最高級ホテルの防音は完璧で、貸し切り時点で既に安くない料金以上に上乗せしているため、
なので、ここで世間に知られる前に、こんな騒動は何とかせねばらならない
異能を消す異端、さらに色々と暴走で強化されている。それが正義の味方の顔役で、だれかれ構わず襲い掛かり、あまつさえ一対多で拮抗している場面。
先人、そして現代でも積み上げた全てが消し飛ぶことは想像に難くない
異端化したらああなる可能性を異能者は誰でも秘めている、そんな可能性を大衆に与えるだけで、異能者は冬の時代以上に厳しい人生となる
終わらせた先に待つのが
今の
……異能は性欲、もとい感情の昂ぶりで向上するアレと、もう一つ。
「──ふう」
落ち着け。心の底から嫌気がさしているが、九割合ってて、あとは結果という一割だけだ
鋭化と異端はさほど遠くない現象だと、今のボクは何となく感じている。説明は出来ないが、遠くもない感覚だと確信している
……確信しているからこそ、ボクは自分から知り合いたちの
「──ボクがやろうとしてることと、その間で行うことに関しては以上です。とりあえず綾野さん、深見さん、青山さんから始めて、成功したら……抑えてくれている四人と交代して伝えて下さい」
「……は、はは。何でもありの二つが合わさったら、そんなことも出来ちゃうんだね……そして
「美少人も面白い賭けに出たものだねぇ……いや、賭けに出なければならない程度には危機的だものな。我々はいわば試金石、なるほど確かにこの面子なら事前通達で成功率を高めるべきだ」
そう。ボクは今から各人の精神の中に入り込み、前述の願望を当人と体験していくことになる
相手の願望の相手役に収まるため、解釈違いなんかが起きる……ことはない。基本的に妄想の相手をボクにする程度なので、精神の持ち主の都合よく進行するだろう。
勝手に相手の妄想に入り込んでいく以上、それに対してケチを付けたり、苦言を呈することは許されない……平常心と強靭な心で臨まなければ
「……深見ちゃん?なんか震えてない?」
「お、おぁ……アォォ」
「
「あっ……ふーん。その、直接的なアレじゃないよね?その上で
「ハッハッハッハッハッハッハ…………」
「今度は夏場の大型犬のような過呼吸だあ……この面子で気にするほどとは、むしろ見たかったくらいだね。美少人も口がカタいだろうし、心を晒し合った男女としてむしろ悦ぶところでは?」
「じゃダイビングよろしくビビってる人一番でいこっか!パパパっとやって、終わり!」
「ココ心のじゅんb「いいからいいからいいから」」
お願いだから覚悟とか決心を固めてる横で挫けるような不穏なフラグを立てないで欲しい
時間も限られているし、凄まじく挙動不審になってしまった深見さんをトップバッターとして、
──揺蕩う狭霧に包まれ、現代社会とはあまりにもかけ離れた薄暗い山中、木洩れ日も無い常夜的に冷ややかな暗がりの中、影が一つ奔る。
「───」
影に追いすがるように続いた、数本の線に振り返ることもなく投擲された苦無が、その全てと相打ち。けれども、本命の一射がそれを待っていたと影を捉えた
「っ」
『……だらしない喃、薫育の甲斐が無いではないか。数撃たば当たる、ならば数を凌げば当たらん──放たれた音と目視を勘定せんか』
肩を掠めた程度だが、それを放った師からの失望に身が震える
浮世を離れたこの地にて、己が指導鞭撻賜っている相手もまた、この世ならざり人ならざる方、故にこそ、人知を越えた教えを受け、理から外れた学びを得られるというのに……面目次第もない有様に自己嫌悪が走る
『──これ。惚けておる場合か、悔いて好いほど
「はっ!師の無聊慰み不肖の身にて粉骨砕身する所存!」
『こわ張りも要らん』
一笑に付されたが、全て本心だ
確かに己は強さの為の修錬を重ねている。が、それそのものはもはや打ち止めで、あとは経験数の差以外は。人としての限界は越えている自負はある、これ以上はない自覚も。
故にこそ、己の残りの多数で、せめて御方の、一瞬の充足に出来ればと思わずにはいられないのだ
それがおこがましいことであろうとも。
『また栓無い愚考をしておるな?……よかろ、莫迦の考えは休むに似たり。然らば、気の無い動きもそのようなもの。べつに興じるとするか』
「は──」
嗚呼……顔には努めて出さないが、この昂ぶりとどうしようもない浅ましさ、そして猛りは当然師も見破っているだろう
だがしかし。己の目の前で羞恥も無く、むしろこちらのそれを煽るように、単を解いてゆく一挙一動全てが、雌を獣に戻していくためのもののようで
『クク。診得よるわ、すまし顔の下は肉を前にした
「あ、ぁ……!し、しょォ……!!」
師の幼く真白い、蠱惑的な手先で顎を愛撫される。それだけでこの煮え立つ全てをぶつけてしまいたい衝動が駆け巡る
だがまだだ、だって彼の許可がない。己は彼の道具、彼のための慰撫、彼にとってのお気に入りでいたい、彼だけの玩具で……彼だけの、
『
「はあ、ぁ──ッ!」
彼のあどけなく、そしてどこまでも老練とした色気を醸し出す
どこまでも甘く、なによりも貴く、只人では味わえぬ法悦を肉に刻み込まれた
「ぷ、ァ……!師、しィ……ハぁ、あ───」
『口吸いで溺死させるも一興。しかしそれでは容易すぎて喃、ほれ蕾は開いたろう、疾く愉しませろよ?』
恍惚のまま離された間に、照ら付く様な銀橋がいくつも引いた
そのまま彼のなすがままに、求められるままに動く有り余る栄誉の熱に浮かされ己は────
