異能力x貞操逆転x白一点   作:ヒゲクマ

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23.「嘔心瀝血」

 目の前に、燃え尽きた綾野さんだったものがある。

 ……ボク自身の由来を明かそうにも、言うべきことと言わないで置くべきことを。自分だけで考えるしかなく。かと言って、嘘は絶対バレるので、事前に根回しとして前々から何かしら察していそうな、それでいて拠点のセキュリティ的に隠し事が出来ない綾野さん相手に、一部を明かすことにしたのだ。

 

 ・自分は椿さんが白騎士団を離反する際に勃発した、異能の衝突で生じた存在であること

 ・ある程度二人の中の知能や知識を持てたため、意思疎通ができていること

 ・この記憶を思い出したのは最近であり、また現在自身を構成する一側面が欠けていること

 ・それは白騎士団の団長からしか獲得できず、そのためには接触しなければならないこと

 ・セイクリッドナイトに接触し、異端から戻せるかもしれない方法を試すつもりであること

 ・これから椿さんと他の幹部二人にも相談するつもりなので知恵を貸してほしいこと

 

 ……とりあえず嘘をつかず、かと言って自体がややこしくなりそうで自分の中でもあくまで推測でしかない部分──前世とか転生とか再構築みたいな部分──については伏せた。

 ボクの知能で偽れるわけがない。嘘は言っていないくらいで留めて、天才からの助言を得て会議に臨みたい心づもりだった

 

「──ふ、フフっへハ。さいこう。やっっぱキミ最ッッッ高だよ……白狼クぅン……!」

 

 脱力し切った身体に、だらしのない口元の端からは涎が垂れ下がり。目力だけは妙に強まった綾野さんが恍惚と漏らす……この人は今までもだが、それ以上に特殊性癖(難儀な業)だったらしい

 ネットリとした目線は、今まで以上の脂っこさを乗せていた

 

「好みのショタがァ……?珍しい異能だっただけでもォ……最強だったのにィ?──ォ゛ンッッッッ!!…………ふゥぅう~~~。()()()()()()だったァァあぁあ~~~~????」

「……そういうことになります。すみません、思い出せてないので、自分でもわからなかったんです」

「あァやまらないでえ……?今ねえ人生でいっっっちばんイけてる気分だからァ……!いいよいいよやっぱりキミは私の至高の天使だったんだァ……ヴぅッッッ!!!ヒヒ……ヤバすぎる……こんな都合のいい展開ってあるゥ……???」

 

 ダメだ話が進まない。

 痙攣が落ち着くまで待とう……その間に一応聞きだしておいたが、ボクの出自自体の目星があったわけではなく、男子なのに親族情報や出生届にも一切引っかかっていないボクに対して、都合の良い妄想をしていたら、まさかのボク本人から妄想そのまま(それそのもの)をお出しされ、色々不意打ちで爆発したらしい。

 

「な、何とか理性(いしき)が戻ってきたよ……ンヒ。それで白狼クンはー……これから自分の安定のために白騎士団の団長と接触しないといけなくて、異端化したセイクリッドナイトを治療できそうだからするために会うつもりで、そのために良い感じの作戦考えてウチらの面子でいけそうなサポートお願いします。でいいんだよねそのまんま」

「はい。安定していないわけではないんですけど、やっぱりいつまでもそうなのかは不安なのと……あとは、単純に自分を形作ったもう一人についても興味がある……のだと思います。セイクリッドナイトについては、可能であれば異端に対する希望になれるかもしれないので」

「なんかその割には罪悪感が動機っぽいけどお……あの豹変が自分のせいとか思ってる?極端だけど女なんで誰でもあんなもんだから気にしなくていいのに。はー天使!名実ともにマジ天使!!」

 

 ……やはり伏せてるものを瞬時に察知されたが、勝手にテンション上げて解釈してくれて逃れられた。

 

「うんまあ……普通に私に言ったことそのままいえば通るしみんな真剣に考えると思うけど。ボスがちょっと不安かも?一応今でも親目線だけどさあ、実質ホントに実子みたいな存在で、しかも相手がねえ?結構よりにもよってな組み合わせだからお姉さんそこだけは予測できないなあ」

 

 ですよね。ボクも結構嬉しいんだけれど、これを明かしてどうなるかが同時に怖いんだよね。

 これで母性──父性かもしれない──?か何かで椿さんがこう、色々と崩壊したら多数の精神的ショックで、ボクも危ないかもしれない

 

