機動戦士ガンダムSEED レディ・アヴァロン   作:鳥頭

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Phase13 覚醒する力、その名は……SEED

 ラクスと談笑をしていた矢先に、警報が鳴る。ザフトがやっぱり仕掛けてきた様で、大人しくしてくれるはずもないかと納得はした。

 

「全く、ここで引き渡すのが本当は正解なんだろうけど……」

「私のわがままに付き合わせてすみません。ですがやはり、Nジャマーの実情を知る機会を逃したくないのです」

「わかってるよ。だから、こうして残れる様に手配したじゃん?」

「ありがとう、イリア。貴女と出会えなければ、地球に降りる機会なんてあり得なかったでしょう」

 

 礼を言われるともどかしい、実際のところは最適解ではないとはわかっている。ここでラクスを引き渡してザフトを撤退させるのが一番なのだから。けど、それをせずに共に地球に降りる……いや、そうじゃないか。

 

「ジュールの御曹司に報告する様に言ったけど、その通達が来ないんだよね。ラクスの身柄引渡しの知らせが。つまり向こうも真偽の確認のしようがないから、状況の判断が錯綜してるのかもしれない」

「あり得なくはありませんね。実際に私がここにいると言うことを証明したわけではないのですから」

「やりにくいけどまぁ、向こうだって軍隊だからなぁ。兵卒の中でもエリートの赤服の兵士の報告も当てにならんとされたらどうやって伝えればいいのやら……」

 

 結局は待機命令で止められており、アークエンジェルは降下準備を開始している……っ!? 

 大勢が死んでいく。その悲鳴が聞こえる……恨みや憎しみが……っ! 

 重い鈍痛が頭を揺らす、その背や肩に重圧がのし掛かる。プレッシャーではないけど、誰かが縋るように……っ! 

 

「あっ、ぐっ……ごめん、想いを背負うから、だから……!」

 

 コーディネイターへの憎しみと呪詛を呟く誰かの刺々しい想いが心を引き裂く様に、精神を蝕んでくる……やっぱ、ニュータイプの素質なんて枷でしかないじゃん……! 

 

「イリア、歌いましょう。誰かのために、祈るのです」

「ラクス……」

「亡くなって行く方々の想いを貴女は知れるのでしょう。だから、その想いを鎮めるためにも歌いましょう」

 

 頭を抱えていた私の手を取り、アカペラで歌うラクスに応じる様に。自然とニュータイプの感応が歌詞を捉える。気がつけば共に歌っていた……祈る様に、せめて安らぎを与えれる様に。

 

「……ありがとう、落ち着いたわ」

「それはよかったです。ラミアス様より、その話を聞いた時は半信半疑になってしまいましたが、その立ち振る舞いは本物の様ですね」

「そりゃ、こんなオカルトみたいな存在を認知できると思うわけないでしょ。さて、出番も近そうだから、舞台に上がってくるよ」

「はい、お気をつけて」

 

 ラクスの元を後にして、私はノーマルスーツに着替えて、ブリーフィングルームへ向かう……平和を実現するためにも、必ず戦争を止めないと。その大義のために、再び。シルヴァに乗る覚悟を固めたのだから。

 

「フラガ大尉」

「来たか嬢ちゃん。改めてよろしくな……嬢ちゃんは坊主と差別化で階級が上がったんだっけ?」

「はい、イリア・ヤマト中尉となります。階級は飾りですので、これまで同様に接して欲しいですけどね」

「はいはい、フランクに行こう。な、坊主」

「は、はい!」

 

 キラもフラガ少佐も、臨戦体制でスクランブルに備えていた。相変わらず、人の死を感じるけど待機命令を出されている都合動で私たちは動けない訳で。

 第1種戦闘配置でメビウス・ゼロに乗り込み、待機しているフラガ少佐が怒鳴る。話を聞けば、どうやらアークエンジェルは降下開始するらしい。

 

