「おい、どうすんだよ!」「わからないわよ……」「とにかく撤退しよう!」「いや、リーダーたちを待たないと……」「いつまでそれを待つんだよ!」
警邏隊の人間がいなくなった野営地は完全にまとまりを失っていた、だれもかれも好き勝手な意見を言っていて建設的な意見が出てもそれをまたほかの意見が塗りつぶして時間だけが過ぎて行った。
しかし武たちがいなくなる前、今日撤退を行うという最後の指示があったことと3層から早く立ち去りたいという潜在的な思考から昼前には野営地を取り払い撤退をするということで意見はまとまり出立することになった。
「臨時のリーダーの小次郎です、皆よろしく」
またとりあえずのリーダーも立てて彼に戦闘の指揮を執ってもらうことになった、ていうかあの人自己紹介の時ごわすって言ってなかったっけ?
一昨日はここから1日目の野営地まで行くのに少し早く移動したこともあって半日程度で移動できたので今日も同じ程度のスピードを維持して進むことになった、警邏隊の人がいなくなったのでそんなに足早に進んでしまって大丈夫かと思ったが、意外なことにオオカミは10匹程度の群れしか今日は出会わず特に問題もなく1日目の野営地まで戻ることができた。
朝の時点ではレイドPTには不安が広がっていて誰もしゃべることは無く重い足取りだったが野営地まで無事につくとみんな自信がつきそれが余裕につながり食事中に会話やちょっとした笑い声などが聞こえてくるようになり雰囲気も明るくなってきた。
「明日にはみんなで無事ダンジョンの外に出れるんだよね……」
ロンナは朝からずっと黙りこくっていたが晩御飯を食べるとぼそっと私に喋りかけてくれた。
「そうですね、オオカミの異常発生も起こらなくなってますし、もしかしたらリーダーたちは何か原因をつかんでそれをつぶしに行ってくれていたのかもしれませんね」
「だとしたら私たち悪いことしちゃったよ……」
ロンナもそうだけど多分PT全体でリーダーたちを探さないで撤退したという罪悪感は多少あると思う、しかしオオカミがいつ襲い掛かってくるかわからない場所で人数を分散して探すことなど根本的に不可能だったのだから仕方ないと言い訳をするしかなかった。
「確かにそうかもしれませんけど、一言も伝言を残さないあっちも悪いんですから気にしなくていいですよ」
「ね、何か言ってくれればいくらでも協力してあげたのに……」
そう言って私たちは初日と同じように深夜の見張りを行い、見張りを交代をして床に着いたのでした……。
「助けて!」
一体いくらほど寝たでしょうか、外はまだ暗く起床時間には程遠い時間だったのはわかりました。そしてそんな時間に誰かが叫ぶ、それが指し示すのは一つしかありませんでした。
「何が出たんだ!」「みんな起きろ!」
大声で誰かが叫び、いったい何が起こったのか情報が集まりません、ただ一つ言えることがあります。
「いやだあああああああああああああ、死にたくない!」「なんでこんなことするんだ!」
早くしないと死ぬってことです。
装備を手早くつけてロンナと剣使いの女の子を一緒に外に出ます。目の前に移った光景は外側の柵が一部破壊され、其処に一人の男が血まみれで立っていたなんともスプラッタな光景でした。
野営地は倒れた柵が燃えたり、魔法のファイアーウォールが唱えられていたりと明るく、血まみれの男の顔がはっきり見えました。最悪なことに男の顔は見覚えが全くありませんでした。
彼が他のレイドPTから逃げ延びてきた人ならまだいいのですが……その場合どこかのPTが壊滅しているので最悪ではあるのだが、そうじゃなければ、この男は一体どこから出てきたのだろうか?
「きゃあああああ!」
隣でロンナが悲鳴を上げる、確かにこんな光景を見たら悲鳴を上げたくもなるだろうと私はそう思ったがすると今度は剣士の女の子が血まみれの男にとびかかった。
「リーチェの仇!死ね!」
般若のような形相でとびかかる様子を見て初めて私は彼らのいる場所の足元を見ました。そこにはすでにこと切れているであろう人が何人も倒れこんでいました。
剣士の女の子は剣を難なく受け止められつばぜり合いをするもすぐに男にあしらわれてしまい地面に倒れこんでしまいしまた。すると後ろの方からオオカミが大量に女の子に群がる光景が……。
私は反射的に目をそらしました。すると他の地点でもオオカミが柵を超えようと襲い掛かっておりここには逃げ場がないということを否応にもわからされてしまいました。
ここを無事に出るには、あの男を倒すしてオオカミを撃退しきるしかない……。