並行世界のアガスティア   作:羊1世

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第32話 阿修羅

 湖のほとりには、まるで別世界のような静寂が広がっていた。水面は鏡のように静かで、周囲の景色を映し出している。そんな中、湖の中央に小さな島が浮かんでおり、その上には美しい女神が立っていた。

「ここが湖の女神のいる場所か……」

 カヌスさんが感嘆の声を漏らす。なんだか前来た時よりバージョンアップしている……?

「今日の当番はローリーじゃないらしいね?」

 ヒロさんが到着したと同時に送られたチャットで教えてもらったらしい情報を教えてくれた。泉の女神って当番制なんだね、そんな情報いらなかったよ。

 ちょっと萎えたけど、初見組はその神秘的な光景に見入っていたが、突然湖の中央から光が放たれた。

 

「奇麗……」

 リゼが驚いて声を上げる。光は次第に強くなり、湖全体を照らし出した。

 光が少しづつ収まって目を少しづつ開くとそこには両腕をプルプル震わせながらなんとか2つの桃を持っている女神さまがいた。

「あなたが落としたのはこの銀色の桃ですか?それとも金色の桃ですか?」

 どうやらさっき落としたのは桃だったらしい。

 

 「桃だ……」

 みんなで唖然として桃を持っている女神を見ていると唐突に湖がまた光りだした。

 恐る恐る目を開けるとそこには両腕を限界までプルプル震わせながらなぜか4つの桃を持っている女神さまがいた。

「あ、あなたが落としたのはこの銀色の桃ですか!?それとも金色の桃ですか!?」

 表情こそ涼しげな顔をしているが、あれはもう限界だ!早くだれか答えてあげてくれ!

 

 しかしああ無常、さらに湖は光りだしてしまった。

 違う意味で恐る恐る目を開けてみるとそこにはで6本の腕で6個の桃を持っておられる阿修羅がいた。

「おぬし等が落としたのはこの銀色の桃ですか?それとも金色の桃ですか?」

 

 なんて神々しさ、いや雄々しさだ。私は無意識のうちに後ずさりをしてしまった。

 ほかの面々も緊張のあまり何も発せられない。

「はいはい!普通の桃3つ入れました!」

 カズさん!!!!!!

「おいばか!なにやってんだ!」

 魔王の突っ込みもキレがない、ギギギギ阿修羅がカズさんを見つめるとジャッジを下した。

 大丈夫、正直者は助かるはず……。

「残念貴様らが落としたのは良識じゃ」

 デスヨネー

 

「ここで貴様らをぶっ飛ばしてやる!」

 阿修羅が怒りの表情を浮かべ、6本の腕を広げて襲いかかってきた。

 私は慌てて逃げる準備をする。

 

「皆、散開して! ジェニー、エンチャントを!ジェミー、リジェネをかけてくれ!」

 カヌスさんは打って出るらしく双子に指示をだし戦闘態勢に入る。

「うわああ!」

 一方カズさんは斧を握りしめる間もなく阿修羅の一撃を受けて吹き飛ばされる。

 きれいな花畑の絨毯をボロボロにしながら転がって木に激突する。

 「くそ、強い!」

 カズさんが悔しそうに叫ぶ。

 どうやら無事そうだ。私はひとまずほっとして阿修羅のほうに目を移した。

 そこには既にカヌスさんは桃しか持ってない阿修羅に圧勝していた。

 

「くそ!武器さえ持っていれば!」

 首もとに剣を当てられ降参のポーズをとった阿修羅にカヌスさんは謝罪をした。

 「すいません、私たちの仲間がひどいことをしてしまったと思っています。ですが私たちは決してあなたを愚弄しようとしていたわけではないのです。どうか私たちを許してもらえないでしょうか?」

 

 阿修羅は一瞬怒りを鎮めたような気がしたがさすがに桃を3つも入れられた怒りは収まらなかったようだ。

「ゆるさ……」「許していただけないならころ「許す」

 

 どうやらカヌスさんの誠意が伝わったらしく阿修羅は湖の女神に戻り平穏が戻った。 

 

 

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