機動戦士ガンダムSEED レディ・アヴァロン   作:鳥頭

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Phase14 熱砂の海で

 覚醒したその後のことを話すと長くなる。丸一日ダウンして、点滴を打ってもらいつつ……翌日にはケロッと回復して元気に業務に励ませてもらっていた。

 シルヴァとストライクにかかった負担は大きく、パーツの交換やら何やらと整備しなくてはマズイ状態だったから突貫で作業をして最低限の処置を済ませては交代して。ローテーションを組んでようやっと持ち直すことができた。

 

「イリア嬢、病み上がりだってのに無茶してんじゃねぇだろうな?」

「コーディネイターは、体周りの頑丈さが段違いなんですよ。ナチュラルより優れた肉体なんて言うくらいに、病気も罹りにくいので」

「ならいいんだけどな……」

「大丈夫、この後ローテーションで休ませてもらいますとも」

「おう、しっかり休んでくれよ?」

 

 部屋に戻り、仮眠をとって……地球の重力に身を慣らすことを忘れない。体にかかるその重みに対して。モビルスーツにも相応の負担がのし掛かるのだから、その点も考慮して機動させる必要がある。

 そして、眠ってる間に……人知れず覚醒に慣れる様に、SEEDを発現させてみる。

 

 クリアになる思考、何やら寝つきが良くなる副次効果の利用のためにSEEDを使うのも罰当たりな気がするが……使えるものは使う。

 そうでなくては休めないから。

 そして、一夜明ける前に。警報が鳴り、コンディションレッドっ! 飛び起きて格納庫へ向かいつつ、感応が捉える。バクゥ5、ヘリ多数……! 

 

「砂漠の虎が仕掛けてきました……!」

「嬢ちゃん、何だって?!」

「砂漠の虎です。アンドリュー・バルトフェルド! 敵の数はバクゥ5機とヘリ複数! マードック軍曹、モビルスーツのセットアップ急いでください!」

 

 SEEDの名残で得た情報をそのまま報告。やっぱヤバい、コレでニュータイプ素質と比べてみてデメリットなし? ホントに狂ってるね、保因者ってのは! 

 

「どうやって得たんだよその情報?! 艦橋(ブリッチ)ッ、敵戦力の報告を──嬢ちゃんが言った通りじゃねえかっ!?」

『御託はいいわ、第一種戦闘配備発令! 対モビルスーツ戦闘用意! 機関始動!』

「艦長、自分がシルヴァの光学センサーで行います! Nジャマー環境下ではレーダーが宛てに成りません!」

『艦では小回りが利かないのは承知しています、だけど……』

『ミサイル確認! イーゲルシュルテン、迎撃開始!』

「穴倉に籠って勝ちを取れるほどに駒はないんです! 艦長!」

『くっ、出てもらうしかないのね……分かった、シルヴァの発進準備急いで!』

 

 ラダーを降ろし、乗り込む。そして、OSを起ち上げる。得た情報を逃さず、さっさとインプットしなくちゃ……

 

「姉さん! 僕も出るよ」

「キラ、データ送信するから、砂漠の仕様に足回りを更新しなさい! このまま外に出たら砂の影響で出る、接地面の摩擦誤差修正を実地でやることになるわ」

「っ、りょ、了解!」

 

 正史では最適化をぶっつけ本番でやらなきゃいけなかったが、自分の得た情報で先に済ませる。誤差の修正はリアルタイム通信で修正すればいい! 

 

『ハッチ解放、シルヴァ発進だ! 敵戦闘ヘリを排除せよ!』

「二波でモビルスーツも来ます!」

『分かっている! 現状の目標は制空権の確保だ! 命令に従え、イリア中尉!』

「っすみません!」

『シルヴァ発進準備! エールストライカー、スタンバイ』

 

 カタパルトにおろされて、何度見たか思い出せないバンクが脳裏を流れて行く。固定され、接続を確認……全システムクリア、オールグリーン! 

 

『進路クリア、シルヴァ発進どうぞ!』

「エールシルヴァ、発進するっ?!」

 

 リニアカタパルトの射出時に掛かるGで舌を噛みそうになる。お、重い! 重力下の戦闘は慣れないと不味いかも……! 

 

「さて、好き勝手してくれる前に追っ払いますか!」

 

 着地して砂の踏み心地を確認しながら、イーゲルシュルテンの照準を合わせてヘリを睨む。レーザー誘導が途切れ、砂丘に身を隠す様に下がっていくが……私の前だとそれは悪手である。

 

「かかるニュートンの反作用と想定値合わせ、重力偏差予測と射角入力、弾道予測……見えた!」

 

 直感と洞察力、閃きのままにプログラムを更新しつつ。敵の隠れた砂丘に左腕内蔵グレネードを撃ち込み、続けてビームライフルを榴弾めがけて射放つと。

 

「鳥って、砂浴びが好きだけど。あなた達ならどうかな?」

 

 それを誘爆させて砂丘を爆風でひっくり返し、砂の雨を戦闘ヘリに浴びせてやれば、たちまちローターの動きが悪くなって高度を下げて行く。初見殺しできると思ったかな? 残念! 

 

「まだヘリはいるのが分かってる、出てくればいいわ!」

 

 釣り出すように、エールストライカーのスラスター出力を増して跳び上がる。そのままヘリの位置を確認すると同時に砂塵巻き上げてやってくる四足歩行のモビルスーツを確認できた。数は5! 

