「じゃあ全員集まったし早速出発しようか」
武が号令を出して、私たちは陣形を組み獣道をかき分けて森へと出発する。
索敵班は基本2人態勢で回すことになっているが最初だけ5人と警邏隊から参加したメアリーさんの合計6名3チームに分かれて索敵をすることになっている。
私はメアリーさんと一緒にPTの進行方向である前方を索敵することになった。
「まるでピクニックだね、緊張感がないよ」
どうやらメアリーさんは複数レイドそのものが気に食わないようで終始不機嫌だった。き、気まずい……。
「大体1レイド40人ってだけでも多いのにそれを同時に5つもやるだなんて……」
ぶつくさ言いながらもメアリーさんはてきぱきと索敵をしていて、私が気づくよりも前に左前方にオオカミの群れがいることに気づいた。
「戻って報告するよ。基本見敵必殺だけど、今後少人数で3層に来たときは群れの大きさによっては逃げることもあるだろうから気を付けてね。」
見つけた敵は全部ぶち殺す、これが今回のレイドPTの指針だ、まあ40人も集まってレイドを組んだ理由は私たちが戦闘経験を安全に積むためだ。
その為に集まってきているのに逃げていては仕方がない。しかしメアリーさん不満はあるようだがちゃんと説明してくれる当たり育成と言った仕事もしっかりするようだった。
「そうか、皆!左前方にオオカミ小規模らしい、今回は左側の前衛だけで対処してみよう!ゆっくり慎重に進むぞ!」
私たちの報告を聞いて武が全体に指示を飛ばす。ちなみに今回は事前索敵が不足して後衛がオオカミに先制攻撃をできず無傷で前衛に到達した場合を想定したパターンらしい。
入り口付近なのでオオカミがほとんどいないはずなので最初に一番きついパターンでやっておこうという話だ。ほんとは奇襲されるのが一番きついけどそっちは今回はやらないらしい。
「総員構え!オオカミに押し負けるなよ!」
「うおおおおおおおおおお!」
少し進むと左から号令とそれに応えた唸り声が聞こえてくる。体育会系のノリだ。短剣をとっていて本当に良かった、あそこにいたら熱気で窒息してしまう。
しかしあのむさくるしい空間から目を背けようとしたがメアリーさんにちゃんと味方の戦いもみてこいと暗に言われるように前線のほうに顔を動かされて見せられた。
前の方ではオオカミがほとんど一撃、多くて二撃で倒されていた。さすがムキムキが多いだけあって攻撃力も段違いのようだった。これなら奇襲でも受けない限りオオカミ程度に負けるなんてことはなさそうだ。つまり索敵の責任が高いんですねわかります。
「ティアー、まかせたよー」
ロンナが手をぶらぶらと振りながら部隊に帰っていく、6人態勢が終わったら最初の索敵の担当は私とリュウだ。
「よし、いくぞ」
リュウが前衛顔負けのムキムキオーラを出しながら私に声をかけてくる。改めて見るけれどこいつとる職業間違ってるだろ。
絶対短剣じゃなくてバトルアックスとか持って振り回す側じゃん。
「俺は右側を索敵する、ティアは左側を頼む。」
どうやらリュウは分かれて索敵をするタイプらしい。ブリーティングでは2人で索敵しても分かれてやってもどちらでもいいといわれていた。
正直私はスキルの効果で敵にも、そして味方にも認識されずらいらしいのでここにいますといわんばかりの存在感をまき散らすリュウと分かれて索敵するのは助かる。
ついでに話す話題がなくて無言で索敵をする時間が無くなるのも精神衛生上助かる。
左側に向かって少し部隊から離れたところで森のほうに注意を向ける。
森にはマイコニドとオオカミがいる。そのうちマイコニドは3階のスライムと言われているので存在ごと無視してもいいそうだ。
なぜかといえば群れで行動せず、動きが遅く少し小走りすれば振り切れる程度にしか動かないため森の低木や草が大きく動くことは無い。
なので森の草木が大きく動いている場合のみ部隊に報告すればいい。オオカミは賢く人間を見つければとたんに息をひそめ群れを使ってこちらを囲い込む様に襲い掛かってくるが見つける前はまるでコンピューターのようにぐるぐると動き回り人を見つけるまで何も警戒せずにそこら辺を徘徊するそうだからだ。
つまり私達索敵班の仕事はオオカミより前にオオカミを発見することなのだが……本当に先に発見できるのだろうか。