異能力x貞操逆転x白一点   作:ヒゲクマ

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黒薔薇椿の視点です


7.「純一無雑」

「白狼。近い内に気晴らしに出掛けないか?」

「んう……いいんですか?珍しいですね、任務以外で外出できるなんて」

 

肩に掛かるか否かのボブとミディアムの中間程度に整えられた艶やかな白髪が、室内の冷光灯に彩られ、私を見つめる曇りのない大粒の紅玉の瞳が儚げに揺れる。

こめかみと後頭部の間にある髪の跳ねが、垂らした犬の耳のようにあり、彼の愛らしさを増している。思わず手櫛で愛でた

 

「一人で、というわけにはいかないし、行くにしても無人区画(プライベート)になるが」

「ボスと一緒に行けるんですか?」

「そのつもりだ。食事でもしながら英気を養えないかと思っているよ」

「楽しみにしてます。ボスの都合がつく日を教えてくれたら、是非行きたいです」

「ああ、遅くても来週になるかな。楽しみにしていてほしい」

 

私の膝上で、髪を預けながら柔らかく破顔する白狼の気晴らしのため、少し前から進めていた計画を実行する絶好の機会だ。

 

数日前の白騎士団幹部級「アクアガーディアン」との会敵時に、白狼が多分に負う必要のない心的消耗を負わされたことは、救援に赴いた篠崎より聞き及んでいる

その後の白狼の遣る瀬無い様を想起するだけで身を切られる思いと自責が湧く

 

世界の男女比は今に始まったことではないがそれにしても、大抵の女性の生涯に創作中以外に見えることは無い男性であったとしても、このような年少に対して浅ましい欲求をぶつけて下卑た衝動を満たさんとする輩には閉口せざるを得ない。

 

私も性欲や情欲といったものを頭ごなしに否定はしない。実際過去にそういった関係(肉体関係)になった女性も幾人かいるし、中には婚姻し精子バンクを利用して家庭を築こうと思った相手もいる。袂を別った彼女が浮かびかけて、止める。

構成員には強く言っているし、それを侵した者には相応の罰則も与えている──どこ吹く風もあるが──。白狼にも女性という生き物が持つ性質を遠回しな説明(保健体育)で理解を強いてしまっている

 

普段からただでさえ少なからず内外からの干渉を受けなければならない彼の心労を少しでも解消できなければ、彼を拾いなし崩し的にこんな組織に身を置かせた贖罪などとてもできないのだから。

あの日の出会いを思い返していたいところだが、今は予定の調整や組織運営や諜報活動の確認を済ませなければならない

 

 

「綾野、手筈のほうは?」

『万事おっけー。自動区画の貸し切りは当然黒薔薇団(うち)とは全く無関係の形にしたし辻褄合わせも完了、リアルタイムでも監視映像の合成は抜かりなーし』

「篠崎、深見」

『こっちも定置についてるぜ姐御。貸し切り中に紛れる奴あ入れさせねーし、深見ん幻影で要人警護の幻影もばっちり巡回風に見せかけてる』

『万事万端……』

「……よしっ。今日はよろしく頼むぞ」

『『『了解(~)(…)』』』

 

黒薔薇団は世間一般に秘匿されている体であるとはいえ、悪名高い組織として随分と買われている。

そんな組織の首魁と、見目麗しい男児が連れ立って一般的な区画で出歩いていればどうなるかは火を見るよりも明らか。

故にこの日のために吟味した無人区画──特定の地域にアーケード形式で点在する予約制の無人地帯で、他人の目を気にする立場にある者や、安くはない金銭を上乗せしてでも他人と出会いたくない気質の者が利用するあらゆる機能が完全自動化された多目的都市施設──に、更に念を入れて幹部ら総出で今日一日最大限の警戒態勢かつ、それを白狼に悟られずリフレッシュしてもらう一大作戦が始まった

 

