機動戦士ガンダムSEED レディ・アヴァロン   作:鳥頭

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Phase7 ただ、明日を生きるために

 アークエンジェルに訪れたのは慢性的な水不足だった。シャワーも浴びれず、顔についた油はそのまんま、髪はガシガシになりそうで気が狂いそうだった。

 

「うがぁー! シャワーも浴びれないのはキツイ!」

「が、我慢しなよ姉さん……」

 

 なお私もあまり似合わない地球軍の制服を着ているが、ジャケットは男性用の青を貰っていた。分解油紙で顔についた油を落として、ゲンナリしながら食堂へ。

 アルテミスでの一件はサイくんから事情は聞いている。フレイを詰めるつもりはないが、やはり彼女のせいでもあり。彼女のおかげでいの一番にキラがブリッツを迎え打てたと言う認めたくない事実があって、詰めれ無かったわけで。

 

「あの、キラ……」

「どうしたの、フレイ」

「アルテミスでキラがコーディネイターだってバラしちゃった事……考えなしに言っちゃった。本当にごめんなさい」

「ああ、そんなの別にいいよ。僕は気にしてないから」

 

 優しいんだなぁ、うちの弟は。気にしてた割に、気にしないなんて言って。少しだけ不機嫌になりつつ、私は食堂で支給されたランチを平らげて。共用の寝室へ向かい仮眠をとる。

 寝ないとダメだと言われて、根をつめるのは禁止されたのだ。まぁ、パーツ洗浄とかができないから機体の掃除整備が手作業になるので整備班も連日クタクタである。

 

 気晴らしにプログラムを組んで、キラと模擬戦のシミュレーターで腕を競い合い。キラをボコして成長させるように仕向けてはいるが、すぐにこっちの狙いを読んで的確に反撃してくる弟のポテンシャルにお姉さんは涙が出そうだよ。

 

 そして、そんな感じで過ごしていたら。艦橋にお呼ばれして、デブリベルトへ向かうと告げられる。そして、そこにあるのをみなさんは知ってるのだろうか? 

 

「つまり、戦艦とかの残骸から氷を採るって事ですよね?」

「本当に勘がいいね、嬢ちゃん」

「いえ、合理的です。そして、我々に手段は残されていないと言う事ですので」

 

 諦めを見せながら、肩をすくめて見せる。それ以外に方法がないのだから……

 

「イリア少尉の言う通り、デブリベルトに集まった物資を。喪われたものを漁るつもりはないわ。少しだけ、分けてもらうの……私たちが生きるために」

「現状を顧みれば、反対できる人もいないでしょ?」

「……その物資回収作業を、あなたたちにも手伝ってもらいたいの」

 

 満場一致で、それらに関しては反対も無く。ポッドでの船外活動が開始されることになった。私もシルヴァを運用しての護衛及び搬入の手伝いである。

 

「イリア少尉、少し質問があるのだけど構わないかしら?」

「ラミアス艦長? はい、何か」

「ずっと聞きたかったんだけど、どうしてそんなに勘がいいの?」

 

 む、まぁ気になるか……呼び止められ聞かれたのはおそらくニュータイプの素質についてだろう。ニュータイプ理論と言う宇宙に適応した人類を指す理論であり、この世界にはあり得ない存在である。

 私は自身の能力から見て‘アコード’ではないかと疑ったが、そうでは無いようなのだ。ただ、転生をした魂が‘(とき)を渡った’から芽生えたのかもしれないと勝手に予想している。

 要は不確定要素の天然モノニュータイプ。それが私だと言うことだろう。

 

「勘がいいのでは無く、私は人の心を感じれるんです。感応力が高いと捉えていただけると幸いですね」

「「へ?」」

 

 ラミアス艦長とナタル少尉が胡散臭い者を見る目をしてる……まぁ当然か。なら……

 

「「貴様っ! そんな与太話を誰が信じると言うのか」っ!?」

 

 同じ事を一字一句間違えずに、同じ声量で言い放つ。ね? と言う顔をして理解してもらう。

 

「これが、私の特技ですね。でも安心してくださいって言えばいいのかな……あくまでも思考を読もうとしたりは制御できるので、誰も彼もの思考を読むなんて不躾なことはしたことがありません」