「ザフト艦は単独での大気圏突入が困難なのは知ってるけど、Xナンバーは単独で突入までできるんだよね。理論上は」

「やるバカがいるかどうか知らないけどね。普通の人間なら機体内温度の上昇で死んじまうよ。やろうとするなよ、2人とも」

「そんな無茶なことできるはずないでしょう、大尉」

「いいや、嬢ちゃんならやりかねない。違うか坊主」

「……やりそうですね」

 

 うーん、味方がいない。そして反論もできない。そして、最終防衛ラインを突破されて提督の搭乗するメネラオスが交戦に入ったと知らせが入ると、格納庫内が慌ただしくなる。ちっ、やっぱ一筋縄じゃ行かないか……痺れを切らしたキラがフラガ大尉に振る。

 

「フラガ大尉!」

「ああ、わかってるよ。艦長! 今フェーズ2だな?」

『え、ええ』

「フェーズ3まで何分だ、その時間内で俺たちが奴らの相手してやれば向こうも納得するだろうさ!」

 

 体感的に3分くらいかな、と当たりを付けてタイマーをセットする。葛藤する艦長に対して副長のナタル少尉がゴーサインを出してくれる。

 

『わかった、そこまで言うなら迎撃に当たってくれ! ただし、フェーズ3までには全機帰還しろ! 単独での突入をやりそうなバカにもよく言い聞かせる様に!』

「誠に遺憾ですが、ここまで味方がいないのは少々異議がありますよ、バジルール少尉っ!?」

 

 抗議しとこう、流石にやりそうなバカって言い過ぎですよね? 

 

「嬢ちゃん。日々の行動、改めたほうがいいぜ?」

「フラガ大尉?」

「バジルール少尉の言ってることが正しいと思うよ、姉さん」

「キラ???」

 

 どっと、格納庫に笑い声がこだまする。ええい、やらなきゃいいんだろ、やらなきゃ!! 

 

「信が無いのはよくわかりました。しっかり任務にあたらせてもらいますよ!」

『まったく、貴様のことを心配しての苦言だ。必ず帰って来い、いいな!?』

「了解!」

 

 ライトバレルストライカーに換装を予定して、ストライクはエールストライカーで出撃のスケジュールとなる。

 

『キラ・ヤマト、エールストライク。行きます!』

『俺だって、こんな状況で宇宙(ソラ)を飛んだことなんて無いっての! ムウ・ラ・フラガ、出るぞ!』

 

 出撃して行く2機の後に、ライトバレルシルヴァも続く。

 

『ライトバレルシルヴァ、発進どうぞ!』

「イリア・ヤマト、ライトバレルシルヴァ。行きまーす!」

 

 カタパルトの電圧を上げてリニアを起動しつつ、出撃する。 この感じは、久しく感じた重力か……機体が重いわねっ! 

 サブ推進のスラスターに火を灯して重力に抗うべく、加速する。ビームサブマシンガンポッドを射出してぶっ放すには環境が悪すぎる……ってぇ!? もうデュエルとブリッツの修理終わってたの!? 何のために脚切ったり、腕飛ばしたっての全く! 

 それに、あれは強化装甲のアサルトシュラウドっ……開発終わってたのかよ!! 

 

『やっと出てきたか、シルヴァ! 今日こそ、幕を引いてやる!』

「しつこい男は嫌われるよ、イザーク・ジュール!」

『ほざけっ……!?』

『君の相手は、僕だ!』

『貴様はストライクかっ、ええい邪魔立てをするな!』

 

 仕掛けてこようとしてたところを、そのシールドごとストライクに蹴り飛ばされるデュエル……私に似てキラも足癖が悪いのよね。

 ロックされてるからいつもより3割り増しの機動で飛び回り、撹乱しながらガンバレルを2機射出して射かける。ビームの弾幕をくらいな! 

 

『くっ、こいつ。新型のストライカー使ってくれやがる!』

『メビウス・ゼロのガンバレル!? いや、これはビームの弾幕です! ディアッカ、絶対に油断したらまずいです!』

『わかってるよ、そんなことは! だけど、射撃ならこっちの方が上だぁぁっ!?』

『よそ見してる暇はないと思うぜ、そら。本家の弾幕も食らいな!』

 

 メビウス・ゼロの渋い援護も加わって、ビーム弾の弾幕の間を掻い潜り逃げる様にバスターとブリッツが飛び惑う。だけど、イージスの姿が見えないのは不気味で……っ! 

