機動戦士ガンダムSEED レディ・アヴァロン   作:鳥頭

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Phase16 対談とケバブ騒動

 バナディーヤ。そこはザフト‘北アフリカ駐留軍’が抑えている都市であり、栄えている街と言えばここだと自分のお膝元の様にバルトフェルド氏は語った。私の所在は現在アークエンジェルから離れてラクスの護衛として伴い、レセップスに搭乗していた。

 知将というか策士というか……自らの本丸に私を乗せるとはなかなか大胆な判断をなさるが、現状はラクスと朗らかに話してるあたり恐らく。信用されたのだろうか? 

 

「経緯はともかく君も、自由主義のコーディネイターなんだろう?」

「……まるで自分も自由主義みたいな言い草ですね、バルトフェルド氏は」

「だぁから、‘アンディ’と呼んでくれ給えよ? 僕としては君はもう敵じゃないんだしさ」

「敵は敵ですよ、絆されて甘いところを見せるわけにもいかないでしょうに。広告心理学の応用で私を味方にしようったって、そうはいきませんよ」

「あー、そこから警戒されるのか。参ったなぁ」

 

 こちらの内情は読ませず、内心を読み取る私。ニュータイプなりの直感とここまでの観察で、バルトフェルド氏はかなり、自由な人だと認識している。敵味方問わず、益を共有できれば紳士的に対応できる柔軟な精神性は歴戦の猛者として得た知見なのだろう。

 だが、私と仲良くしたいというのは本心であるとも分かった。敵対したくない、と言う本心が明け透けに見て取れる。

 

「最近ポップした野生の国家元首のお嬢さんと、それにラクス嬢を保護してその足で地球に降りてきた地球軍とか言うイレギュラーって分かってるのかね?」

「それはそうですね……」

 

 割とシャレにならん事態であり、私が彼と同じ立場なら……まぁわかる。少なくとも偏頭痛の種になりうるわ。SEEDだけに……

 

「なんだか寒いが、気のせいかな? ラクス・クラインと言う姫は俺たちコーディネイターにとっては平和の象徴。あの場面、第八艦隊の60%が損耗した戦闘を起こさなかったこともできたんじゃないか?」

「とだい、無理ですよ。受け渡しの方法も考えましたが……あの場にはクルーゼが居ましたし」

「……なるほど、彼の真意もわかっているのか」

「最悪の場合はラクス・クラインを‘悲劇のヒロイン’に仕立て上げて、シーゲル・クラインを焚き付ける口実になるし」

 

 あー、ヤダヤダ。あの仮面野郎はかなりヤバいことを平然とやりそうだし、何より。ラクスが居るとわかっていたら、‘クソ野郎ども’(ブルーコスモス)がそんな餌を前にお座り、待てが出来るはずがない。

 

「双方相手取ることを考えたら、そのまま保護して地球に降りて。プラント勢力付近で保護を引き継いで貰えば良いと、そう考えていましたから。まぁ、今となっては……彼女をオーブに預けるべきと思っていますが」

「なるほど、確かにその判断は間違いないだろう。姫の望みは少しでも地球の事情を知ること、ともなれば……ここがゴールは少々勿体無いね」

「まぁ、大義名分でバクゥを片手間に5機畳んだ上で艦砲射撃を蒸発させる腕前のパイロットが乗ってるってデータがあれば評議会もあなた方を呼び戻すことはないんじゃないですか?」

「君とキラ君を相手取る今後の兵士たちに黙祷を捧げておいた方がいいかな?」

「誰が死神ですか。身構えてる時に、死神は来ないんですよ」

 

 それが本当なら、何人が生き残れるんだろうか。身構えていても、死んでいく人は多いのだからこれは本当に答えが出せない問答だと思う。

 

「なるほどね。それがイリア君の強さの秘訣、か」

「死にたくない、だから抗う。戦争は本当に大っ嫌いですよ」

「どうすれば終わると思うかね、君は」

「さんざんに殺し合って憎しみあって。その上から押さえつけて、戦争を止めても負の連鎖が縺れに縺れて今現在ですから……それでも、止めれると信じないとやってられませんよ。簡単な方法なら、互いに抑止力を保有することでしょうね」

 

 私の答えに興味がある様子のバルトフェルド氏に促されて私なりの考えを伝える。その方法とは……

 

「旧世代、かつては‘核の抑止力’が世界の均衡を保っていました。互いに絶対使わないと厳しい取り決めで、互いに向け合って牽制して。それで戦争をコントロールしてた時代があります」

「そうだね。その頃は核兵器以上の大量破壊兵器なんて存在しなかったんだから、それは当然だろうな」

「と言うか、今の現状を作り出したのが‘クソ野郎ども’(ブルーコスモス)のせいですし。Nジャマー撒かれて逆ギレして、コーディネイターを蔑んで戦争を起こしたんですから」

 

 それまでの応対にも、地球側のやらかしがつもりに積もって戦争のトリガーを引いた。だから、こんな混沌とした世界になってしまったと言うべきなのだろう。

 

