機動戦士ガンダムSEED レディ・アヴァロン   作:鳥頭

12 / 17
Phase11 サヨナラの裏返し

 去っていく艦隊を見送りながら、静まり返った艦内を見渡す。士官が増えて、サイ、カズイ、トール、ミリーは残る判断をしたらしい。

 キラも当然残ると言っていた。まぁ、月艦隊にアークエンジェルが合流すればそこから先は正規の軍人の仕事だろうってことで、私もそれに付き合うことにしたのである。もちろん、今は……ジョージ・アルスター事務次官の計らいでみんなと共に正規の軍人としての籍を用意されている。これまで通り、少尉として待遇される運びになったそうで。

 私は与えられている仕事をこなすべく、格納庫に入り浸っていた。

 

「これからは嬢ちゃんのことをイリア少尉殿って言わなきゃいけねぇんだな?」

「やめてくださいよ、マードック軍曹。私は仮の少尉なんですから、年功序列でしょう?」

「はっはっはっ、冗談は酒場で言うもんだぜ。軍隊ってのは縦型社会だからよ、まぁ、ヘマしたら怒鳴れるのはメカニックの特権なんだがな」

「なら命令です。これまで通り嬢ちゃんあるいはイリアって呼ぶこと」

「……ったく、オメーさんはもうちょい可愛げってのを身につけてほしいよ。わかったよイリア嬢」

 

 そんな言い合いをしながらシルヴァの問題点の洗い出しと改良点の提示などなど、整備班へオーダーと言うか、自分が去った後の仕上げを任せるためにデータを書き出していく。

 フラガ大尉の出したデータも反映してナチュラル用のOSも仕上がってきていた。

 

「これが完成さえすれば、ストライクもナチュラルに扱えるようになる。そうすれば、私たちヤマト姉弟もお役御免ってことでいいのよね?」

「そうだぜ。キラとイリア嬢の今日までの頑張りのおかげで、な?」

 

 そう言われると自然と頬が緩み、柔らかく笑えるようになっていた。

 

「最近、ようやっと笑ってくれるようになってきたな。まるで心を押し殺してるようにしか見えなくて心配してたんだぜ?」

「そ、それは過去のことですよ。今はこうやって笑えるくらいに信頼関係が結ばれたってことでしょ?」

 

 違いない、とマードック軍曹は頭を撫でてくれたが……

 

「わ、悪い。不快だったか……?」

「いいえ、でも。心地は良かったですよ? お父さんに撫でられてるって感じで」

 

 思っても無いことを言って言い合って。こうして親睦を深めていくのは体育会系のノリだよなぁとか思いつつ。業務をこなして、お昼になり。昼食をラクスの元に届けたりと、いつものように過ごしていたら……警報っ!? 

 ノーマルスーツに着替えて、ブリーフィングルームに飛び込んで。フラガ大尉とキラが待機していた。

 

「ローラシア級が攻めてきたんだとよ、いいか。ここを耐え抜き、なんとしても艦隊に合流するぞ!」

「「了解!」」

「ついでに奴らは奪った3機を持ち出してきてやがる。くれぐれも油断しないようにな!」

 

 艦砲戦にはアークエンジェルに歩合があるし、こっちはモビルスーツを抑えるべきかな。これが最後の出撃になる筈っ! 

 

『シルヴァ、発進どうぞ!』

「ソードシルヴァ、イリア・ヤマト。行きまーす!」

 

 ソードストライカーを装備して私が前衛、中衛にエールストライク。メビウス・ゼロも前衛でバスターに撃ち込んでいくのかもしれない。インファイトにめっぽう弱いしねあれ。

 

「キラ、ブリッツを押さえて。私がデュエルを叩くから!」

「わかった。グランドスラムを貸してくれ、姉さん!」

「了解! 重心移動に気をつけてね!」

 

 折り畳んだそれを受け渡し。私はシュベルトゲベールを抜いてデュエルと対峙。

 

『貴様、あの時の女かァ!』

「ええ、そうよ。確か……ジュールの御坊ちゃま?」

『ほざけっ! 今日こそ叩き落としてやる!』

 

 狂犬じみた挙動。ビームサーベル抜いて切り込んでくるのでそれをパンツァーアイゼンの盾で受け止め弾き、対艦刀を振り回して切り裂かんと迫る。なんでこんな大型近接武器を作ってしまったのかはよくわからないが。

