今、ボクは夢の中にいる
この寝転んでいるのか起き上っているのか、目を開けているのか閉じているのかも曖昧な状態は、多分そうだ
「聞こえる?──ねえ、聞こえる?まだ聞こえないかな?」
湿度のない微温湯に揺蕩っていると、上下なくありもしない声が響いた
思わず目を開け──元から開いてたのかもしれないが、とにかく声の主を見るという意識を持つ──視線を向ければ、そこにはボクと同じアルビノの、それでいてボクの中にいるはずのない彼女が
「あ、聞こえた?良かった。ようやく会話が出来るね」
「──え」
「お久しぶり?」
落ち着いた雰囲気のセイクリッドナイトがいた
「なん──」
「ああ大丈夫。外のとは違うから、私はあくまでイメージだよイメージ」
「……そのものでは、ない?」
「そうだよ、白狼」
今度は椿さんになって肯定した
「夢……」
「ああ、今白狼は夢を見ている、そしてその中で今、白狼の中にある他人のイメージを介して、会話しているんだ」
「……どちら様ですか?」
「ははは!どちら様はちっと傷つくな!まあしゃーないか、こうやって人格ってやつを借りてなきゃ意思疎通もできないしな」
篠崎さんになってバシバシと叩いてくる
「今まで出会った人の姿でしか、自我を出せない?」
「んんーとねえ……白狼クンがまだ他人行儀だから、お姉さんはこうやって他人としてしか出てこられないっていうのかな?」
綾野さんの姿の誰かが、困った風に笑いかけてくる。どれもこれも本人そのものだけど、何か違和感があるのも事実だ
「他人行儀、ということは……貴方はボク?」
「近い……けど、そのままではないかなあ。切っても切り離せないものだし、この方法もヒントだよ」
「……じゃあ、まさか」
「気づいた?」
「ボクの、
ボクから見た他人──それが影法師だと解釈すれば、切っても切り離せない関係性と合わせてそれしかない
「……よかった。気づいてくれて」
答えを聞いたソレが、元に戻るかのように
ボクの異能──白影は笑った。
「最初にも言ったけれどやっと話せるね。ボク」
「……異能に意思がある?」
「これは仮初のもの。ボク自身も白狼で、
奇妙な場面だ。双子の様な少年が、鏡合わせで対面しながら会話している
……この世界の現実なら、喜ばれるんだろうか。双子──
「ズレ?」
「異能と自分を分けて考えてる。異能は自分の一部だと理解してるのにね、ほら……ボクの折角の利便性だってそのせいで台無しじゃないか」
「自動発動のこと?」
「そう。自分を守る場面で咄嗟に出るのに、異能と自分を別にしてるから」
そういうことか。でもズレか……
「……ズレの心当たりがないんだけど」
「そうかな?まだ自分がこの世界にいるかどうか、悩んでるのに?」
「ああ……まだ異物感があるのは確かに」
「あんまりにも常識がズレすぎてるのもあると思うけどね……慣れろじゃないけど。地に足付けてはほしいかな」
確かにボクそのものだな白影は。記憶とか視点も同じで双子みたいな状態なんだろうか今は
とにかく。その薄壁一枚が色々な妨げになっていて、警告しようと続けていたのが今日繋がった感じなのかな。
「それは何とかするとして……直せたらどうなるの?」
「こうして異能に小言は言われなくなるし、もっと便利になるよ、鋭化とかで。そもそも……ごめん他にも伝えなきゃね、最初にセイクリッドナイトの姿をしてたことで」
「異端関係?」
「いや……血縁関係?みたいなものかな。それが切欠でボクもこうして干渉出来たんだよ」
やっぱり異端関係では?これ白影が異端に汚染されてるとかとういうオチでは?
