったのは本音なんだろうな
「……流石です。通達の暇もなかったので区画を変えましょうか」
「──否」
……珍しい。声での返答もだけど、深見さんは任務中、自発的な提案や発言は控える
恐らく、指示役と実行役という内の実行役──道具に徹するスタイルなのだとは思うが──に徹しているのだろうけど、今は明確に否定の意思を伝えてきた
……この珍時に、ボクが場慣れさえしていれば。逡巡の余地もなく二人揃って拠点に撤退しただろう
深見さんが見据える先を見るまでもなく、影を開いて逃げただろう
そうならなかっただけ、それだけの話だ。総毛立つ身が反射的に開いた影に、深見さんが飛び込んでくれただけで、上出来だった
「やーっと、見つけたんだから」
長く白い髪、煌々赫々の
白騎士団首領──
ボクと同じアルビノの彼女。
「さあ。
……ボクの姉を
以前触れた「鋭化」について、続きがある。
異能者の必要に応じ、異能が対応・適応・順応して差別化していくとされる鋭化だが。その内容は当然、異能が解決可能な内容に限る
ただの水で燃やす、燃え盛る火で湿らせることは出来ない。出来たとしたら、それは異能すら逸脱した異常となる。
セイクリッドナイトの「光剣」は読んで字のごとく、光を束ねて振るうそれだけの異能……だった
「こらっ!お姉ちゃんに向かってそんなことしちゃだめでしょ?」
影の壁が一閃され
例え炎でも、水でも、幻影でも。目の前で頬を膨らませている、悍ましい生物が振るう異能に触れれば。どんな異能でも結果は同じだ
「もお。弟はお姉ちゃんのいうこと聞かなきゃだめなんだよ?」
信仰上や、宗教上で用いられる意味合いではない。法則性などクソくらえの──異能の時点で良く言われることだけど──歪な形態が異端と呼ばれる
曰く、精神的な異常性が異能を歪めた。曰く、これこそ異能者という新人類の、更なる進化である。等々……
好き勝手推測されているが、「異端」などと呼称されている時点で。察しの通り歴史の中で確認されている異端は。全て異常性や攻撃性、暴力性の塊でしかない
この世界、異能者はまだまだ偏見に晒されているが、それでも異能を使ったビジネスは個人事業で存在する
エネルギーを生み出せる異能者が、自身から出すエネルギーで運用する機械を用いて移動手段にし、それを企業が雇用して小規模なビジネスとしてあるとしよう
それを運用中に、こんな風にかき消す異端で干渉すればどうなるか……良くて大惨事だ
「ほーら!チャンバラごっこ終わりっ!遊んであげたんだからお姉ちゃんの言うことも聞いてほしいなー?」
「ぐ、く……!」
そして、異端は大抵精神の異常から始まるという説が最有力である。
つまり、目の前の異端者は……先ほどからこちらを弟扱いしている
そういうことだ。この
『オっ???お?♡……オ゛っ~~~~!!!!……ハぎょッっッ♡…………アハッ。アハハっ♡どうやらわたしたちは……
出会った瞬間電撃を浴びたように跳ね、ぐるんと目が裏返った後。涎と鼻水と涙を垂れ流しているのに清々しい表情で
正義の味方の主役が目覚めるべき能力では断じてない。ふざけないでほしい
「こ、の……!」
「ふぅん……まだ止めないんだ……ねえ!!!!」
「う゛ぁ!?ぅ、ぶぐ……、ぁ……!ハ、は……がぁうぅぅう!!」
決死の抵抗を続けるボクを容易くいなし。狂人は容赦なく
「お姉ちゃんの言うこと聞かないからだよ?お姉ちゃんこんなに悲しいのわかる?弟くんが素直になってくれたら一気にしなくて良かったんだからっ!反省して?ごめんなさいして?お姉ちゃんごめんなさいってお姉ちゃんの
「ぅ゛!うぅうう!!……!!」
実のところ、この剣に貫かれても痛みも無ければ。ましてや身体に傷がつくわけでもない。
だが、剣を伝ってその
汚泥の奔流に、絶対に触れられたくない部分をズタズタにされ塗り込まれていくこの不快感は。表現しきれない、下劣な悪党のしてくるやつだ。
吐き気がする、瞼が痙攣する。心身にのしかかる汚染の圧迫感で、呼吸もままならない。臓物が全て握りつぶされているのではないかと思えるほどに、悍ましい
この拷問に敏感で脆弱な身体が耐えられないし。心も同じく、今にも彼女を姉と認め彼女の
「ぉ゛、おね……が…………」
「……ん!?ん!?!??言える!?お姉ちゃんに言える!!!?言えそう!?やっと可愛い弟くんになれるかな!??!?」
「ごめ……な……」