「崩壊だの異端だのは無いと思うけどねえ。懸念はそれで過保護大爆発(モンペ化)が怖いかも、あの人親になったら大分甘やかすというか子離れ出来ないと見たね。今でも白狼クンのことになると結構アブないしさあ」

 

 ボクは実質貴女の息子です。これからお腹刺されたことのある人にもう一回会おうと思ってます。

 それから、もう片方の親で敵の組織のボスに会いたいです。

 ……うん。滅茶苦茶親目線的にムリかもだけど

 

「……それでも、ボクに甘い分ごり押しするしかないです。付け入る形になりますけど」

「まあねえ。存在が偏り過ぎて不安定になっちゃうかもしれないなら全力でサポートくれるのはわかるけど、やっぱ過保護爆発でこう……あっちのラスボス(団長)との出会いがすっごいピリつきそうでねえ。とりあえず根回しはお姉さんに任せてみない?白狼クンはさ、色々と穏便に済ませたいんでしょう?色々秘密の共有者としてリスクはあるけど台本と流れくらいは用意してあげましょー」

 

 ……本当にこの人は企みとなるとすごいな。リスクはもとより承知の上だったし、何より当たって砕けろしか出来ない自分よりも、絶対に成功確率の高いものを用意してくれるだろう

 二つ返事で飛びつく他ない。

 幸いにも綾野さんがトチ狂って暴走することもなく──狂信だの、偏愛的な雰囲気だったのでかなり危惧していたが、不安要素の解消を最優先にしてくれたようだ──。現在組織の会議室にて幹部一同とボスが、綾野さんプレゼンで大体情報を共有した

 

「ぉ、おあお──」

「姐御が壊れた」

「いや大丈夫。何か言わなきゃと思いつつ呂律が回ってないだけだって」

「大丈夫ではねえなあ……アタシも頭おかしくなりそうだ。異能人間ってーことか?白狼が?」

「……そういうことになる、かなと。住民票にもなくて、黒薔薇団ほどの組織力で探しても情報が出てこないことと、この思い出した情報的にはですが」

 

 忙しなく組んだ指を動かしながら、何を言うべきか固まる椿さん。

 頭に?を大量に浮かべながらも。自分なりに解釈し理解してくれた篠崎さん。

 深見さんが静かなのは何時ものこととして。見た感じではこの中で一番そもそも動揺もないのは意外で、また結構ありがたかった

 

「おお……何か、学生の頃流行ってた漫画だかアニメみたいだな……異能そのものってのは」

「篠崎ちゃんふっる!それ私も知ってる奴だったら、もう何年前のやつう?」

「やかましい……深見は何か全然驚いてねえな。何か事前に聞いてたのか」

「大凡の目星は。異能で」

「……ああ!幻影使いだから、人間っぽいけど何か違うみたいなのを感知してたとか!?なぁるほどそういう感じにも使えるというかあるのねえ!もっと詳しく教えてねそれ!」

「異能らしい異能持ちは何かよくわからんね」

「一番人間離れ(いのうしゃ)してる挙動は篠崎ちゃんだけどねえ」

「怪異光線殴り」

「お前らさあ……」

 

 そういう系統の異能持ちだと、何か違うとかが感覚的に伝わるのだろうか?

 無口、というかあまり奇妙な感覚(そういうの)に頓着が無い人に備わっててよかったような、面と向かって言われて、早期に知りたかったような……とにかく、綾野さんの丁寧なプレゼンと捕捉で。幹部間での混乱はなかった

 ……ボスのフリーズも、自分だけでやっていたらもっとひどかっただろうし。最善だっただろう

 

「んで。白狼はこっから不足してる分補ったり、異端から戻せないかをやってみるんだったか?」

「前者に関してはー……会えるかどうかだよねえ。ボスが復活したら聞いてみるとしてさ、後者は……なんか行けそうな気がするだけなんだよね?白狼クン」

「そう、ですね。もしかしたら異端に対して有効かもしれない……という程度の感覚だけ、です。それに万が一これが上手くいっても、他の異端に対してもそうであるかは全く保証できないと思います」

「本物のじゃねえけど、刃物刺してきた奴にもっかい近づけるのはどうにも、なあ……」

「再度の汚染での、心身への影響は?」

「……ボクの身体は今までの検査的には人体と変わりないものであると判断できますけど、異能に干渉する異端という要素が、自覚した今はどれほど影響があるのかは自分でも、どうなるかは」

