並行世界のアガスティア   作:羊1世

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第23話 木の下の幽霊

 スライムに追いつかれた場所で手早くスライムの核を集めて私たちは帰り支度をすることにした。私は頭から血を流してしまったことだし神殿に寄っていきたいし今日はもうお開きでいいだろう。

 しかし核を集めていたら地面に突き刺さって抜けなくて捨てていったはずの短剣がそこにあった。おかしなこともあるものだがポイントに余裕なんてない今の私たちにはありがたかった。

 そして帰り道、環は泣き止みはしたものの私の手をぎゅっと握って離さなかった。正直動きづらいけれど包帯でぐるぐる巻きで今更だったし、怖いから離さないでと言われたらもうどうしようもない。

 手をつなぎながら歩くのなんて幼少期以来だから緊張してしまうが周囲の索敵だけは疎かにはしなかった。

 道中2匹、1匹、3匹とスライムにエンカウントしたが環がきちんとファイアーボールを放てたこともあり危なげなく対処できた。

 というか手を放すたびに捨てられた子犬状態になる環を見るとすぐに倒して戻らないと!ってきもちになってしまう。

 今はまだ怖くて私が手を握ってないと逃げそうになるらしいけどそのうち慣れてきたら手を握らなくても大丈夫になればいいな。

 

 「ここが神殿か~テーマパークに来たみたいでテンション上がりますね。」

 ダンジョンから出た私たちはとりあえず家への帰り道に神殿に寄ってみた。ここに入れば腕がもげようが、下半身が取れてようがHPさえ残ってれば5体満足に復活するという伝説の場所だ。

 でもどっからどう見てもスーパー銭湯みたいなものだった。あっちは汚れを落とすための温泉があって、こっちには食事を食べれるフードコートみたいなところがあって、でここはベッドやソファがいっぱい並んでいて休めたりする場所だね、はい。とりあえず近場のベッドに腰を掛ける。

 「おねーちゃん、大丈夫?」

 ダンジョンからでた環はもう手を繋がなくても平気らしく少し名残惜しいが手を放していて今は全身グルグル巻きにされた私の包帯をとってくれている。ようやく視界が開けてきた。

 「ええ、ここに入ってから貧血が治った気がします。もともと大したケガもないですし、そろそろ家に帰りますかね?」

 正直早く家に帰って風呂に入って寝てしまいたい。ここの施設のは利用しようとしたらポイントがとられるのだ。しかし環は反対のようだ。

 「まだ駄目だよ。あと1時間くらいはいないと効果でないんだから。」

どうやらまだ駄目らしい。しかし暇だ。このままじゃそのまま寝てしまいそうだ。

 しかし一息ついたせいかお腹が急にすいてきた。なので私と環はちょっと遅い昼ご飯を食べることにした。

 「神殿のご飯は高いですね……」

 神殿の食事処は無人でメニューっぽいものから好きな料理を選べるシステムだったが軒並み高かった。これは今の私たちには手がだせない。

 「今日の日替わりは……オムライスですか。」

 「オムライス美味しいよね……」

 美味しいんだけど、まあ会話は弾まない。せっかくの娯楽施設に来て食べるものは日替わり定食のご飯……せっかく上がったテンションも下がってきた。しかももともと私は陰キャだ。会話のカードデッキなんて天気しかない。環の様子をうかがってみる。また何か言いたそうにしてるけどいっていいのかわからない顔をしている。今すぐ言ってこの雰囲気を変えてくれ!

 私はそう思って環に会話を振ろうとしたが、後ろから突然でかい声で呼ばれてそれは中止することになった。

 

 「おい!!!!そこの金髪!!!!アホ女!!!!!!!まだ生きてるのか!!!!!!!!」

 後ろを振り向いてみると熊がいた。どうやら動物園も兼ねてたらしいね、飼育員さん動物が脱走してます!!

 熊が私の肩をつかんできてぶんぶん揺らしてきた。やばい食われる。私は食べかけのオムライスをささげた。どうかこれで落ち着き給え。

 しかしよくよく見るとこの世界に来て初めにあった熊さんだった。オムライスを怪訝な目で見ているその顔、ダンジョンの怪物の何倍も怖いです、ちびるぞ。

 「どうしたんですか?くまさん、できれば勝手に殺さないでほしいんですけど。」

 えへん、胸を張って私はそう答える、これでも私スライム倒せるんですけど?心配されるほどやわだけど今だけはでかい面しておこう。

 そういうと熊さんはバツが悪そうに頭をかいて謝ってきた。

 「そりゃすまん、けどよお、最初の時おめえさん急にうんともすんとも言わなくなるし、しかも変な噂までたつもんだから俺があの日お前を置いてっちまったせいで死んじまったんじゃないかってずっと思ってたんだ。」

 どうやらずっと置いてってしまったことを後悔してたらしい。それは申し訳ないことをしてしまった。

「べつにそれは私のせいですよ、気にしないでください。それより噂って何ですか?」

 しかしそんなことよりすごく気になることを熊さんが言っていた。もしかして儚げな金髪美少女が熊に脅されているとでも噂が立ってしまったのだろうか?私もしかして有名人?

 

 「初日に金髪の女がスライムに負けてただの、それでダンジョン前の木の下に死んだ金髪の女が怨んで住み着いているだの……それで俺はてっきりお前さんが死んじまったとばかり……」

 「あばばばばばばばばばば!!!!」

 「おねーちゃんが泡拭いて倒れた!!!!?」

 

 

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