機動戦士ガンダムSEED レディ・アヴァロン   作:鳥頭

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Phase5 アルテミスへの狭間

 キラに事情を説明して言い含めた後。私達は付きっ切りで各自のモビルスーツの整備にいそしんだ。内蔵武器の多いGAT-X101シルヴァはフレームの仕組みが人体の可動域に極めて近い物であり、整備のしやすさを優先に簡易化された部分が非常に目につく機体。最初に開発されたXナンバー機だけあって出力がストライクの1.5倍になっている。

 それを顧みて、バッテリー機でありながらすさまじい出力を誇ってるのを見るに、連合のモビルスーツ開発への執念をひしひしと感じる。まぁ、後期にロールアウトするニュートロンジャマー搭載機のフリーダムはこれ以上だっていうんだから恐ろしい。

 

 さっき動かして分かったことは、鈍いって事。ストライクも多分数瞬のラグがあるからその辺の誤差修正プログラムを根幹からいじらないと駄目だと感じていたので休む間を惜しむのは悪手だが……修正しなくてはいけない。

 命を賭けなくてはいけない立場になったから、それを預けるための機体だからこそ手を加えなくてはいけないんだと痛感する。あと、ナチュラルでも的確に動かせる標準システムを組む必要があると認識してそれも並行で開発を続けていた。

 

 元々がプログラミングの専門家だった以上私とキラはフラガ大尉のメビウス・ゼロのプログラム修正も任されてしまった。二人で当たれば2倍の速度で終わるからいい判断だとは思うが……

 

「坊主、嬢ちゃん……ちょっと休んだらどうだ? 今無理して、次の出撃が起きたら死んじまうぞ?」

「フラガ大尉……すみません。根を詰めすぎてました」

「すみません……こうでもしないと、ストライクのOSだってまだ調整しなくちゃいけないんです……!」

「キラ、ちょっと休みましょ。まだ戦闘中だからこそ、休めるときに休んどかないと……守るモノも守れないから」

 

 焦りの色を隠せないキラを嗜めて、引き留める。こうなった原因は……キラに加えてラミアス艦長とバジルール少尉には事情は話したのである……イージスのパイロットが幼馴染(アスラン)であることを。

 そのために念入りに、イージスのビームライフルを投げ飛ばして壊し、メインカメラを中心に損害を与えておいたのである。

 今頃ナスカ級の中では整備士たちが部品の複製やらを頑張ろうとして躍起になってるだろう。復元できても、すぐには戦闘に出れないはずだ。中破したデュエルガンダムもアサルトシュラウドで無理やり使えるようにしてたわけだしね。

 

「とにかくキラ、休むよ」

「はい、マードック軍曹……いったん上がります」

「ああ、しっかり休んで来い」

 

 キラを連れ立ち、食堂で配給された食べ物を頬張り暫し仮眠をとることにした。

 

「先輩、ちょっといいですか?」

「どうしたの、ミリー」

 

 船内仮眠所である居住区の同室はミリーとフレイだった。まぁ、フレイは基本的に食堂でサイ君にべったりしてるので、ここにはいない。まぁ狭いところが苦手なんだろう。

 

「私達にも何かできることはありますか?」

「……」

「わたし、先輩とキラに守って貰ってるって言うのは嫌なんです……どうにかして手伝えることとかないかってみんなで話してたんです」

「そう……その気持ちだけでも十分だって言いたいけど……ミリーやみんなができることをすればいいわ。私達みたいにモビルスーツの操縦なんてのは無理だとしても、通信とか、ブリッジとかで……」

 

 あっ、やべ……ぼけっとしてたら口走って……いや、結局これも正史通りか。

 

「っ、そっか。クルーが不足してるんだった……! ありがとうございます、先輩!」

「あなたたちは死なないわ。私が守るから」

「え?」

「そう言っておけば、‘死ぬ’なんて無責任な逃げにならない様に言い聞かせれるから、なんて。冗談よ、冗談」

 

 適当に笑って誤魔化しながら、私も自分のやるべきことをしっかりしようと思う。目を閉じて一旦仮眠を……と思った時に、こう言う時に限って警報が鳴るんだよなぁ! 