 

 会うだけなら、それはまあ前者にはそうだろう。簡単な方法で言えば、ボスが再び首都にでも堂々と現れたら、流石に止められる人が出張らなければならないので、確実にあっちのトップが出てくる。

 問題は、その場合はボクも中継などに晒されたり、あるいはボスと向こう側が後日の密談を取り付けてもそれらを捕捉されて、正義の味方的にも、悪の組織的にもよろしくないことだが。

 綾野さんはそれ以外にも、何かしらの関係があるとみているらしく。ボス復活までこっちは一旦保留

 

 ……後者に関しては、大部分が本音だ。

 今まではボク自身に自覚が無かったので、人体として認識されていたのだが。自分自身に教えられて自覚した今、あの異端を食らった際にどうなるのかがわからない

 生きた異能に対して、異能をかき消す異端が発動した場合はまあ、間違いなくアウトだろう。影は普通に影に戻るだけだったけど、身体を何に戻されるかだとかになったら余計に。

 自称肉親的な脳内関係を押し付けてくるが、あれだけの癇癪や衝動もあるので、危害ゼロはあり得ないと考えるべきだ

 だが返さない限りはこの先も永遠に──案外時間がたてば、欠けた部分は治るかもしれないが──あの人はボクのせいで、社会的に異能者以上によろしくない立場に押し込まれ続けているというのは。罪悪感が相当に重たい

 

「やっぱ先に安定か?アタシら全員で援護するにしてもワンミスで何が起きるかわからん以上」

「個人的に異端解決が先に見たいんだよねえ……というか思いついた方法が秘密にされてて好奇心がやばいー!異端に関しては出せないくらいボッコボコにしてからでいいでしょ」

「どうだかなあそれは……そもそも幹部タイマンだのこっち有利でいけるかね」

「……そもそもとして、あまり目立たず且つ穏便に済ませていきたいですから」

「んー……」

 

「────いや」

 

 そこそこ暢気だった会議室に、凛とした声が通った。

 椿さんがどうやら復活──決死を思わせる表情だが──し、纏めようとしたのだろう

 

「話は呑み込めた……迅速に準備を推し進める他あるまい」

「滅茶苦茶シリアスな顔してるが……もうちょい力抜いたほうがいいんじゃないか」

「……ンフ。これ面白くなってきたなあ」

「何も面白くはねえよ……」

「ではこれより()()()()()()()()()()()についてだが──」

 

 ……ん?()()?どっちが先とかの話ではなく?聞き間違いかな???

 

「??今アタシらはどっちからするかって話じゃ」

「白騎士団団長……天埜 楸については私が何とかしよう、かつての関係も全て利用する。心配しなくていい」

「姐御?あねご????」

「そして異端……セイクリッドナイトも同様に再会の機会を匂わせるやり取りはしていた。自然に理性を取り戻せるか怪しい、あるいは長期の時間が掛かるかもしれない今迅速に対処し精神的負担を取り除くことを第一としよう」

「あっ……これはヤバい」

 

 矢継ぎ早に、そして今までなかった幹部からの呼びかけにも反応を見せないので困惑する篠崎さん。

 面白がっていた一転。何かを察して笑顔と真顔の中間になってたらりと汗が流れた綾野さん

 そして黙々と施設内放送の準備をする深見さん……()()()()()

 

「大丈夫。大丈夫だからな……全て上手くいく、すぐに身体に不安が無いように、要らない心配に苛まれないような日々を過ごせるようにしよう、私たち(大人たち)に任せてくれ」

「??あの……椿さん?」

「繋がった。いつでも」

 

 ボクも頭の中に大量の疑問符を湧かせていると、椿さんの腕の中で、今まで以上に熱の籠った抱擁を受けていた。

 深見さん?粛々とマイクを手渡したけど、冷静なら今のボスを嗜めたりしたりは……

 

「──同志諸君。突然の無告知による放送を許してほしい。だがしかし、それをせねばならず、また、この場で諸君らに早急に伝えねばならないことがあるからだ。そしてその上で──「ほいテステス!聞こえる?いきなりだったけどテストAI試験放送!結構ガチな感じだったから一旦中止ね!ハイ作業再開!一切合切気にしない!!!終わり!閉廷!以上解散!!いや帰ったらダメよ!いつも通りね!いじょ!!」

