綾野さんが唯々長く引っ掻き回した考察が、頭からすっかり離れた頃
「大炎上だな」
『見た目だけはねー、ビルの表面だけこんがりって感じ』
「何でんな面倒くせぇことを?」
「だから僕じゃないって!むしろ逆だから!こっちはずっと消火活動してた側!」
『──などと供述しており、容疑を否認しています。警察は今後も調査を続けるとコメントし、異端の鑑定も行われる見通しです。では次のニュースです』
「どうせ何処かで見てたくせに!?ねえ君も庇ってよォ!!」
「さっきからラインヴァイスに引っ付くんじゃねえ困ってるだろうが」
絶賛世間から貶められそうな、正義の味方に泣きつかれている悪の組織の幹部です。
大規模な火災が発生したのが数刻ほど前、ただの消火活動では全く鎮火できないものもあり。異能事件と報道されていた
ボクらが首謀者を見つけ、また前のように犯人を見つけ──ようとしている中、ブレイジングハートと遭遇
実際彼女の言う通り。異能で炎の操作を行って鎮火してたことは見てたので、彼女が犯人じゃないのも知っていた。しかし白騎士団なのに
「だ、だって!僕とカレはその……そう言う仲だし!相思相愛!」
「『寝言は寝て言え』」
「……すみませんそういった
「ウソだソンナコトーーーー!?あんなに誘ってきたのに!あんなに!あんなにィ!!!」
「うるせェ!!!!……ほらみろ、お前が性犯罪を気軽に許すからこういうのが湧くんだ」
痴漢を見逃すと再犯で別の人に被害が広がるみたいな風に、フラッシュブレードに注意され出した
被害にあってるの同一人物だけどね。
……あれから吃音気味じゃなくなって聞き取りやすくはなったはずなのに、何故か同じくらい情報が入ってこなくなっちゃったなあ、言葉が通じてるのに。内容が
「ったくよお……話題性か逆恨みか知らんが正義の味方も大変だな、出処はわかるか?サイバークイーン」
『もうすぐねー。そもそもこんがりビル群がその子の仕業じゃないことくらいは普通にわかるよ?だって全然違うとこの鎮火してたし、映像流せばすぐだと思うけど……あー、異能者は誰でも瞬間移動位できるとか言われそう』
「誰でも出来たらアタシが出張る必要もないんだがなあ……!やっぱ先に容疑晴らしはめんどくさそうだな、つか先行すっからこんなことになるんじゃねえのか、ライター女」
「毎回毎回誰がライターだ!……火災は一分一秒が大事だから、異能由来が混じってなかったら僕だけで済ませられるし、混ざってても食い止めてればいいし!ちゃんと考えてるし!」
「ご立派だな、ご立派過ぎてまんまと利用されてんじゃねえか」
「ぐッぅ……!」
『ふふふ自由に好き勝手出来る身分はいいぞぉ、まあ悪いけど幹部は定員で寝返っても彼とはお話出来ないけどね』
……そんなことないよ?構成員さんたちとも結構お話してますよ?
いやボクも万が一にもこの人に来られたら絶対イヤだから訂正はしないけど。
『あ、出た出た……当時の映像的にマジで現地入りしてやんのー炎使いはオツムも炎上してるの?』
「今どこらへんだ?」
『へいおまち』
「ねえ今僕もディスった!?」
フラッシュブレードの端末に、推定犯人の座標が送られたのだろう
フッとその場から彼女が
「ちったぁ裏を知ってりゃ仕置きに出てくる異能なんて対策するだろうによ、一丁上がりだおのぼりが。ほらよライター」
「うぇ!?な、なにこの袋は……ずっしりしてるんですけど」
「お前に濡れ衣被せようとしたやつに決まってんだろ、好きにしろよ
『あらら──結構な広範囲いけたからそこそこやれると思ったけど』
「加速も感知出来てなかったしまあ自惚れか。あるいは若干異端化してたんじゃねえのか、なんにせよアタシらの取り分にはならんな」
数秒で人さらいを完遂したフラッシュブレードに。眼を白黒させながら投げ渡された
あとは才能があっても弁えてないか、よろしくない精神状態の可能性もあるので。容疑を晴らす材料兼正式な組織に則って裁いたり管理されたほうがいいのであっさりだ
「……泣きついといてアレだけど、色々と……」
「知るか。アタシらはやりたいようにやるだけだ」
『良くも悪くもねー。とりあえずそっちのお仲間さん向かうまではそれ持って小火消してまわろうか、案内くらいしてあげるからさあ、来たらお互いハイサヨナラを条件に』
「……うーん」
淡白に苦言を切り捨てるフラッシュブレードと、異能での炎の操縦をちゃっかり観察しようと誘導し始めているサイバークイーン
ホントにうちは自由にやってるんだなあ……まあボク以外の幹部くらいしか、ここまで自由にやれる能力はないけどね
『あれ?でもブレハって操作は自分の出した炎限定じゃなかったっけ?普通に動かしてたから気にしてなかったけど』
「ブ、ブレハ……?そうだけど、燃える相手を選ぶ鋭化が二回くらい起きたから、ついでみたいにそっちも伸びた……んじゃないかなって言われたよ」
「ほーん。鋭化しても雑に他のとこも修正されるのって結構ズルいよな、流石メジャー異能か」
『鋭化の切っ掛けがアレじゃなければねえ……』
手慣れた様子でスルスル情報抜いてるし。自然体だし本当に敵対組織かな?