 飛び起きて飛び出した私はブリーフィングルームに呼ばれる。ノーマルスーツに今回は着替えてだ。

 既にキラが待機していて、私を待ってくれていた様で。

 

「すみません、フラガ大尉。ノーマルスーツに手間取って時間がかかりました」

「コロニー住みだったんだろ? 連合のノーマルスーツなんて着る機会そうないなら仕方ないさ。そんなことより、ブリーフィングを開始するぞ? 作戦の確認だ」

「「はい!」」

 

 ────

 

「艦と自分の身を守ることだけを考えろ、ね」

『イリア、ストライクがエールを持っていった。お前はどうする?』

「マードック軍曹。私は……ランチャーストライカーをお願いします」

『了解、聞いたなお前ら! シルヴァにランチャーストライカーを装備させろ』

 

 要請通りにランチャーストライカーを装備して。実弾兵装多めになっているが、結局は相手をフェイズシフトダウンさせるのが目的だし問題はない。

 ハンガーごとカタパルトへ運ばれ、そして換装。ランチャーストライカーのデータをおさらいして、アグニをバカスカぶっ放さなければ問題にはならない。右肩のハードポイントにバズーカを懸架してもらっている。

 

「あら、ミリー……そう、それが貴方たちの答えなのね」

『はい、今後はモビルスーツ及びモビルアーマーの戦闘管制を行います! よろしくお願いします、先輩!』

『ちがうだろ、ミリー。イリア少尉だって!』

「ふふっ、いいのよ。肩書だけの軍属も、必要だから」

 

 システムチェック、オールグリーン。全システムオンライン……っと

 

『ランチャーシルヴァ、発進どうぞ!』

「ランチャーシルヴァ、イリア・ヤマト。行きまーす!」

 

 リニアカタパルトにより加速して出撃する際のGもあまり辛くないから、ノーマルスーツはやっぱり着ないとダメだ。宇宙に飛び出してアークエンジェルの前面からナスカ級の動きを確認する。

 イージスは出てこない模様で、後ろの方からは熱源反応が3つ……そうかやっぱ武器を回収できなかったんだね? 

 アークエンジェルの後方へ向かい、相対すは奪われたXナンバー。実戦投入までの判断の速さは流石だよね、クルーゼさんって。

 

「キラ、くれぐれも深入りしない様にね」

『了解って、警報!?』

「後方のは、識別がGAT-X103、102、204。奪われたG兵器……アスランが来ると思うけど、気を付けて!」

 

 キラに眠ってる可能性があるなら、私だってできるはず……この場面でSEEDなんて無理だろうけど。アークエンジェルに直撃しそうなビームライフルによる射撃をコンボウェポンに備わっている肩のシールドで弾く。

 

「ヌルい狙撃してバッテリー使ってくれるのは有り難いわね……素人かな?」

 

 そして、お返しのアグニによる狙撃はやめておく。バッテリーが干上がる速度が半端ないこんなのを積極的に撃てるわけがない。でも、基本的にXナンバーを積極的に破損させてやるのが一番向こうには辛いはず! 

 バズーカを構えて、近寄ってくる3機に向けてスラスターを吹かせての突撃。周囲にはデブリがあるから有り難いことに跳ね回って、慣性による加速が可能なのが救いかなぁ……! 

 

「四次元的戦闘の恐ろしさ、堪能して見る?」

『馬鹿者っ!? 遠隔戦装備で何をしている?! 戻れ、シルヴァのパイロット!!』

「すべて避けますので、ミサイルでの援護よろしくお願いします!」

『正気か貴様っ!?』

「本気です!」

『ええい、ならば死んでも責任はとらんぞ?! スレッジハマー、コリントスにヴァリアント装填。レーザー誘導! 撃て(てぇぇぇ)っ!』

 

 ミサイルが飛来していくのを見送り、そのまま会敵する距離まで加速する! 

 

『こいつ、遠距離武装で仕掛けてきたぞ!? 気をつけろ、何を考えているんだ、ナチュラルめ!?』

『的が向こうから来たんだろ? 撃ち抜いちまえばいいんだよ……ってうわぁ!? 直撃させてきやがったぞ!?』

 

 会敵寸前でステップによる回避運動、旋回しながらデブリを蹴り付けて別方向へ加速。そのまま構えたバズーカによる射撃の反動を利用してブレーキをかけると、相手の攻撃を紙一重でやり過ごす。

 カウンター気味で撃ち込めたのでバスターの頭部にクリーンヒットしていた。

 

『ディアッカ、貴様油断しすぎだ! ミサイルがまた来るぞ!』

『くそっ! 鬱陶しいっ!』

 

 そこに殺到するスレッジハマーとかを目眩し代わりにバルカンで破砕して誘爆させながら爆炎に紛れ込む様にして離脱。そして悠々と射撃攻撃を叩き込んでいく……実弾兵装多めの武装だけど。フェイズシフト装甲は無敵じゃないのはよーく知ってる。