「すみません。少し遅れました」

「いいさ。此方から誘ったのだし、それだけ準備に力を入れてくれたと思えば嬉しいよ」

「それは、まあボス……椿さんとのお出かけなので、変なとこ見せるわけにはいきませんよ」

 

同志たちのみっともないプレゼンで薦められたあのラインヴァイスの衣装とは裏腹に、白狼のプライベートな服装はほぼ露出が無かった

つば広のキャップに、小さ目のサックを背負い羽織る寒色のメッシュパーカーの下にモノトーンのハイネックシャツを着込み、ベージュのストレッチパンツが彼の細い足のシルエットを強調している。

アルビノ(肌が弱い)ので、それらはやはりUVカットだろう。どれも良く似合う。

 

「無人区画での空調は効いていると思うが、もし暑かったり寒かったりすればすぐに言うんだよ」

「はい。でも事前に聞いてたので風通しのいい素材ですし、寒ければ持ってきた予備を羽織るので多分大丈夫ですよ」

「万全だね。ところでコーデは白狼自身が?君の落ち着いた雰囲気に良く似合っているよ」

「ありがとうございます。椿さんと連立っても子供っぽく見えないように選んだつもりですよ」

「……全く。いつも白狼は私に得難い喜びをくれるものだな」

 

何ともいじらしく女心に嬉しいことを言ってくれる白狼を撫でたい気持ちだが、ぐっと堪えてショッピングへ先導する。

事前にいくつかの日用雑貨や、気になっていたという書籍の新作などを白狼からの解説を楽しみながら巡っていく。

道中も手に入れた目当ての買い物袋を嬉しそうに眺めたり、物珍し気に通りを見渡す仕草の一つ一つが眩しく白狼の魅力を引き立たせる

 

「ボクは任務以外では出歩きませんし、ゆっくり街並みとか、景色を眺める機会が無かったので。なんだか新鮮な気分で……わくわくします」

「それらを邪魔されないためのここだからね。心行くまで堪能するといい、それが満たされたら食事に行こうか」

「はい。ゆっくり歩いていきましょう」

 

人目を気にしなくていい状況に多分にリラックスしてくれているのか。普段よりも油断した白狼が顔を出している

年相応にタイルの同色のところをさりげなく歩いていたり、後ろ手に組んで微かに鼻唄が持て出ていたり──大人びて背伸びをしていても、多く子供としての姿を見せてくれていることは、救われた気分だし今日の甲斐があったというもの

 

その後も小さく取り分けられたいくつかの料理に舌鼓を打つ姿、(椿さん)と食べる料理が一番美味しいと言ってくれたり、気になった料理を交換し合ったりと、中々に末恐ろしい資質(罪づくりな女殺し)をまじまじと感じさせ、いつの間にかもう日が傾き始めている

 

「今日は誘っていただきありがとうございました。椿さんの……いえ、椿()()()()()()()()()()、心から楽しめました」

「おや……気忙しい思いをしていなければいいのだが。白狼はやはり勘がいいな」

「ボクが皆さんに気を遣わせている立場なので後ろめたさはありますが。今日の散策は本当に楽しかったですよ」

「いやいや。前者の憂いは必要はないさ、むしろ平時での女性陣の彼是をこそ今日だけで返しきれないからね」

「ええまあ、はい。普段のアレなところには思うところがありますけど…何彼と気を使ってもらったり親しく馴染めるようにされていることも解っているつもりです」

「全く。末恐ろしい(将来有望だ)な」

「あははっ。またお時間が出来たら、椿さんとお出かけしたいですね」

「ふふ……。本当に、末恐ろしい子だよ白狼は」

 

今ですら多くの女性を狂わす、幼く無邪気な笑顔を珍しく浮かべた男児が成長した時に齎す情け容赦の無いノックアウト(ジェノサイド)を想像し、私は苦笑するしかなかった。

 

…………帰還後、白狼との一時をモニタリングしていたためくだくだしく絡んでくる綾野たちへの対応にも、同じく苦笑で乗り切るしかないことも致し方なし。




こっちで言う魔性ロリの白狼
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