機動戦士ガンダムSEED レディ・アヴァロン   作:鳥頭

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Phase9 誰ガ為ニ出来ることを

「つまり、先遣部隊との接触があったと?」

「ええ、そうよ。これで安心できるといいのだけど」

 

 合流できるかどうか……その顔色は優れないイリアに対して、話を持ち込んだマリューは不思議そうに首を傾げた。

 

「嬉しくないの? 兵役から除隊されるかもしれないのに」

「いえ、懸念としてザフトがそれを容易に許すかどうかと……ご存じの通り、ナスカ級は高速船、加えてローラシア級はこちらをロストしてるでしょうが、再び補足されているとしたら……共倒れもゼロではないと思いまして」

「……実感が湧くわね。貴女の口からその懸念を聞くと」

「相手があのクルーゼ隊です。最低限でなく、最大限の警戒が必須かと……提案なんですが具申してもよろしいですか?」

 

 勘の良さ、そして予知、予見ともとれるその洞察力についてはマリューも内心で精度を認めているし信用もしていた。具申の内容次第だと、一言添えて続きを促す。

 

「第一種戦闘配備で外敵に圧をかけて、迎撃の準備は整っていると示すべきかと。補給中と避難民の引き渡し中に襲撃を受けた時を考えればリスクがあまりにも高いので」

「つまり、シルヴァ及びストライクを矢面に出してフラガ大尉のメビウス・ゼロを護衛に補給と避難民の受け渡しを……と」

 

 よくある戦術である。見かけだけでも警戒をしていれば……手を出しにくくなるモノだと。隙を晒す真似をしていない獲物相手に牙を剥くのは難しいのだと。

 

「違いますね、少し」

「え?」

「メビウス・ゼロには私が乗ります」

「……は?」

「高機動性に関してはモビルアーマーの方が上ですので……早い話、ナスカ級とローラシア級を足止めて、艦載モビルスーツに被害を出しておけば」

「ま、待ちなさい! そんな無謀な作戦は認められないわ。第一、シルヴァは貴女しか乗れないでしょ?」

 

 唯一の反論点を突き付け、彼女を鉄砲玉にして引けないとマリューは諫める。しかし、その返答に見事なカウンターを突き付けられる羽目になった。

 

「シルヴァのOSの件であれば、リミッターを課してストライク並みの出力に落としておくことで[ナチュラルにも乗れる]調整にしておきました。

 加えて射撃補正システムと敵機動予測AIを強化して標準にブレを起こさせない〈重力逆算式対モビルスーツ機動射撃戦補助システム〉も実装してあります。

 モビルアシストのAIもラクス嬢の保有していたハロを元に改良型量子AIの高速機動対応版を組み込んでおきましたんで、フラガ大尉も太鼓判を押す乗り心地に仕上げてますが……まだ不満点が残ってますんで時間が足りないんですが。

 今、出来ることはすべて詰め込んでおきました」

 

 怒涛の情報量及びなにそれ聞いてない機能、魔改造されてる? AIなんで? シルヴァに量子AIなんて積んでないけど? フラガ大尉何やってるの? マリューは信じられないものを見るような目で目前の少女を眺めた。

 しかし、マードック軍曹を始めとするメカニックの面々は手腕とプログラミングの速度に裏付けの証言がいくつも上がっており……正直に言えば除隊させたら皺寄せがくるレベルでモビルスーツの技術基盤を吸収発展させているイリアの実力に震えあがった。

 

「そ、それでも! 貴女に何かあったらキラ君に申し訳が立たないの。お願いだから、そんな無鉄砲なことをしようとしないで」

「それは……わかりました」

「でも、打って出るのはアリかもしれないわね」

 

 冷静に考えれば、ザフトは自分たちを目標としている。つまりはデコイの様なものだと言う事で、囮となって仕掛ければ相応の被害を出して足止めできるかもしれない。

 しかしそれができるのかと問われれば、練度も実力もないこの戦艦のクルーには荷が重いと言うべきでもあると艦長としてマリューは判断した。

 

「各員に通達お願い。レーダー管制を厳に、敵影の補足に尽力すること。敵影の確認後、速やかに第一種戦闘配備体制に移行するわ」

「了解いたしました、復唱致します。レーダー管制を厳に、敵影の補足に尽力すること。敵影の確認後、速やかに第一種戦闘配備体制に移行いたします! モビルスーツ及びモビルアーマーのパイロット各位は待機命令だ」

 

 ナタルにそう告げられて、イリアは敬礼を返し艦橋を去って行く。その後ろ姿を見て、申し訳ない気持ちがナタルとマリューの良心を苛んだ。

 

「……兵器関連開発にスカウトされたらどうするのかしら、彼女」

「地球軍に欲しい人材であると言う事は私も理解しています。実際、新型ストライカーの開発も進んでいます」

「なんですって?」

「整備班が前回の漂流物改修で使えそうなものを片っ端から拾っていまして、幸いなのか……状態のいいメビウス・ゼロの残骸をレストア中です」

「有線式ガンバレルのシステムをストライカーに組み込む、と?」

「リニアランチャーをリニアライフルへ、モビルスーツ用に再加工しつつ、ガンバレルストライカーにリデコレーションしていると報告を受けています。ガンバレル側にバッテリーと補助推進を追加積載してプロペラントタンクに利用……合理的ですね」

 

 開発用資材はデブリを再生してしまえばいい。時間は有限で、かなり残されていたのだから。

 

「一声かけてくれれば技術的に指導もしたのに……いいわ、後で現場を見てきます」

 

 正直に言えば興味が尽きなかった。開発者上がりとしての誇りもマリューを突き動かす。ただ、現物はそんな生易しいものではなかった。

 いざ現場で見たそれは……完成されていた、正直に言えば嘗めていた。

 