 ビームライフルとかの高エネルギー武装でさっさと潰すより粘着的に足止めするのがここでは正解。アークエンジェルに向かわせないのが大事なのだから。

 

『な、なんだこの動きは?! ライフルが当たらん、ディアッカ何をしてるっ!』

『ミサイルが多すぎるっ! それに、こいつ友軍のミサイルの隙間を縫って攻撃してきやがる!』

『こんなの無茶苦茶だ! どう言う曲芸ですか!?』

 

 そして、それに合わせて左腕部装甲に仕込まれてるグレネードランチャーの発射の反動制御を放棄して空転、無重力空間を回る様にしてそのまま後ろから迫っていたブリッツにコンボウェポンのガトリング掃射を浴びせて牽制しつつ、350mmガンランチャーの二連射を躊躇わずに放つ。

 

『う、うわぁっ!?』

『ニコルッ!! くそっ、好き勝手にしてくれるなよ道化がぁーっ!!』

 

 その反動制御をせずに慣性を利用してデュエルに向き直ってイーゲルシュルテンの牽制射撃で縫い止めながら蹴り倒し、その反発でブリッツの方へ。直線上に友軍がいるために撃てないバスターはもうミサイルの迎撃に躍起なっているのでそこに120mm対艦ガトリング砲をバックスラスターに叩き込み、破壊する! 

 

『ぐっ、なんだとっ!!?』

「ふぅー……ふぅー……っ!!」

 

 トリケロスのダートを避けながら距離を取り。スラスターが不調になったバスターを庇う様にデュエルが並ぶ。

 

「これ以上の戦闘は無意味よ。足手纏いを庇い立てながら戦うのはリスキーだってのはよくわかるよね?」

『女だとっ!? 貴様、俺たちを見逃すとでも言うのか!!』

「あの船には現在避難民が乗ってる。正規のクルーが大勢死んで大変な状態でも生きるために月を目指してる。それを邪魔しないで!」

 

 共通チャンネルに接続して通信を一方的に送り、退く様に説得を試みる。先ほどからの動きは結構体にもキツイし、これで撤退の判断をしてくれれば御の字だが……

 

『そもそもナチュラルが状況を見ずにこんなものを作るから戦争になるんだろうが! そんな甘い考えでモビルスーツのパイロットが務まるかよ!』

「ちっ、ガキンチョが戦争を語るな! 何も知らない、評議会のおぼっちゃまがよぉっ!!」

『なんだと貴様ァっ!』

 

 激昂したデュエルが突っ込んでくるので、それを軽く去なしつつそのバックパックを蹴り付けて加速。そのままバスターの後ろに回り込むとアグニの銃口を突きつける。

 

『なっ、人質のつもりかよっ!?』

「坊や達、これが戦争だよ。足手纏いを作るようにしてどれほどの損害を出すように仕向けるのか、相手の兵站をいかに迅速に潰すかが大事で人員の被害は最たる指標に過ぎないから。卑怯と罵るなら結構、君たちの。負け犬の遠吠えに他ならないからね」

『くそっ! 退くぞ、ディアッカ。ニコルっ!』

『詰みって事かよ……ちきしょうっ! この借りは必ず返してやるからなっ……覚えてろ!』

『ディアッカ、掴まってくださいっ……くっ!』

 

 撤退していくモビルスーツの背を見送り、機体を翻してアークエンジェルへと合流する。艦橋付近に膝立ちして、そのままナスカ級を狙う。

 

『貴様、一体どう言う神経をしている……っ!』

「これが一番、楽なんですよ。危ない橋を渡る必要なんて、ないですから!」

 

 アグニのエネルギーを目一杯までチャージして、そのまま……ぶっ放す!! 

 ごうん、そんな音が聞こえた気がする。大きめの一撃が敵戦艦を捉えんと迫り、此方の速度を押さえていた邪魔なものが慌てて離れていく。当てるつもりはそうそうない……せいぜい、牽制程度で本命は……ヨシ! 

 敵戦艦から派手に閃光が起こるのを見届けてほっと胸を撫で下ろす。それを見て、イージスも慌てて帰還していく。アグニを構えていたのがわかったんだろう、ロックオンしていたから、撃とうと思えば撃てたんだけどね……。

 

『フラガ大尉より入電! 作戦成功です!』

「よっしゃぁ! ナスカ級は後退を余儀なくされるなら、撤退していくはず!」

 

 その無線を聞いてようやく肩の荷が降りた……ってこれ何、眩暈……っ! 

 そのまま私は意識が遠のいていくのを感じた。一体何がどうなって……っ! 

 

 to be continued .

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