ついに、第八艦隊と合流した私達に待って居たのは、艦から降りるかどうかの判断だった。ここまでの苦難の道って例えはザフトにとってに当たるだろうから、あえて言い方を変えるけど。苦労した分の愛着は湧いていた。
「ふぅ、これでヨシっと」
「問題点の洗い出し、コレで完了しました」
「ありがとな、キラ。イリア嬢もこれにて任期満了だな」
「お堅い地球軍の制服はもう懲り懲りですよ、ほんと」
私達の残したデータは軌跡になって次につながっていくことを信じたい。だけど、その派生シークエンス先はさらなる地獄だってことも忘れちゃいけない……デストロイガンダムとかいう最低最悪の殺戮マシーンの開発の阻止は叶わないとしても。
既に技術ツリーが確立されている以上、どうやって妨害してもC.E.の技術発展速度の方が可笑しいくらいに突き進む。だから何もできないと嘆くしかできないくらいなら……それを止めるモノを開発すればいい。
もう戻ることはないと思う格納庫を後にして、少尉として与えられた個室に戻ると。とある人物に連絡を寄越すことにした……早いがまぁ……こうするしかない。
自作アプリに連絡先の番号を入力して通話。コール音3回で通話が開始される。
『やぁ、君かね? イリア君』
「はい、アルスター事務次官殿。イリス・ヤマトです」
『わざわざ盗聴対策に秘匿回線からかけて来るとは……わざわざ探してくれたのかね?』
「申し訳ありません。頼るべき方は閣下しか心当たりがあらず……」
『いいだろう、何か頼み事かね?』
「就職先の斡旋をお願いしたく。モルゲンレーテへ渡りを繋いでほしいのです」
生存した大物とのコネをさっそく利用させてもらおうと思う。これで貸し借りは0になるはずだからと、打算込みで。
モルゲンレーテはストライクやシルヴァの開発元の会社。つまり、そこに潜り込むことができれば……対抗兵器の作成に関われると判断したのである。
『なるほど、コーディネイターと共存を提唱するオーブ連合首長国傘下の企業で働きたい、と』
「無理なお願いであれば、却下してくださっても構いません。地道に、面接なりで下積みして正攻法の手もありますから」
『そう、嘆くことはないだろう? 君ならすぐにでも採用される筈だしね。わかった、此方からも紹介分の一つは送信しておこう』
「寛大な采配に感謝いたします」
『なに、困っている人に手を差し伸べるのも上に立つ者のやることに違いはない。そう思わんかね? それに、この程度では、私が君に貰った借りを返すような働きにはならないだろう?』
「いえ、滅相もありません……閣下の尽力を得られた以上、それ以上の幸福など……」
ヤバイ、メッキが剥がれる。めんどくさい!! 敬語やっぱ嫌い! 難しいィィィィ!!
『私は君とキラ君を評価している。その期待に応えてくれる意欲が、君たちから見えるからこそ手を焼くのさ。そこを忘れなければいいだけだよ、分かるかね?』
「はい、今後もさらなる研鑽に励まして頂きたく存じます」
『ならばよろしい。それと、除隊の準備も整えてある。ハルバートン少将に通達も送ってあるから安心してくれ給え。では、有意義な時間だったよ』
「はい、有難うございました。失礼いたします!」
『地球に降りたらまた連絡をくれたらうれしいね、健闘を祈るよ』
電話が切られ、どっかりと椅子に背を預ける。疲れた……モビルスーツ戦のが楽なくらいに疲れた。
「これである程度は、マシな兵器の開発に参加できるかも……結果論として核の抑止力みたいなのが明確にあれば、戦争は止めれるのかな……」
独り言を呟いてしまうが、まぁ要するに。私の立場を明確にする必要があるのであって、後ろ盾にジョージ・アルスターの名を使う案である。連合において結構な発信力がある彼の立場を使うのは「種死」の流れも大きく変わってくるというリスクもあるが……。
「肩書の穏健派ではないことを祈っておかないと駄目かなぁ……人生はギャンブル。嫌になってくるよ」
ムルタ・アズラエルの影だってすでに見え隠れしてる現状で、月に行ってからとっととオーブにトンズラと行きたいが、保険だっていくつも必要だろう。そして、結局叶わなかったラクスの離脱が一番の地雷だと思っている。
