白騎士団。
異能者の力を悪用する組織や個人を取り締まり、一般市民を守ることを目的とした。政府公認の正義の組織。
つまり、バリバリ黒薔薇団……ボクら悪の組織の敵である。
あちらの構成員は異能者とそれ以外含め、推定千五百人程度。国内に把握しているだけで三十の、海外に二十の支部を持つ。
多分この世界で一般市民から広く認知されている組織で。当然、異能者社会でも知られている。
上でも触れたけど政府や警察と協力関係にあり。メディアでもたびたび取り上げられるため、市民からの認知度は非常に高い。
政府からの公認で活動するあちらの活動内容は主に
犯罪抑止と対策──つまりは異能を悪用した犯罪の防止および取り締まり。
異能者への支援──異能者がその力を適切に制御し、社会に貢献できるよう支援する。
情報収集と解析──異能に関する情報の収集と解析を行い、適切な対応を取る。
人道的活動──災害救助や人道支援など、異能を用いた公益活動を行う。
大きく掲げているスローガンは、「異能者と非異能者が共存できる平和な世界」を実現すること
異能者の正しい社会適応──異能者が社会に適応し、その能力を正しく活用できるよう支援する。
異能の悪用防止──異能を悪用する者を取り締まり、社会の安全を確保する。
共存社会の構築──異能者と非異能者が共存し、互いに尊重し合う社会を目指す。
敵対組織の排除──黒薔薇団やその他の悪の組織を打倒し、異能の力を悪用する者を根絶する。
纏めると、本当に完全にうちと対立関係にあり。実際あちら側も、黒薔薇団が数ある異能組織の中でも「目的の最大の敵」として認識しているようだ。
黒薔薇団、正しくは幾人かの構成員とボスは。元は白騎士団に属していたことも無視できない。
掲げている目標が当てつけのようにアンチ
盤石な
ボスが構成員を同志と呼ぶのもこのためだ。離反の際に、ボスは現状に同じような不満を持つ異能者の構成員を引き抜き、白騎士団に対して反旗を翻した
その際のボスと白騎士団の首領による衝突の影響で、首都圏に壊滅的被害が発生したが。それはボスが異能者の強大さを世間に示威するために、広範囲をわざと無差別に破壊したからだ。
実際その騒動は黒薔薇団vs白騎士団というよりかは。最悪の異能力者ブラックローズ一人に引き起こされた、かつてない人災として扱われている。ボスは自身へのヘイトと引き換えに、異能者に対して軽率な真似をすればどうなるかの最大値を見せた。というわけだ
とにかく。あちらのやり方では、どれだけの世代が礎にされるかわからないので。強引な手段に打って出たという経緯もあり、白騎士団との関係性は当然最悪──ボクに対する、先の白騎士の痴態は一度置いといて。
自発的に殺傷されることはないとはいえ。構成員同士の衝突は異能と鎮圧装備が飛び交うので重傷を負ったりは日常茶飯事。本格的にぶつかる前に止めれば傷は浅くて済むが
ボクが異能を使って撤退作業を支援するようになってからは、こちらの人的損失は抑えられていることは実際に嬉しい。何だかんだと、あちら相手に一対多が出来る幹部は以前は
『ま。私も出不精というか現場出ても役に立たなかったしね、ラインヴァイスが活躍してくれて大助かりよぉ。おっとぉさせないよ~』
白スーツの集団が展開するネット弾──ご丁寧に、異能の発現を妨害する微弱な刺激が流れる特別製──を。サイバークイーンが周辺の機器を掌握し、無茶苦茶に合体させて生み出した鋼鉄のミミズじみた巨体が薙ぎ払う。
今回もボクの主な仕事の構成員回収だったのだが。流石にこう何度も短期間で続けていれば、こんな作戦を立てられるのも不思議じゃないわけで。