 ビームライフルの光条を薙いで弾き斬りつつ、スラスターを吹かして加速。パンツァーアイゼンのアンカーをデブリに叩き込んでそれを支点に、スラスターの制御を放棄することで加速する。俗に言うテコの原理、慣性の法則を利用した加速方法だ。

 

『ビームを斬る、だとぉ!?』

「ついでに君も切り裂いてあげる!」

 

 そのまますれ違いざまに叩き割ってやろうとしたが、横からバスターのミサイルが飛んでくる。直撃するが、同じフェイズシフト装甲なんだよなぁ。

 

『クソッ、煩いんだよモビルアーマー如きがっ!』

『無事か、嬢ちゃん!?』

「フェイズシフト舐めんなってことで!」

『なっ、しまった!?』

『イザーク、今行きま、うわぁぁぁっ!?』

 

 奇襲を仕掛けてきたブリッツを見ずにキラの方に蹴飛ばしつつ、デュエルにシルヴァの基礎兵装、右腕のアンカーを撃ち込んで脚に絡めてやりつつ振り回してデブリに叩き込む。瓦礫に埋めてやりながら即座に後退。ローラシア級からの艦砲支援が目に見えたのでその場から離れたわけで。

 

『くそっ! 基礎出力に違いはない筈だと言うに!』

「そりゃ君が下手くそなだけでしょ?」

『巫山戯るなっ!』

 

 粉塵の中からデュエルが飛び出してくるが、その場にはすでに私はおらず。置きマイダスメッサーを慌てて避けたところに左腕部のグレネード2発を叩き込んだが、さすがに2度も同じでは通用しないと。イーゲルシュルテンで迎撃して爆破されたが……すでにチェックメイトなんだよ。イザーク君? 

 

「チェストぉぉっ!」

『しまっ!?』

 

 アンチビームシールドを叩き割り、そのままデュエルの左腕をぶった斬る。それだけでも戦力ダウンだと思うが、あがきを見せるようにデュエルは突っ込んでくる。

 

『たかだか腕一本如きにぃ!』

「勝ち誇る気はないってお話だよ!」

 

 一騎打ち、潔さはいいがまるで甘い。そのままステップでビームサーベルの突きを回避しつつ、バスターから放たれたビーム弾をマイダスメッサーとシュベルトゲベールの二刀流で全て斬り弾きながら、パンツァーアイゼンをブリッツに向けて撃ち込むが、それはグレイプニルで迎撃される。

 

『コイツっ、ほんといみわかんねぇ!!』

『後ろに目がついてるんですかっ!?』

 

 ランサーダートが飛んでくるが蹴って弾き飛ばして、あらぬ方向にすっ飛ばし。ビームも小盾で受けてこちらの被害はゼロ。

 

「わかりやすいのが原因って感じだよ……っ!」

 

 2発目のランサーダートは掴み取り、ながら。さっき投げた置きマイダスメッサーでブリッツの左脚を切り裂いてやる。ダートはバスターの方にぶん投げて直撃させつつ、帰ってきたブーメランを再び投げるが、今度は警戒されて避けられる。ところがどっこい。

 

『もらった!』

『でやぁぁぁっ!』

『コイツらっ!?』

 

 グランドスラムを構えたストライクにどつかれ、メビウス・ゼロのリニアランチャーが回避運動を取ったバスターに直撃する。その衝撃で制動できずに、ふらついたバスターをストライクが蹴り倒してローラシア級にビームライフルを連射、牽制して追い払っていた。

 

「流石に撤退モノの損傷でしょ。ね?」

『グレイトォ! やっと隙を掴んだぜ!』

「……見えてるよ!」

『あんまり舐めんなぁ、ナチュラルがぁっ!?』

「あ、私コーディネイターだよ?」

『なぁっ!?』

 

 連結したライフルから放たれたそれを回避して。ブーメランを投げる、が……それをデュエルが奪うように掴んで返してくれたのをキャッチして、デュエルが隙だらけになったところにパンツァーアイゼンを脚に打ち込んで振り回し、バスターに叩きつけながら。グレネードを再び撃ち、爆炎に包む。

 

『『のわぁぁぁっ!?』』

『イザーク、ディアッカっ?!』

 

 気がつくと、敵旗艦に向かったキラが戻ってきた。見ると、敵艦に少なからずの被害が見えていた……うわぁ、ボコボコじゃん。

 

「対空機銃掻い潜ってボコってきたの?」

『できるできないじゃない、やるしかなかったから』

『ガモフから停戦信号確認っ!?』

『クソッ、引き上げだ!』

 