プラントの姫のような存在が公にバレたら絶対拘束されるし碌な目に合わないと思う。だからこそ、守り抜かないと駄目だと思っている。
「砂漠の虎に身元を預けるのが一番丸い。ここでさいなら、なんてもはや……考えられないしね」
友の身を案じつつ、最適解を掴むために足掻くのを私は……やめないことにした。殺してしまった者たちの心の拠り所である彼女を何としても……アンドリュー・バルトフェルドに預け、託さなくてはと決意を固めていた。
────
「いやぁ、ヘリオポリスの崩壊の知らせを受けた時はもうダメかと思ったぞ。それがここで君達と会えるとは」
ランチから降りてきたナイスミドルはラミアス艦長に朗らかな微笑みを向け、労いの言葉を贈る。そんなハルバートン提督に目を向けつつアークエンジェルのクルーたちに混じって、イリアはかの人の出迎えに参加していた。
「軍の派閥ってのもあるけど、ナタル少尉に塩対応ではないのかなあれ」
「しっ、静かにしてよ姉さん」
対応の違いに白い目を向けるイリアを諌めるキラという構図に学生組は内心でヒヤヒヤとしていたが気付かれることなく、ハルバートン提督はそちらへ視線を向けながら破顔する。
「ああ、彼らが?」
「はい、艦を手伝ってくれましたヘリオポリスの学生達です」
艦長に紹介されて、自分たちの元に来るのが見えたので学生達は改めて姿勢を正す。
「君たちの家族の消息も確認してきたが、安心して欲しい。皆さん無事だ」
その言葉によってほっと胸を撫で下ろし、また。嬉しそうに手を取り合い喜ぶ面々を眺めながら、彼の労いの言葉を受け取り。イリアは軽く頭を下げて、艦の見学に向かうハルバートン提督を見送った。
「硬そうな人だったね。でも、柔軟に判断できる人でもある……ああいう人って傑物って呼ばれるはずだよ」
そう納得しながらその場を後にしつつ……迫る影に気が付いていた。
「すっごい嫌な予感がするんだけど……」
「このまま、丸く治るはずがないよね。今まで通りなら」
「みんなはどうするの?」
「当然、降りますよ。家に帰りたいですし、フレイも待ってますから」
サイの言葉に頷く面々、そりゃそうか。と苦笑いするイリア達は平和な笑みをこの時は浮かべていた。しかし……。
イリアは別の方を向いていた。それは、モビルスーツの方であり。これまでの道を共に歩んだ相棒となっていた、シルヴァである。
「私は……」
悩むそぶりを見せながら、格納庫を後に。しばらくして、居住区に呼び出され。除隊許可証をナタル・バジルールより受け取る。
「本日をもって、君たちは除隊となる。今日まで良くやってくれたな」
「数々の問題行動、すみませんでした」
「構わん、それで助けられた場面の方が圧倒的に多いのも事実だ。しかし、貴様ともこれでお別れだな。イリア・ヤマト」
「その……バジルールさん、この艦はこの後どうなさるんですか?」
手を挙げて、質問するイリアに対して一瞬間を置いて。
「……現在人員で地球へ降下。その後、アラスカを目指すことになる」
それを聞き、無茶なことをするんですね。とイリアは思わず口にした後、ナタルの奥に控えていた恰幅のいい男性士官へと話しかける。
「ホフマン大佐殿でしたか?」
「何かね」
「私は……これを受理致しません」
「「「「ええっ!?」」」」
「ほう、どうしてかね?」
驚く後輩達を尻目に。その発言に興味を示すように、その真意を問うべくホフマンは尋ねるが……イリアは凛として返す。
「このまま、人員不足の艦を見送るのは少々不義理かと思いまして。このまま少尉として、アークエンジェルに協力する意思はあります。補給作業の時に思っていたのだけど、人員の補充が見受けられなかったわけですし」
その言葉にホフマンは顎を撫でつつ、一考してその提案を評するべく口を開いた。
「手伝ってくれるのであれば、それは我々も拒む理由がない。なんせ、度重なる戦争で人材の不足が顕著になってしまっていてな」
「なおさらマズい事態ではありませんか……いつかまた戦火に晒されるくらいなら、この戦争を終わらせる方がいいに決まっています」
「それが志望動機、と言うわけかな? 戦後に除隊されることを望む、それでいいのかね?」
「はい、その予定でお願いしたく」