「それに、これを預けておきます」

「何かね、これは」

「近い将来、実用化されるであろう悪魔の兵器ですよ」

 

 極秘データをなんで用意できたのかって? 仮説と設計図を引くのは、誰にだってできるんですよ。その発想力があるかないかって話ですから……バルトフェルド氏に渡したのはあのみんなのトラウマの設計図をしたためたメモリーだ

 サイクロプスはアラスカで使われるが。前世と言う、遠い過去の記憶の中で論理を組み立てて……今の頭ならその仕組みを理解できる。

 

「‘ジェネシス’……それは[創世の光よ]と言う名の温かいものではなく、ザフトが今現在進行形で開発を進めているであろう破壊兵器ですよ」

「っ!? さ、流石にそれは言いがかりじゃないかね?」

「実用は可能ですよ」

 

 つらつらと理論を説明すれば、工学知識を持つバルトフェルド氏ならば容易に理解していく。そして、それの実用段階が近いということも理解してくれた訳で。

 

「このリークに関しては、なるべく秘匿でお願いします」

「言っても信じられるものかよ。君は一体本当に何者なんだね?」

「そうですね……私はニュータイプと呼ばれる存在である、ということでしょうか? 私以外に、こんな芸当ができるのはいないでしょうけどね」

「ニュータイプ……その言い草なら私はオールドタイプとでも言うのかい?」

「割といい線ですね。その昔に提唱された机上の空論に当てはまる新種が私みたいなものですので」

 

 簡単な検査と称してメンタリストみたいなことを何度か試されたが全敗させたら涙目で降参されたので、これ以上虐めるのは申し訳ないなとなり、レセップスがバナディーヤに到着したのを確認してその場はお開きとなった。

 

「ジェネシスを開発してるのはザラ派ですので、クライン派にこのデータを渡せば……その後は好きにしてください」

「行きがけの駄賃にトンでもないのを寄越された気分だが、その辺は頭の片隅にでも置いて置くとしようか」

 

 最悪の場合、クライン派に亡命する際の取引材料にしてくれればいいと思い渡したものである。ジェネシスの仕組みさえ理解していれば、どんな被害が出るかなどなどもわかるはずで。これを地球に撃たれたら……甚大って文字が可愛く見える被害が出る。

 地球が死滅するだろうねってバルトフェルド氏も頬を引き攣らせた笑みを浮かべていたし、ご理解して頂けたようで何よりで……設計図を引いた甲斐がある。

 

「やはり、君は危険だが。貴重な人材なんだろうね……親御さんは?」

「父はユーレン・ヒビキです。お母さんの話を信じるなら、私は……L4宙域のとあるコロニーで人口子宮から生まれた第一世代のコーディネイターになるんですよね」

「L4宙域……噂が確かなら、コロニー・メンデル……かね?」

「……それ以上は私も聞いていません」

 

 天を仰ぐバルトフェルド氏と、瞑目する私。SEEDの抱える厄ネタの宝庫であり、全ての元凶の多くが産声を上げた始まりの場所だ。

 知らないというより……知りたくないというのが正解だろう。SAN値を自分から減らす行為を推奨しているわけではないからね、仕方ないね。

 

「ラクス嬢にはそれ話してないよね?」

「知るべきではない情報ですからこれは……まだ、彼女が知る必要はありませんよ」

「まだ、ねぇ……問題の先送りに見えるけれど、いずれ知る機会があるとイリア君は読んでいるのか?」

 

 神妙に頷いて見せると、バルトフェルドさんも神妙な顔……私だって知らせたくないけど、こればっかりは時間が勝手にそこに導くからどうしようもないのです。

 

「さて、嫌なことは忘れて羽を伸ばすといいよ。おいしいケバブを出す店とか、案内するからさ」

「あはは……なら、頼らせてもらいますよ。アンディさん」

「狡いねぇ、美少女に笑顔を向けられて頑張らない男はいないよ」

 

 私達はこうして、対談を終えて。買出しに向かうのであった……え、ラクスも街に行くん? ……護衛任務が生えたじゃん……。

 

 ────

 

 バナディーヤの街を散策して買出しを済ませてそれをレジスタンスの使っていた廃坑の送り出したイリアたちは街中で……レジスタンスに参加していた元構成員のカガリと出くわして。変装済みのラクスは熱砂の街を見て、緑はないんですか? と無邪気な疑問をバルトフェルドとアイシャにぶつけては知見を育み、様子を知ろうと目を輝かせる彼女に温かい目を向けて癒される様子を見せていた。

 

「レジスタンスを辞したから、私に拾えって……フットワーク軽すぎじゃない?」

「うっそれは……わかってる! だけど他に頼れるのはその……お姉ちゃん、しか、いないから……」

「……分かったわ、任せてカガリ! 私は貴女のお姉ちゃんだから!」

「ひっ、マテ! 近寄るぐえええええええっ! クソ、地力の差が……! わぷ、嫌みかおまえ! 無駄にデカい駄肉を顔に押し付けるなぁぁぁ!」

 