 咄嗟に後退、射出していたガンバレルを引っ込めて加速。そして、回避に専念……正確にこっちを狙ってるのはイージスかっ! 

 

『くそっ、やっぱり貴女に当てるのは難しいな』

「易々と当たってあげるほど私は優しかったかな?」

『それもそうだ、だけど俺はもう迷わない。貴女は俺が討つ!』

「その意思はいい、だけど。アスラン、この場は退きなさい。イージスの推力なら大気圏に引かれずに済むわ」

『すみません、アスラン! 早く撤退をお勧めします、僕たちは踏み込みすぎです!』

 

 機体にかかる重力が増して行く……現にブリッツが上がって離脱して行くのが見えた。それに倣う様に、イージスは迷う様に……

 

「それと、アスラン。大事なことを伝えるわ」

『何を伝えるって言うんですか、俺たちは敵同士なんだ』

「レノア・ザラからの伝言よ。パトリック・ザラを諌め、支えて欲しいと。あの人のやり方ではコーディネイターとナチュラルの戦争はどちらかが全滅するまで戦うことになる。それだけはダメだって」

 

 一応伝えておかないとダメだ。だけど、ここは戦場。納得してくれるとは思ってはいけない、むしろ激昂するかも……。

 

『母さんが……っ、ふざけるな、出まかせを!』

「それに。あの艦には、ラクスが乗ってる! 人質みたいに利用されない様に手を回して、わざわざ。こっちで保護してるんだけど?」

 

 ダブルパンチの情報でアスランの思考を乱し、そのまま掴み掛かり、加速して突き放す。大気圏外に飛ぶぐらいの速度の加速、内蔵イかなかったからヨシ! ちょっと口の中が鉄の味がするくらいなら安いもんよね。

 

「だから、ちゃんと迎えにきてあげなさいよ。アスラン」

『うぁっ!? イリア姉さん……っ! ラクスがあの艦にっ!?』

「ちゃんと降下して、プラントの勢力下に送り届けるから。今は、ごめん!」

 

 そう通信をして私はアスランがメビウスの群れに追っかけ回されるのを尻目に離脱する。デュエルとストライクのドッグファイトに茶々を入れようと構えた時に、ローラシア級が突っ込んでくるのが見えた。

 

「質量攻撃でアークエンジェルを沈める腹積りというより……メネラオス狙いかっ……させるわけにはいかないわよね」

 

 ビームライフルとリニアライフルをドッキングさせてチャージは100%で……あと10秒かな? 

 

『アレは……っ!? させるかよ!』

『嬢ちゃん、バスターがそっちに!』

「見えてます。だから、そのために……!」

『くそっ、戦い方が蛮族なんだよオマエ!!』

 

 右腕のアンカーを打ち込み、デブリを引き寄せて即席の盾代わりにするより、バスターめがけてぶん投げる! 

 当然回避されるけど、その先に意図を読んで……リニアランチャーの火を吹くメビウス・ゼロ。当然直撃! 

 

『ぐぁっ!? 何度も何度も煩いんだよ、モビルアーマー如きがっ! いい加減落ちろよぉ!』

『くっ、しまっ……フェーズ3じゃねえかっ!?』

 

 違和感……何で、スローになってるんだろ。世界が

 

『なっ、抜けられ……っ!』

『重力に身を取られたんだろぉなぁ! こっちは、あの時より推進力を増してあるんだ!』

『ダメだ、追いつけな……姉さぁぁぁん!?』

 

 違和感……キラの声が聞こえる? 