と思っていたが、そうではないらしい
「覚えてないだろうけど。ボクは離反した時の椿さんと、白騎士団の団長の異能の衝突で生まれて、そこに白狼になる前の君が混ざって生まれたんだよ」
それどころじゃなかった。
え?そうなの?全然記憶にない……というか、五年くらい前から実はこっちに来てたのかボク
「多分だけど、二人の異能の衝突で次元とか歪んで入って来ちゃったとかじゃない?それでぶつかって混ざって、ようやく形になったのがちょっと前。そしてあそこで椿さんに拾われた」
「全然覚えてなかった……じゃあ、影ってもしかして」
「まあ。椿さんの暗黒とあっちの光の混ざった結果だろうね」
遺伝的な物はなかったけど、こういう特殊過ぎるケースで最強クラスの異能が融合して生まれたって思うとすごいな……当事者でなければワクワク出来ただろうな。
「親族で、同じ光の異能を使うセイクリッドナイトとの出会いで活性化した?」
「あー……ごめん。思わずなんだけど今のセイクリッドナイトってボクに心奪われた状態だと思う。色んな意味で」
なんか雲行き変わってきたな
「……あの初めて出会った瞬間のアレってまさか」
「うん……まだ未発達で本能的な部分しかなかったボクが、思わず自分を構成する一部が来たって取り込んだみたい」
ええ……じゃあ彼女の異端化ってボクのせいなの?
申し訳ないどころじゃないし、自分で自分を追い込んだだけじゃないか
「怪我の功名でもあるんだけどね……こうして一時的に性格が出来て伝えられたし、あとボクは今大分黒に傾いててバランスが悪いみたい。影響を受けてるのが片方だけの状態というか……由来になった異能の白と黒を緩やかに吸収しなきゃいけなかったのが解った、感じ」
「ううん……出来上がったけどそれでもボクはまだ不完全で、更に片方にだけしか摂取できなかったから、今はかなり危うい?」
「危ういわけではないんだけど、黒側は目一杯もらえたから、出来れば白側も同じだけ貰えないと、チグハグになって勝手が悪いままで止まってる。今じゃ名前も負けてるしね。影も完全に真っ黒でしょ?本当のボクって灰色よりの影なんだよ、気付いてなかっただろうけど」
向こう側の異能に接触して、ラーニング出来れば偏りも正されて、十全に機能する異能になればズレも自然と治まるかもしれない……でも難しいな、あっちの団長が現場に出てくることは見たことがないし、出会うにしても公共の場になるわけで。そもそも敵対組織の幹部だしボク
「そうなんだよね……それと。やっぱり家族間で更に異能も同じ感じのセイクリッドナイトの因子というか……情報?だと、こうやって補強はできるけど埋め合わせは無理みたい」
「……うん。うん??」
「だから何とか団長と会ってセイクリッドナイトから取っちゃったこれを返してあげた方がいいと思う。元が同じ団長からなら貰ってもあっちに影響はないよ、椿さんもそうだし。でも彼女の方は返してあげないと完全に正気を取り戻せないし、もしこれで異端から戻れたらいい貢献になると思うし」
──はい???????
「──いや。何?中々出てこない人相手に出会って、且つおかしくなってる人相手に取っちゃったものを返して、そこまでしないとこれ以上とか、ズレの修正が出来ない……ってこと?」
「……一応ボクも頑張るからさ、頑張って本体!返し方とかは共有しとくから!よろしく!」
「無茶な──!ちょっと!まだ終わってない!待ってタンマ!!」
頭上がすーっと明るくなっていき。ああこれ目が覚めるなということが直感的にわかる。
直前に凄まじい無理難題を押し付けられたし、何より今頭に流れ込んでくる返し方がひどい。相手に可能な限り密着して、かつその状態を数分キープ?サイコ化してるあの人相手に?そこまでにまたお腹ソードされたり、もっと危ないこと開始されるのでは?そもそも誰かついてきてもらってもそこまで接近許されないだろうし。許しつつそれを阻止してもらえるとでも???
良い笑顔で親指を立ててすーっと意識の底に沈んでいくように、下に下に下がって──ボクが上に引き寄せられてるだけかもしれないが──いく一時的な片割れからの
「………………」
ることもなく。げっそりとした目覚めと共にガッツリ記憶に根付いていた。
……とりあえず、言える範囲を整理して椿さんに相談するしかないか
「………………ハァ」
鏡越しに見えた少年は、さっきまで対面していた顔とは打って変わってひどいモノだった
思わず自嘲すれば、もっと似ても似つかぬ顔になった。
自分自身からの無茶ぶりをこなせない限り主人公は鋭化もできなければレベルアップも出来ません
異端の異性に抱き着いて数分掛けて返納し、且つ全く出会えないもう片方の親と接触しましょう
頑張って欲しいですね。あと白影が深見さんの姿で出なかったのは無口なので説明に適さないからで、ハブられたわけではないです