……いや、この人のセキュリティ意識に難があるだけか。
手持無沙汰というか、意識的にボクと彼女を関わらせないように立ち回っているので特に言うこともすることもないボクは、鎮火や炎の誘導後に残った余燼に目を向ける
試しに陽炎がたつ小石を影で包んだり、持ち上げても普通に持ち上がった
……これだって異能への危害じゃないのか?まあ炎を防ぐ壁にした時も使えたから、当然だけど
やっぱり自動で動く条件が見えないな。とか影の手で石を弄んでいると
『……うん?ねえそこで何か燃えてない?』
「あん?燃え残り以外はこいつが操作した──お前なんだその目」
「え?あっ……なんで!?」
あの時みたいに両目が若干燃え始めるブレイジングハート
そしてボクの胸元からジジジ……という音
ああ……これはと思った次には既に、前回とは逆の方が燃えた。つまり、ボクの衣装の胸部から股間よりも少し上の範囲が、奇麗に焼け落ちた
『ヌゥン!ッッ!──「オラァ!!!」──』
「ウ゛ア゛「ゴルァ!!!」ポミェ"ア°ッ!?」
「クソがッ!!鋭化の話聞いた時点で気づくべきだった!お前は上何か羽織っとけぇ!そろそろ来るぞァ!」
「えっえっ」
発作を起こすドローンを即破壊、ブレイジングハートに記憶が定着する前に当身で一気に意識を刈り取るフラッシュブレード、すごい業前だ……
とりあえず残ったケープを引っ張り、両手を前にクロスさせ──男性がこのポーズしてもなあと思うが、こっちでは逆なのでこれも色々アレなポーズだった──、丈が無いので胸元だけは隠しておく
そして何が来るのか?と思っていれば、何かレーザーみたいな線がいっぱい飛んできた
『フォォオオーーーー!!!!邪魔をするなァァーーー!!!』
「この……馬鹿がァ!」
『いけよやァーーーー!!!!!!』
「叩き墜としてやらァーーー!!!!!」
……説明しよう。レーザーみたいな線は黒薔薇団最新鋭のレーザードローン
文字通りレーザーのように光速に近い速度で駆動できる、現在試作中のハイテクツールである。完成していたのか……いや、これ急遽録画撮影だけとっつけて飛ばしてきたな?
秘密兵器のお披露目がまさかの身内の痴態の撮影目的で。それを阻止するために異能全開でライトサーカスを始めている身内の内輪もめ、何が悲しくてこうなった
「……っくしゅ」
そもそも、前回途中だったので燃焼再開ってなんだよっ
というか影はボクを自動対象にしないくせに影はボク判定なのか!?納得いかない!
「ッペ!
『ガガ……ばばばかピーなななな……ぜ、全ザーめつメツ滅m……』
本日の戦果者は、異能の反動で全身の血流が大分シェイクされたのか、色々顔面の穴から血を流す鬼神も斯くやのフラッシュブレードとなった。
……レーザードローンって現時点で稼働するのに云千万、特殊な加工でオーダーメイドの本体も一個あたりゼロが七、八くらい付くって聞いたけど……子供なので、ちょっとわからないですね。
ブレイジングハートの異能が残った石に接触したので、命令が途中で止まってたから自動的に再開されました