 

 ブツリと一瞬のノイズ。異能を使ってるのかどこか淡く電光的なものを纏い、間髪入れずに綾野さんがマイクをひったくり軌道修正をした

 

「あ……ッッッぶなかったァァアアァアア!!!!」

「綾野……いきなりなに「それはこっちの台詞だよねェ……!?いきなり全面戦争(アポカリプス)の引き金引くのは止めて」」

「すまんマジでアタシも頭止まってたわ……綾野GJだ」

「ううむ……ただ白狼との関係を話した上で付いて来てくれる同志たちを確かめようとしただけなんだが」

「その後白狼クンが不調から脱するにはとかまで言って白騎士団にカチコミ行くつもりだったでしょ絶対……ないないマジでありえない。というか本人も別に偏ってるだけで健康に影響なしで穏便にっつったでしょうがもー」

「し、しかしだな……!むs、白狼の心身に万が一があってからでは……!」

──今息子って言いかけたか姐御

「極端なんよ行動が。わかるよ?ボスもマジで私の息子ってことになんないかなーとかどっかで思ってたんでしょ?こっちもさっき理想のショタの正体が生きた異能とかいうドストライクが現実になって脳みそ爆発したばっかりからわかるわあ……わかるけどダメ。さっきのはマジで無し無しの無し」

 

 綾野さんが珍しく良識側(MVP)だった。

 椿さんが僕を実子認定した途端、不調は無いが不安定……をかなり()()()()して、一刻の猶予もないので強行突破しなければという強迫観念に囚われた──言ってはなんだが、一種の脳破壊なんだろうけどね──ボスを、自身のさっきの体験から即察知して兵力の招集や扇動を阻止してくれた

 親バカまではとか思ってたけど……それ以上を軽々飛び越えてくるのはやめてほしい。

 

 その後の長い長い──ほんとに長かった。極端になりがちな椿さんを元に戻す数日は──協議の末、穏便に同時進行という結論に至った……とりあえず聞いてほしい

 

 椿さんとまだ見ぬ白騎士団の団長である楸さん──セラフィムライトは、かつて恋仲だったこと

 今は気持ちに区切りはつけているが、その関係とボク自身を()()にして、秘密裏に会えるかもしれないこと

 そして、その際に妹である柊……セイクリッドナイトも同行させ、椿さんとボク、楸さんと柊……さんだけで──まあ、だけはあり得ないとして。こちらも幹部は全員揃い踏みだし、向こうもそうなるだろう──誰にも知られずに会えないかを打診する、事件などで現場に出た幹部相手に、適当にこちらからのメッセージを渡すなどで、懸念もあるが現状これが確実だから。

 

「深見にやらせるのはダメだぞ。さっきのも半分以上悪乗りしやがったからな」

「ろ、ろーぷろー……」

 

 流れるように椿さんに準備(便乗)していた深見さんを羽交い絞めに極めながら。篠崎さんが忠告する、みなまでいわずともです……あ、深見さんオチた。

 

「ほう。なんとも面白い、いや失敬。麗しき流れを感じる……その一助を担えるとは上下から感涙してしまいそうだよ。フフ良いんだ意味は解らなくていい、解らないままに不快に思うその仕草が至高なのだから……ありがとうございます(ごちそうさまです)

「…………」

 

 コンタクト相手(じんせん)でやらかした気しかしないが、でも仕方ないんだ。ブレイジングハートとはこういう時に限って出会えないし。そもそも元から二択だから……嫌な予感しかしないが、こちら側の不安要素だけは全て取り除いた最善だから……もう残りは全て運要素(お祈りポイント)しかないんだ。そう思わないとやっていられない

 

「受け渡しのみに終始することは誓おうじゃないか。フッ、盛り上がりそうな予感しかしない……乗るしかないな、この流れ(ビッグウェーブ)に……!」

 

 ……神よ。もしもどこかに御座しますならば、どうか含みのない意味で此方に微笑んでください

 悪趣味でなければ、どうか、どうか何事もなく済みますように……!

 

 あまりにもよろしくない笑顔で役割を引き受けたアクアガーディアンの様子に、この世界に来た時点でいるわけがないであろうモノ()に縋りたくなる気持ちは、どうしようもない程にボクの中で切実だった。




深見さんは最小の手で最大の効果を出すことを好むため、役に立つこともあればこうしてやらかすこともあるでしょう
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