うわぁすごいこれ
深見さんの心の中に到達し、上記の
深見さん視点で見た、都合の良いボクは。なんか老練な少年──ショタジジイ?──として深見さんの師で、さらになんか色々と緩くてはだけた着物で、犬耳と尻尾──狼のだろうけども──を付けた、尊大な好色合法ショタとして彼女を貪っている
……現実との乖離がすさまじいが、ボクの外観に深見さんの性癖が混じった結果、
いや流れ込んできた設定も長い長い、深見さんについては何かこう「人間の中では上位の実力者」くらいの、フワついた設定。対して
「──お?もう終わった感じ?すごい密着だけど、五秒も経ってないよ?」
「……なるほど、現実時間はそれくらいで済むという事ですね」
「ほう、その口ぶりから中々に永く濃厚な蜜月を体験したようだね」
とにかく、詳しくはお出しできないそれはもう官能的なめくるめく幻想少年艶話の演目を無事
……体感時間上では、ドラマのシーズンくらいの感覚だったけどね。数秒だけしか経過していないのは重畳だ、全員分行ってもボクの精神状態は置いておいて、余裕が持てるのだから
「それで結果としてどう!?なんか深見ちゃんはその、停まってるけど……」
「……そう、ですね。若干のズレはあると思いますけど、もうすぐわかるかと」
「──!」
「おおう
背骨折れてない……?と思うほど、青山さんの言う通り背中を捻じ曲げ、深見さんが帰ってきた
その時点でボクは検証の成功を実感した。だがまだ安心はできない……確かに深見さんの異能は予想通り、
彼女の脳内でのボクのため、より便利に、役立つという設定が合ったのも大きいだろう。問題は──唐突に過剰に満たされた願望によって、精神が
「──深見さん、落ち着いて聞いてください。貴女はいま、
「……ぁ。オあ!…………スゥー……フゥー……理解、した」
「願望を満たした錯覚があるでしょうが。あくまであれは疑似体験です、これは貴女の異能を底上げするため、高めるための」
「ちょ、ちょい待ち。ごめんねアフターケアの最中にでもめっちゃ重要というか凄まじい今すぐ聞かなきゃいけない疑問に今気づいちゃったわ」
目覚めてすぐに夢オチに近いことに滅茶苦茶ショックを受けている──いや本当にすごい哀しそうだ──深見さんを刺激しないように、かつ現状を再認識してもらう途中、綾野さんが割って入る、何故焦っているのに半笑い……いや引き攣った笑顔なのだろうか?青山さんも目をパチクリとさせ、深見さんも固まった。まさかあっちの戦闘の拮抗が?
「差し支えない範囲で今すぐ深見ちゃんとの夢の内容教えて」
「それは」
「プライバシーとか諸々だよねうんわかる最初に考慮してたし言ってたもんねごめんね先にこう聞いとくべきだった
「付け加えるなら
「……………………え?」
綾野さんの指摘と、青山さんの便乗に恐る恐る頭頂部へ手を伸ばす
ふわふわとした毛に触れる、そして癖のある垂耳的な外はね部分まで着けば
「────え???」
「ア、ア、ア……!」
妄想の中のボクそっくりの狼耳、そして尻尾がピンと立ち上った
……と意識を向け驚愕していると、ポンと音が鳴るように掻き消えた
「師ィーーーーーーー!!!!!!!!!」
師ではないです。
頭の中の合法ショタが、現実になった途端死んだのかというほどの慟哭を上げ、滝の涙をあふれさせた深見さんの有り様に驚きつつも、一時的とは言え自分の体の変質についていけない。
相手の願望に混ざるリスクというか、異能の身体は白影がやっていた影法師のように。都合の良い形になれてしまうということだろうか?
正直、この事実は目の前の人たちに知られるわけにはいかなかっただろうに……
「「そうかそうか。なるほどなるほど」」
ほら二人していい笑顔で高速算段完了してるじゃないか
意識して現実に変化しないようにすれば……と思いつつも。どうせそんなことなどお見通しと言わんばかりに、妄想でこっちの形をこねくり回して意識させる気満々だ
「……お二人とも、そんなことしてる時間が無いんです。本当に今は一刻一秒を争うんです」
「うんそうだね!」
「深見さんの異能が底上げされたのは、本人も理解してると思いますけど……自覚はありますよね?」
「し、師……お、お師さん……もう一度、温もりを……もう一度だけ」
「…………すみません巻きでいきます、次は青山さんで」
「嗚呼!いつでもきたまえ!!」
くそ絶対わかってない。深見さんも
青山さんも綾野さんも、今そういう笑顔を見せる場面ではない……誰も深見さんの慟哭に注意を向けている暇がないほど、画面外で激闘が繰り広げられてて。絶賛ホテルの風通しが良くなっていってるというのに
……大丈夫だ。この三人と赤城さんを乗り切れさえすれば恙なく底上げは完了するはずだ
とにかく、二人を乗り越えた後に深見さんがまだ戻ってなかったら。もう一度あの姿を意識しなきゃいけないかもしれないが……とにかく。今は自分の精神衛生の保護と、相手の妄想に引っ張られて都合のいい身体を現実に反映させないよう、耐え忍ぶしかない
消したはずの耳がヘタレるような感覚がする。
良くない頭で弾きだした希望的観測なんてものは、結局のところ深見さんの妄想の言った通り、
あれくらいボクも堂々と超然としてたらなあ──!ボクのまましても、ただの痛々しい挙動でしかないだろうけども!
終わりが見えてるのに思いついたことをやらずにいられない愚か者が自分です