しかし当然、こちらもそれを事前の諜報によって察知していたので。今回はサイバークイーンこと綾野さんがサポートに入ってくれている。
白騎士団の末端構成員は
……だから、ボクに向けたかなりよろしくない表情が筒抜けで。精神的にしんどいものがある
元の世界では、女性は胸部などに向けられた視線に敏感だと聞いたことがあるが。これに類する視線ならなるほど理解出来てしまう。
『キッショいよねごめんねえ?牝豚だけに効く失明ガスとか欲しいよねぇ。おっと来たよ、良かった
「……そこまでは流石に、っ」
さらっとえげつないことを言いながら、白スーツを薙ぎ払うメカミミズ。
そしてボクは真横に薄く広く影を展開、少し遅れて熱波が影に吸い込まれていく
……おびき寄せられた向こうの、幹部の三分の一を回避できたことに安堵する。
「そこまでだ黒薔薇団!幹部ら、ら、ら……ラインヴァイしゅっ!……ラインヴァイス!!!」
真っ赤なポニーテールと、燃え盛る炎を想起するようなフレアパレオを腰に巻いた快活な少女
「……ではサイバークイーン。手筈通りに」
『あいあ~い。危なくなったらそっちもねぇ』
ここまではこちらの作戦通り。
白騎士団本部……ブラックローズ離反時に倒壊したシンボルタワーを本拠地として再建し、そこを中心に、設備や居住区を含めた高層ビル群付近で末端を哨戒させ、ネームドを呼び寄せる。
出張ってきている幹部が、篠崎さんや深見さんではなくボクであれば。捕獲も兼ねて様子見から入る……なんてよくわからない理屈だったが、それが的中したので何も言えない。
正義の味方も三大欲求には抗えないということではない、そう信じたい。
さて、そんなこんなでブレイジングハートが出張って来てから三十分ほどが経過している。
彼女の異能は「炎神天火」、炎を自在に操り、攻防どちらにも使えるこれまた強い異能力である。
自身から発生させた炎であれば、燃やすかどうかは自分で決められるため。最初の熱波に万が一当たっても、ボクは火傷の心配はなかっただろう。
まあ消せない炎で拘束されていただろうから、受けるという選択肢はどの道ないわけだけど。
「はゎ……つるつるのわき、見、ぁ……う、ぁ……ふとももまぶし……ぁ、あ!うう、うな、うなじがぁ……!!!」
……本腰入れてるわけではないけど、戦闘中に息荒げて一々ボクが露出している部分を口ずさまないで欲しい。平時は元気っ子と聞く彼女も、この世界の女である以上指摘もしたくないが
燃えないだけで一応炎はそれなりに熱いのと。当たらないようにボクもそこそこ動くので、相乗効果で汗ばみ、アルビノの肌は火照り血流の活性化で赤らんでいる。
『おっほ♡♡♡これはとんでもないお宝だわぁ~♡あキミらは正義の味方なんだしそういうの自重しましょうねー』
「「「あああああ!!?!?!?」」」
……近くでは何故かお互いピンピンしてる綾野さんと白スーツの人たち
白スーツサイドのスマホを綾野さんがハックして破壊しては、絶叫が上がっている。戦ってよ……そっちの足止めなのは間違いないけど
「ふぎぃゅあ……こ、この子やっぱ……っち……!……えっ……すぎるよぉ……ヘンになるぅ……!」
「…………はぁ」
聞きたくない。ボクは何も聞こえない。
ここから更に三十分、合計一時間ほどかけ、相手の幹部の異能や戦法──こんな腰が引いてる相手のデータが、何の役に立つのか甚だ疑問だが──を十分に記録出来たところで、あいての本拠地からの動きを察知した綾野さんの合図。ボクらは迅速に撤退した。
綾野さんはミミズを自爆させ、ボクはいつも通り影に飛びこむ
……その間ずっと茹だった顔に両手を当てて、涎を垂らし悩まし気にこちらを凝視する内股の少女が写り、結局げんなりとした。