「ごめんねー。コレ見た以上、解散させるのは無理だから」
「イリアさん、どういう事なんですか!? キラも何か言ってよ!」
ミリアリアちゃんの抗議を苦笑して流しつつ。サイくん、トールくん、カズイくんたちに公的措置として身の安全を守る義務を説明する。
「コレって軍事機密に関わるものだから、私とキラも君たちと同じ立場にあたるのよ。便宜上、兵器を一般人が使ったってだけでも犯罪行為な訳だし」
「僕たちはつまり、しかるべき処遇としてこの決定を受け入れないとダメって事ですか、イリア先輩」
「やっぱりサイくんは優秀だね。それで異存はないよ」
「お断りしたいです。ここは中立のコロニーなんです! 僕たちに何の関係があるんですか!?」
サイくんの反論も理解できる。後ろでストライクが通信を試みており、その空き時間で私は彼らの説得をしなくてはならない。
「でも、実質的に見て? ザフトは攻め込んできたでしょう?」
「それは、あんなものを地球軍が使ってたからじゃないですか!」
「それも一理ある、でもカズイくん。実を言うとさ、カトウ教授が私に出してた課題のほとんどがアレに使われてるんだ」
「……え?」
「私たちの研究、その延長線があのモビルスーツだったとしたら?」
カレッジは工科学を学ぶ場所かつ、私たちの専行していたのはパワードスーツの開発で……つまりはそういう事なのである。
「言葉を失ってるところ悪いけど、時間がない。次のザフトからの強襲も考えると、いよいよ守れなくなって君たちの誰かが巻き込まれるかもしれない。だから、協力して」
憤りと絡みたくないとカズイの顔が赤く染まっていく。わかる、マジで戦争は厄ネタでしかないしね。
「そんなの、戦争幇助になるに決まってるじゃないか!」
「よせ、カズイ! イリア先輩、ザフトからの攻勢が本当にあるんですか?」
予想というより、確定的な追撃の可能性を示してやれば。人のいいトールくんが宥めるように尋ねてくる。私がザフトならそうするだろうし、多少はね?
「確信できるよ。コレを破壊するか、確保するために。ジンを破壊できるって向こうさんからしたら、相当ヤバい事案だからね〜」
ストライクを指差しながら、私は皆に頷いた。フェイズシフトを保たせるにはバッテリー残量が心許ない。だから武装コンテナを運ぶのを急がなくては。
「わかりました。ミリー、サイとカズイもいいな?」
「わかった。指示をください、先輩」
「くそっ、やらないと生き残れないってなら手伝うよ!」
「怖いけど、わかりました。イリア先輩……大丈夫ですよね?」
しおらしい様子のミリアリアちゃんに申し訳なくなる。パイロットが原作と違って生き残っていれば私とキラはストライクに乗らずに済むはずだけど、原作通りの展開ならば……腹を括るしかない。
しかし、トールくんのリーダーシップが光る。でも戦死する可能性があるからなぁ……どうやってフラグを折ればいいんだろうか?
が、ストライクに何度も私が乗るわけには行かない。キラが准将へ進化する過程、このまま私が出しゃばって経験値を横取りしたらヤキンの攻防でキラが戦死するとか起こると全てが無茶苦茶になってしまう。
「大丈夫、なんとかするわ。私とキラで……それに、シェルター残ってるかも怪しいから」
「「「「ええっ!?」」」」
「と言うわけで、拳銃を下ろしてくださいラミアス大尉。この現状を見て彼らも現実逃避してる場合ではないって納得してくれましたから」
これはプラントと地球、コーディネイターとナチュラルの血生臭い殺し合い。互いに存亡をかけた絶滅戦争に近い闘争。それに巻き込まれました、と言い訳したいのもわかるけど、人手が欲しいのだ。
ストライクの換装だって、私と肩を撃たれた技術士官だけでは到底無理だし。
「っ、ごめんなさい。それにしても……慕われているのね」
「それは当然。自慢の後輩たちですから」
ふふんと胸を張る私に、微笑ましいものを見るような視線を寄越すラミアスさんはともかく。私は内心でめっちゃ焦っていた……近いんだよね、今頃‘エンデュミオンの鷹’ことムウ・ラ・フラガと今回の下手人たるこの物語においての元凶仮面であるラウ・ル・クルーゼのドッグファイトが行われてるはず。
アーマー乗りだって聞いてるけどあの人も大概おかしいんだよなぁ……っと。いかん、まずは換装を急がないと。
「さ、みんなも私の期待を裏切らないでよ?」
「ここまできたら、やるしかないなサイ、カズイ、ミリー」
「わかりました、お手伝いします。先輩、今度ブランドバッグ奢りですからね?」
「ゔっ、それは善処します。ディスカウントショップに連れて行ってあげ」
「本店でお願いしますね、センパイ?」
そこは譲らないとにっこり微笑むミリーに毒気抜かれたのか、カズイも笑ってくれやがる。まぁ、命の価値はつけられない。私の財布が泣くだけでいいならいくらでも鳴かして……それでも、手心をお願いします!