 

 それができないとは言っていないのだ。まぁ、嘘つかれてもすぐに見抜けるから割と重宝してるけどねこの感応力は。

 

「じゃあ、あの動きは」

「先手、その先手を読み。先に回避しているが故にできる芸当ですので、私以外にはできないんじゃ無いでしょうかね?」

「大丈夫、少なくとも俺は真似したく無いよ。あんな死にかねない機動は」

 

 あの動きとは、相手の攻撃よりも先に回避を始めてる機動のことだ。簡単に言えばジュール隊では私に一切の被害を与えることはできない。例外はラウ・ル・クルーゼ並のエース級のみ。

 素人機動ではカラクリを見破られるし、三手先を行かれると回避が困難になりかねないのだ。フラガ大尉はその点を分かった上で、死にかねない機動と揶揄したのだろう。

 

「特異な力、空間認識力の高さがモビルスーツの運用に大きく関わるのは納得できます。だけど、前回の出撃みたいに体に負担が大きくのし掛かる様な行動は緊急時のみに限定してね?」

「了解いたしました。前向きに検討をさせていただきます」

「イリス少尉、命令にしたほうがいいかしら?」

「謹んで、その忠告を受け取らせていただきますっ!?」

 

 そんな感じで私は艦橋を見て後にして、格納庫へ向かう。今回もランチャーシルヴァで出撃して、哨戒に当たる。バズーカの代わりにビームライフルを装備しての出撃である。

 

 ────

 

「ゔっ……っ!?」

『姉さん、何かあった?』

「いや、なんでもないよ……平気だから……」

 

 死人の念、それがフラッシュバックする様に侵蝕してくる。ここは……あの‘血のバレンタイン’の舞台……そうか、哀しかったんだろう、さぞ無念だったんだろう……誰かが訴えかける様に、私の感応力に訴えかけてくる。

 頭に響く、鈍痛に近いそれをなんとか嗜める様に。私はシルヴァの操縦桿から手を離して祈った。そして、彼らに誓う……この戦争を止めると、哀しみの連鎖はこれ以上起こさないためにもアークエンジェル艦橋に通信を寄越す。

 

「ラミアス艦長、付近に……ユニウスセブンの残骸があります」

『なんですって……っ!?』

「調査の許可をお願いします。もしかしたら水が凍り付いてると思うんです」

『でも……いいえ、分かったわ。バジルール少尉に繋いでみるわ』

 

 そして、調査に入る。私も同行して光学センサーに映る氷を確認しつつ、ドアを開けながら安全を確保していく中で……目に映ったのは寄り添い、窒息死したであろう母と幼い娘の遺体だった。

 彼らの目の前に浮いていたウサギのぬいぐるみは目が外れ、焼け焦げた生地からは綿も飛び出て……私達に抗議の視線を寄越す様に見えなくもなかった。

 暫くして、他の部屋の方を確認に行ったキラたちのグループの方からミリーの悲鳴が通信越しに聞こえる。埋葬されていない遺体は永遠に宇宙空間で少しずつ、内側から朽ちて行く。宇宙で死んだら碌なことはないとはよく知られた事実だし一般常識なんだけど……静かに黙祷。そして身を翻して調査を再開する。

 

 まだ1年しか経っていない。あの惨劇からもう1年も過ぎたとも言えるか……っ?! 

 

「どうしたんですか、先輩……?」

「いや、ちょっとね……」

『気にしないでください……でも、カリダのお宅の御息女でしたか?』

 

 サイ君に惚けながら返事をしてしまっていたのに気が付かず……目の前に、いるはずのない人が佇んでいた……いや、コレは……刻を見てるのか!? あり得なくはない、そう言う事はガノタならよく知ってること……ここU.C.じゃなくてC.E.なんだけどなぁ……まぁ、あっちもこっちも魔境なんだよちきしょうが。

 

『ええ、イリア・ヤマトと申します。レノア・ザラさんですよね?』

『まぁ、覚えてくださったのね。はい、その通りです』

『アスランの母君だって事、母さんがよく話してくれてたんで……覚えがありますよ。母さんの作るロールキャベツ、私も好物なんで』

 