 集中して、乗る者の鼓動を捉える……それで、コックピットの位置の把握できるからね。

 

『姉さん、遅くなった!』

「キラ、座標送るわ。ついでに誤差の想定値もこっちで割り出したから更新しときなさい!」

『了解! 砂地だとこれは確かに動きにくいし足を取られる……!』

 

 砂地に完璧に適応できなかった分、こっちでプログラムを更新したのを送っておけばストライクの運動プログラム修正もすぐに終わるはず……っと。

 ビームライフルを腰にマウントして、バクゥの放ったミサイルを弾頭の信管を避けて掴む掴む。計6発! 今度は時限信管に出来るように改良しときなよ? 

 

「はい、お返しするわ!」

 

 燃料の残ったそれをヘリめがけてぶん投げてやると、彼らは急いで砂丘に避難していく。まぁ味方のミサイルで死にたくはあるまい。性懲りもなくミサイルが飛んでくるが、掴んでは投げ返してバクゥを翻弄しておく。砂漠の王の名前は虚飾が過ぎるぞと内心で煽りながら。

 

『……ミサイルがこっちに来ませんね』

『シルヴァに遊ばれてるぞ、アレは』

 

 管制から聞こえる呟きは無視して。いい加減にしろとしびれを切らしたバクゥが飛び掛かってくるので、ビームサーベルを抜きざまに足を切り裂く。格闘戦はこっちの本領だよ? 

 

『ビームサーベル咥えてから、出直しておいでよ!』

 

 こっちに対して近接強襲不利と悟ったのか引き撃ちで対応し始めたバクゥたちを嘲笑うように。近接を挑まれたキラが殴る蹴るで応戦。素手が一番強いキラェ……なんてのは冗談で、120mmガトリングで無限軌道をズタズタにしたり、脚を圧し折ったりして機動性を奪い。こっちも旋回性の要であるウィングをビームサーベルで叩き切って機能不全にしておけばたちまち。バクゥの達磨があちこちに転がることとなった。

 

「ふぅ……投降を呼びかけたほうが良いですね?」

『まさか、全員殺さずに制圧するとはな……』

「考え方を変えたんです。兵站に深刻なダメージを与える方が一番効率的だって」

 

 そして、それができる能力があるなら積極的にそうするべきともいえる……! 

 

「キラ、艦砲射撃来るよ!」

『どっちから?!』

「向こう!」

 

 南西とかそんなもん言うより安い……え? モニターに映ったキラの目からハイライト消えて……SEED発現してるぅぅぅぅぅぅぅぅ!? 

 いつ覚醒したん?! アグニを艦砲射撃の方角に向けて何を……撃った。

 

「はぇー……艦砲射撃って撃ち落とせるんだ……」

『姉さんだってできるんじゃないの?』

「出来ないことは私にもあるよ? 今の装備じゃ無理無理」

『なら、僕も。もっと頑張らなくちゃね』

 

 ヤメロ、キラ。怪物に自分から成らなくてもいいから!? 深淵に足を踏み込まなくていいから! 

 

「あー、副長。投降勧告をお願いしたいなーって」

『……全周波チャンネル繋げ。ザフト軍に告ぐ、抗戦を取りやめ速やかに降伏せよ。我々は条約に基づき、捕虜として貴公らを迎える義務を有している!』

 

 これで、軋轢はマシになればいいかな……殺し殺してが戦争の坩堝なら……

 

「んんっ、潜伏している方々もどうか降伏していただきたいです。私にはどこにいるかが分かっていますので、射殺も容易です。どうか、不毛な犠牲を生まぬ努力をお願いいたします」

『脅迫で降伏勧告……貴様も大概だろ』

「良く分かってますよ?!」

 

 軽口の叩き合いの内で、センサーが捉えたのはダコスタ君と件のバルトフェルド氏……両手を挙げて降伏の意志あり、と。

 撃とうとしていないのを確認してから、ビームライフルを射撃。その着弾地点近くには、スナイパーが尻もちをついて震えあがっていた。

 

「見えている、と此方は宣言いたしました。全員、集めてもらえますか? 次は射殺します」

『……そうカリカリしなさんな、本当かどうかの確認だ。今ので証明になってよかったんじゃないかね? 総員、投降しようじゃないか、大丈夫。責任はすべて俺が受け持つ、武器を放棄して集合!』

 

 喰えない男である。そんな認識で達磨にしたバクゥの方からもパイロットたちがゾロゾロと出てきて、両手を挙げているのが分かる。

 

「流石に潔い方ですね。多くの兵士に慕われているところを見るに、誰1人として怪我で済んでよかった」

『そう言ってくれるのか、君は地球軍の兵士だろう?』

「申し遅れました、と。ここから言うのは流石に失礼ですね、降ります」

 

 シルヴァの膝を地に下ろして、コックピットのハッチを開ける。そして、ラダーを使わずに高さ10mくらいから飛び降りるが、無傷である。サンキューノーマルスーツ……とヘルメットを外して素顔を晒す。

 

「地球軍、第八艦隊。アークエンジェル所属パイロット、イリア・ヤマト中尉であります。訳あって、コーディネイターですが地球軍のパイロットを勤めております。以後、お見知り置きをいただきたく!」

 

 地球軍式敬礼、そして。打ち合わせ通りに、士官たちを連れ立ってアークエンジェルから降りて……彼女が優雅に歩み寄ってくる。砂漠の夜は冷えるからと私のジャケットを羽織ってもらった彼女は……

 

「お会いしたかったです、アンドリュー・バルトフェルド様。わたくしはラクス・クライン、イリアに保護してもらい。地球に降りてきましたの」

 

 優美な礼を見せる、プラントの姫に……バルトフェルド氏は白目を剥いて気絶しそうになっていた。わかるぜ、さぁ。まずは戦後処理の交渉から始めようじゃないか、砂漠の虎さんよ? 

 

 to be continued .




卓のGMやってて時間がありませんでした、すみませんが本日分です、勘弁してください!
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