 

『これで、終わりだぁぁぁ!』

 

 違和感……後ろにピッタリ付けたデュエルが見える、その推進力は前より格段に上がってて……

 やばい、マズイ……引き金引いちゃった。100%の出力の簡易ビームキャノンを撃ったらパワーダウンして機動性が落ちるんだよね……。回避できるほどの時間がない、このまま、死ぬ……? 死んじゃうの、私……

 

 ローラシア級に叩き込んだ極光は艦をぶち抜き、閃光を撒き散らして破裂して行く。案の定シルヴァは重力に囚われてほぼ身動きができないくらいになってきていたところにパワーダウン。死、ビームサーベルが迫る……

 

 死ぬ? 地球降下前に、何かを成す前に……ふざけるな、ふざけるなぁぁぁぁぁ!! 

 足掻くって決めたじゃないか、絶対に死んでやるものか! 考えろ、導き出せ! 生きることを……諦めるなっ!! 

 

『やめろォォォっ!?』

 

 キラの声が聞こえたその時、頭が冴え渡る……やっぱり、か。

 

「……私はっ……絶対に、諦めないっ!」

 

 目を閉じて、開くと。この感覚、ああ。至ったか……それは発現した。ピキリ、と種にヒビが入る様に。殻を打ち破り、まるで限界という壁を突破するそれは……SEEDの発露っ!

 

 コンマ秒の世界で私だけ普通に動ける様な感覚。まず、ビームキャノンを投げ棄てる。そして機体を捻る様に機動、流れる様に左腕のグレネードを棄てたビームキャノンに撃ち込み、デュエルに向けてイーゲルシュルテンで肩のレールガン銃口を何度も、何度も撃ち抜く。

 何度も撃ち込めばレールガンが耐えきれず爆散して、デュエルの姿勢制御が甘くなる。ズレる、シルヴァを引き裂くはずだったビームサーベルがコンマでもズレればそれだけでいい。

 ビームキャノンがグレネードによって破壊されて、派手に爆風を拡大。姿勢制御を放棄していたシルヴァを吹っ飛ばすくらいの威力でこっちは後退できた。

 

『うあぁぁぁぁぁっ!!』

『何だこいつ、俺に突っ込んでっ!?』

 

 そして、そこに突っ込んできたのはストライクだった。瞬間的に加速した言うより、近場にあった足場(バスター)を蹴ってさらに加速してきたみたいで。デュエルのメインカメラを蹴り飛ばして縦回転させるぐらいの威力で蹴り飛ばしていた。

 人間だったら確実に首すっ飛んでるな、あれ。

 

『のわぁぁぁぁぁっ!?』

「あー、キラ。着艦しよう」

『……ふぅ、ふぅー……了解』

「バスター、そっちも死にたくないでしょ? 投降するなら救助するけど……」

『くぅっ……生き恥を晒すくらいなら、助けなんていらないさ。あんたらの方こそ、自衛を考えろよ』

 

 目を回したであろうデュエルの方に行くのを見送って。何らかの手段があるのかわからないが離脱して行く。彼らも大気圏を離脱できないはずなんだが……と思っていたが、なるほど。爆散して粉々になったローラシア級の大きめの装甲を盾に、大気圏を抜ける腹づもりか。

 

 しかし、違和感に気がつく。あれ? シルヴァが……パワーダウンしてるから動けないっ!? 

 

『っ、姉さん!』

「ごめん、キラ……パワーダウンして、重力に囚われて動けないっ……!」

『馬鹿者! 諦めるなと言っただろうが!』

 

 その声の主はナタル少尉っ……

 

『アークエンジェルを寄せる! 早く着艦しろ!』

「そんなことをしたら、降下場所がっ」

『メネラオスを護った英雄に死なれる方がハルバートン提督の心に傷を残すだろうが! 命令に従えっ!!』

「っ……!」

『姉さん、早くっ!』

 

 ストライクの差し出した手を、掴んだ。そして、アークエンジェルの甲板に降り立つ。見上げた宇宙、そこには。スラスターに光を灯して、脱出点を抜け出して行くメネラオスの姿が見えた。

 

「……はぁ……はぁ……っ……」

 

 何とかなったんだよね……これで……緊張感が切れて、私の意識はそこで途絶える事となった。何とか、ミッションコンプリート……なのかな? 

 

 to be continued .




本日分最後です。読了ありがとうございます!
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