 あらあらと嬉しそうに微笑んでくれる妙齢の奥方、ロールキャベツの出どころは彼女ですから。

 

『よく、アスランの面倒を見ていてくれたのをよく知っています。その節は本当に……有難うございました』

『物分かりのいい、良い子でしたし。ただまぁ……今は若干やんちゃが過ぎるというか……』

『ザフトに入ったのは私のせいなんでしょうね……夫もアレまで以上にやつれているでしょう』

 

 死人に目アリーって怖えわマジで。見てる、見守ってるんだろうけど、向こう側との接続ってあんまりよろしくないんですよねこれ。

 

『伝えたいことがあって、私に何か託したいんですか?』

『アスランに一言をお願いします。パトリック・ザラを諫め、そして支えて欲しい……と』

『反発されるかもしれませんが、分かりました。その程度のお願いなら……伝えれると思いますから』

 

 にっこりと微笑んでくれるレノアさん……私個人も彼女の事は嫌いじゃなかった。よく野菜を食べれたのも彼女のおかげなのだから……絶対許さんぞブルーコスモスの奴ら。刻が過ぎ去っていく。レノアさんの想い。確かに……アスランに届けます。

 

「先輩、先輩?!」

「とぉ……悪い、サイ君」

 

 肩を揺すられて気が付いて生返事をしながら、心配をかけてしまって申し訳ない。調査の結果、流石農業プラントだけあって水が1億トン近くも凍り付いてるのが分かり、それらを回収するかどうかでまた、艦橋でひと悶着あったが。結局は水を回収することを決定した。採取する前に、慰霊のために折り紙の花を手向けに散らせる。

 

「水がないと生きれない。私達は生きないといけない」

『そんなの……僕だってわかってるよ姉さん……』

「生き抜かないといけない。私達は私達を護るために戦うしかないでしょ」

 

 搬入、回収の作業に入ったポットの周りを哨戒、警戒に入った私達。そう言い合って、折り合いをつけ合う。そして、私はシルヴァの索敵レーダーに映った真新しい民間船が引っかかり、さらには……

 

『民間船……撃沈されたのかこれ?』

「嫌な予感がする……っ!」

 

 警告音と共に私はビームライフルを構える。メインカメラが敵影を捉えたんだから当たり前だ……艦橋に連絡を入れないと。

 

「ブリッジ、ザフトのモビルスーツを補足! 迎撃許可をお願いします!」

『こんなところにまで!?』

「強行偵察型のジンです。付近に撃沈された民間船が見えるんですが……」

 

 相手方の動きを追う。ストライクも迎撃できるようにとビームライフルを構えた。此方に気が付かないならそれで御の字だけど……

 

『相手側からポッド又は僚機がロックオンされた時点で迎撃を。それまでは警戒して観察を……』

「何かを探してる……はっ……人がいる……?」

『頼む、そのまま行ってくれ……!』

 

 ロックオンしつつ、相手の行動を見守り。その動向もなく、去って行ってくれる。

 

『よし……行ってくれた……』

 

 キラの安堵も束の間、直後にジンが反転する。身を翻した……ポットに気が付いちゃったなら仕方ないな。

 

「なんで、気が付いちゃうんだろうね」

 

 刹那に、武器を撃ちぬいた。ロングレンジライフルを撃ちぬきそのままコックピットを2発目で穿つ。

 

『ぇ……姉さん……?』

「……はぁ……撃つしかないじゃん。ああなったら……チャンドラさんとカズイ君を見殺しに出来ないでしょ?」

 

 震える手を抑えつつ、冷静にキラに返事を返す……直後に二人から礼を言われるが、耳に入ってこなかった。モニターの先で爆発していくジンを見て血の気が凍る。殺してしまった……と、でも芯まで冷えた心が囁く。出て来るからやられるんだ、と。

 

『嬢ちゃん……帰投してもいいんだぜ?』

「フラガ大尉。私は平気です……任務を続けさせてください……」

 

 絞り出すような声で、そう返すことしかできなかった……そうだよ……私たちは……戦争をしているんだから。

 

 to be continued .

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