 撤退していく3機を見送って、私たちも帰投する……前に。

 

「デュエルのパイロット、不本意ながら……伝えて欲しいことがあるわ」

『なんだ、敗戦兵を嗤うつもりか貴様!』

「そうじゃないっての。ラクス・クラインをこちらで保護してるわ。どうにも、そっちに引き渡せないか迷ってるところなんだけど。まぁ、アンタの上司にそれを伝えてくれれば助かるわ」

『……は? それはどう言う意味だっ!?』

「じゃーねー。敗戦兵君」

『……貴様だけは許さんぞクソ女ァァァァ!!』

 

 中破した機体じゃ満足な機動はできまい。そう確信があったので、とりあえず煽っておく。責任感あるイザーク・ジュールならきっちりとあのクルーゼ殿に伝えてくれるだろう。

 このまま、ラクスを乗せたまま地球に降下なんて無理無理だし、どこかで引き渡さないと……こう、ね? 

 

 こうして、私たちは撤収するのだった。

 

 ────

 

「と言うわけで、どうやってあなたを向こうに引き渡すかを考えたいと思います。が、その前に」

「はい、なんでしょうか」

「改めて、紹介します。ウチの弟、キラです」

「ど、どうも……キラ・ヤマトです。まともに話したことなかったし、挨拶しとくようにって姉さんが……」

「キラ様、ですね。イリアからよく話は聞いております。とても優しくて、お強い方だと思っておりましたけど」

 

 にこやかに笑いながら、ラクスが手を差し出してキラの手を取る。

 

「あの時、手を取っていただきありがとうございました。改めて、ラクス・クラインと申します」

「い、いえ。あのまま手を差し出さないと……怪我をしてたと思ったから」

「本当に、お優しいのですね」

 

 憂い、そして称賛。そんな視線が目に見える、キラの今後をラクスも心配してくれているのだろうか。

 

「それで、私を引き渡すか。でしたね」

「うん。一応向こうにも伝えたけど……ポッドに詰め込んでバイバイは流石に人道的にどうかなぁって。だけど戦争中だから向こうも地球軍も血を流さないと気が済まない人が多くてねぇ」

 

 遠い目をしてしまうが、それがこのC.E.と言う魔境の時代だ。民度が終わってるんでな……ホンマにどないなっとんねん! 

 14話でクルーゼが語った……ホンマに‘青き正常なる世界に(ブルーコスモス)’とか曰うヤクザもんを根絶しないと、地球とプラントの間で根絶戦争になる。

 

「なら、提案です。私も一緒に月の艦隊までご一緒すればいいのでは?」

「それができないから困ってるのよ! 艦長にも具申はしたけど……返事は芳しくなかったわ」

 

 ラミアス艦長も余裕もなく、忙しすぎて返答に困っていたのも確かだけど。この件を持て余していたのも確かである。なんせ、今頃プラント本国は捜索に躍起になっている頃だろうし。

 

「避難民としても素性を洗われたらここでない場所に移送の後、軟禁が可愛く見える監禁の可能性だってあるわ。だから、早く向こうに引き渡したいの、貴女を」

「……姉さん」

「イリアの言うことはただしいのでしょうね……本当にいい方ですわね、キラ様のお姉様は」

「はい、僕の……その、自慢の姉です」

 

 嬉しいことを言ってくれる……こうして、あれこれ話して意見交換をした結果。

 

「なるべく素性を明かさない方面で、ハルバートン提督に便宜を図ってもらうしかない。あるいは、なんとか騙し切るか、かな」

「そうなりますか、やはり」

「そうする他ない。ラクスさんの身元が身元だからね……姉さんの気苦労がなんと無くわかる気がするよ」

「キラ、ラクス。と呼ぶ約束ですよね?」

「う、まだあんまり慣れてないからラクスさんで勘弁してください」

 

 この短時間で仲良くなれるこの2人のコミュ力がバグってるのか、それとも運命の赤い糸で結ばれているからこその相性なのか……わからん。ニュータイプは全能じゃないってことで一つ。

 

 こうして、私とキラは共犯者となり。ラクスを守ることに尽力する羽目になった……この艦からフレイもいなくなったし。どんな流れになっていくのかが、予測できないのは……まぁ、自分の洞察力と直感を信じることとしますかねぇ。

 

 to be continued .




本日はこれまで! お疲れ様でした
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。