「がんばれ!がんばれ!!もうちょっと!!!お姉ちゃんもういいよって言えるよ!!?おかえりって言えるねえ!?」
「ごめんなさ、い……ボ、ス…………」
「は????」
「──遅くなった」
ボクの影から揺らめく
腹部の圧迫感が嘘のように消え、掻き抱かれた温もりと力加減に。触れる相手が違えばこうも安らげるのだとしみじみ思う
シンプルなパンツルック、黒薔薇団の構成員と同じ黒いスーツ姿だが。パンツと胸部、そして靡く長羽織に施された、黒い薔薇の花弁と花片
我らが黒薔薇団の首領、黒薔薇 椿──ブラックローズの腕の中、何とか意識を保つ
「ふ、ぅ……ファントムシャドウは、無事に戻れたんですね」
「ああ。だけど今は自分の心配をしていなさい」
「もっと、冷静だったら、こんなことにならなかったんです……」
「いいんだ。いいんだよ……ごめんね、いやな目に合わせてしまったね」
恐らく深見さんも影に入る前に誰が来たのかは見えてたか、自身の直感に基づいて即報告をしてくれたらしい。本当に助かった……
「──あの」
「もう大丈夫だ。すぐに帰って診てもらおうね」
「あの」
「異端の報告は受けていたが……彼女が大々的に使うことはないと。私はまだ慢心していたらしい、落ち度は検査の後できちんと「あのぉ!!!」──」
意図的に無視していたボスが、しつこく干渉してくる狂人に漸く据わった目を向けた
「良かった聞こえてた。その子私の弟なんです、こっちに渡してくれませんか?というか、お姉ちゃんの腕から勝手に取らないでください」
「この子に姉はいないし。いたとしても、躊躇いもなく人にそんな異能を使うことはないだろう」
「あのですねえ!好きでしてるわけじゃないんです!お姉ちゃんの気持ちを直に伝えてどれだけ心配してたかを知ってもらえる方法なんです!実際あなたが邪魔しなければ素直 にぃっ!??!?」
「──異端者と話すのは初めてではないんだが。ここまでは無かったな」
突然狂人が壁に突っ込む。身体が動いていなかったはずなのに、自分からめり込んだ
ボスが異能でやったのだろうが、何をどうしてそうしてるかが相変わらずわからない。影などで動かした様子もないし……
「色々と思うところがあるが──今はこの子の健康が最優先だ。失礼させてもらうよ」
「い゛っ。な」
「異能であっても、何をしているかわからなければ対処できないようだな。頭を冷やして省みることを願うよ。一線を越える前に」
「──ぁ」
「……異端に振り回されなくなったら、正式に謝罪の場を仲介する。この子が許せばな。失礼」
狂人の眼にギリギリ理性の火が灯った、と思ったら拠点だった。
……ボスの異能、ほんとに起こりとかも無ければ。結果しかないから考察も無理だな
「────もう、大丈夫だ。繰り返し言い訳がましいが、怖い思いをさせた、ごめんね……」
「い、いえ。ボク自身の未熟さですから……ボクの方こそごめんなさい。それに、すぐに助けてくれてありがとうごさいました」
実際。今回は特に自分の不手際が招いた結果だったので。泣きそうな顔で謝られるとバツが悪い
あの狂人を回避し続けるのは無理なのだし。ここで追いつかれることを見越してボクが即撤退出来ていれば、済んでいたことなのだ。
「ン……ありがとう。異端に曝された検査の準備は出来ている、辛いことがあったら遠慮しないで教えてほしい」
「今は問題ないですけど、あればちゃんと言います」
「うん。深見から受けてるからね、終わったら安静にしてゆっくりと療養すること」
「はい、椿さんに会いに行きますね」
「こら──ふふ。情けない大人を笑ってやってくれ」
正直、まだ足が恐怖で痺れてるが。ボスが目に見えて落ち込んでいるので、ボク自身の癒しも兼ねて。検査が終わったら少々恥ずかしいが、肉体年齢相応に甘え倒そう
その前に深見さんにお礼も言わないとな……しかし、あの狂人の理性が戻れば。ボス立ち合いで再会するのか……そんな日が来るのだろうか?そもそもとして、異性と出会って異端化ってどうなんだ。そうなら、ボクのせいなのか?イヤにもほどがあるな……
「──異端。かあ」
異能周りは、知れば知るほど理解が遠ざかってる気がする。もう今は。ボスに抱えられる揺れを楽しんでおこう。何も考えたくない、ひどく疲れた
柊は14前後くらいです。狂いすぎですね
ひとえに主人公のせいですし次に出る時があれば落ち着いていればいいですね