「ビーム兵装の発振器をより効率的にしたビームサブマシンガンをガンバレルに詰め込んだ? バッテリー容量の問題を解決する構造の開発……? 各ガンバレルにはバッテリー急速充電装置として機能するシステムの構築……???」

 

 マリューは呟いた……イリア・ヤマト……恐ろしい娘! と。そして、彼女は考えるのをやめた。

 

 ────

 

「ジャマー確認!」

 

 艦隊との合流間近にザフトが向こうの艦隊に仕掛けてきたらしい。つまり……

 

『嬢ちゃん、新しく開発したソレもう実践投入か?』

「フラガ大尉。そうなりますね……メビウス・ゼロの方は違和感ありませんか?」

『前より操作性が向上してるよ。反応値が物足りなかったけど、コレならイケる!』

「よかった。その分キッチリ働いてください」

『あっはっは、言うじゃない。でも、ヘマ出来なくなったよ……じゃぁ、先に出るぞ!』

 

 そう言ってメビウスがカッとんでいく。ソレを見送って、キラもエールストライカーにて出撃していく。実戦に導入する判断が早くないかな……ラミアス艦長。

 

「ジン5機にイージス……アスラン」

『イリア先輩、先遣隊にはフレイのお父さんが乗ってるんです』

「分かったわ。最大限、善処してみる」

 

 サイ君から通信が入り懇願に近い願いを聞き入れて、私は操縦桿を握る。

 

『シルヴァ、発進どうぞ!』

「ライトバレルシルヴァ、イリア・ヤマト。行きまーす!」

 

 虚空へ飛び出す。背負ったストライカーはライトバレルストライカー。新規に開発した代物で、回収したメビウス・ゼロ式を元に改良してライトニングストライカーの要素を忍ばせ、まだ実用段階に至っていなかったパワーエクステンダーの試作品、雛形を詰め込んだ。

 両手にはリニアライフルと専用ビームライフルを装備するスタイルで物理もビームも使える贅沢仕様である。

 深夜テンションで設計書を引いたら作って見たくなった、暇を持て余していた整備班とメカニックと共に作り上げてしまった。パワーエクステンダーの理論は私も聞きかじり、学文を読める立場だったが故に作り出せたが……人間がんばればなんとかできるものだ。加速性能はバーニアが多くて理論値はエールの2倍! かかるGもそれなり! 

 

「はっやい……! もうトップスピードか……!」

 

 脳裏に響くフラクサトーンのあの音! 緊急制動しながらリニアライフルを向けるとイージスが見える。撃たれたビームの残光が眼前を通り過ぎて行き、私のリニア弾がイージスに直撃する。フェイズシフト装甲がそれを耐え抜き、後退していったのを見送る……スラスターの残光を確認したら、ストライクが迎撃に向かっていったんだろう。

 

「残ってるモビルアーマーが少ない……ジンはあと4機。行ってよ、ガンバレル!」

 

 有線式ガンバレルを解放して放つとすかさずにサブビームマシンガンを撃ち放ち、ジン1機の足を引きちぎる。加えてビームライフルで腕の武器を吹っ飛ばして蹴りながら転身! Gが掛かるけど、これくらいなんともない! 

 

「1つ!」

『嬢ちゃん、気を抜くなっ! 後ろに張り付いてるぞ!』

「大丈夫です大尉、見えてます!」

 

 フラガ大尉が焦ってるが、既に脇の下通してリニアライフルを向けてある。引き金を引けばジンのコックピットをぶち抜いて破壊する。ガンバレルのサブマシンガンで弾幕を張って攪乱! ついでにナスカ級にもサブマシンガンを撃つ。収束率落として連射させてるからその威力は牽制にしかならないけど、威圧にはなる。

 それに、このビームサブマシンガンは40発毎分のレートで連射できる。だけど、30秒連射したら1分のクールダウンが必要なんだよね。

 

「2つ!」

『鮮やかな手並みすぎて、俺の立つ瀬がないんだけどね……! だけど、ロートルを無礼んなよ!』

 

 フラガ大尉のガンバレルで追いたて、さらに火砲による援護に追い詰められたジンにメビウスが殺到していく。ソレに混じってメビウス・ゼロのガンバレルも火を噴いてスラスターを蜂の巣にしてからのリニアランチャーが叩き込まれてオーバーキルの撃墜! 

 

「3つ、と。こっちは……!」

 

 専用ビームライフルにリニアライフルを連結、出力強化させて……ジェネレーターを直結! ビームサブマシンガンを機動上にばらまいてジンの生き残りに牽制。逃がさんよ、貴様らだけは! 

 囲うように制動させて制御して逃げ場を潰して……悠々とチャージさせてもらう。

 

「エネルギー収束率80%、これで、落ちろ!」

 

 撃ち放ったのは試作の簡易ビームキャノン! モンドゴメリを狙ってるジンに大穴を穿ち爆散させて、射線上に居たナスカ級の主砲を狙ったけど……掠めたか。ただ、誘爆は免れなかったらしく。派手に爆散させてやったが、緊急制動して避けたんだろうなぁ……セッキーの勘の良さは嫌になる。

 

「ジグーで出て来るか、あるいは……」

 

 モビルスーツ4機を失ったザフトは、停戦信号を打ち上げて後退していく。イージスもそれに応じて撤退か……。撤退を確認して、周囲に散らせていたガンバレルをドッキングさせて警戒に入る。

 リニアライフルとビームライフルの連結を解除して、放熱させる。ビームキャノンは撃てて2発……改良点が多いがまぁ……問題はないね。

 モンドゴメリを一瞥して、私達はアークエンジェルに帰投するのだった。

 

 to be continued .

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