「降参、まいった。さぁ、指示に従って!」
「わかりました!」
「仕方ないけど、わかったよセンパイ。サイ、俺も腹を決めたよ」
「ああ、具体的に何をすればいいですか?」
私はラミアスさんの指示に従って武装を格納しているコンテナを運んでくるように指示を出される。それに従い、キラがストライクを移動させる。
「姉さん、プログラムに齟齬があるんだけど」
「バイパスがまずったら困るし、適時修正しながらバグ解消するしかないね」
操縦はキラが、私はそのシートの後ろの空間でコードを繋いでバグの修正に勤しむ。
「コンテナが空いてる。サイたちが開けてくれっ!?」
「そうだとおもっ!?」
モニターを見ると、コロニーシャフトから爆炎が伸びていた。そこから出てきたのは二つの影……モビルスーツとオレンジのモビルアーマー……!
派手に撃ち合いしてるから流れ弾がこっちにくるぅ!?
「くそっ! みんなを後ろに!」
「あれはモビルスーツ!? シグーってことは……指揮官機っ!」
「なんだって!? みんな、早く避難してくれぇ!」
キラはストライカーパックを装備するとフェイズシフト装甲を展開してから、デカい火砲をモビルスーツに向ける。ちょバカ!
「アホ、それ高出力インパルス砲! ヘリオポリスに穴が空く威力あるからトリガー引いちゃダメだからね!?」
「それなら、威力を絞ればいいじゃないか! 他に武器は……ガンランチャーとガトリング?! これだけかっ!?」
シグーがこっちを見た。やべ、ロックオンされ……直後にまた振動。ヘリオポリス内の人工山脈が吹き飛んで何かが出てきたのが見える。
「あれは……母艦、あんなのまで造ってたのか!」
「これと兄弟機を運用するための戦艦ってところかなぁ……綺麗な船だね」
「呑気なこと言ってる場合じゃない!」
わかっとるわ! とプログラムをいじってアグニの出力を25%に落とす。出力としてはこれでもビームライフルを超えるからいかにアホ火力なのかがわかる。
流石に呆れて、プログラムの適用が遅れる。原理とかはなんとなくわかる頭脳が知りたがるんだよねそう言うのって。
『みんな伏せてぇ!』
ラミアス大尉の音声がコックピットに響っ!? その直後にモニターいっぱいに爆炎が広がる。
「直撃!? あの距離で当ててくるのか!」
「相手は指揮官、エースだっての!」
後ろにはみんながいる、だからストライクはそれを庇うように機動する。
「遊びでやってるんじゃないんだよ!」
「それ相手に言いたいよね」
キラ、カミーユになってるよ。と心の中でツッコミつつ、皆の安否は……よし、無事だ。
「コロニー内でぶっ放すのは流石に野蛮なコーディネイターだ。でも、こっちだって……!」
なお、クルーゼはナチュラルであって、コーディネイターではない。知らんことを知ってたらなんで知ってるんだテメェとなるのでここはあえてコーディネイターだと思うことにしておく。
「ここから、出て行ってくれぇ!」
「あ、ちょ! 出力絞り切ってないってまだ撃っちゃだ」
撃たれて恐怖に陥ったキラが、武器を向けて。その刹那にアグニが火を吹いた。
不意打ち気味で撃たれたその火砲はさながら、インドラの鏃って言った方がいいかな。すごい光の塊だ。
ジグーを掠めてコロニーの外壁に直撃したそれは爆ぜて、大穴を穿つ。いや、なんちゅー火力なんだよこれ……モビルスーツに持たせる火力じゃないだろ!?
「掠っただけで腕吹き飛ばしてたね」
「……うん。ごめん……」
「やっちまったもんは仕方ないでしょ?」
ジグーも撤退していき、キラにドンマイと慰めつつ。着陸する母艦に向かうように指示を受けたので。キラの操縦でサイたちをマニュピレーターに乗せて。便宜上知らない体でアークエンジェルのカタパルトに着陸するのでした。
to be continued .