「わかった、取り計らおうじゃないか。志望兵として迎え入れることと、軍属の継続を……本日をもってイリア・ヤマトを正式に、G兵器のパイロットに任命しよう」
「拝命いたします、ただ一つだけ乗船の許可を頂きたい者がいまして……大佐とハルバートン提督に紹介したいのですが、よろしいですか?」
イリアは満足気に踵を返しながら、退場しようとするホフマンに敬礼を返しながらにそれを伝える。
「ほう、それはどう言う意味かな?」
「現在、アークエンジェルは要人を保護している状態にあります。ラミアス艦長より伝わっていると思いますが」
「……ああ……そう言うことか。彼女の身元を君が保証したい、と言うことだね?」
「彼女は友人ですので、必ずプラントに帰すと約束した仲です」
「君の懸念ももちろん理解できる。コーディネイターに対して過激な思想をぶつけようとする不届者も悲しいが地球軍にも居るからね」
そう言うのが、上層部にいることを暗示して。嫌そうな顔をする大佐は、どうやらブルーコスモスの思想を嫌っているようだった。
「わかった、確かにその要人に会っておく必要があるな。後で提督と共に面会するスケジュールを組んでおこう」
「あ、ありがとうございます!」
「心底気にかけているのが良くわかる。同じだからこそだろう?」
「彼女はプラントにとって心の拠り所なのです。それを蔑ろにすれば戦争が激化する恐れもありますから……」
それだけデリケートな問題なのか、とラクス・クラインと言う存在は。内心で思いつつもホフマンは同意する。
「人質として地球軍が拘束する可能際もあると言うに、どうして報告をしたのかね?」
「私はアークエンジェルに所属することを決めた以上、不義理を犯してまで彼女を匿うのは納得いただけないと思いまして」
その言葉に、誠実には誠実で応えねばならないと。オフマンは関心しつつ、そこまで憂慮するのであれば……それ以上を考えなかった。彼は退場しつつ、後輩達に囲まれて質問攻めされて狼狽するイリアを眺める。
戦闘データから見た彼女と、この目で見た彼女は……大きくかけ離れていた。
「まだ、少女なのだな。どんなに優れているコーディネイターであっても慕われ、そしてそれについて行く人がいる限り。同じ人間だと痛感するな」
「変わり者なのです。誰にも優しく、そして……誰よりも誠実だからこそ、人が彼女について行くのです」
隣をゆくナタルの言葉に、なるほどな。と小さく呟いたホフマン大佐はもう一度、彼女へ目を向ける。あのコーディネイターの少女に、賭けてみるのも面白いかもしれない、と。
────
つつがなく、大佐と提督にラクスを紹介できた。
「閣下、自分は彼女をプラントの勢力圏に送り届けるつもりです」
「ふむ、確かにそれが一番丸い解決方法だが」
ラクスは凛とした姫として、怜悧な雰囲気を纏っている。キラやサイ君、ついてきた学生組が普段のふわふわした雰囲気をマルっと入れ替えて過ごす様を見てポカンと。その様を見たら、そうなるわなと納得する。
「イリアの献身を受けているからには、私はプラントへなんとしても帰還せねばなりません。ここに着くまでに何度も戦火を、その惨状を確認しています。そして、ユニウスセブンの追悼慰霊団の代表者として、戦争の愚かさをなんとしても伝えなくてはなりません」
「わ、わかった。その旨をキッチリと理解してイリア少尉に命じよう。ラクス・クラインの護送任務を」
「ハッ、拝命いたします!」
「困難なミッションだと思うが。よろしく頼むよ、そして改めてこの艦に乗船することを決めてくれて感謝するよ。キラ君もね」
「は、はい! 途中で投げ出すのも嫌ですし、何より。姉さんが続けるなら僕は……共に行きます!」
……キラのシスコンが重い。まぁ嘆いても仕方ないから好きなようにさせるのが一番だとも言う。こうして、アークエンジェルに志望兵として正式に配属された学生組と共に地球を目指すことになるのだった。
みんなも、アークエンジェルをほっぽり出して日常に戻るのは無理だ、と内心で悟ってたみたいだし……私ってここにいないフレイのポジションなのでは?
そんな疑いを心のうちに秘めて、アークエンジェルは降下ミッションに挑むのだった。
to be continued .
いつもより若干文量多くてすみません!