 苦し紛れの一言に、即落ちしたイリアは感極まってカガリを抱きしめる。その豊満な肢体を全身に押し付けられてもがく妹に気づく様子がないのを見て、バルトフェルドは眼福であると思っていたらアイシャに脛を蹴られ、耳を抓まれた。

 

「いだだっ! アイシャ、分かった。すまない」

「分かればいいのよ、アンディ。イリアちゃん、そろそろ離してあげないと妹ちゃんに嫌われるわよ?」

「っ、ごめんなさい、つい……妹が近くにいるって実感がなくて、キラに対してやるスキンシップの悪い癖が……」

「ぜぇ……ぜぇ……アイツ、いつも抱きしめられてるのか……性癖歪むぞ、そんなことされたら」

「華々しくて感動的ですわ」

「お前はどこをどう見て感動的だって宣ってんだふわふわピンク」

 

 あちこちにかみつくカガリを他所に。ドネルケバブをご馳走しようとバルトフェルドの案内でテラス席に座ることになるが……

 

「私は私の好きに食べさして貰う! ヨーグルトソースなんて論外だ、チリソースで戴く!」

「ばっ、何も分かっていないようだねお嬢さん。ヨーグルトソースこそ、この酸味とさっぱりした口当たりが至上なのだ。チリソースは主張が激しすぎる邪道・オブ・邪道、ケバブの良さを殺す冒涜的なものだよ!」

「はぁっ!? 冒涜だとぉ!?」

 

 正史通り、チリソースとヨーグルトソースの論争に巻き込まれる羽目になったイリアは遠い目でそれを見守り……

 確かにこの場面ではあのキラも形無しだなぁ、とオロオロする始末。

 なお、刺激の強い物は苦手なのでとヨーグルトソースを掛けたラクスにドヤ顔する虎に微笑するアイシャもヨーグルトソース……

 

「さぁ、イリア君もこちら側に来たまえ……ヨーグルトソースこそ常識さ!」

「お姉ちゃんはチリソースが好きだよね!?」

「二人とも落ちつい……」

 

 2人の手にしたソースの容器が付きつけられて……どう収拾しようかと思った矢先に、2種のソース容器が二人の情熱に圧し負けてソースをぶちまける。

 

「……ま、まぁ混ぜてもおいしいでしょ……っ! アンディさん、敵!」

「すまな……全員、戦闘態勢だ!」

 

 蹴り上げた机、ソースが飛び散らないように心がける暇もなく突き上げられたそれらがカガリに殺到するが、身を挟み込んで受け止めたのはイリアだった。

 ソース塗れになりつつ、懐から拳銃を抜くとランチャーを構えていた屋上のテロリストに向けて発砲。眉間を撃ちぬいて即死させつつ、流れるようにテーブルの遮蔽に身を隠す。

 

「青き清浄なる世界のために!」

「死ね、コーディネイター! 宇宙の化け物め!」

 

 自分たちの護衛をしてくれたコーディネイターが撃たれ、倒れ伏すのを見たラクスが目を白黒とさせて動揺しているところで。そっと彼女を抱きよせ応戦するアイシャに目くばせ、イリアは身を晒して下手人に向き合う。

 

「全部人のせいにして……! お前らが死に腐れっ、ド外道共がぁっ!!」

 

 食事を台無しにされた心の奥底に眠る前世の大和魂……食べ物の恨みによって、SEEDを覚醒させたイリアはアサルトライフルの弾道と相手の視線を見てからすでに動きながら回避を始めており、どんなに撃ち込もうと当たることはなかった。

 連射される弾丸を躱し、横っ面を殴られて硬直した男の腕を極めながら即席の盾にして蹴り飛ばして離脱。他の構成員たちの弾丸をやり過ごしながらデコイとなって味方の援護を完遂する。なお、他の兵士達よりも機敏に動いたイリアがテロリストを3人殺害していた。

 

「状況終了……」

「い、イリア君……大丈夫かね?」

 

 バルトフェルドが恐る恐る、人の命を奪ってその実感に震えているであろうイリアに声をかけると……

 

「……ぎゃあああっ!? 髪が痛むぅ!?」

「……そっちなのかいっ!?」

「ド外道に慈しみなんざ必要ありません! 髪は女の命なんですよ!?」

「それは確かに緊急の要件だね……」

「とまぁそれよりも……ラクス、カガリ。ケガはない?」

 

 聞かれたラクスは、生きていることを実感して白昼の悪夢と認識している出来事と認識している素振りを見せながら、返り血で染まってしまったのか、チリソースの赤なのかわからないイリアの金髪を見て申し訳なさそうな。

 一方鉄火場を幾つか超えていたカガリは怪我なんてするもんか、と若干悪態をつきながらイリアに差し出された手を握り立ち上がる。

 

「ブルーコスモス……彼らのためにも祈りましょうか、ピンクちゃん」

「ミトメタクナイ! ミトメタクナーイ!」

 

 両名、生粋の姫だと言うにこの違いは一体……そう思ったが口には出さないバルトフェルドの提案で彼の屋敷に招待される運びとなるのは、自然の流れだったとだけ、ここに記す。

 

 to be continued .

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